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Bank of JapanPress conferenceJul 1, 2025Kazuyuki Masu, Board Member

増審議委員就任記者会見(2025年7月1日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

審議委員就任に当たっての率直な気持ちをお聞かせください。また、日銀は現在利上げを進める局面にありますが、ご自身としてはどのような政策スタンスで政策決定に関わるお考えでしょうか。この二点についてお願いします。

§2Kazuyuki Masu

抱負を聞かれるかと思っていたら率直な感想ということでしたので、率直に申し上げますけども、職業人生の最終盤で、こんなえらい重責が来るとは本当に思ってもいなかったので、率直に言うと、えらいことになったなというのが本音のところですね。ただ、ご指名を頂いたのは本当に名誉なことですので、もう精一杯やるだけだとそう思っております。それから、政策のスタンスの件ですけど、これはちょっとさすがに具体的には差し控えさせて頂きますけれども、今の日銀のスタンスっていうのは承知しておりますし、今日就任したばかりですから、これから執行部からの説明ですとかデータをみさせて頂いて、それを聞く前にお話しするべきことではないと思いますので、それよく聞いたうえで、自分でよくそしゃくして、責任感を持って議論に参加させて頂くということにさせて頂きたいと思っております。

§3Question

二点お伺いします。物価への見方をお伺いしたいと思います。日銀は、基調的な物価が 2%に届いていないというふうにしていますが、足元は食品価格の上昇もあり3%超えの物価が続いています。企業実務に携わっていたお立場から、足元のインフレが加速するリスクをどのようにみていらっしゃいますでしょうか。また、企業の価格設定行動の変化は不可逆なものだとお考えかも、併せてお伺いできたらと思います。

§4Kazuyuki Masu

物価についてはですね、特に輸入、エネルギーの問題ですとか、今、米の問題がありますので、そういう意味で日銀が大事にしている、その基調的な物価というところが 2%に行ってないって話は説明も聞いたんですけど、それに違和感は今のところ持ってはないですね。その辺が落ち着いたときにどうなってるかが非常に大切なので、それをみてから十分に考えていく必要があるかなと思っているところです。企業の価格設定が不可逆かというご質問ですよね。これは非常に難しいご質問なんですけど、不可逆かということは値下げができないのかというご質問と取ればいいですか。

§5Question

例えば、企業の人件費とか原材料コストの上昇分を価格に転嫁する動きが加速してきたかと思うんですけれども、こうしたその企業の価格設定行動の変化が、長い目でみてデフレ期のような状態に戻らないというふうにお考えかどうかっていうことです。

§6Kazuyuki Masu

流れという点ですね。今、率直に思うところは、ちょうど端境期にいる感じがするんですね。だからどっちに行くかっていうと、これちょっと感覚でしかないんですけど、そういう流れに向いてるなと思う部分もあります。特に消費者に一番影響が出る食品なんかそういう流れが出ちゃってますよね。ただ、他がみんなできるかどうかというと、まだまだ分からないというか、だいぶ変わってきたとはいえ、日本企業はまだまだ終身雇用で、長い期間雇うという意味で簡単に給与を上げにくいというところもありますのでね、それが日本全体に伝わってるかというと、そういう動きが出た部分と、まだまだかなという部分と分かれてる、ちょうど真ん中辺にいるんじゃないかなという気がします。

§7Question

トランプ関税の影響につきまして、今日の短観なんかでも、一部業種にとどまってる状況ですけども、委員は今後どういった時期にですね、そういったものが顕在化して、具体的に内外経済に、いわゆる物価についてどのような影響が出てくるとお考えか。また、影響が出てくる前にですね、日銀が、物価が上振れたからといって利上げをするということには慎重であるべきか、影響が出る前の政策、利上げとか、そういうのに慎重であるべきかどうか、その辺のお考えはどうでしょうか。二点お願いします。

§8Kazuyuki Masu

トランプ関税は、実は、非常に難しいご質問なので、今日までに解決していることを祈ってたんですけど、大変残念ながら全くこの状態ですので。そうですね、企業の受け止め方は、今日短観でしっかりした数字が出てたということをみると、悲観論が減ってきてるということは確かだと思う。それは悪いことではないと思うんですけど、これ、まだまだ交渉が終わってませんから、交渉中ですから、これは絶対見守っていかなきゃいけないことですし、それから、おそらく自動車が引っかかってるんだとすると、自動車は対米輸出の中核ですので、ここをちゃんとまとまらないとどうなるかというところ、もう本当予断を許さない状態が続いてるかなと思います。その中で、つながったご質問だと思うんですけど、利上げとか金融政策をどうするかという点は、ここをよくみてからじゃないとやはりできないと思いますので、これをみながらという、今そういうスタンスで日銀自体はいると思うので、それについては私も、聞いていて違和感を持ってるところはないです。

§9Question

二点お願いします。一点目が、大規模金融緩和を、当時、企業経営者の 1 人として、どういうふうにみていたり、評価していたのかというのが一点目。もう一点目はですね、例えば、中村審議委員とか、中小企業の稼ぐ力なんかに結構こだわりがあったりしたりしたんですけれど、同じ産業界出身でもありますが、どういった点を特に注意していきたいというものがあれば、教えてください。

§10Kazuyuki Masu

まず、金融緩和をどうみていたか、これが、今、その時期私が自分は何をしてたかというのをちょっと思い出しているんですけれども、そうですね、やっぱり企業としてこうあってほしいというものっていうのは、やっぱり、あったのはあったと思うんですね、その時期って。大きな流れがですね、少しこのままでは良くない、特に総合商社なんかにいますと、デフレというものがですね、企業経営にどうなるかっていうと、総合商社ってどんなとこでも泳いでいくところがあるので、ちょっと今お答えに詰まっちゃったのはそこなんですけど。商社としてどうだったかというと、どんな方向でも何か対応して生きていこうとする集団なので、そのときどうしてたかというと、それに合わせて今度はやっていくしかないなというかたちで生きてたのは事実なんです。ただ、経済全体がデフレっていうのがいいわけはないので、その中で、デフレ対策として大規模な金融政策を打っていくということは、国民みんなが期待していたことも事実ですので、それについて期待する施策だったなというのは確かだと思いますね。

§11Kazuyuki Masu

それから、中村前委員ですけど、これも、残念ながら直接もう伺うことはできないんですけれども、スタンスの取り方がどうだったか、どういうふうにお考えになって、いろんな議決に入られてたのか、結果だけはもう拝見してるんですけど、これも議事要旨だけだとやはり分からないところがあるので、どういうお話だったかっていうのは、これから中のスタッフの方に伺うこともできると思いますけど。今の段階で私がどこに合わせるかということは、別に、自分はこうしたいということを今、思ってるわけでもありませんので、全体をみてやっていくっていうのは、これからのやり方かなと思ってはいます。

§12Question

二点お願いしたいんですけれども、一点目は、産業界ご出身ということで、企業の観点から、最近の地政学リスクやトランプ関税といった、企業活動にとって大きな逆風ですけれども、これが今後の企業の景況感や設備投資にどの程度の悪影響を及ぼし得るのか、ご感触を伺いたいというのが一点目です。あと二点目なんですけれども、利上げをいつするとかそういったタイミングは、まだなかなかこれから執行部の方との議論というふうにお話しになってましたが、日本の実質金利はかなりマイナスであると、他の国に比べても日本の、日銀の政策金利は非常に低いんですが、今の日本の金利はやっぱり低過ぎるとお考えなのか、そろそろこの超緩和的な政策の出口をもう少しスピードアップすべきなのか、今の日本の企業や経済にとってこの金利水準、緩和水準についてどういうふうにお考えになっているか、お聞かせください。

§13Kazuyuki Masu

地政学はちょっと日銀とは関係ないと思うんですけど、逆にいうとお答えしやすいのでお答えしちゃいますけども、この話題って特に商社がよく聞かれるんですけど、特にカントリーリスクって一番難しいんですね。商社が対面するリスクの中で一番難しい。というのは要するに予測がつかないので、短期間だったら予測がつくかもしれませんけど、やってる事業によっては非常に長いもの、特に商社は長いものが多いですから、長い期間で安全かどうかって測るってやっぱり本当難しいんですよ。そうすると、今起きてることをみてどう判断するってなかなかしにくい。具体的な例で言いますと、私がまだかなり若い時期にあのイラクの問題が起きて、実は三菱商事は非常に大きな与信がイラクにあったんですけど、これがまさかですね焦げ付くっていうふうには思ってもいなかったことがいっぱい起きてしまうと、これが地政学リスクなので、予測不能のことに対して、どう対応するかっていうのをいちいち考えてると何もできなくなってしまうのも事実ですから、この辺をどう上手にやるかというのは各社の工夫だと思うんですね。特に商社がやってたのは、できるだけ特定の国に偏らないようにしていくということ、分散させていくっていうことが、そういうことをやれる業態なので、分散をもうあれ以降は気をつけてやってるということが事実かなと思います。

§14Kazuyuki Masu

ですから、これをみて特定の地域は危ないからとかいう話には、なかなか探していくと、どこにも出すとこがなくなってしまうので、アメリカが一番安全なんて言ってて本当にそうかってことも起きますから、そういうふうに対応するのが地政学かなとは思っています。それから実質金利がマイナスというのは、これはもう事実なわけですから。でもご質問はスピードのお話だと思いますけど、スピードに関しては今の情勢、特に昨今の経済情勢をみると、急いでいい状態とも言えなくなってるわけなので、こういうのをみながら決めていくっていう、総裁からも発信されてるコメントっていうのには全く違和感がありませんので。ゆっくりがいいという意味ではありませんよ。慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいというふうには思っていないと。よく話を聞いてデータをみてこれから考えていきたい、一番そういう部分ではないかなと思ってます。

§15Question

一点お願い致します。これまで商社でお勤めになられた経験の知見をですね、金融政策にどのように生かしていきたいか、その点をお願い致します。

§16Kazuyuki Masu

非常に難しいご質問になります。生かせるかどうかは必ずしも自信はないんですけど、例えば、特定の産業界の方と比べると商社って何でも屋なんで、あの会社って何やってもいいという業界ですから、実際に私の経歴もお配りするかと、もうお手元にいっていますかね。経歴に書いてあるのは部長以降のことなんですけれども、それだけでも結構エネルギーやったり食料やったりとかいろいろ、発電も担当をしてるんですね。それから部長になる以前には、例えば新入社員のときは繊維をやっていて、部門はいわゆる財経部門で、セグメント毎に経理が付くという組織になっててですね、それを順番に回っていく。全社のところをやったり、またセグメントも回ったりとかして。スタートは繊維だったんですけど、当時、大阪からですね、繊維の織物をアメリカに輸出するという今では存在しない取引をやってたりとか、こういうことをいろいろやってるっていうところで、深くはないですけど浅い知識はそれぞれの業界のを持っているところが私が一番生かせる部分かなと思ってますので、いろんな局面でそれに合わせて泳ぐっていうことをやってきた業態というのが、この中でこういうときはこうしましたよとかいうことをご提供できると、そういう場面があればありがたいかなと今思っています。

§17Question

一点伺います。商社ご出身ということで、その観点といいますか知見を踏まえてなんですけれども、金融システムリスクの芽のようなもの、金融危機に将来的につながるリスクがあるんじゃないかですとか、何かそういう懸念されている分野ですとか方面ですとか、例えばコモディティ市況ですとか、政治情勢とか、あとマーケット動向ですとかを踏まえて伺えればと思います。

§18Kazuyuki Masu

ちょっと難しいご質問なんですけど、商社からみて金融は、というご質問ですよね。

§19Question

そうですね。情報収集能力ですとかに長けていらっしゃると思いますんで。

§20Kazuyuki Masu

商社から金融はどうみえてるかっていうと、金融のリスクを感じることっていうのを、あんまりある場所じゃないんですね、総合商社という場所がですね。大昔は、自分で商社金融なんて名前が付けられて、自分で売り買いにサイト、期間に差をつけて自分で金融するということで生きてたような時代があったわけですけど、そういうのがなくなってくる中で、だんだん商社って金融からはだいぶ離れていったところにいるのは事実なんです、今。そういう意味で、お金は当然、すごい大きな借金をしてますんでお借りしていますけど、金融リスクを商社マンとして感じることがあるかというと、あまりなかったんじゃないかなというのが正直な答えになるかなと思います。そういう意味では、金融リスク、日本銀行としても当然みていかなきゃいけないことですので、そこの仕事というのはこれから私にとっては新しい課題になるかなと思ってます。

§21Question

二点お伺いしたいんですけれども、為替レートなんですけども、今 1 ドル 143 円台というところで、この為替水準というのは、日本経済への影響という点では、いい円安なのか悪いのかっていう点、ご認識をお伺いしたいというのが一点目。二点目ですけれども、これからの金融政策運営を考えるうえで、増委員としては、まず第一にアメリカの関税の影響に伴う経済・物価の下振れリスクをより警戒すべきとお考えなのか、それとも国内要因で今出てきている物価の上振れリスクをより重視して運営すべきなのか、このどちらなのかお聞かせください。

§22Kazuyuki Masu

為替のご質問ですけど、今の 140 円がいいのか悪いのかっていう。これは、業界によって皆さん違ったりするんですよね。私のいた会社は、円安の方がいいというのはご承知の通りで。かなりの会社が、それによって業績が上振れしていることは間違いないんですけど、悪い影響が出てる会社も当然ありますし、悪い影響は特に消費者側に出ますので、物価というかたちで。これをいいのか悪いのかっていうと、やっぱり両方出てくると思うんです。ただ良い面の方の分析だけ先に言っちゃってしまいますと、良い良いと言っても、例えば最近は、輸出がたくさん円安でできるから儲かるという形態じゃないやつが多いじゃないですか。これ商社なんかが典型でして、それから製造業さんもそうですよね。既に拠点を外へ出してる企業さんが多いので、そこで上がった利益が円安になると評価として大きくなると。評価として大きくなっていることが本当にいい業績になってるかっていうと、必ずしも多分、誰も実感はないと思うんです。いい業績になってるという実感を企業側が持ってないのが、この状態かなと。というのは、上がった利益を日本まで引いてくれば、ちゃんとした日本円で利益になりますけど、置いてあるままになってるケースが結構多いと思うので。これってまだ評価益ですから、この後円高になったらこの部分が減ってしまう。

§23Kazuyuki Masu

置いといていいのか、でも全部引いていいのかと、こういう悩みが出てくる中で、言い方を変えますと、円安になったから、業績が良くなってるから、これは良い為替だと企業側も思っていないと思うんですね。少なくとも物価に関しては、輸入物価に影響するという意味では、必ずしも良くないインパクトを与えてますので、やっぱりいつでも両面あって、立ってる場所ですとかによって相当違うものかなと思います。それから、関税も含めて今の国際情勢が景気の下振れに行く場合と物価の上振れに行く場合と両方あるというのは全くご指摘の通りなんですけど、両方あるっていう状態でどっちに行くのかを見極めていくしか今ないと思いますので、どっちに行くっていうこと私が定見を持っている状態で全くありませんから、これを今から慎重に見極めていく、執行部の話を聞いたり、データをみさせて頂いて、今から一番考えていかなければいけない部分じゃないかなと思ってます。

§24Question

委員は民間企業ご出身で、なおかつコーポレート・ファイナンスの分野にもお詳しいということで、あえてお聞きしますが、日本銀行は、中央銀行としてはかなり異例なことに、巨額の事実上の株式を保有しております。ETFというかたちで、東証プライム市場のおよそ 7%ぐらいの株を持っている状況にあります。中央銀行がこのように大株主であるという状況についてどのようにお考えなのか、やはりこういうものは手放した方がいいというふうにお考えなのか、あるいはすぐに手放すのが難しいとしても、何らかの企業統治の工夫が必要になるのか、その辺りについてご所見をお聞かせください。

§25Kazuyuki Masu

株式なりETF、株式はだいぶ減っていて、個別銘柄で銀行から出たやつは、もうだいぶ減ってると思うんですけど、ETFで持っている部分について、大きな数字になってることは承知してます。こう整理した方がいいですね。最初に銀行から出た株を一度日銀が買って、マーケットへ出ないようにして、今日までゆっくりさばいて頂いた、これは企業として非常にありがたいことだったわけで、あの段階でマーケットに出ていたら、株価にすごいインパクトがあったわけですから、これは非常にありがたいことだったと思います。ETFは、これは入り方が多分違うルートから入ってますので、これをもって企業側としてですね、日銀に株を持たれてるという意識はあまり持ってないですね。ETFってかたちを通ってる。もちろん、ETFだって議決権は出そうと思えば出せますし、全く影響がないとは言えませんけれども、企業側から意識をしてみているということはないと。そういう意味では、統治の話になると、ちょっと私もピンとこないところもあるんですけど。これはどうしていくかというと、今の状態がいいということは、もうもちろん誰も思ってないことなので、どこかで圧縮はしていかなきゃいけないと思うんですが、これは当然株式市場全体にすごく影響のある話ですから、すごく時間をかけて、きわめて慎重にやっていって頂くということが企業としては望ましいこと。

§26Kazuyuki Masu

それから日銀としても、そうやる必要があることかなと思っております。

§27Question

俗にですね、利上げに積極的な人をタカ派、慎重な人をハト派と言います。先ほど、具体的な金融政策運営については、これから日銀の執行部と議論して決めるというようなお話がありましたが、増審議委員は、そもそもの考え方として、ハト派、タカ派、どちらかにシンパシーはあるんでしょうか。

§28Kazuyuki Masu

きわめて正直に申し上げて、頭の中、そこは真っ白でして、どちらとも今、何かの定見を持って持ち込むというようなところにいたわけでもありませんので、きわめて私は白紙だと思いますので、どうしても図表上にプロットをされたい場合は、是非図の一番真ん中にぽっと置いておいて頂ければいいかなと思います。以上