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Bank of JapanPress conferenceDec 1, 2025Kazuo Ueda, Governor

総裁記者会見(2025年12月1日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

今日は幹事社としてまず二問質問させて頂きます。よろしくお願い致します。まず一点目なんですけれども、今日の午前中の金融経済懇談会の挨拶でご講演をされました。その中で特に伝えたいと考えた部分、内容などについて改めてご紹介ください。またですね、出席者の方からはいろいろな意見が出ました。例えば、円安による資源・原材料費等の価格の変動がリスクになっているですとか、一部企業では十分な収益を確保できていない中で防衛的な賃上げも、というふうにとらえられているとかですね、あと、名古屋商工会議所の嶋尾会頭からは為替の動向はちょっと行き過ぎではないかという率直なご意見もありました。こういった現場を知る財界の代表者たちの意見に対するご感想を教えてください。

§2Kazuo Ueda

今日の朝の懇談会ですけれども、内外の経済・物価情勢や私どもの金融政策運営の考え方について、説明させて頂きました。具体的には、最近、アメリカ経済や関税政策を巡る不確実性が次第に低下してきていること、そして、そうしたもとで、日本銀行では、今後の金融政策運営に当たって、企業の積極的な賃金設定行動が継続していくかどうかを見極めることが重要と考えていることなどについて、少し詳しめにお話しました。懇談会では、当地の経済界や金融界を代表する方々から、地域経済の現状、課題に関する様々なお話を伺いました。大変有意義な意見交換ができたことについて、感謝申し上げたいと思います。席上で出ましたお話についての印象を申し上げますと、まず当地の経済情勢ですが、アメリカの関税政策の影響を受けつつも、全体としてみれば、景気は緩やかに回復しているという評価だったと思います。企業部門ですが、多くの自動車メーカーが関税コストを自社で吸収する努力を継続したことで、生産や雇用に対する直接的な影響が限定的なものにとどまっているというお話がありました。それから家計部門ですが、賃金が着実に増加しているものの、食料品などの物価上昇の影響で、個人消費は小幅な伸びにとどまっているというご指摘がありました。

§3Kazuo Ueda

冒頭申し上げました通り、関税政策に関する不透明感は、次第に薄れてきているとみていますが、当地は、全国に比べて輸出企業のウエイトが高いだけに、私どもとしても、名古屋支店等を通じて、引き続きその影響をきめ細かく調査、分析していきたいと考えています。また、席上では最近の賃上げを巡る環境も話題になりました。業種や企業規模などによって状況は異なるものの、来年以降も幅広い業種で持続的な賃上げが実現していくためには、原材料[費]や人件費上昇分の価格転嫁を円滑に進めていくことが重要とのお話を伺いました。私どもとしても、賃金と物価がともに緩やかに上昇するメカニズムが、今後も維持されるかどうかが重要なポイントになると考えています。この点のチェックのためですが、本日の講演で申し上げた通り、現在、本支店を通じ、企業の賃上げスタンスに関して、広く情報収集を行っているところです。また、当地では産業の進化と多様化を目指し、ものづくりの強みを活かしながら、新たな価値創出に向けた取り組みが進んでいるという話も伺いました。私自身、企業経営者の皆さんのチャレンジ精神に直接触れることができて、大変心強く感じるとともに、こうした前向きな取り組みが当地経済の持続的な成長につながっていくことを期待しています。私どもの金融政策に関しては、地域経済の現場にも目配りしつつ、適切な政策運営を行ってほしいといったご意見を頂きました。

§4Kazuo Ueda

私どもとしては、中央銀行の立場から、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現を通じて、当地経済に貢献していきたいと考えており、席上でもそのように申し上げたところです。

§5Question

続きましてもう一点質問があります。当地経済の現状と先行きに関する認識についてお伺いしたいと思います。もう既にですね、この地域の経済の現状についてはお話頂いてるんですけれども、例えば、その関税政策を巡る不確実性の低下というお話が今日の午前中もありました。米国の通商政策が自動車産業に与える今後の影響といいますか、先行き、あとは急速に円安が進んでいるんですけれども、製造業のほか、非製造業もかなりの影響があるようです。こうしたこの地域の経済の先行きに関する認識について改めてお聞かせください。また、昨日総裁はSTATION Aiを視察されたと思います。この地域では官民、あと学が連携して、イノベーションを推進していこうとしているんですけれども、そうした取り組みへの期待などをお聞かせ頂けますでしょうか。

§6Kazuo Ueda

先ほどとちょっと重なりますが、当地の景気の現状は、企業収益などが各国の通商政策の影響などを受けつつも、引き続き緩やかに回復していると判断しています。生産・輸出が、当地主力の自動車関連を中心として、日本や北米などで旺盛な需要がみられる中で増加基調にあるほか、個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移しているとみています。ただ、ご質問にあった中では、自動車関連ですけれども、ここまでは自動車メーカーが関税の負担を飲み込むかたちで北米等の消費者に転嫁することなく、従って生産・輸出があまり減らずに済んできた。ただこれをいつまでも続けられるわけではないという見方も示されまして、その場合、徐々に価格が上がる中でどのような影響、例えば、系列のメーカー等に影響が出るか出ないか注視していく必要があるという意見は出たところでございます。それから、昨日視察させて頂いたSTATION Aiについてですけれども、スタートアップや既存産業、学術機関の協力を推進することで、当地におけるイノベーションの推進が加速するなど、当地全体の生産性にプラスの効果を与える可能性を感じています。当地の皆さまは、講演でも触れましたように、これまでも世の中のニーズを的確にとらえ、数多くのイノベーションを生み出してこられました。

§7Kazuo Ueda

今後も当地の皆さまの取り組みが当地経済、ひいてはわが国経済の持続的な成長につながっていくことを強く期待しております。

§8Question

私から二点ございます。本日講演でですね、12月の決定会合において、利上げの是非について、適切に判断していきたいという趣旨のご発言があったと思います。これに関連して、まず一つがですね、足元の為替状況ですね、その円安が様々な経路を通じて物価を押し上げやすくなっているというご説明を、本日であったり国会の場でも総裁はされていると思います。足元の円安基調は利上げを早めに実施した方がいいと考える動機になっているとお考えでしょうか。もう一つがですね、政権との対話について伺います。政権与党の一部やブレーンとされる人々の中には、政府が経済対策を講じる中で、日銀が利上げすべきではないという意見も出ているかと思います。総裁は 11月に高市総理とお会いになったりとか財務大臣とお会いになったりとかですね、政府の高官との面会を重ねておりますが、こうした一部の慎重論を踏まえてでも、12月に利上げできる、政府側の理解は得られるというふうにお考えになっているのでしょうか。

§9Kazuo Ueda

まず、為替の物価、金融政策への影響でございますけれども、午前中の講演でも申し上げた通り、為替レートは円安に進みますと、輸入物価の上昇、それが国内価格に転嫁されるということから、もちろん物価押し上げ要因になります。更に、企業の価格・賃金設定行動が積極化するもとで、その価格の反応が大きくなっている面、あるいはその可能性に注意が必要だとは考えています。また、予想物価上昇率への影響を通じて、場合によっては基調的物価上昇率に影響する可能性にも注意が必要だと思います。しっかりみていきたいと思っております。それから、政権との対話という観点からのご質問だったと思いますけれども、具体的なことは申し上げられません。ただ、先月来、総理あるいは大臣方と面談等をする中で様々な論点について率直に良いお話ができているというふうに考えております。今後とも十分な意思疎通を図っていきたいというふうに思っております。

§10Question

利上げの判断について伺いたいんですけれども、総裁はこれまで利上げの判断に際しては春闘での初動のモメンタムを見極めて判断されるというお考えを示されていたかと思いますけれども、いろいろヒアリングでの情報ですとか、いろいろデータとしては増えてきていると思うんですけれども、現時点でその春闘の初動のモメンタムはどの程度把握できている状態でしょうか。次回の決定会合までにこういう利上げの是非を判断するのに必要な材料というのはもう出揃うというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。あともう一点伺いたいんですけれども、政策調整なんですけれども、こちらの早過ぎるリスクと後手に回るリスクの双方があるかと思います。総裁はこれまで後手に回る、いわゆるビハインド・ザ・カーブに陥るリスクが小さいというご見解を示されていたかと思いますけれども、現時点におきましてはその政策調整早過ぎるリスクと後手に回るリスク、どちらの方により警戒が必要だというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

§11Kazuo Ueda

まず、今後の政策決定に関して、特に来年春闘の初動モメンタムを確認したいということを申し上げてきているわけですけれども、それについてどういう情報がこれまであって、今後どういう情報が入ると考えているかというご質問だと思いますけれども、これまで入手できた情報という意味では、午前中の講演で主なポイントを申し上げさせて頂いたかと思います。それから、今後入ってくる情報という意味では、様々な労働サイドからの要求がいろいろ出てくるということに加えまして、私どもは企業側の賃上げスタンスについて、これも午前中に申し上げた通り、本支店を通じて、精力的にヒアリングをしているところでございます。これらとその他の一般的なデータを合わせて、政策の判断を行っていきたいというふうに思っております。それから、早過ぎる金利の調整、遅過ぎる金利の調整ということでございますけれども、これは一般論でしかお答えできないと思いますが、要するにどういう観点から早過ぎるか遅過ぎるかということで申し上げれば、基調的物価上昇率の2%、あるいは持続的・安定的な 2%の物価目標の達成をスムーズに行う、スムーズに物価目標に達成するためにはどういう政策金利のパスが適切かという観点から判断するということでございます。

§12Question

先ほどの質問と関連するんですが、支店長の情報を確認する支店長会議での確認というのは、今年1月の利上げでも重要だったと思うんですけれど、その必要性っていうのをどう考えるのかというのが一点目です。二点目は、このところの物価上昇が、需要の強さというよりも、供給制約のコストプッシュが主因だとすると、供給力を高めるために政府は積極財政をし、中央銀行は政策金利を上げない方がいいという指摘もあると思います。総裁は、この供給制約経済においての金融政策のあり方、もしくはその息の長い成長を軌道に乗せるために必要と今日おっしゃってましたが、そういった考え方についてちょっと教えて頂けるとありがたいです。

§13Kazuo Ueda

もちろん1月の支店長会議で、あるいは定例の支店長会議で適宜報告があるわけですけれども、今回は特に今の時点で確認したい情報ないしポイントが、賃金・物価がともにゆっくりと上昇するメカニズムが続くかどうか、そのコアになるのがこの時点では来年春闘に向けての動きということで、それに関して特別にヒアリング調査を精力的に行っているところでございます。それから、現時点での政府の総合経済対策、あるいは財政政策と私どもの政策とのミックスのようなところについてどういうふうに考えるかというご質問だったと思いますけれども、まず、そもそも私どもの政策は、消費者物価上昇率、現状3%前後ですけれども、そこから一時的な動きを除いた、私どもとしては基調というふうに呼んでいますが、そこの動きを良くみて、それが2%にうまく着地していくかどうかという観点から調整しているものでございます。そのうえで、現在のポリシーミックスの状況ということに関する考え方ですけれども、政府の方はもちろん責任ある積極財政、それから私どもの方はさっきのような意味で基調的な物価に着目しつつ、適宜、緩和的な金融環境の緩和度合いを調整していくという金融政策、そういうミックスになっているかと思います。

§14Kazuo Ueda

後者に念のため付け加えれば、午前中も申し上げましたけれども、ブレーキを踏んでいるというよりは、まだ緩和的な状況にありますので、ある種、アクセルを踏んだ状態だけれどもアクセルの踏み方を調整しているという程度のものというふうにお考え頂ければと思います。そういうミックスを実行していくことによって、おっしゃったように、一方でスムーズな物価安定の姿に着地することができる、それをある意味土台として、政府の政策の効果も強く息の長いものになる、経済成長等への効果ですね、というものであるというふうに思っております。緩和度合いの調整が、場合によって遅れたりしますと、例えば、アメリカ、ヨーロッパ等で経験しましたように非常に高いインフレ率になって、政策金利が 4、5%にはならないといけないというような調整の可能性が出てきますので、それは混乱を引き起こしてしまう。そうならないことによって、息の長い経済成長が達成できる、そういうものであるというふうに考えております。

§15Question

去年の 12月の金融政策決定会合の際には、そのタイミングだと春闘の見通しについてあまり情報がないという話を当時はされていて、利上げを見送ったと思います。ただ昨年の状況と比べると物価安定の目標への距離は今近づいていると思いますし、本日の講演ではその賃上げの原資となる企業収益について高い水準が維持されるだろうというお話をされていました。昨年のこの時期よりも、その春闘での高い賃上げの継続について現在自信を持っていらっしゃるのか、そして去年よりもその判断を早くできるということなのか、ちょっとそこをまずお聞かせください。もう一点が米国の関税政策の影響について、今日の講演ではアメリカ、日本の経済とも悪影響を与えるリスクは低下したというようなお話をされていたと思うんですが、アメリカの政府閉鎖も解除されて足元では統計のデータが様々出始めていると思います。情勢を見極めたいという話をしていたクリスマス商戦ももうそういう時期になってまいりましたし、今回の決定会合の直前には 16日にアメリカの雇用統計も発表されます。本日の講演でも、賃上げのモメンタムを重視するっていうニュアンスの話が大きかったと思いますが、米国の経済状況、特に今回の会合直前の雇用統計が利上げの判断に与える影響を教えてください。

§16Kazuo Ueda

まず去年の今頃と比べて何がどう違うのかというご質問だと思いますけれども、ちょっと直ちに去年の今頃の自分の心理状態を正確に思い出せないのですが、一般的な表現で申し上げれば、様々な不確実性を抱える中で、それを総合的に精査するとどういうことになるかということを考えていて、結果的に 1月の利上げになったということだと思います。現状は様々な不確実性が依然としてあるわけですが、その中でも特に重視していた二番目にご質問されたアメリカの関税政策もあり、あるいはアメリカ経済に関する不確実性が数か月前よりは、残存しているけれども低下したという状態にある。そういう中で先ほどのご質問とも重なりますが、残った中で大事なポイントとして、来年春闘の賃金の動向がクローズアップされているという状況であって、従ってそこに関する情報をなるべく精力的に集めて判断しようという状況でございます。それから二番目のアメリカ経済に、本当に、例えば関税に関する不確実性が低下したのかというご質問だと思いますけれども、もちろん不確実性は残存していると思います。ただし、大まかな表現で申し上げれば、以前考えていたよりはリスクは少し、あるいはかなり低下している、ということだと思います。

§17Kazuo Ueda

ただそれにしても、今後、先ほどもちらっと出ましたが、消費者物価にも少し関税が転嫁されていくということがどういう影響を消費、われわれからみれば輸出に影響を与えるか、それから、政府閉鎖期間中に出てこなかったデータが次々出てくる中でどうか、という点は当然気にかけているところでありまして、こういうところから大きなネガティブなニュースが出てくるかどうかということは当然注目してみていきたいと思っております。

§18Question

今の金利水準は、自然利子率あるいは中立的な金利よりは、まだきわめて低い水準なのではないかという市場の見方があります。遅過ぎず早過ぎず利上げをしていくということは、すなわち今回仮に近い将来 0.75%まで政策金利を引き上げても、その先にも何度か利上げがあるのではっていうのが今の市場の見方だと思います。今後どういうペースで利上げしていくかなかなか判断難しいと思うんですけれども、総裁のお考えでは、まだ今の政策金利ってのは中立的な水準からは相当距離があるというふうにお考えでしょうか。

§19Kazuo Ueda

現在の金利水準は、基本的には中立金利より低いというふうに考えています。ただ、どれくらい距離があるのかという点に関しては、最近のMPMの会見の中でお答えしたのと同じ答えになりますけれども、次回利上げをすることがあれば、そのときにその時点での考えをもう少しはっきりと明示させて頂ければと思います。

§20Question

次回会合でですね、利上げの是非を適切に判断されたいということなんですけども、前回会合から次回会合までの変化という意味では、政府の経済対策が決定して、ガソリンの暫定税率で機械的に物価の押し下げっていう面はあると思うんですが、需要を押し上げる効果もありまして、そういう面では物価基調をですね、押し上げる方向に作用するもの、また円安の進行というものもありまして、物価の上振れリスクというのが高まっている状況ではないかというふうに思うのですが、総裁はこの辺のお考えはいかがでしょうか。

§21Kazuo Ueda

為替についてはさっき申し上げた通りで、円安が輸入物価、国内物価に波及しますし、基調物価に波及するかどうかは、例えば、インフレ予想のところの動きをみていきたいというふうに思っています。それから総合経済対策とインフレということで申し上げれば、様々な物価高対策がありますので、ここは、消費者物価総合は押し下げる効果を持つと思います。ただし、そうした政策が所得をサポートすることとか、あるいは成長を促進する政策、こういうものが所得、成長率を押し上げる影響を持つと思いますので、理論的にはそれは基調物価にプラスの影響を及ぼすと思います。ただ、どの程度のものになるのかということについては今後精査したいと思います。

§22Question

利上げの話ではないんですけれども、ちょっとこの地方の経済というところで一点伺いたくて、先日、日銀秋田支店さんの方で、クマの被害が県内の経済を押し下げているという話が出ておりまして、この地方、岐阜県でも観光地白川郷で観光客の方がクマに襲われるということがありました。その点からみて、クマの被害が日本経済に与える影響について、どうお考えか伺えますでしょうか。

§23Kazuo Ueda

ある種の自然災害のようなものだというふうにみることができるように思います。それがどれくらいのマイナスの影響を経済に与えるかということについては、それこそクマの冬眠に入る季節になったらどういうことになるかとか、クマの餌になる植物の今後の生育の度合いであったり、更に政府の対策がどういうものがとられるかということ次第で、現状確固たることは申し上げられないですが、一部の地域では非常に大きな影響が出ていて懸念されるところですが、全体として大きなことにならないように、うまく経済対策等も含めて、事が運ぶように願っております。以上