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Bank of JapanPress conferenceNov 20, 2025Junko Koeda, Board Member

小枝審議委員記者会見(2025年11月20日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点伺います。一点目なんですが、本日の懇談会ではどのような議論が行われたのかということ。二点目は、その懇談会を踏まえて、当地の経済の現状と課題についてどのように認識されましたでしょうか。

§2Junko Koeda

本日の懇談会では、新潟県の行政や経済、金融の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題に関する貴重なお話や日本銀行の金融政策運営に関するご意見等を数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたことについて、この場を借りて、懇談会にご出席頂いた方々や、関係者の皆さまに深く御礼を申し上げます。本日の懇談会での話題の全てを網羅することはできませんが、席上で聞かれたご意見等を整理して申し上げます。まず、新潟県の景気についてです。当地経済は、原材料価格の高騰や人件費の上昇が、企業収益を圧迫しているものの、緩やかながら持ち直し傾向にあるとの声が聞かれました。急速な少子高齢化、人口減少の中で、人手不足が深刻化しているとの指摘が多くの参加者から聞かれておりました。こうした中、賃金の引き上げや省人化設備の導入などを進めているといった話が聞かれました。また、人手不足が深刻化している農業分野でも、AIやドローンを活用したスマート農業が広がりつつあるとの話も伺いました。金融機関の方々からは、企業が経営課題として認識している販路拡大、事業継承、M&A、DXなど多岐にわたる項目に、膝をつき合わせながら一つ一つ解決に向けて向き合っていくことが使命であり、それが地域経済の活性化、復興につながるとの考えも伺いました。

§3Junko Koeda

日本銀行の金融政策運営に関しては、中小企業が安心して企業経営に取り組める金融政策が実施されることを期待しているといった声を頂きました。日本銀行としては、今後も、新潟支店を通じて、当地の経済・金融情勢に関するきめ細かいモニタリングを続けるとともに、当地経済の持続的な成長に向けた取り組みや金融システムの安定性の確保を後押ししていきたいと考えております。続いて、二つ目のご質問です。新潟県の経済の現状についてみますと、全国と同様に、原材料高の影響を受けつつも、持ち直しているとみております。企業の生産は、AI関連の電子部品・デバイス、化学製品の生産が堅調である中、横ばい圏内を維持しているほか、設備投資は、省人化投資などにより、増加基調にございます。労働需給も人手不足の中、逼迫した状態が続いています。個人消費は、所得環境の改善などを背景に、緩やかな回復の動きが続いています。一方で、物価高の中で、消費者の節約志向の動きもみられますので、留意が必要です。次に課題ですが、新潟県経済をやや長い目でみると、少子高齢化や人口の減少に伴う人手不足のほか、猛暑や渇水、激しい豪雨や豪雪といった課題にも直面しています。

§4Junko Koeda

こうした状況に対応するため、企業は、省力化投資などの対応を進められているほか、米の生産では、農地集約による大規模化やドローンやAIを活用したスマート農業など、環境の変化への対応を積極的に推進されております。また、豊かな自然や魅力的な文化、様々な農水産物、高い技術力を持った産業の集積といった強みを上手く活かしていくことで、今後の新潟経済の持続的な発展は十分に期待できると考えています。本日の懇談でも、様々な取り組みもご紹介頂き、非常に心強く感じられました。今後、当地関係者の幅広い取り組みが功を奏し、少子高齢化や人口減少などの課題に対応しながら、新潟県経済が一層の発展を遂げることを期待したいと思います。

§5Question

講演の内容について二問質問させてください。一問目は、講演の中でやはり、日本の実質金利がまだきわめて低いために、これを均衡状態に戻していく、金利の正常化を進めることが必要であるというふうにおっしゃってますが、金利の正常化っていうのは、今、経済がわりとしっかりしていて、物価もやや強めということであれば速やかに進めていくべきものなのか。また、政策金利を考える上で、中立金利も意識しなければならないということですが、この中立金利について、委員はどれくらいの水準とみてらっしゃるのか、まだちょっと先なのか、近づいているのか、その辺りを伺いたいのが一点目です。二点目は、円安が足元進行していて、これがやはり食品価格や輸入コストの上昇にまたつながる可能性が高いんですが、この円安が経済・物価、また日銀の金融政策運営にどういう影響を及ぼすのか、こちらについてもお願いします。

§6Junko Koeda

まず、一点目の金利の正常化、実質金利がきわめて低い中、アウトプットギャップとしては、大きくプラスでもマイナスでもない状態で政策金利を引き上げていくということは、やはり金利の正常化という面があると思いますが、そういったことを速やかに進めていくべきものなのかという最初のご質問ですが、やはりそこは基調的なインフレも、いろいろな指標があって、総じてみれば推計の幅だとか、計測の誤差もあるんですけれども、総じてみれば 2%ぐらいになっていると思いますが、それが定着しているか、アンカー度合いも引き続きみていかなければいけないと思っておりますので、速やかに進めていくべきものなのかといったことに関しては、やはり足元の経済・物価状況について確認しながら判断していくということになると思います。足元は、やはり海外経済の不確実性が継続する中、国内の企業の賃金の設定行動に関して、その動向がどういう状況に今後なっていくかという今後の動向についてをみながら判断していく、様々なデータや情報をみながら判断していくべきものなのかなという、物価を取り巻く状況をみながら判断していくものだと考えております。

§7Junko Koeda

中立金利については、中立金利は自然利子率とインフレ率を加えたものですので、インフレ率についてはどのインフレ率を加えるのかという議論があるものの、2%のインフレ目標ということであれば、やはりその推計の幅は自然利子率の方から来ていると私は考えています。自然利子率は、多角的レビューでもお示しした通り、マイナス 1%から 0.5%の幅でお示ししておりましたけれども、その幅は、足元でも大きく変更はないかなと私はみております。いずれにせよ、足元の政策金利は、中立金利のその下限をみても、政策金利は現在低い位置にあるのかなというふうにはみております。二つ目の質問の円安から物価へのところですけれども、円安が物価にどういうふうに影響があるかと考えたときに、やはり輸入物価がどうなっているかっていう視点があると思います。コロナ後、21年以降(注)、円安とエネルギー高で輸入物価が大幅に上昇しましたけれども、足元輸入物価の前年比でみると、この 1年ほどマイナスで、足元も若干マイナスな状況でございます。この辺は引き続き、為替変動が物価にどのような影響を与えているかというところは丁寧にみていきたいと考えております。

§8Question

二点お伺いします。今日の講演の中で、実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、金利の正常化を進めることが、将来に意図せざる歪みをもたらさないためにも必要であるというご発言がありましたけど、この意図せざる歪みは何を指しているのか。もう少し補足説明をお願いできればと思います。もう一点、市場の動きのところで、長期金利の方が、今日 1.8%を超えて、かなり上昇しているという状況の中で、この動きをどうみていらっしゃるか、日銀として何かしら考えなければいけないことがあるのかどうか。

§9Junko Koeda

まず最初の、実質金利がきわめて低い中、金利の正常化は将来の意図しない経済の歪みを抑制するためにも、適度なペースで必要というところでしたけれども、歪みとは何かというご質問で、実質金利のような、一般論として、マクロの実質変数がその均衡から大きく離れている状態が続きますと、やはり資源配分に影響がある可能性はあると思います。将来の時点で、その資源配分に偏りが出てきたですとか、あるいは偏ったゆえ、将来からみて選択肢が狭まってしまったということになりますと、やはり持続的な経済成長というところと関係もあると思いますので、やはりそういった面では金利の正常化というのは適切なペースで進めていくことが必要であると私は考えております。二番目の市場の動き、特に長期金利のお話だったと思いますけれども、日々の長期金利の水準ですとか、動きについての具体的なコメントは差し控えたいとは思っております。やはり、長期金利は金融市場で形成されることが基本で、ファンダメンタルズに沿って変動することは適切だとは思っております。ただし、長期金利が急激に上昇するといった例外的な状況があれば、市場における安定的な金利形成を促すという観点から、機動的に国債買入れの増額やオペを実施するという、こういった考え方は従来から変わっておりません。

§10Question

今後の賃上げの見極めの指摘が、講演の中でもあったと思いますが、主要企業による中間決算の上方修正もあったりしますが、来年の賃上げ、現時点でどうみているのかを、多面的な賃金動向が重要とのことなんですが、今年の最低賃金の引き上げ幅ですとか、冬のボーナスの民間調査なども出てますが、それぞれどうみているかっていう賃金のことが一点。もう一点が、当地の、新潟県のですね、経済・社会を考えるときに、東京電力柏崎刈羽原発があることも大きいと思うのですが、今回、当地の視察や懇談で、柏崎刈羽原発の再稼働について何か考える機会があったりしましたでしょうか。

§11Junko Koeda

まず、最後の、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働についての動きですけれども、大変注目されていることだとは承知しておりますが、本件について私からお答えする立場ではございませんので、控えさせて頂きたいと思います。賃上げの見極めということでしたけれども、一点目のご質問。やはり、春の賃金改定に関する動向の情報は、今後、方向性として分かってくるところもございますし、本行では日々のヒアリングなどを通じても、情報が蓄積されているところですので、大変大事な情報の一つだとは思っております。同時に、賃金動向に多面性があると、私、挨拶で申し上げて、冬のボーナスですとか、あるいは最低賃金ですとか。冬のボーナスに関しては、やはりその企業収益、全体としてみれば、企業収益の水準は高い状況にあると思いますけれども、そういったことを反映して、個々の企業の冬のボーナスがどうなっていくかというのは、これから分かってくる面もございますし、最低賃金に関しては、大幅な上昇が、引き上げが今年ございましたけれども、それがマクロでみた実質賃金にどのぐらい影響があるのかというところも、丁寧にみていく必要があると考えております。

§12Question

二点お願いしたいんですけども、基調的な物価が既に 2%になっているのではないかという中で緩和的な金融環境を続けることによってですね、先行き基調が 2%から上抜けてしまうリスク、いわゆるビハインド・ザ・カーブになってしまうリスクというものが従来よりも高まってるんではないかという認識を小枝委員が持たれているのかどうかというのが一点目で。二点目なんですが、政府の大規模な経済対策が想定されてる中でですね、市場では先ほど言った円安とか長期金利上昇が顕著になってるわけですが、こうした政府の財政政策運営とか円安というものは消費者物価の上振れにつながるリスクがあると思うんですけれども。対策とかですね、円安を踏まえた物価上振れリスクについて、委員は今どのようにお考えか、この二点お願い致します。

§13Junko Koeda

一点目ですけれども、基調的なインフレについては、いろいろな指標を総合的にみて、計測誤差なども考えると、2%ぐらいになってきているとは思いますが、やはり同時に、その定着度をアンカー度合いもみていく必要があると考えております。こうしたことから、基調的なインフレは、どの指標をみても緩やかに 2%に向けて上昇してきているという傾向の中、ビハインド・ザ・カーブのリスクが高まっているかというご質問でございましたけれども、ビハインド・ザ・カーブって言ったときに、やはりそこは中央銀行はインフレをコントロールできているのかという問いと関係していると思いますが、そこではやはり基調的なインフレがどうなっているかということで、それが緩やかに 2%に上昇してきていて、それが定着しているかを、確認していくという段階だと思いますので、特に従来からリスクが大きく変更があったということは、私としては 10月の展望レポートなどでお示しした中心的な見通しから大きく見解が変わっているわけではありません。政府の大規模な財政、経済政策についての効果についてでしたけれども、現時点で私、詳細について承知しているわけではないので、なかなか具体的なことは、申し上げることはできないんですが、一般論として、財政の変数ってGDPのコンポーネントに入ってくるものですので、やはりわれわれの見通しには、組み込んでいく必要があると考えております。

§14Junko Koeda

なので、詳細が出てきたところでしっかりそこは見通しに組み込んでいくという、分析に入れていくということになると思います。

§15Question

講演でお話しされた基調的な物価上昇率が 2%ぐらいになってるというご発言についてお伺いしたいと思います。実際に日銀さんが掲げる物価安定目標を達成するのがいつ頃になりそうかっていうのと、どういった条件が整えば、達成したと言えるのか、小枝委員のお考えをお聞かせください。

§16Junko Koeda

やはり基調的なインフレ率、指標がたくさんある中で、総合的にみれば 2%ぐらいになってきているっていう現状だと思いますけれども、それがどのぐらい定着してきているのか、ですとか、あるいはアンカー度合いっていうのをみていくということだと思います。やはり物価を取り巻くいろいろな要因について、総合的にみていく必要があると思っていて、そこでは経済がどのぐらい底堅いのかですとか、需給ギャップがどれぐらい引き締まっていくのかといったことも、やはりその基調的インフレのアンカー度合いに影響してくるものだと思いますので、そういったことは本当に総合的な、様々な角度からみて判断していくのかなと考えております。

§17Question

二点伺います。ちょっと金懇の話題と若干逸れるかもしれないんですけれども、全国で金融機関統合が、普及しているんですけれども、当地だと第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行が経営統合に向けて議論を始めてるんですけれども、そのことに関するご見解をお持ちであれば伺いたいなということが一点。それに付随してなんですけれども、規模の経済が効くような経済状況になりつつあるのかなと思ってるんですけれども、金融機関にとって、今後の金融機関の方向性のようなものを何か示唆されるものがあれば教えて頂きたいです。

§18Junko Koeda

金融機関の経営統合のご質問だったと思います。一般論として、企業の数ですとか、人口減少など構造要因によって、地域経済を取り巻く環境が厳しさを増していると思います。そうしたもとで地域金融機関が将来にわたって地域を支えられるように十分な資本と収益力を確保するとともに、地域が抱える課題を解決する付加価値の高い金融サービスを提供していることは重要だと考えております。こうした取り組みのうえで、例えば経営統合ですとかそういったことは選択肢の一つではあると思いますし、ただ、どう取り組んでいくかは、それぞれが地域経済の実情を踏まえた各金融機関様の経営判断であるとは思います。

§19Question

ご講演の中で金融政策の運営にあたって、市場や金融システムにおける動向を踏まえつつ判断すべきということですが、金融システムについては、今後意識すべき不均衡等の現象が既にみえているのか、どういった点を注目されているのかっていう点とですね。基調的物価上昇率は非常に重要な概念なんですが、コミュニケーション上、分かりづらいっていう声が、おそらくボードの議論の中からも主な意見等からみえるんですけれども、今後のコミュニケーション上、この基調インフレあるいは中立金利といった概念を、もう少し分かりやすく説明できないのか、その辺りについて委員ご自身はどのようにお考えでしょうか。

§20Junko Koeda

まず、金融システムについてのご質問ですけれども、10月のFSRでもお示しした通り、わが国金融システムはそういった安定性を有していると私も判断しております。個々のミクロの情報についても、もちろん丁寧にみていきたいとは思っておりますが、やはり総じてみて、安定性を有しているというふうに判断できると思っております。基調的なインフレをどう伝えていくかっていう話だったと思いますが、私はいろいろ様々な指標をみてその詳細をみながら総合的に判断していくということで、日々やらさせて頂いてはいるんですけれども、でもハードデータに基づいた、例えば計算の仕方が分かりやすいわれわれのコアインフレっていいますか、CPI除く生鮮食品とかの、その見通しについても今回 10月の展望レポートでも少し記述を加えているところでございますし、いろいろな指標がある中総じてみて、今どのぐらいかというふうな判断というのは、定着度も含めて丁寧に行っていく必要があるのかなと考えております。

§21Question

二点ほどお伺いしたんですけれども、先ほど円安が物価や金融政策に与える影響についてはお答え頂いたと思うんですけれども、そもそも、足元の円安の背景やその持続性についてどうみていらっしゃるかという点がまず一点です。二点目について基調的物価についてはその定着度合いをよくみる必要があるとおっしゃっていたと思うんですけれども、その定着度合いというのはどういった観点や定義でみていらっしゃるかというところをお伺いしたいです。

§22Junko Koeda

最初の円安から物価の、為替水準の話ですけれども、やはり為替相場の水準や評価について具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。経済・金融のファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だと考えております。為替の変動が物価にどのように影響しているかというのは、引き続き丁寧にみていきたいと、しっかりとみてまいりたいと考えているところでございます。基調的インフレの定着度合いは具体的にどうみればいいのかということですけれども、やはりそこは需給がどのぐらい引き締まっているか、経済がどのぐらい底堅いのか、賃金の動向がどのぐらい安定的に、賃上げの状態がみられるものかですとか、様々な物価を取り巻く要因をみて総合的に判断していくことだとは思います。それに加えて、モデルからは長期のインフレの予測値はどういうところに収束していくのかですとか、あるいはフィリップス・カーブの切片の状況などもあるとは思いますが、基本的には物価を取り巻く様々な要因をみて、総合的にその定着度については判断していくのが適切ではないかと私は考えております。(注)会見では「21年後」と発言しましたが、正しくは「21年以降」です。以上