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Bank of JapanPress conferenceAug 28, 2025Junko Nakagawa, Board Member

中川審議委員記者会見(2025年8月28日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点ほど大きくお尋ねしたいと思います。一点目ですけれども、本日の懇談会、こちらではどのような意見が出されましたでしょうか。どのような議論がなされましたでしょうか。それからもう一点です。山口県の経済、景気、これについての現況、それから見通し、この辺りについてはどのように分析なさっているでしょうか。その大きく二点をお尋ねできればと思います。

§2Junko Nakagawa

本日の金融経済懇談会におきましては、山口県の金融、それから経済界、それから行政を代表する方々から、県内経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関するご意見も頂きまして、大変有意義なお話を聞くことができました。ご出席頂きました方々に、この場を借りまして改めて御礼申し上げたいと思います。本日、懇談会では、お忙しい中皆さまにお集まり頂きまして、比較的長時間も割いて頂きましたので、話題も多岐にわたるものになりましたので、全てをここでご紹介することはできませんけれども、席上聞かれました話を整理して申し上げます。まず、足元の山口県の景気、景況については、全体として緩やかな回復基調であるというお声でした。ただ一方で、少子高齢化などを背景にして、人手不足の傾向が非常に顕著になっているですとか、一部の中小企業、それから小規模事業者では引き続き価格転嫁においては厳しいというお声が聞かれまして、県内企業が抱える経営上の課題やそういった指摘をする声も聞かれました。ただ、この点、デジタル化などの生産性の向上や、官民の連携などを通じた多様な人材の確保に向けたお取り組みも紹介して頂きました。

§3Junko Nakagawa

また、アメリカの通商政策の影響についてですが、米国との関税合意に至ったことは前進である一方、以前よりは相当に高い関税率ではあるため、県内産業には一定の影響があると考えられるというご意見や、短期的なマイナスの影響は少ない、限定的と思われるが、中長期 [的 ]な見通しとしては、依然、不確実性が高いといったお話がありました。日本銀行に対しては、世界経済の不確実性が高い中でも、引き続き日本の経済の安定に尽力してほしいといったご要望を頂戴致しました。これらを踏まえまして、私どもとしましては、各国の通商政策などの今後の展開やその影響を巡る不確実性が高い状況が続いていることも踏まえまして、内外の経済・物価情勢を丁寧に確認して、予断を持たずに都度判断していくということが重要であると改めて考えています。本日お伺いしたお話も踏まえて、 2%の物価安定目標のもとで、持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営してまいりたいと思った次第です。二つ目のご質問は、山口県の経済情勢や見通しについてというご質問でした。足元の山口県経済、繰り返しになりますが、緩やかに回復しているという判断です。

§4Junko Nakagawa

企業活動をみますと、足元、輸送用機械、こちらの生産は前年を下回っていますが、製造品出荷額ウエイトが最も高い化学におきましては、高付加価値品の生産を中心に持ち直しがみられ、全体としては持ち直しの動きが続いているという評価です。また、設備投資につきましても、下関支店が 7月に公表した当地の短観結果もご確認頂けると思いますけれども、製造業では当地主力の化学を中心に高機能性化学品や環境対応投資、こういったものがいくつか計画されているほか、非製造業でも、老朽設備の維持、更新の投資や、いくつかの前向きな投資が計画されていて、比較的堅調な企業収益のもとで、企業各社の積極的な設備投資スタンスが維持されているというふうに判断しています。この間、個人消費に関しては、やはり物価上昇の影響を受けた消費者の節約志向の動き、高まりというもののお声も聞きましたので、こういった動きもみられますが、所得改善効果が消費を下支えする中で、着実に持ち直しているというふうに思います。先行きにつきましても、積極的な企業の設備投資スタンスや、所得改善効果を背景とした個人消費の持ち直しが続くもとで、この当地山口県の景気は緩やかな回復が続くというふうに考えています。

§5Junko Nakagawa

もっとも、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、各国の通商政策の今後の展開、それからその影響を受けた海外含めた経済・物価情勢を巡る不確実性は高い状況が続いていますので、その影響につきましては引き続き十分注視する必要があると考えます。

§6Question

二点お伺いしたいと思います。一点目が、本日の挨拶要旨の中で、各国の通商政策の進展の変化をみるために、次回の短観の結果が大変重要というお話がありました。10月には短観の発表に加えて、支店長会議も控えていると思いますが、こういった利上げを今後判断するうえで、この短観のデータは判断材料として欠かせないものなのでしょうか。二点目が、これもご挨拶の中で、何度か中長期的な予想物価上昇率について、徐々に上昇しているというお話がありました。 1月に利上げをされてから、 4 会合連続で政策金利を据え置いておられると思いますが、アメリカの関税政策の不確実性が続いている中で、利上げが遅れて、今後ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがどれぐらいあるとお考えでしょうか。

§7Junko Nakagawa

まず、一点目です。短観は、私どもきわめて大事な調査だというふうに認識はしています。こちらみて頂いた通り、センチメントや設備投資の計画というものを確認することができるものです。ただ、常に毎回の決定会合におきましては、その時までに出た、把握できる最大限の情報、特にハードデータをもとにして、私ども判断していきますし、そちらに短観の調査、発表が間に合えば、それも当然織り込んでいくということですので、ご質問の直接のお答えになっているかどうか分かりませんが、短観というものは非常に重要で、その時点において直近の短観の結果というものを十分に読み込んだうえで、決定会合を都度、判断していきたいというふうに考えます。それから、中長期の物価予想をみて頂いたと思いますけれども、ビハインド・ザ・カーブのリスクについてというご質問だったと思います。

§8Junko Nakagawa

こちら今、全体のメカニズムとしては、何度か繰り返しになると思いますけれども、賃金と物価がお互いにみながら、双方がゆっくりと上昇していくというメカニズムが働いていく中にはあると思いますけれども、これが例えばヘッドラインのCPI、つまり物価上昇、それが賃金に影響して、そこからサービス価格にまた影響していくという流れが、こういったものの循環が、非常に動きが大きくなって、結果私どもがみているいわゆる物価、いろんな物価指標が、これらを押し上げる力が加速度的に高く強まってしまうということを、ビハインド・ザ・カーブのリスクというふうにとらえるのであれば、そのリスクは今の時点でそれほど高くはないというふうには思っています。ただ、今申し上げた通り、循環としては賃金と物価がお互いに参照しながら上昇していくというメカニズムが働いているというふうには思っていますので、この辺り、今後この急激に基調的な物価、あらゆる物価の指標に、大きく変えてしまうような変動が起こるかどうか、その可能性にしても十分に注意を払っていかなければいけないとは思っています。

§9Question

足元で長期金利が上昇していることに関連して一つお伺いします。金利上昇の要因として、日銀の年内の利上げ観測が復元されてきたことというのも影響していると思います。こうした市場の見方に関して、中川さんご自身のご認識と整合的なのかどうか、この点に関して一つお伺いできればと思います。

§10Junko Nakagawa

今、現状の長期金利というものに関しては、基本的には金融市場において自由なかたちで形成されるものということを考えています。それに沿って、私どもも緩和の度合いを調節するということを検討し続けてきているわけです。ですので、こういったものの、今の長期金利の上昇というところも、年内の利上げ、ないしは年内という部分を、強調どれほどされるか分かりませんけども、市場において経済・物価に対する見方、それから海外金利の動向など、それから場合によっては、海外の金融政策当局者(注)の方々のご発言や、それを巡る思惑みたいなもので変動するというものと認識しています。

§11Question

中川審議委員は、今、利上げができるような環境、いろいろなことが起こっていますけれども、利上げができるような環境、その確度の高まりというところまで前進しているというふうにみてらっしゃるのかどうかというのがまず一点。あと、アメリカで、中央銀行の独立性ということが今話題になっていますけれども、そのことについて、もし可能であれば、何かコメントということと、中央銀行の独立性の重要性についてお願いします。

§12Junko Nakagawa

利上げの環境に関しては、一つ言えるとすると、 4月の展望レポートから 7月の展望レポートの表現に関して表れていますように、関税政策の影響に関しての不確実性というのが、 4月の時に比べると、少し、その深い霧の中にあったものが、薄まったかなという程度には、不確実性が少しは下がったかなというふうに思います。その点でいきますと、少しその利上げの環境という意味では、 4月よりは少し改善の傾向としては、不確実性が下がったということは言っていいとは思いますが、全体として経済状況に関していえば、不確実性が高い状態が続いていますので、現在の金融緩和の状況を、経済のサポートをこの緩和の状態でしていくというのが適切である、というのが現時点における判断でした。それから二点目の独立性に関しては、今、アメリカで起こっていることを踏まえて話題になっているというのは承知しています。日本においても、独立性は尊重されていると思いますし、ただ、私どもは、日本の物価、それから経済の情勢をみながら、適切なかたちで金融調節を行っていきたいというふうに考えていますので、それにおいては特段昔と意見は変わっておりません。

§13Question

一点お伺いしたいのが、今日の午前中の挨拶の要旨の中で、先ほどの質問にもあったのですけれど、通商政策の進展の変化をみるために次回の短観結果が大変重要というコメントがあったかと思います。その中で、具体的にどのようなポイントに着目するのか、どのような条件が確認できれば先ほどおっしゃったような利上げに向けたような環境がある程度整った、もしくは進展したと判断できるのか、その辺りもう少し詳しく見方をお伺いしたいです。

§14Junko Nakagawa

おそらく利上げすることの要素を判断するときの、要素っていうかたちでのご質問かというふうに思います。実際には物価上昇率の基調というものをみていくんだっていうのが、日頃から私どもがお答えしている内容ではあるんですけれども、本日、展望レポートでお示ししている指標のうち、主なものをまた今回、可能な限り足元までデータをアップデートして、今日お示ししたつもりでおります。こういった中では、一時的な物価変動の影響を受けにくい物価指標というのもいくつかあって、そのうちの一つ、例えばサービス価格もそうなんですが、加えまして人々の物価観というものを示す中長期的な予想物価上昇率、これも重要になりますし、更にはその物価変動の背後にあります、いわゆるマクロ的な需給ギャップ、それから労働需給の環境、それから賃金の上昇率、こういったものは全て物価の方への影響、ないしは物価からまた賃金への影響、そして結果的には経済への影響というものを及ぼしますので、この辺りを総合的にみながら都度判断してまいりたいということでございます。

§15Question

先ほど、今後の金融政策をみるうえで短観が重要になるというふうにおっしゃっていたんですけれども、逆にいうと、 9月の会合もあると思うんですけれど、短観が出ないうちには利上げがやっぱりまだ待たなきゃいけないというふうにとらえていいのかという点が一つ。もう一つは、日銀としては基調物価がまだ 2% に達していないというふうにみていらっしゃると思うんですけれど、利上げが遅れることによるリスクをどうみていらっしゃるか、この二点お伺いしたいです。

§16Junko Nakagawa

一点目は年内の利上げに関して、年内と限ったときに、これに関してということですが、こちら繰り返しになりますが、決定会合が何回か予定、計画されていますので、その都度、その時点までのデータ、ヒアリングデータも含めたソフトデータ、ハードデータを得て、適切に判断していきたいということに尽きます。短観がないとできませんかという、もし率直なご質問ということであれば、それは直近まで出ている最新の短観のデータをベースにして、そこに各支店の、今日の下関支店もそうですけども、支店から集めてくれるソフトデータをそこに加味することによって、補ったかたちで判断していくということもあり得ると思います。二点目は 2% に向けてということでしたっけ。二人目のご質問に非常に近いと思いますけども、現時点において、賃金が物価を参照しながら少しずつ上がってきているという、このメカニズムというものが、かつてに比べれば働いている状況にはあると思います。

§17Junko Nakagawa

その点でいきますと、いい循環といいますか、物価と賃金が相互に連関しながら、賃金は毎年物価に合わせて改定していくものなのだという、そういうものが慣習付いたらいいなというふうに思っていたところが、それがある程度実現しつつあるのかなということにおいては非常に良い傾向だというふうに判断するべきだと思うのですが、一方で、ビハインド・ザ・カーブをどう定義するかにもよりますけれども、今私どもがみている指標からしますと、賃金と物価が双方に参照しながら、更にヘッドラインの CPI が賃金に影響するといった先で、サービス価格の方を含めた、こういったものに広がることによって、結果的に物価が急速に上がる力が大きくなる、しかも加速度的に大きくなるというリスクに関しては、私ども引き続き注意深くみていかなければならないというのは認識しておりますけども、今の時点のリスクとしては、それほど大きくないのではないかというふうには思っています。ただ、かつてに比べますとこの循環というもの、メカニズムというものが動くようにはなっていますので、引き続きいろんな指標を慎重にみてまいりたいと思います。

§18Question

今日の講演の中で、物価についてのところですね。ここ数年の上昇は過去と比べて大きな変化ですというふうにも言及されてると思うんですけども、結構足元でも3% 台と高止まりしている中で、この大きな変化というのは想定よりも大きいのかなというふうに思うんですが、その辺り中川委員はどういうふうに受け止められているのか、改めてお伺いできればと。あと二点目は、ビハインド・ザ・カーブのところと関連するんですけども、今、米国を含めて日銀が利上げするべきだみたいな見方というところが強まっていたりもすると思うんですが、こういった状況というのを今どう認識されてるかっていうのを伺えたらと思います。

§19Junko Nakagawa

ここ数年、やはり予想物価上昇率というものが、過去に比べると非常に動きが出てきているというのを今日お伝えしたつもりです。実際、皆さんご確認を日々して頂いているところもあるかと思います。ただ、これまでの賃金上昇の販売価格の転嫁の動きに加えまして、最近では米などの食料品の価格の上昇といったものの影響が非常に大きくて、みて頂きました通り、 25年度の物価の見通しも比較的大きめに上方修正したところです。ただ、今のところは資料にも述べましたけれども、これまでのところ、この急激な物価の上昇のうちの米などの食料品価格、この辺りは上昇率としては減衰していく、緩やかになっていくだろうということは見通しとして持っていますので、これを見極めたいというところです。想定より大きいかという部分に関しては、見通しの数字を今回大きめに変えましたので、この辺りは足元までの米価の価格の上昇が、以前想定したよりも長引いていることに伴う修正というふうに理解して頂いて良いと思います。加えて、これに賃金とか、あとは運送費等々のもう少し間接的な費用の価格転嫁も一部影響してきているというのがみて取れます。

§20Junko Nakagawa

物価の見通しは、今後、先行きの景気、それから企業の賃金・価格設定行動という、これまでの動きがどの程度続くのかどうか、それから国際商品市況などもいろんな環境で振れますので、こちらに関しては上下双方向の不確実性があるものとして、慎重に引き続きみてまいりたいと思います。それから他国の方のコメントに関して、私自身が今この席上で何かコメントする立場ではありませんので、お答えは控えさせては頂きますけれども、ビハインド・ザ・カーブのリスクはということに関しては、先ほどお答えしましたので重複は避けさせて頂きますが、ただ、当然に以前に比べますと物価も動きやすくなっていますし、賃金も企業の方のご努力によって比較的高い上昇率を、全部の企業さんではない、非常に厳しいところもあるのは承知のうえですが、マクロの数字でみますと比較的堅調な賃金上昇率が数年続いてるところではありますので、ビハインド・ザ・カーブに陥らないように、私どもとしては、私自身は最大限毎回の会合に向けて情報収集をしたうえで、都度検討していきたいというふうに思います。(注)会見では「金融政策当事者」と発言しましたが、正しくは「金融政策当局者」です。以上