田村審議委員記者会見(2026年6月25日)
Full text
§1Naoki Tamura
今日はお忙しい中ありがとうございます。冒頭、私の方から、本日午前中の金融経済懇談会の模様について、いくつかポイントを整理してご紹介したいと思います。まず、兵庫県の経済情勢については、製造業を中心に強固な産業基盤を有するもとで、神戸空港の国際化、あるいは都心部やウォーターフロントの再開発など、そして将来に向けた前向きな取り組みを多くの方が語られたのが印象的でした。スタートアップ支援やオープンイノベーションについて、複数の方が言及しておられました。また、インバウンド需要の増加によって、県内観光産業の回復が続いているといったお話や、六甲山を活用した資源循環型社会の実現や里山の再生への取り組みなど、環境と経済を両立させる地域独自の取り組みについてお話を頂きました。一方で、燃料価格や原材料コストの上昇、人手不足などが企業の経営環境を厳しいものにしているという課題も指摘されました。特に中小企業では、大企業と比べて賃上げや価格転嫁が進みにくい現状について懸念が示されました。同時に、企業の人材育成やDX、イノベーションを通じて生産性を向上し、こうした構造的な問題を克服しようという積極的な取り組みを紹介頂き、とても心強く感じました。
§2Naoki Tamura
中東情勢については、原材料価格上昇や調達難といった影響がみられ、緊張緩和へ向かう見通しが窺われるものの、依然として正常化への道のりには時間がかかるのでは、との声が聞かれました。これに対して金融機関や行政からは、相談窓口の設置や資金繰り支援を積極的に行っていくとの力強い声が聞かれました。日本銀行に対しては、物価安定を図るとともに、これらの地域経済の現状と課題に寄り添った政策をお願いしたいとのご要望を頂きました。日本銀行としましては、本日頂きました貴重なご意見をしっかりと踏まえ、物価の安定を図ることを通じて持続的な経済成長の実現に資するとともに、金融システムの安定確保に努めることで、地域経済の発展を後押ししてまいりたいと考えております。私からは以上です。
§3Question
地元の経済記者クラブを代表して質問させて頂きます。二点質問させて頂きます。足元の兵庫県経済についてどのような印象を持たれているでしょうかというのが一点。そしてもう一点、中東情勢の影響について、懇談会で聞かれた意見も踏まえて、兵庫県経済にどのような影響を与えているとみているでしょうか。以上二点、よろしくお願いします。
§4Naoki Tamura
はい、ありがとうございます。一つ目の足元の兵庫県経済に対する印象ですが、私は 40年ほど前、社会人になった当初、兵庫県の芦屋市と尼崎市に、合わせて 3年ほど住んだことがあり、当時、週末は神戸三宮辺りにもよく出かけていました。非常に懐かしく覚えておりますが、当時も今も、私にとって、兵庫県の印象は非常にポジティブなものです。現在の兵庫県経済についても、次の時代に向けた種まきが着々と進んでいるという前向きな印象を持っております。阪神工業地帯や播磨臨海工業地域に代表される全国屈指の生産拠点を有する中、最近は生成 AIの普及やデータセンター需要の拡大を背景に、先端半導体や発電・電源・送配電設備のサプライチェーンに連なる企業の生産活動や設備投資が活発化しています。また、神戸医療産業都市を中心に、創薬や再生医療、それから昨日視察させて頂いたんですが、医療用ロボット、こういった先端分野でイノベーションが生まれているほか、これも昨日視察させて頂きましたが、官民が連携して水素サプライチェーンの構築を進めるなど、次世代産業の育成に取り組んでおられます。更に、昨年4月には神戸空港に国際チャーター便が就航したほか、三宮やウォーターフロントエリアで再開発が進んでおり、都市としての魅力を更に高めていることを、今回の訪問で実感したところです。
§5Naoki Tamura
今後の当地経済の発展について、引き続き楽しみに注視をしていきたいと考えています。次に二つ目のご質問、中東情勢の影響ですが、懇談会の場では、一部の製造業や建設業では、原材料調達が困難となり、稼働率の低下や工期の延期といった問題のほか、エネルギー価格や石油由来製品の価格上昇の影響を懸念しているといった声が聞かれました。もっとも、現状に関して言えば、全国同様、兵庫県においても、調達が難しい原材料の代替調達、あるいは代替品への切り替え等といった皆さんの企業努力が奏功し、生産・輸出面で、全体として言えば、大きな変調はみられていないと評価しています。また、家計への影響については、現時点では、消費者物価への波及がまだ限定的であることもあって、実際の消費行動への影響はみられていない状況だと思います。現在、中東紛争の解決に向けた動きが進展しており、一日も早く最終的な合意が実現することを期待しています。もっとも、今後の物流の回復ペースを含めて、依然として不透明な状況が続いており、先ほど申し上げた通り、本日の出席者の方々からも、正常化への道のりには時間がかかるのではとの声も聞かれた次第です。引き続き、企業の生産・輸出・収益面への影響や価格転嫁の動向、個人消費への影響について、丁寧に確認してまいる必要があると考えております。
§6Question
質問二問ございます。一点目が、午前中の挨拶で、利上げについて数か月に一度というイメージを持っているというご発言ありましたけれども、ここについて改めてそのお考え、日本経済の足元への影響も含めてどういう意図を持ってご発言されたのかを教えてください。二点目が足元の円安水準についてお伺いします。 6月の決定会合で利上げを決定しましたが、足元ではドル円相場は 40年ぶりの水準にまで迫っていますが、この日本経済全体への影響とですね、日本経済の構造的な問題だという指摘もありますけれども、現状どうみていらっしゃっているのか教えてください。お願いします。
§7Naoki Tamura
はい、ありがとうございます。まず一つ目のご質問、今後の利上げのペースについての考え方を改めて、ということに回答を申し上げます。現時点での私自身の考えを申し上げれば、既に 2%の物価安定目標は実現されたと考えており、物価の基調が 2%を超えて上昇していくのを避けるためには、政策金利を中立金利の近辺まで引き上げる必要があると考えています。足元で物価の上振れリスクが高まっていることを考えればなおさらです。物価の基調が 2%を超えて上昇していった場合、それを押し下げるためには、政策金利を引き締め領域まで急激かつ大幅に引き上げ、それを長期間保持することが必要となってしまいます。そういった事態を避けるため、ある程度のペースで中立金利に近づけていく必要があると考えています。中立金利の水準を探りながら政策金利を上げていく必要があることを考えれば、金利を上げて、それを受けて経済・物価や金融環境がどう変わっていくのかという状況を確認しながら引き上げていくということですので、結果、数か月に一度ぐらいのペースで 0.25%ずつ、2%程度の中立水準に向けて利上げを進めていくということを念頭に置いている次第です。二つ目の円安についてのご質問ですが、まず、為替相場の水準や評価、動きの方向性について具体的にコメントすることは差し控えます。
§8Naoki Tamura
為替相場は、経済・金融のファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要であると考えております。そのうえで一般論として申し上げますと、為替相場は各国の中央銀行の政策スタンスに影響を受ける面もありますけれども、それだけではなく、国際金融資本市場の動向、輸出入に伴う為替需給など様々な要因によって変動するものと認識をしております。また、為替相場自体が、わが国の経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つです。この点、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があります。また、そうした動きが予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性があることにも留意する必要があります。こういった点を踏まえつつ、金融・為替市場の動向やその物価への影響については今後ともしっかりみてまいりたいと考えております。
§9Question
最初の質問にもちょっと絡むんですけれども、利上げのペースで数か月に 1 回のペースで利上げが必要ということなんですが、今ご説明がありましたように、物価目標が実現しているとのご認識のもとでは、この数か月に一度というのはですね、四半期とか、もしくは場合によってはですね、連続利上げというものも視野に入れてるんじゃないかと思うんですけども、この数か月に 1 回のもうちょっと具体的なイメージを教えてくださいというのが一点目です。二点目なんですけど、国債買入れについてお伺いしたいんですが、同じ午前の講演で、経済環境が大きく変化した現在、金融政策として日本銀行が国債を買い入れる必要はないと、そういうふうに発言されまして、今回のようにですね、利上げをする一方で、国債の減額を停止するという対応というのはちょっとちぐはぐというかですね、むしろ政策の意図を誤解される懸念というのがないのか、これについて田村委員のご見解をお願いします。
§10Naoki Tamura
はい、ご質問ありがとうございます。利上げのペースについて、四半期に一度とか、あるいは連続利上げがあるのかということですけれども、基本的に今時点の私の考えは、先ほど申し上げた通り、政策金利を上げて、経済・物価や金融環境のその反応をみながら引き上げていくということで、3 か月なのか4 か月なのかというところまでは、その経済・物価の状況、金融環境の状況の確認次第だと考えております。連続利上げがないのかというお話もございましたけれども、現時点では先ほどのように考えておりますけれども、今後、物価上振れリスクが顕在化する確度が高まった場合には、利上げの頻度を引き上げていく可能性というのは当然あり得ると、その辺りは状況を踏まえて物価を安定させるにはどうしたらいいのかという観点で、きちんと考えていきたいと考えております。それからもう一つのご質問が、利上げの一方で、買入れ減額 [を停止]するのはちぐはぐじゃないかといったようなご質問だったかと思います。まず申し上げておきたいのは、今、日銀が金融政策として操作しているのは短期金利だけであって、国債買入れ額をどうするのかというのを金融政策とは考えておりません。
§11Naoki Tamura
過去の金融政策を正常化するに当たり、今日の原稿でも書いておりますけれども、私としてはもう可能な限り早いペースで正常化していくべきではあるけれども、国債市場の安定への一定の配慮も必要ということで、私自身はこれまでの減額ぺースを続けたらいいと考えていたわけですけれども、多くの委員は、国債市場の安定性を考えると、もう減額を止めた方がいいんじゃないかということで、あのような決定に至ったものです。従って、利上げと国債買入れの減額 [の停止]がちぐはぐというご意見ですけれども、それはそうではなくて、もう日銀が金融政策として行っているのは、短期金利の操作だけとご理解頂ければと思います。
§12Question
二点あります。市場では早ければ 10月にも再利上げという観測が浮上しておりまして、今伺ったお話を踏まえたうえで、次の利上げのタイミングを図るうえで特に重視している指標・データ等があれば教えてください。二点目は、金融政策と財政政策のポリシーミックスについてです。委員がご指摘のように物価の上振れリスクが高まっているとすれば、電気代・ガソリン代の補助等、物価高対策で歳出を増やす財政政策というのは、物価の上振れリスクを更に高める可能性もあります。インフレ対応の観点から、金融政策と財政政策のあるべき組み合わせについてお考えをお願いします。
§13Naoki Tamura
はい、ご質問ありがとうございます。まず一つ目のこれからどのようなデータを注視していくのかという点については、私が思っているのは三つ。三つというか、あらゆるデータ・情報を確認してまいりますけれども、特に今思っているのは三つあります。一つ目は、消費者物価。企業物価がもう既にかなり上がっておりますけれども、それが消費者物価にどのように波及していくのか、その大きさや広がりというのを確認していきたい。また、サービス価格の動向。われわれ日銀が目指しているのは、賃金と物価が相互に参照しながら上昇していくメカニズムを定着させることですけれども、その状況を、サービス価格がどうなっていくのかというので確認したいと思っております。二つ目が、企業・家計の予想インフレ率がどうなっていくのかということです。三つ目は、金融緩和の状況について判断するために、私が何よりも重視しているのは、企業がどのような声を出しているのか。加えて、短観などで、アンケート調査で、その時点の金利に対して、金利が緩和的なのか、引き締め的なのか、中立的なのか、その辺りを見極めていきたいと考えております。次に二つ目のご質問、金融政策と財政政策のポリシーミックスについてですが、一般論として語ることはできなくて、そのときそのときの情勢にもよると考えております。
§14Naoki Tamura
私、日銀審議委員という立場ですので、財政政策についてこうあるべしといったことをこの場で言うのは適切ではないと思っておりますので控えさせて頂きますが、いずれにしても、財政政策が、経済・物価に与える影響も含めて、物価の安定という観点から、日本銀行としての使命を果たすべく、金融政策を検討していきたいと考えております。
§15Question
今日の講演の中で中立金利の水準について 2%程度という数字が出てきたと思うんですけども、これまで最低でも少なくとも 1%というような言い回しだったかと思うんですが、今回 2%という数字を出された背景ですとか、あとその辺りちょっとこの中立金利の見方が田村さんの中で変わってこられたりしているのか、その辺りお伺いできますでしょうか。
§16Naoki Tamura
はい。ご質問ありがとうございます。中立金利の水準についてですが、そもそも中立金利の推計値は手法によって大きなばらつきがあるほか、データ制約もあり、精緻な推計は困難な状況です。特に、時系列モデルと呼ばれる推計方法は、長らくデフレ・ディスインフレが続いてきたわが国では、下方バイアスを有している可能性が高く、先ほどおっしゃられた推計値の下限は、このモデルによるものである点に注意が必要であると考えています。いずれにしましても、中立金利の水準を特定することは難しく、かなりの幅を持ってみる必要がありますので、実際には先ほど来申し上げています通り、政策金利を引き上げつつ、経済・物価の反応をみて中立金利の水準を探っていくことになります。その際には、実質金利に加え、企業等の資金需要、CP・社債市場や銀行貸出の状況などから金融環境を確認していくことになりますが、私が特に重視しているのは企業の声です。金利を含めた金融環境が企業活動にどれだけブレーキをかけているのか、あるいはかけそうなのか、こういった点を注意深くみていくことが重要だと考えております。そのうえで私が 2%程度の中立金利を念頭に置いているのは、私自身が金融実務家として企業や家計と接してきた感覚や、このところの企業や金融機関の声などを踏まえたものです。
§17Naoki Tamura
更に付言しますと、景気を加速も引き締めもしない水準である自然利子率というのがマイナスということは、すなわち中立金利が物価上昇率よりも低いということ、これは平たく考えますと、預金者は物価上昇に常に負けてしまう、あるいは企業経営者は物価上昇ほどのリターンが得られない案件でも投資を行うという、そういう状態が定常状態であるということは、ビジネス現場の直感には反するように私としては感じているところです。
§18Question
二点お伺いします。一点目はですね、まさに利上げに関する今質疑が続いてますけれども、今日の懇談会でですね、出席者の方から利上げに対してどういったご意見だったりお声というのがあったのかというところを教えて頂きたいのが一点目です。二点目としましてはですね、40年ほど前に兵庫県芦屋・尼崎に 3年お住まいなられた頃、銀行に入られた頃でしょうかね、兵庫を実際肌でご存じの田村さんからご覧になってですね、今日の懇談会のやり取りであるとか、昨日視察されたというところをご覧になって、兵庫県経済の可能性であったり課題といったところですね、お感じになったことがあれば改めてお願い致します。
§19Naoki Tamura
はい。ありがとうございます。本日の懇談会で、例えばこの利上げについて、この利上げが企業活動の抑制につながっているといったようなご意見はありませんでした。一方で、先ほどご説明した通り、中小企業を中心に、資材価格の上昇あるいは人件費の上昇で苦しい状況なんかも踏まえて金融政策を考えてほしいというご要望はございましたし、当然私どももそういったことも含めて金融政策は考えていきたいと思っております。特に金利を上げることによって物価を抑制するというのが金融政策ですので、その辺りのバランスなんかには十分注意しながら進めていきたいと考えております。二つ目に、元兵庫県民としての兵庫県の課題、あるいは今後についてということですけれども、兵庫県は、海・山・温泉といった豊かな自然を保ちつつ、伝統的な地場産業で培われた技術力、あるいはこの重厚長大型産業の発展による企業集積、整備された高速交通網を背景に、今でも全国トップクラスの工場立地件数を誇り、ものづくり県としてわが国経済を牽引してきた地域です。一方で、全国同様、当地においても人口が減少に転じており、特に若年層の人口流出が目立つなど、人口動態に起因する課題に直面しておられます。本日の懇談会でも深刻化している人手不足に関する話がありましたし、一方でそういう構造問題の中でどうやって企業を経営していくのか、そういった観点も重要だというお話もございました。
§20Naoki Tamura
こうした中で兵庫県では、若者・Z世代応援パッケージ施策などいろいろ取り組んでおられますし、行政と民間企業が一体となった水素サプライチェーン構築の動きなど脱炭素に向けた取り組みが加速されており、関連産業への波及が期待されるほか、それから世界的な大手 IT企業による人工知能を中心とした開発支援拠点の開設を受けて、当地企業のDX推進やIT関連企業の集積も期待されていると聞いております。こうした取り組みが結実して、当地の経済が一層発展していくことを、先ほども申し上げましたが楽しみに期待していきたいと考えております。
§21Question
一点目がちょっと先ほども質問が出てたんですけど、今後の利上げペースについてです。仮に 3 か月に 1 回、0.25%ずつ政策金利を上げていったとすると、来年6月会合には政策金利が2%に到達すると思います。田村さんの任期は来年7月になってると思うんですけれども、審議委員の責任としてビハインド・ザ・カーブに陥るリスクをなるべく減らしておきたい、任期中に減らしておきたい、だから数か月に 1回なんだみたいなそういう思いはありますでしょうかっていうのが一点目です。二点目が、ご挨拶の図表 17 で日銀法の条文を示されました。その中で、改めて物価の番人としての役割を強調されたと思うんですけれども、昨日公表された 6月会合の主な意見で、内閣府から利上げへの説明責任とか、過度な景気変動が生じた場合に対応してくれっていうような意見が出てたと思うんですけれども、示された日銀法の第 3 条には日銀の自主性の尊重というものが謳われています。改めてこの条文全体を示された理由とですね、独立性を維持しつつ、物価の安定に努めるっていうその重要性を改めて感じてらっしゃるということでしょうか。
§22Naoki Tamura
はい、ご質問ありがとうございます。まず一つ目の私の任期中に中立金利まで持っていきたいと考えているかどうかという点につきましては、私は別に自分の任期中にというようなことは特段意識はしておりません。その時々の物価情勢に合わせて金利を調整していくと。更に言うと、日銀が金利を上げたいというわけではなくて、日銀が行いたいのは物価を安定させたいということです。そのために利上げが必要なときには利上げをするし、ということですので、なおのこと私の任期中にというようなことは考えておりません。ビハインド・ザ・カーブについては、ビハインド・ザ・カーブという言葉の独り歩きがありますけれども、この定義にもよると考えています。例えば、インフレ率が大きく上振れて急速な利上げが必要になるような事態に陥ることをビハインド・ザ・カーブと呼ぶとすれば、現状はそうした状況にはないと考えています。いずれにしても、ビハインド・ザ・カーブにならないように、先ほど申し上げたようなペースを念頭に置きながら、でも実際はその時々での経済・物価・金融緩和の状況を踏まえながら、政策金利の引き上げを行っていく必要があると考えております。
§23Naoki Tamura
二つ目は、図表 17 で日銀法の条文を示したということですけれども、その意図・趣旨というのが、そんなにこうですというものではありませんけれども、いろいろ物事を考える中で、例えば中東の紛争が起きたときに、物価の上振れと経済の下振れ、というようなことを考えるときに、やはり日銀としては、物価の番人として物価を安定させることによって、経済の持続的・安定的な成長につなげるという、いわば成長の土台を作る役割が日銀には課されていると思いますので、改めて日銀法の条文を掲載することによって、その辺りを自分自身、肝に銘じたいと考えているところです。
§24Question
一問、利上げの話で、物価目標に達成したときに中立金利の水準にいるというところが理想、というようなお話もあると思いますけれども、実際そこからまだ 1%ほど乖離がある中で、この数か月に一度のペースでいいのか、その上げ幅も 0.25 でいいのか、今こそ躊躇なくっていうタイミングではないのかっていうところをご説明頂けますでしょうか。
§25Naoki Tamura
はい。ご質問ありがとうございます。私としては先ほど申し上げたような理由から、現時点では数か月に一度、0.25%というぺースを念頭に置いておりますけれども、今後、物価上振れリスクが顕在化する確度が高まってきたような場合には、利上げの頻度を上げる、あるいは場合によってはもう少し利上げ幅の拡大を検討する、そういったことも必要になる可能性はありますけれども、今、現時点でそれが必要とは考えていません。
§26Question
午前中のご挨拶の中で、兵庫県経済の特徴の一つとして新産業の集積と神戸医療産業都市のお話を挙げて頂いていました。こうした新産業の育成であるとかっていうのは低金利に支えられていた面っていうのが割と大きかったのではなかろうかと思うんですが、そうしたところは、利上げの影響を受けやすいというのが、新産業の育成あるいは、そういった集積が可能であるといったところも考えられると思います。ということで、ただ、そうした一方で、新産業は日本全体の課題でもありまして、そういったところとか、何て言うか物価の安定の前に利上げの影響を受けてしまうっていうような恐れはないんでしょうか。あるいはそうしたところは局所的な現象であるとみるならば財政なんかで対応するべきなんでしょうか。何かお考えがあればお伺いできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
§27Naoki Tamura
はい。ご質問ありがとうございます。もちろん、金融緩和度合いの調整を行っていくに当たり、今おっしゃられたような新産業の企業に対してどういう影響が出てくるのか、そこは慎重にみていく必要があると思っております。ただ一方で、新産業は低金利に支えられるものかどうかというのを考えたときに、日銀審議委員としてというよりは、その前、銀行で実務を担当していた頃の感覚で言いますと、そういった新産業というのは、リスクはあるけれども、ただ成長は速いようなもので、言ってみれば、これを資金調達の面から言うとエクイティが必要で、一方でその上のデットについては、あんまり金利には左右されない、そういう性格を持つ産業だと理解しております。ただ、繰り返しになりますけれども、もちろん影響については十分みながら、金融政策を考えていきたいと思っております。
§28Question
ご質問では、今日、兵庫県なんですけれども、地域金融、信用金庫、信用組合たくさんありますけれどもね、倒産が 600 件ぐらい今超えていて、かなりその地域、短観なんか数字はいいわけですけれども、むしろそういうみえないような地域経済の悪化があると思うんですね。この中で、今後その兵庫県 11 庫信用金庫ありますけれども、地域金融の実情をどうみてらっしゃるかってことを質問したいと思います。
§29Naoki Tamura
はい、ありがとうございます。この倒産、兵庫県の倒産に限らない話ですけれども、今、全国でも倒産の件数は、前年と比べて上昇傾向にある、あるいは前年並みの状況にあるということですけれども、その中身を、企業情報を調査する会社の話を聞きますと、コロナ禍以前からもう経営がしんどかった会社、これがゼロゼロ融資などで延命してきたものが今倒産に至っているっていうようなケースが多いと。その理由についても、人手不足で人を確保できないあるいは人件費上昇や資材価格の上昇などの影響を大きく受けていると聞いております。また、今日の懇談会の場でもお話がありましたけれども、単なる延命ではなくて、抜本的な企業の構造改革というのが必要で、経済団体としてもそういった活動を支援していくというお話がありました。先ほどおっしゃられた兵庫県の倒産 600 件の内容を一つ一つを私はみておりませんけれども、もしも仮にその中に将来の企業価値を生むようなものが含まれているとすれば、それは元来、地元の金融機関が支援してもらうべきところだし、実際、今日の懇談会の場でも、各銀行も信用金庫さんもしっかりと支援していきたいというお話はございましたので、その倒産件数、件数自体をみるというよりはその中身をみていく必要があるんだろうと感じております。
§30Question
あの先ほど神戸新聞さんの最初の質問に関連して確認です。先ほど利上げは企業活動の抑制につながるという意見はなかったというお話でしたけれども、逆にその物価上昇の抑制のために、継続的な中立金利に向けた利上げは望ましいといったような具体的な意見があったのか、あるいはそういう雰囲気だったのかというのを教えて頂ければと思います。
§31Naoki Tamura
はい。ご質問ありがとうございます。金融経済懇談会の場でも、ホームページで皆さんにお示ししているような内容のお話をしました。中立金利に向けて利上げを進めていくというお話に対して、雰囲気と言われても難しいところはありますけれども、それに対して違和感というのは示されなかったととらえております。
§32Question
具体的な発言があった、例えば好ましいという意見があったということではない。
§33Naoki Tamura
元来、適正な金融の正常化を進めるべきだっていう意見は頂きました。ただ全員みんながそう言ったというわけではないですが。以上