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Bank of JapanPress conferenceNov 27, 2025Asahi Noguchi, Board Member

野口審議委員記者会見(2025年11月27日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

私からは二点質問させてください。一点目は、まず大分県金融経済懇談会では、県の関係者からどのような意見や要望が出たでしょうか。そして二つ目、大分県内の金融経済の現状と課題、そしてマクロ経済の潮流からみて、県内に強みが見いだせる部分があれば教えてください。

§2Asahi Noguchi

初めに、先日の佐賀関での大規模火災でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。そうした中、本日の懇談会では県各界を代表する方々から地域経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関して、いろいろなご意見を賜りました。有意義な意見交換ができたことについて、この場を借りてご出席頂いた方々に御礼を申し上げます。本日の懇談会ではご意見が多岐にわたったため、全てを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題を整理して申し上げます。まず、大分県の景気については、業種や企業規模などでばらつきはあるものの、全体としては緩やかに回復しているとの見方が聞かれました。別府などにおける国内客やインバウンドの増加に加え、人手不足を背景とした設備投資などが景気を牽引しているという話でありました。一方、課題としては、人口が減少する中で、人手不足が深刻化し、一部の企業ではサービスの提供に支障が生じているという話もありました。また、中小・零細企業では原材料価格や人件費などの各種コストが増加する中で、価格転嫁がなかなか進まず、収益が圧迫されていたり、賃上げ原資を確保することが難しくなっているという指摘もございました。

§3Asahi Noguchi

こうした課題に対して、当地の企業では付加価値の向上やデジタル化などによって生産性向上に取り組んでおり、金融機関が積極的に支援しているという話を伺いました。人材を確保するとともにデジタル技術などを使って生産性を引き上げていくことは、経済の持続的な成長に向けて重要なポイントになるため、大分県の前向きな取り組みが着実に成果につながっていくことを期待しております。金融政策については、地域経済への影響にも目配りしながら、経済・物価・金融情勢に応じた適切な判断をお願いしたいとの意見を賜りました。日本銀行としては本支店のネットワークを通じて、地域経済の現状について、本日お話を伺ったような企業の景況感のばらつきも含めてしっかりと把握し、適切に政策を運営していきたいと思っております。二番目のご質問についてですが、大分支店が分析している通り、大分県の景気は緩やかに回復しているとみられますが、企業の間では景況感にばらつきがあり、全国的にみられているように、各種コストの上昇により、小規模・零細企業で収益が圧迫され、賃上げ原資の確保が難しくなっていることや、人口減少に伴う人手不足は大分県でも課題となっております。こうした経済の現状・課題やマクロ的な潮流を踏まえて、大分県の強みと考えられるものを三つ挙げたいと思います。まず一つ目は、人口減少と高齢化が進んでいることは逆にチャンスでもあるということです。

§4Asahi Noguchi

日本全体が同じような課題に直面する中、大分県は人口減少社会の継続を見越した前向きな取り組みに着手しているほか、高齢化への対応として健康寿命日本一を目指すなど、危機感を持って取り組みを進めております。産学官が明確なビジョンを共有し、これまでの慣習やしがらみを越えて着実に対策を実施していくことで成果を挙げ、他地域のモデルになることを期待しております。二つ目の強みとして、豊かな観光資源というものが挙げられます。大分県には、全国的にも有名な温泉地だけではなく、様々な文化遺産や豊かな自然、かつて大分が提唱し海外にも広まった一村一品運動の中で生まれた様々な名産品といった、訴求力の高いコンテンツがございます。こうした県内各地の観光資源について、認知度や交通アクセスの向上を更に進めることで、県内経済の活性化にもつなげていくことができるように思います。最後の三つ目は、大分県が 1960年代から製造業の誘致を積極的に進めてきたことで、製造業が集積しているということです。そうした中で、大分県では人口一人当たりの二酸化炭素排出量が全国一位ということもあり、脱炭素化と持続的成長の両立に向けて、「グリーン・コンビナートおおいた」推進構想を掲げ、製造業の高度な技術を生かして、水素の循環活用や二酸化炭素の回収・活用等の技術開発に、あるいはその導入に産学官が連携して取り組んでいます。

§5Asahi Noguchi

エネルギーの問題はわが国の経済安全保障の観点からも重要性が増していることから、この分野で大分県において先進的な取り組みが進んでいることは、エネルギー資源が乏しい日本において一つの先駆的なモデルになり得るのではないかと考えております。

§6Question

9月の講演の中で、野口審議委員はこれまで以上に利上げの必要性、政策調整の必要性が高まっているという趣旨のご発言をされて、上振れリスクをみていかなければいけないということをおっしゃっていたと思うんですが、今日の講演に関してはそういったご発言はありませんでした。その点について何か変化があったのかっていうことをまず一点。あともう一点は、この間政府がですね経済対策を発表しまして、例えば日銀が仮に12月などに利上げをする場合っていうのは、経済対策を出したばかりの後にやるっていうのはおかしいんじゃないかっていう見方も市場の中にあります。その点について、審議委員のご見解をお願い致します。

§7Asahi Noguchi

まず最初のご質問についてでありますけれども、私自身の政策に対するスタンスというか考え方自体が、例えば 9月[の札幌商工会議所における講演]時点と大きく変わったということは全くないというふうに、私自身としては認識しております。ただ、強調点は多少変わったかもしれませんが、それは 9月と同じことを繰り返す必要もないのかなというところが主でありまして、基本的には 9月時点でも同じであります。政策調整を進めていくという基本的な立場は、これは前提条件でありまして、そのうえで、どのぐらいのペースで行うのかというのが、現在の最も大きなポイントであるわけです。それに関しては、今回の講演の中でお話しさせて頂いたように、早すぎても遅すぎても、問題が出るであろうと。その適切なペースというのはなかなか難しいのでありますけれども、それを狙っていかなくてはいけないというところであります。ただ、一つ言えることは、そういった中でも、着実に目標に近づいているということは事実です。目標に近づいているということは、例えば、いわゆる需給ギャップが今まではマイナスだったのが、それがゼロになり、プラスの方向に動いていく。あるいはかなり完全雇用に近い状態が継続して、人手不足感が労働市場でますます強まっている。

§8Asahi Noguchi

あるいはいろいろな基調的なインフレ率という点で言えば、期待物価に関する様々な指標が、非常にゆっくりではありますけれども、徐々に 2%に近づいてきている。いろいろな指標をみてもですね、目標にじわじわと近づいているということは事実であります。ということは、目標に近づいているにもかかわらず、仮に目標に到達したにもかかわらず、かなり実質金利その他の面で金融緩和的な状態が続くということになりますと、これは当然上振れリスクというものをもたらしてしまうということでありますので、われわれが目標に近づけば近づくほど、その上振れリスクの重みというのは高くなるということを 9月[の講演]で強調させて頂いたわけであります。その点については、認識としては、私自身は変わっていないというふうに考えております。二番目の政府の経済対策との整合性というところでありますけれども、政府の経済対策は、私自身も詳細にその意図や背景を理解しているわけでは必ずしもありませんが、一番大きな問題になっているのは物価対策ということだと思います。これはやはり、これまでと局面は変わってきているのではないかと思います。つまり、それまでは、例えばアベノミクスの初期の時代であれば、これはもう目標というのはデフレの脱却、物価が下落しているのを何とかしてこれを持ち上げていって 2%に安定化させると、これが目標であったと。

§9Asahi Noguchi

それから失業率というのも、例えばアベノミクスが始まった 2013年前後というのはまだ非常に高かったという状態でありました。ですから、そういうものを、少しでも雇用を改善していくという、そういうのが大きな目標であったと。ところが今回の政府の対策というのは、やはり物価高によって家計の支出というものが制約されていると。そういう面では確かに景気が良くならない一つの原因というのが、家計の支出、個人消費がですね、なかなか盛り上がってこないというところにあるという意味で景気が良くならないという言い方をすることもできるかもしれません。ただし、その根本原因というのが物価高にあると。物価高と言っても、それは主にコストプッシュによる物価高だということになると思います。この点は日本銀行も政府も、見方というのは基本的に同じだと考えています。ただ問題は、その物価高に対する対策として何をやるかと、お金を使うかということであります。ですから、それは今までとはやはりかなり焦点が、政策の狙いとするところが少し変わってきているということは明らかですので、例えば、景気が悪くなっているから、財政はふかす、金融も緩和する、というような単純なものではなくなってきているというふうに私自身は認識しています。

§10Asahi Noguchi

そういう意味では、日銀がこれからもう少しずつ目標に近づいていく中で、スピード調整をしていくという中で、物価を抑制する方向にそれが作用するであろうというような政策意図に関しては、政府とそれほど齟齬があるというふうに私は個人的には考えておりません。

§11Question

ご講演の中で、米国の関税政策の影響について、これまでのところ限定的という見方をされていましたが、この辺りが企業収益および来年の春闘に与える影響っていうのをどういうふうにご覧になられているかという点。あと、前回の決定会合後の会見で総裁が、初動のモメンタムというところを見極めたいとお話がありましたが、野口委員にとってもこの初動のモメンタムというのが利上げの判断材料になるか、その点お聞かせ頂ければと思います。

§12Asahi Noguchi

今のご質問に関してでありますけれども、私個人としても、今後の政策調整において非常に重要な要因というか、最も重要な要因の一つかもしれませんが、それはやはり来年の春闘に向けた賃上げの状況であるというふうに考えております。ただこの賃上げというものは、春闘が終わったからそれでもう終わりであるというわけでもなければ、春闘が始まらない限りは全く分からないというものでもないのです。ですから、常にこれはウォッチしていかなくてはいけない。今までも春闘で、例えばベアが 3%超というふうに決まったとしても、例えばマクロの賃金統計などではなかなかそれがそこまでいっていない。じわじわと上がってはいくのだが、せいぜい 2%台の半ばぐらいであるというようなところで、やはりそれは春闘というのはごく一部の企業の賃上げ動向を数字にしたものでしかありませんので、それが全体としての中小企業、それから地方経済まで浸透していって、それがマクロの数字として表れてくるには、やはりそれなりのラグがあるわけです。そういうことを考えれば、春闘という一つのイベントだけをとらえて、日本の賃上げの動向というものを判断するということは、私はそれほど簡単ではないというふうに考えております。逆に言えば、春闘に向けたいろいろな動きというのは、もう既に出始めているとも考えられると思います。

§13Asahi Noguchi

その一つは、例えば労働組合の方では、連合の方で基本方針というのが既に出ております。その中では、例えば、講演の中でもお話をしたのですが、1%の実質賃金上昇の賃上げノルム(注)という、そういうフレーズが出ておりました。これは私はそういうものが実現できるというのが、いわば日本銀行が目標としている日本経済の姿とかなり近いものだというふうに考えておりますので、労働組合の側がそういう観点でもって日本経済を見据えて、そして実際に賃金交渉を行うということであれば、それは非常にポジティブな意味があるというふうに考えております。これは実際、実現できるかどうかはまた別でありますが、少なくとも労働組合の方はそういう考え方をもう既に打ち出していると。それから経営者の側も、あまり表には表れておりませんけれども、例えば各種の経営者団体が既にいろいろなアンケート調査をして、来年度の賃上げ動向、例えば来年は今年の春闘を維持するのか、あるいはそれはちょっと今年[並み]はさすがに無理で少し引き下げになるかもしれない、あるいは引き上げをするつもりであると、いろいろなアンケートを取ったりしているわけです。

§14Asahi Noguchi

経営者団体のそういった情報というのも、ランダムではありますけれども入ってきておりますので、そういうものも一つの参考になって、実際どういうかたちで決着するのかというのはもちろんまだ分かりませんが、そういういろいろなルートがありますので、必ずしも何か春闘が終わらない限り何もできないというものではないというふうに考えております。

§15Question

二点ご質問させてください。まず一点目は、先ほどお話ございましたけれども、政府の経済対策なんですけれども、政府の経済対策の出発の問題意識として、日本の景気が十分に強くないですとか、潜在成長力が伸び悩んでいるということを出発点にして打ち出されたものでして、野口委員としては、こういう政府の問題意識の中でも、日銀としては利上げしていくことは可能というふうにお考えになるのかどうかという点が一つです。二点目は、先ほど冒頭お話ありましたけれども、例えば、大分には観光資源が豊富なんですけれども、足元では日中関係が急速に冷え込んでいます。このことのその日本経済、それから日本の物価に対するですね、影響っていうのは、野口委員、現時点でどういうふうにみてらっしゃいますでしょうか。

§16Asahi Noguchi

最初のご質問については、既にお答えした内容の繰り返しになってしまうかもしれませんが、一つ、日本経済の実態として、景況という意味で、きわめて強いというふうには私個人としても認識しておりません。そういう意味で言えば、何か景気が過熱しているような状態にあるというわけでは全くないというふうに、私個人も認識しております。ただ、その原因は何かということを考えていきますと、やはり、個人消費がなかなか伸びていかないということで、その背後にあるのが、先ほども申したことの繰り返しになってしまいますが、やはり物価であると。とりわけこの1年ぐらいは食料品、お米、それから輸入食材の [価格]上昇、こういったものを背景とするコストプッシュ型の物価上昇、それが家計を直撃し、個人消費がなかなか回復していないというのが一番大きな問題だと。その点について、私の今のこういった見方が、今の政権の見方と根本的に対立するというふうには考えておりません。ですから物価上昇というもの、コストプッシュ型ではありますけれども、これが2%を上回る状態が 3年以上続いているという中で、これまでゼロノルム、なかなか価格転嫁も進まないというような状態が続いていた、その状態も、少しずつ解けてきていると。

§17Asahi Noguchi

そして、お米なんかもそうですが、食料品の一部では今まで [価格が]上がらなかっただけに、いったん値上げのモメンタムが生じると急激に上がり始めるというものも散見されるようになってきているわけです。そういった中で、この物価[の伸び]というものをやはり下げていくことによって、家計消費がなかなか伸びないというところを少しずつ改善していくと、そういう方向性だというふうに認識しておりますので、その意味ではですね、仮に少しずつ、日銀の政策調整といっても非常に慎重にこれまでもやって来ましたし、今後もそうであると思いますので、その中でやっていくということが、先ほどお話ししたような政府の経済に対する見方と基本的に矛盾しているということは、私はないのではないかというふうに考えています。それから二番目の問題でありますけれども、これは私自身は、地政学的リスクの一種ではないかと思います。こういったショック、あるいは事前に予想できなかったショックというのは、これは経済においては、ある種つきものでありますので、問題はそのショックというものが長引いて、それが経済の基調そのものを揺るがすような事態になるのかどうかと、そこが一番大きな問題であると思います。確かに、インバウンド、特に大分では別府とか湯布院といった温泉地は、国内観光客だけではなくて、海外から多くの観光客が今たくさん訪れているわけであります。

§18Asahi Noguchi

そういったものがもしかしたら多少影響を受ける可能性があるかもしれませんが、いわばこれもコロナ禍の中で、何回もそういうショックというのを経験してきているというふうに思いますので、そこを乗り切っていくということが一番重要な問題です。その一つ一つの予想外のショックに対して何かうろたえて対応するというよりは、もう少し長い目で考えていくべきではないかというふうに考えております。

§19Question

二つあるんですが、講演の中で期待インフレ率については触れてらっしゃったと思うんですが、今の基調的な物価上昇率については、どこら辺にあると考えていらっしゃるのかをちょっとお聞かせください。高田委員の方はもう既に 2%に達成するというお話しされてますし、小枝委員もこの前 2%ぐらいあるというふうにおっしゃってました。幅のある概念だとは思うんですが、野口審議委員としてはどこら辺にあるかっていうのを、まず一つ。あともう一つが、円安になると輸出入を通じて、経済と物価を上振れさせるとおっしゃっていたと思うんですが、最近の円安が加速している状況というのは、金融政策で対応する必要があるほどのものなのか、そういうところをちょっとお聞かせください。

§20Asahi Noguchi

まず最初の、今のインフレの基調というのはどんな数字にあるのかというご質問だったと思いますが、私自身はまだ 2%には達していないと。そういうものに達するのであれば今後の様々な、先ほどおっしゃったように、地政学的リスクもありますし、それからアメリカの関税問題というものもまだ完全に解決しているわけではありませんが、そういうものをある程度の見通しを踏まえたうえで言えば、この見通し期間の後半ぐらいには 2%に達するのではないかというのが現状の見通し。ということは逆に言えば、まだ 2%には、近づいてはいても達していないというふうに私個人としては認識しております。それは例えば、今ご指摘頂いたインフレ期待の各種指標というものも、 1.7[%]とかですね、そのぐらいで、もう少し足元では2%に近づいているかもしれませんが、1%台の後半で、2%に徐々に接近しているという程度かなというふうに思っております。それからもう一つは、やはり基調という場合、確かにCPIの数値それ自体はまだ 3%前後と非常に高いわけですが、これは何回もお話ししておりますように、食料品だけをとりますと 6%とか 7%、非常に高い物価上昇というのが続いているわけで、それの寄与というのが非常に大きい。

§21Asahi Noguchi

例えば食料品というものの分を省きますと、これはブレはありますけれども大体1.6[%]とかですね、その程度であってまだ 2%には達していないと。それからあとサービスの方も私は常に注目をしておりますけども、サービス価格の上昇率、これは企業向けサービス価格の方はかなり、例えば 3%前後で安定した状態にあるということが言えると思いますが、CPIの方のサービス価格はまだそこまでいっていない。そういうふうに考えますと、欧米のようにサービス価格の上昇の寄与を中心として 2%の物価上昇率というのが安定的に実現されているという状態にはまだ至っていないと。そこの入口近くに近づくのがおそらく見通し期間の後半ぐらいではないかというのが、私の現状の認識です。それから円安についてでありますけれども、これは為替の水準それ自体は、ある程度、水準として円安[方向]が続いたとしてもそれが安定的であれば、その影響というものはやがて吸収されていくということになると思いますけれども、例えば急にここに来て今後更に円安[方向への動き]が加速するというようなことになると、当然それはですね、多分様々な食料品の価格などを考えても、これは輸入食材の価格の上昇というものの寄与というのは非常に大きいと思いますので、国内の食品メーカーとしても、これは今後かなりそのコストというのを転嫁しようという動きに、更にそれが進んでいくと。

§22Asahi Noguchi

私自身は、今後食料品のインフレというのは徐々に剥落して収まっていくという見通しではありますけれども、為替次第によってはその見通しがかなり後ずれするという可能性は十分ある。更にそういうことが続くこと自体が、やはりもう 3年、食料品であれエネルギーであれインフレが続いているということが人々の期待インフレ率を引き上げるという、いわゆる二次的な効果というのもあるわけでありますから、ここから更に円安[方向への動き]が過度に進むとか、それが定着するということになりますと、当然それは基調の方にも影響してくる可能性は十分あるというふうに考えております。

§23Question

講演の中でもかねて、利上げのペースについて、ほふく前進との認識を示されてました。今、足元、雇用情勢も改善してまして、あと需給ギャップもゼロに近づいている中で、この金融緩和を続けることがマイナスの影響も出てくるかと思うんですけれども、12月、1月と市場では半々ぐらいで織り込みが進んでますけれども、この辺の市場の見方と野口さんの見方に齟齬はあるのでしょうか。

§24Asahi Noguchi

市場の見方は、市場は市場でこういう見方もあり得るなというふうに私は個人で思っておりますけれども、もちろん今後どのぐらいのペースで政策調整をしていくかというのは、これは今後のデータ次第。まだいろいろなデータ、いろいろなイベントというのがありますので、その中で特に賃上げ、それから米国経済、あるいは為替の今後の動き、そういういろいろなものを勘案して、最終的に物価・経済にどういう影響を与えるのかということを見極めながら、これは繰り返しになりますけども遅すぎず、早すぎずですね、適切な水準で政策調整をしていくということになると思います。今まではかなり仮に遅れたとしてもそれが大きな影響ということはなかったにしても、これは目標に近づけば近づくほど遅れることによる様々な歪み、あるいは物価や経済を上振れさせてしまうというマイナス面が強くなるというのは事実なので、そこは日本銀行としても政策調整のタイミングというものに非常に注意深く、適切に、遅すぎず、早すぎずやらなくてはいけない状況に今入っているということだと思います。(注)会見では「賃金のノルム」と発言しましたが、正しくは「賃上げノルム」です。以上