内田副総裁記者会見(2025年3月5日)
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§1Question
今日の懇談会でどのような話題が出たか、もう一点は、静岡の金融経済情勢に対してどのようなご見解をお持ちかどうか、この二点をお伺いしたいです。
§2Shinichi Uchida
その二問は関連するところもありますので、多少ダブるところもあるかもしれませんけれども、お許し頂くとしまして、本日の懇談会では静岡県の行政、金融・経済界を代表する皆さまから当地の金融経済情勢、それから地域経済が直面する課題等につきまして、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関するご意見、ご要望もお伺いしまして、大変有意義な意見交換ができたというふうに考えております。ご多忙の中でご出席頂いた皆さまに改めてこの場をお借りしまして御礼を申し上げたいと思います。懇談会の話題、かなり多岐に亘りましたので、全てを網羅することはできません。その意味でちょっと失礼かもしれませんけれども、席上で頂いたお話を私なりに整理したうえで申し上げたいと思います。まず県内の景気でございますけれども、個人消費が堅調な中で全体としては緩やかな回復傾向にあるというお話を伺いました。この間、原材料、あるいはエネルギー価格の上昇、それから深刻化する人手不足を背景にしまして、企業を取り巻く環境は依然として不透明であり、特に中小企業については厳しい状況にあるといったお話も伺ったところです。人手不足、これは全国的にそうなんですけれども、今日の挨拶で申し上げましたけれども、ミクロレベルの工夫が大事だというふうに思います。
§3Shinichi Uchida
この点、当地では観光業、それから自動車整備業ともおっしゃっていましたが、幅広い業種で外国人材の積極的な活用が図られているというふうに聞きました。またこれは講演で申しましたが、運転手不足等への対応として、自動運転トラック・バスの公道走行実験、こういったことにも積極的に取り組んでおられます。更に申し上げると、各自治体が中小企業における AI等のデジタル技術の活用に積極的に取り組んでおられるもとで、例えば労働者不足が激しい業態、建設現場の合理化、省力化を進めるうえでは、業種を超えた連携を深めていく必要があるんじゃないかといったご意見も伺ったところです。企業が人材を確保するうえでは継続的な賃上げが欠かせませんし、これは重要なことだというふうに思いますけれども、同時に労務費のコストアップ分を適切に価格転嫁していくための商慣習の定着が必要ではないかといったご指摘も頂きました。日本銀行の金融政策運営については、基本的にご理解頂いたというふうに判断していますが、地域経済、あるいは金融機関への影響等も踏まえて政策運営を行ってほしい、といったご意見を頂いたところです。日本銀行と致しましては、頂いたご意見等も踏まえて、引き続き地域の状況にもきちんと目を配りながら、適切な政策を進めていきたいというふうに思っています。
§4Shinichi Uchida
それが一問目で、第二問目、相互に関連しますけれども、静岡県経済につきましては、緩やかに回復しているというふうに認識しています。輸出とか生産ですけれども、中国をはじめとする海外需要の減少の影響もありまして、主力の自動車産業を中心に横ばい圏内の動きとなっています。個人消費につきましては、物価上昇などの影響がみられていますけれども、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかに増加しつつあります。一方で、各種コスト上昇、それから人手不足が県内企業の事業活動の制約になっているということに加えまして、主として海外ですが、海外経済の不確実性などを背景に先行きを慎重にみておられる企業も少なくないといったお話を伺いました。ただ、そういう中にあっても、前向きの取り組みが進められておりまして、県外企業の誘致の強化、あるいは県、民間を挙げてスタートアップ支援に注力しておられるといったこととか、それから県内の自治体、金融機関、大学等が連携してカーボンニュートラルにも取り組んでおられるというお話を伺いました。こういった前向きの取り組みを生かして、静岡県経済が更に発展していくことを心から期待しております。
§5Question
二点ございまして、最初の講演録の 6 ページにあるところで、想定される程度のペースの利上げであれば、経済の反応を確認しながら進めていけるだろうということをおっしゃっているのですが、これは市場の想定、例えば図表 12 にあるようなですね、およそ半年に一回程度というようなペースを想定されているのか。そうだとすると、この程度の利上げであればできるということなので、少し緩やかなのかと考えてらっしゃるのかということが一点。二つ目ですね、足元の米を中心としたコストプッシュの値上げなんですけれども、こちらのこの影響はですね、消費を下押しするということなのか、あるいは基調的な物価を上振れさせる方に働くのか、ミックスかとは思うんですけれども、どちらの方のバランスを重くみてらっしゃって、それに対応する政策運営、利上げのペースとか、どの点を注意されているのか教えてください。
§6Shinichi Uchida
一点目は 6 ページのところ、一番下のところですね。「想定される程度のペースの利上げであれば、経済の反応を確認しながら進めていけるだろうとは思っています」ということですが、これは市場のというか、一般的に言われていることも含めて、この文脈であれば、多少の違いがあっても同じことが言えると思いますので、市場の見通しのことを言っているわけでもないし、例えば日本銀行が考えている見通しのことを言っているわけでもなくて、いずれにしてもその範囲内であれば、毎回利上げしていくようなペースではないわけですから、経済とか物価の反応をみて、その反応をみながら、もう 1 回やるのかどうかを考えていけばよいという意味です。従って、特定のペースを念頭に置いたものではなくて、多少の違いがあっても、この書いてあることは言えるだろうという趣旨で書いています。それから二つ目は米価格の影響ですけれども、個別の品目について予想を行っているわけではないので、この後どうなるのかというのはありますけれども、食品とかエネルギーというのは、いろんな要因で振れやすいので、基調とかを考えるときには考えないというか、除いたりすることもたまにありますし、海外では。考えなきゃいけない要因ではあるんですけれども。同時にですね、一方で、生活しているうえで、物価とは何かというか、最も接する頻度が大きい品目でもあるわけですね。
§7Shinichi Uchida
なので、基調を考えるうえで一番重要なのはもちろん賃金ですけれども、そういったよく使う、よく買う品目というものが、消費者の物価観というか、物価予想ですかね、正確に申し上げれば、物価予想に及ぼし得る影響というものはですね、これは十分注視していかなければいけないというふうに思います。当然ですけれども、これは講演の中でも書いていますが、今、物価と賃金と両方上がっているわけですので、それの相対的な関係、あるいはそれが企業部門・家計部門の中で、二極化という言葉もありますが、その言葉がいいかどうかは別にして、部門の中でも、必ずしも一様ではないこと、こういったことが個人消費にどういう影響をするのかということはですね、これも注目してみていくポイントだというふうに思います。これ一方は物価の話で、一方は経済の話ですので、必ずどっちが大きいとかという話ではなくて、どちらもきちんとみていったうえで、経済と物価、両方の見通しを作り、それに従って政策をしていくということになると思います。
§8Question
今の質問に関連したものになるのですが、米価格の上昇などを要因として消費者物価の高い伸びが続いていると、これが基調的な物価を上振れさせるリスクとして、現状どの程度となっていると認識されているのか教えてください。また、午前の講演の中で基調的な物価上昇率は 2%を下回っていて、この状況で引き締めると景気を抑制して賃金も上がらなくなるとおっしゃっていますけれども、今月も会合ありますが、連続で利上げする状況ではないということか、改めて教えてください。
§9Shinichi Uchida
まずですね、米価格について、特にそれだけをみているわけではないと今申し上げた通りですけれども、そのうえでわれわれは見通しを作っていて、その見通しは今、展望レポートにお示しした通りということになります。程度というのは、基準があると「程度」って説明できますけれども、どの程度と言われても、それは今われわれがみているのは、結果として出てくる CPIの見通し、除く生鮮の見通しですけれども、今われわれがお示ししている通りであるということになると思います。そのうえでですね、基調的な物価上昇率がまだ 2%に至っていない、そういう意味では、基調的な物価上昇率が幾らなのかっていうのは、何回か前から三つぐらいいろんな指標というか、計測を示していますけれども、これも絶対的なものではないし、それぞれレベルも違うので、特に今どうっていう数字があるわけではないです。もともと基調的な物価というのはそういうものではなくて、ある種の幅を持ってしか言えないものだと思います。明らかに言えることは、この間上がってきていることと、でも 2%は下回っているであろうと、その二つが言えるということかなというふうに思います。この状況は変わっていません。そのうえで政策の判断は毎回、経済と物価の情勢を踏まえて行っていくということに尽きると思います。
§10Question
日銀がですね、今後利上げを進めていくうえでは、米国経済が堅調に推移していることが前提になると思いますが、講演では副総裁、バランスの取れた状況にあるとおっしゃいましたが、ただこのところトランプ政権のですね、高関税政策への警戒、影響からですね、家計や企業の景況感の悪化を示すような指標が相次いでいます。こうしたですね、米国経済のダウンサイドリスクをどうみているのか、またそれが日銀の政策の判断にどう影響するのかっていうのをまず伺えないでしょうか。もう一つはですね、長期金利ですけども、足元 1.4%を上回る上昇になっていますけれども、この背景にはですね、日銀の利上げのターミナルレート、このターミナルレート 1%越えを織り込むようなですね、動きがあると思います。市場が織り込んでいるこのターミナルレートの予想についてですね、日銀の見方との間にですね、齟齬があるのか、もしくは目線が合ってきているのかどうか、その辺を伺えないでしょうか。
§11Shinichi Uchida
まず米国経済はかなり詳しく書きましたのであんまり付け加えることもありませんけれども、書いたことはですね、去年の夏懸念されていたような、労働市場が弱くて、雇用ないし所得が弱いので、個人消費というのはいずれ、今は強いけど当時の話ですね、今は強いけれどもいずれ落ちていくのではないかという当時の見通し、ないし懸念というものは、かなりの程度払拭されているというふうに思います。それからもう一つ、バランスがいいと書いた趣旨は、インフレについてはですね、確かにこの数か月というか秋以降、若干下がるのが足踏みしている感じはありますけれども、PCEで言うと 2%台ですし、2、3%の間に落ちてきているので、これもですね、方向としては、目標に向かっている、2%ですけれども、目標に向かっているというふうに思います。そういう意味で、バランスが良いという評価をしたということです。当然ですが、どんな経済にも先行きにはリスクはあるわけですけれども、今で言うとですね、これも書いた通りですが、地政学的な緊張は高いということでありますし、新政権の政策は、これは特別何の政策がってことではないですけれども、いろんな意味で、経済面それから物価面の両方に影響する可能性があると思います。関税、移民等々、言われているわけですね。減税とか、他のこともありますけれども。
§12Shinichi Uchida
ただこれ具体的な対象の範囲とか、あるいは規模、そういったものによっても変わりますので、その影響を今ですね、はっきりと言うってことは、これはできないだろうというふうに思いますし、今後の展開をみるしかないであろうと思います。そのうえでですね、これも書いたことなんですけれども、実際その要因がどうなるかということだけではなくて、それを巡って様々なニュースとかあるいは予想っていうものが出てくるわけであって、そのことがですね、米国に限らず、各国の企業、あるいは家計のコンフィデンスに影響する面はありますし、現に影響している面は出てきているというふうには思います。また、金融市場は当然そういうものを先取りしながら形成されていきますので、そこにも影響し得るというふうに思いますので、そういう点を含めて、世界経済に対する不確実性は高いということで引き続き注視する必要があるというふうに思っています。それからターミナルレートについてはですね、今回そういう意味で書いたというか書かなかったというか、それは分からないわけですね、今の段階では。
§13Shinichi Uchida
それは分からないことを分かると言う必要はないし、それが正しいコミュニケーションとは思いませんので、実際に上げていく中で、結果としてこんなもんだったんだなっていうのが分かるだろうと思いますし、現実にそういうふうに政策が進められるだろうと思いますし、進められるだけの状況が今あるというふうに思っていますので、それについて特にわれわれの見方というのがあるわけではありません。ちょっと違う言い方をすると、長期金利ないしはその市場のパス、そういったものについて、何かわれわれがこう思ってますということが必ずしも正しいコミュニケーションではないかなと私は思ってます。そういう趣旨を書いているわけですね。つまり、答えを言っちゃいけないわけであって、われわれはこういう考え方でこういう見通しのもとで政策をやっています。その中で市場で形成される指標にはそれなりに市場がどう思ってるのかっていう情報があるわけですから、その情報はわれわれにとっても貴重だし、何よりも市場機能として重要だというふうに思いますので、私が今の市場の考えていることは、おかしいとか、高いとか低いとか、そういったことを言うというのは、できる限り避けるべきことだろうというふうに思います。
§14Question
二点あるんですが、先ほどの、想定される程度のペースの利上げであればというくだりのご説明のちょっと一応確認なんですけれども、これはやはりこれまでの利上げの影響をある程度見極められるだけの時間を持ちつつというその範囲内でという理解でいいのか、ちょっと正確を期するために改めてちょっとその辺を確認したいです。二点目がアメリカのトランプ政権の関税の影響なんですが、まだ不確実とはいえ実際にカナダやメキシコへの関税の引き上げは執行されましたし、中国の報復関税の公表もされているということで、これまでは不確実性、リスクであったものが実際顕現化して、世界経済、日本経済に下押しの圧力となることはほぼ間違いないと思うんですが、こうなった場合に今度の日銀の改めて成長率の見通しを作る場合、下押しになる可能性が高い一方、物価は国内の人手不足等で比較的高い数字を維持されるとなった場合、このときの政策運営の考え方としては、やはり基調インフレがしっかり 2[%]に向かっていれば利上げということなのか、場合によっては成長への下押しというのをより意識しなければいけないことになるのか、現時点での考え方をお願いします。
§15Shinichi Uchida
前者については、当然利上げの効果というのは累積的なものですので、過去のものを含めてどういう効果があるのかっていう判断になるというふうに思います。これは一般論としてそうだということですし、この文脈であれば、当然そうだというふうに思います。それから後者については、これもですね、例えば、一定の関税が導入されてそのままずっと続くかどうかは分からないわけですから、常に不確実な部分は残るということだろうと思います。その影響というのは、当然、海外経済を通じて国内の成長率に影響しますし、そのことは日本の経済、それからひいては物価にも影響するということですけれども、それを全体として評価したうえで、経済と物価の見通しをもう一回作って、その中で判断していくことなので、当然このことだけを取り上げてということは当たり前ですがありませんので、次[の展望レポートの公表]は 4月ですから、1月から4月の間に起きたいろんな事象を全部踏まえたうえで、もう一回見通しをお示しして、われわれの考え方、これは変わってないんですけど、われわれの政策反応[関数]の中で考えていくということになると思います。
§16Question
二点お伺いしたいんですが、アメリカ経済について減速懸念が出てきているということと、それから為替もひとときに比べると円高に振れているということで、日銀にとっては、次の利上げに向けてまだ判断を見極めていく時間的な余裕が今できているのかというのが一点目。二つ目は午前の挨拶の中で、出口戦略について言及されまして、今後もオペレーション、コミュニケーションの両面で工夫とバランスが求められていくだろうというお話しされましたが、日銀の保有 ETFの取り扱いについて、内田副総裁、現時点でどのようにお考えでしょうか。
§17Shinichi Uchida
一問目についてはですね、今お答えしたことにほぼ尽きると思いますが、当然ですけれども、ある特定の状況に対応するわけではないので、米国経済とか為替とかいろんなものを含めて、日本経済それから日本の物価というのを考えて、それに応じて政策を打っていくということに尽きるというふうに思います。そのうえで二問目はETFですね、ETFについてはあまり変わっていないという言い方がいいと思いますが、これまで総裁からも申し上げてきたことですけれども、保有するETFあるいはJ-REIT の処分についてすぐに行うということは考えていないということです。今後の扱いについては、ある程度時間をかけて検討する必要があるというふうに考えています。処分の基本的な考え方は買入れを始めたときに、実施要綱というかたちで示していますので、それに沿ったかたちで売却の仕方というのを、売却というか処分ですかね、処分の仕方というのを考えていくということになろうかと思います。
§18Question
賃上げでお伺いしたいんですけれども、先ほどの講演でも昨年に続いてしっかりした賃上げが実現する可能性が高いというふうにおっしゃられましたけども、 1月の利上げもですね、そうした状況を踏まえて、それも念頭に置いて行われたと思うんですけれども、来週にまた集中回答とか、集計とかいろいろ春闘の公表があると思うんですが、そういった高い中でも、実際レベルとして、より高いだとか思ったほどでもなかったとか、そういった状況を踏まえての追加利上げに対する、タイミングやペースの判断っていうのは変わるものなのか、そこについてお願いします。
§19Shinichi Uchida
今回の講演で書いた中身と、前回 1月の公表あるいはその後の総裁の会見等で話していることは基本的に同じだと思いますので、特に特定の賃上げ率を念頭に置いているとか言っているわけではなくて、昨年に続いてしっかりと、去年良かったですからね、昨年に続いてしっかりとした賃上げが実現する可能性が高いという言い方をしているわけです。ですから、去年より高いとか低いとか言ってるわけではなくて、そういう数字になり、去年と同じようなしっかりした数字になるであろうということです。そのうえで、それが強い弱いということは、それは当然影響しますけれども、これも何度も言いますが、他の全てのこととの総合判断になるわけですから、そのことだけを取り上げれば、それは高ければ高いほど、基調的物価上昇率を引き上げる可能性が高いし、われわれの見通しが実現する確度は上がっていくというふうに思いますけれども、それは程度と他の要因と、いろんなものをセットにしたうえで考えていかないといけないということになろうかと思います。
§20Question
二点お伺いしたいと思います。一点目が、先日、3日になると思うんですけれども、トランプ大統領がですね、中国とともに日本が通貨安を誘導してきたというような発言がありました。これについての受け止めと、これによって金融政策に何か影響が及ぼし得るものなのかどうかというところのコメントをお願いしたいということです。あと一点、これに関連するといえば関連するんですけども、本日の午前中の講演の中で異次元緩和についてですね、実質金利の低下を通じて金融資本市場を通じてですね、物価・経済を刺激したということは言えると思うというようなご発言があったと思います。こちら、取りようによっては、っていうか私の解釈なんですけれども、場合によっては大規模緩和によって円高を是正するというような意図がそもそもあったのではないかというふうにも読まれてしまうような、そういう可能性があると思って私この発言を読んだんですけれども、その辺りのその意図を改めて教えて頂きたいです。
§21Shinichi Uchida
まずトランプ大統領のご発言について詳細を承知しているわけではありませんので、直接コメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。わが国の通貨政策については、昨日ですか、加藤大臣がお答えになっているというふうに承知しています。それからレビューの説明の部分ですけれども、これについては、まず大前提として、日本銀行の金融政策は、物価安定のため、わが国の経済と物価の情勢を考えたうえで最も適切な金融政策を行ってきたということです。それ自体が様々なルートを通じて金融緩和が効果を得るというのは、これはもともとそういうものですので、特定の為替なり何なりを意図したものではなくて、2%の物価安定を持続的、安定的に実現するために必要な政策を行い、その波及ルートとしてそういうものもあったということを申し上げているだけであって、特に為替について何らかのレートに誘導するとか、変えていくとか、そういったことを意図したということではなくて、あくまで目的は物価安定であるということになります。
§22Question
物価の上振れリスクというところに関連してくるんですけれども、副総裁、これまでビハインドザカーブになるリスクはほぼないという話をおっしゃってらっしゃいましたけど、今、足元こういった講演の内容を踏まえてですね、先ほど毎回利上げするとはみられていない、一般的にですね、という発言からすると、今何か利上げを急いでやるような状況に追い込まれるリスクについてはそんなに高く見てらっしゃらないという理解でいいのかどうかっていうところがまず一点。あと、この講演の中で大きな山を二つ越えたっていうことをおっしゃっていますけど、今後のこの山、何かやはり出口を的確にやっていくということになるのか、何か特定の具体的な山というのを意識されているのであれば教えて頂けますと幸いです。
§23Shinichi Uchida
利上げのペースについてはですね、いつも言っている通りですけれども、今後の、先行きの経済・物価・金融情勢次第ということですし、考え方は何度も説明している通りですので、その中で判断していくということに尽きるというふうに思います。二問目って何でしたっけ。
§24Question
山です。
§25Shinichi Uchida
これはですね、過ぎたことについてどこが山だったっていうのは割と言いやすいと思うんですけど、この後何があるのかは正直よく分からないですね、それは。いろんなことがあり得ると思うし、大規模緩和をやる時から当然意識していたことではありますけれども、当然、やったことに伴って、後でそれを手仕舞うことは必要になるわけです。これはやる前から分かっている話だから、規模が大きいだけにその後時間もかかるし、いろんな意味で工夫をしないといけないと、それからバランスも取っていかなきゃいけないということだと思っていますので、この後何が起きるのかは、予断を持たずにというか、緊張感を持ち続けながらやっていきたいというふうに思います。
§26Question
ちょっと金融政策とかと全く違うお話で恐縮なんですけれども、講演の中で最後の方で、静岡の「やらまいか」っていう言葉を引用されていますけれども、この「やらまいか」を副総裁が知られたときにですね、その印象と、この精神についてどのようなお気持ちを持たれたかっていうところを教えて頂けると幸いです。
§27Shinichi Uchida
すみません、私もあんまり知らなかったと言えば知らなかったのですが、支店と話してる中で出てきた言葉です。ただ、講演全体の流れを読んで頂ければ分かるように、いわゆるデフレの時代というのは、それが選択だというのはちょっと言い過ぎかもしれないんですけれども、基本的に「やらない」っていう選択っていうのが無いわけではなかった時代だったと思うんですけれども。おそらく普通の経済、普通の競争がある経済ですが、2%の物価安定とそれを上回る賃金上昇ということになりますけれども、そういう世界になってくると、それこそ先ほどの人手不足の問題にしても、自分たちはこういう収益を上げられる会社だから、是非うちの会社に来てください、っていうことが必要になってくるわけですね。ですからそういう意味では、今までに比べると、ある種、早い者勝ちというか、やってみないといけないっていう面が今までよりも強くなってくると思うんです。これは、特に強い競争経済っていうことでもないんですけど、デフレの時代があまりにもそうではなかったので、これからそういう時代になっていく中では、おそらくその「やらまいか」っていう精神がですね、非常に重要になっていくと思います。
§28Shinichi Uchida
これは県内だけではなくて、是非日本中の企業の方、それから若い人、そうじゃない人も含めて、そういう精神で動いてほしいと思うし、そういう精神で動いていくような経済に変わりつつあるというのが今の日本経済ではないかと思います。そういう意味で、そういう言葉があると知ったので、これを最後に使わせてもらおうかなと思ったということです。以上