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Bank of JapanPress conferenceJul 20, 2011Hirohide Yamaguchi, Deputy Governor

山口副総裁記者会見(2011年7月20日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

3 点お伺いします。まず1 点目ですが、本日の金融経済懇談会では、どのような意見交換が行われたのでしょうか。2 点目ですが、長野県経済の現状をどのようにみていらっしゃるのでしょうか。3 点目ですが、長野県がさらなる発展を遂げるためには何が必要とお考えでしょうか。以上 3 点についてお願いします。

§2Hirohide Yamaguchi

まず最初に、本日の金融経済懇談会ではどのような意見交換が行われたのかというご質問にお答えします。懇談会では、当地の行政および金融経済界を代表する方々から地域経済の現状や課題、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見やご要望等を数多くいただき、極めて有意義な意見交換が出来たと思っています。改めて、本日ご出席いただいた皆様に、まず感謝を申し上げたいと思います。意見交換の中身はすべて網羅出来ないのですが、席上、いただいたご意見のいくつかを整理して申し上げたいと思います。1 点目は当地の景気についてですが、回復の兆しがみられるようになっているというお話を伺いました。具体的に申し上げると、東日本大震災によるサプライチェーンの毀損の影響が徐々に和らいできており、この効果が大きいということでした。それから 2 点目ですが、当地の経済が直面している課題、あるいは直面している厳しさについていろいろなお話を伺いました。いくつかご紹介しますと、やはり円高や東日本大震災の影響を背景として、企業の海外移転、それに伴う地域経済の空洞化を心配しているというお話がありました。また、観光業においては、中小の旅館の倒産が増えているというお話も併せて伺ったところです。

§3Hirohide Yamaguchi

このほか、製造業の課題として様々なお話を伺ったのですが、中でも下請け体質からの脱却を図っていかなければならない、あるいは、マーケティング力を高めていかなければならないというお話を伺いました。3 点目は、そうした中で、当地では、産業と金融と行政が一体となって当地経済の活性化および発展に向けていろいろな取り組みが行われているというお話を伺いました。例えば、健康や医療の分野で、信州大学、長野県、企業が連携して研究開発を行っているというお話、あるいは、松本市では「健康寿命延伸都市の創造」という旗印を掲げて産業集積に向けた取り組みを行っているというお話等を伺いました。4 点目ですが、日本銀行に対するご意見、ご要望をいくつか伺いました。1つは、地域経済の実情も踏まえた上で、引き続き適切な金融政策運営を行ってもらいたいというご要望がありました。やはり最近の円高の動きの持つ意味を頭に置いてこうしたご要望をいただいたものと受け止めたところです。もう1つは、私どもが行っている成長基盤強化を支援するための資金供給について、投資の促進とか、新しい産業の育成が期待されるといった評価をいただきました。本日の話は今申し上げたとおりですが、日本銀行の構えとしては、引き続き松本支店を通じて、長野県内の経済金融情勢を肌理細かくモニタリングしていくということが1つ。

§4Hirohide Yamaguchi

もう1つは、地元経済の持続的な成長を実現していくために、日本銀行として出来る限りの貢献を引き続き行っていきたいという思いを新たにしたところです。2 つ目のご質問は、長野県経済についてどのようにみているかということです。先ほども少しお話ししたとおり、長野県経済については、東日本大震災の影響により下押しされていますが、その程度は徐々に和らいできていると評価しています。震災の直後には、IT関連、電子部品関連、自動車関連でサプライチェーンの毀損による仕入れの困難化、あるいは受注の減少がみられましたし、また観光客の予約キャンセルも広範にみられたところです。しかし、最近では、サプライチェーンの修復が進んだこともあり、製造業における供給面での制約が和らいできているほか、観光地の入り込みも、地域によってばらつきがあるようですが、避暑地としての強みもあり、全体としてはかなり回復してきていると認識しています。こうしたことから私どもとしては、長野県経済はこの秋口以降、震災による下押し圧力はほぼ解消して、緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと判断しています。3 つ目のご質問は、長野県がさらなる発展を遂げるためには何が必要かということです。

§5Hirohide Yamaguchi

もちろん、私自身昨日参ったばかりですので、これが答えだというほど自信を持って言えるものがある訳ではないのですが、こうした留保をつけさせていただいた上で申し上げると、まず長野県については、ものづくりの高い技術力、豊富な観光資源、それから信州産の農産物にみられるようなブランド力もあり、多くの強みのある経済だと思っています。こうした強みを活かしていくという観点に立って、企業の方は新分野への進出を含めた事業戦略の再構築を行うことが必要ですし、地域間・業種間の連携を図っていくことも必要ではないかと思っています。長野県では、例えば、ものづくりの高い技術力を活かして航空宇宙分野や医療分野での受注獲得を目指す取り組みがみられているようですが、こうした動きが着実に進展していくこと、しかも地域間・業種間の広がりをもって進められていくことが期待されるところです。産業構造やビジネスモデルへの変革を大胆に進めていくことで長野県独自の成長や発展の道筋をしっかりとつけていって欲しいと期待しています。

§6Question

円高の影響について 2 点お伺いしたいのですが、午前の挨拶でも為替変動の影響を含めて柔軟かつ果断に対応していきたいとおっしゃっていますが、円高の影響について、既にマインド面等に悪影響を及ぼす段階に入っているのか、それとも円高がさらに進行した場合の先々のリスクと捉えているのか、現在の受け止め方を教えて下さい。もう 1 点ですが、今後の需要動向が景気を左右するともおっしゃっていますが、円高が設備投資等の需要面に与える影響をどう捉えているのか、この 2 点について教えて下さい。

§7Hirohide Yamaguchi

ご質問は、円高のマインド面への影響と、設備投資を含めた実態的な影響はどうかという趣旨だと思います。まずマインド面ですが、多分皆様ご承知のとおり、最近の円高について企業経営者の方々に聞けば、それぞれ問題意識が高まっていることは事実だと思います。その意味で既に企業のマインド面に影響が現れている訳ですし、またそうしたマインド面への影響は為替相場の動向次第ではこの先も続く可能性があるように思っています。問題はそうしたマインド面での変化が実態的な変化を呼び起こすことになるのかどうかだと思います。おっしゃったように設備投資の面にどのような影響が出てくるのか、国内の設備投資面への影響、海外生産シフトという形での変化につながるのかどうかということだと思いますが、そうした実態的な形での円高の影響がはっきりと現われてくる段階にはまだ至っていないと思っています。そうした動きが今後出てくるのかどうかについては、我々としてしっかりと注視していきたいと考えています。

§8Question

午前中の挨拶についていくつかお伺いしたいのですが、メインシナリオとして、今年度下期から緩やかな景気回復の経路に復するというシナリオそのものは変わっていないということだと思います。しかしながら、一方で、先ほどの挨拶の中で、消費者のマインドが震災前に比べれば戻っているものの、完全には戻っておらず、生産は、最近の数字をみますと、しっかり戻っているかと思うのですが、雇用・所得は、戻りが若干鈍いような気がします。これから数か月先、下期にかけて、民需の回復の度合いがちょっと懸念されるかと思うのですが、それを含めて、今の日本経済全体のアップサイドリスクとダウンサイドリスクのバランスをどのようにみていらっしゃるかお伺いしたいと思います。

§9Hirohide Yamaguchi

いろいろな観点からのご質問があったかと思いますが、最後におっしゃった日本経済のメインシナリオにまつわるリスクをどのようにみているかに焦点を絞ってお答えしたいと思います。私どもは、震災直後から、震災の影響を含めて下振れリスクについて注意してみていく必要があるという認識をずっと持っていました。そのような震災の影響に伴う下振れリスクについては、サプライチェーンの問題がだいぶ改善に向かってきていること、電力供給の問題も、この夏場についてみれば、需要面、供給面からの対応によって、生産活動に対する大きな制約にはならずに済みそうなこと、こうした状況の中で、後退したと判断しています。その上で、先週の金融政策決定会合において、4月の展望レポートに対する中間評価を実施したわけですが、先行きについてのリスクは様々存在するということです。1 つは、海外経済ですが、アメリカについては、バランスシート調整の帰趨がまだまだ読めない、その影響の大きさもまだはっきりしない、ということがあります。それから欧州については、ソブリンリスク問題があって、これが欧州経済に対して、どのようなインパクトを持つのかに関しなお不確実性が強いということです。また、新興国については、高い成長とインフレ率とのバランスをどう実現していくのか、物価の安定と成長の持続の両立をどう実現していくのか、不確実性が依然として存在するということです。

§10Hirohide Yamaguchi

その上に、日本国内の事情として、長い目でみた電力供給について、様々な不確実性が存在します。これらを頭に置きながら、これからのメインシナリオをみていかなければならないと認識しています。

§11Question

午前中の挨拶で日本経済界の発展に必要なことが挙げられていたと思いますが、改めてより詳しく教えていただきたいと思います。また、長野県の経済が日本経済に与える影響についてもより詳しく教えていただきたいと思います。

§12Hirohide Yamaguchi

まず、具体的な今後の日本経済の成長力を底上げしていくという観点に立った時には、様々なことが必要だということを申し上げました。グローバル化が必要であるという認識は、日本経済の現状についての私どもの理解から出発しています。挨拶でも申し上げましたが、GDPに対する輸出の割合は、ドイツや韓国では 5 割前後ですし、中国は 3 割程度ですが、日本は依然として 15%程度です。それから、外国人観光客の人数も、フランスや米国、中国等に比べるとかなり少ないということを申し上げました。そういう現状認識に立って考えれば、日本経済のさらなるグローバル化を進めていく余地はまだ十分あるのではないか、それによって海外に存在している需要を取り込んでいくことが出来るのではないかと申し上げたかったということです。それから、資源エネルギーの効率を高める技術やノウハウ、そういったものをもっと飛躍させていくことが大事だということを申し上げました。特に、この先、グローバルにも大きな制約になりそうなのが、資源エネルギー、食料等の需給逼迫という問題です。従って、省エネ等のイノベーションが目先の国内電力不足への対応だけでなく、中長期的な世界経済の成長にも貢献するものだという認識でお話ししました。

§13Hirohide Yamaguchi

また、高齢化や成熟化が進む国内市場でも、医療や福祉の分野はもちろんですが、未開拓の他の分野も含めて、未開拓のニーズがふんだんにあることを申し上げました。しばしば、日本はもう豊かになってしまって、消費者の欲しいものはなくなったと言われたりもしますが、人々の潜在的な欲求というのは、やはりかなりあるのではないか、人生をより楽しみたいとか、快適に過ごしたいという気持ちは決して無くなることはないのではないかと考えていくと、消費者自らが自覚していないようなニーズを戦略的に掘り当てていく余地はあるでしょうし、そこにこそ真の企業家精神があるのではないか、そこに向けて様々な努力をこれから加えていくべきであるという認識です。長野県経済が日本経済に与える影響については、挨拶で申し上げたとおりですが、要するに長野県についても、様々な知恵を出すことによって、将来の展望が開けてくるのではないかということです。特に、先ほど申し上げたグローバル化という観点に立てば、そもそも長野県はグローバルな経済を作ろう、それを拠り所にして、より豊かな県にしていこうということをずっと考えてきた県であったと私自身は思っています。長野県経済がグローバル化していくことは、日本経済にとっても非常に大きなプラスになるはずだと認識しています。それから、高齢化への対応という点でも、ご承知のとおり、長野県は一歩先んじているということです。

§14Hirohide Yamaguchi

全国指折りの長寿県でありますし、高齢層の方々の高い就業率でも知られているところです。こういった長野県のいわば先んじた対応を日本全国に広げることが出来れば、これはまた、日本全体としての高齢化対応という点でも非常に大きな意味があると思います。

§15Question

「物価安定の実現が遅れるリスク」についての質問です。足許5月の直近の数字が+0.6%上昇というコアCPIが、指数の改定によってゼロ近傍まで下方修正される可能性が高いとおっしゃっています。最近のエコノミストの予測では、改定幅はむしろもう少し大きいのではないか、1%ポイント近い下方修正が行われるのではないかという見方が増えているように見受けられます。その場合には、ゼロ近傍というよりは、明確なマイナスになる可能性もあるわけで、日銀の11年度、12年度の見通しも 10月に展望レポートが出されるわけですが、ゼロ近傍ないしマイナスという見通しが出される可能性もあるかと思います。そうなると、ここでおっしゃっている物価安定の実現が遅れるリスク自体が顕現化するのではないかと思うのですが、その場合に別の所でおっしゃっている金融政策の柔軟かつ果断な対応ということに結びつくのかどうか、その点をお願いします。

§16Hirohide Yamaguchi

今ご質問された点は、いろいろな前提に立ってのお話のように思います。特に消費者物価指数の基準改定でどれくらい今の消費者物価指数を下押すことになるのか、この点について私どもとしてどうみているのかにかなりの程度依存していると思いますので、その点をお答えすることで答えにさせていただきたいと思います。私は確かに挨拶で、基準改定によってゼロ%近傍まで下方修正される可能性が高いとみていると申し上げました。しかし、具体的にどの程度下方修正されるかについて、まだ明確には判断出来ていません。ご指摘のように、民間のエコノミスト等の中には、かなり大幅な下方改定があるという見方をしている人がいることは私も承知しています。ただ、今回の基準改定は、種々の要素を考慮して行われるものだと思っています。指数そのものの作り方の問題、指数の中に取り込まれる品目の入れ替えの問題、指数を計算する際の計算式の問題など、様々な要素が考慮されるものと思っており、今の段階でそれらについて一定の予測をして、改定幅を織り込むことは実際上難しいと考えています。従って、挨拶で申し上げたようなゼロ%近傍まで下方修正される可能性が高いというのが、今私が言い得る限界です。

§17Question

2点あります。山口副総裁は午前中の挨拶の中で思い切って国を開く必要性があるとおっしゃっていましたが、具体的にイメージする政府の施策または日銀の施策があるのかというのが1点。もう 1 つは、空洞化の懸念が高まっているということですが、それに関して日銀が出来ることが何かあるかお考えをお聞かせ下さい。

§18Hirohide Yamaguchi

まず最初に、国を開くといった場合の具体的な施策として何を考えているかについてですが、先ほど申し上げたように、例えばGDPに占める輸出の割合ひとつとっても、日本はそう高いわけではありません。それから日本に来る旅行客の数をとっても決して多くありません。旅行客を増やすための工夫は、様々にあり得ると思いますし、輸出競争力を高める工夫もいろいろあると思っています。例えば、EPAやFTAもその選択肢の中に入るのかもしれません。そういったものをひとつひとつ積み重ねていく努力が、今我が国には強く求められているのではないかと認識しています。それから、空洞化に対して日本銀行として何らか出来ることがあるのかということですが、まずは空洞化が懸念されているバックグラウンドに何があるのかについて考えてみる必要があります。1 つは昨今の円高があると思います。もう 1 つは大震災以降、非常に強く意識されるようになった日本における震災のリスクもあると思います。それからもう 1 つは、原発問題に端を発する電力供給についての懸念もあると思います。ただ、こうした懸念が、企業の投資行動の変化あるいは企業の雇用行動の変化といった形で現実に現れているかというと、まだそういう状況にはなっていないと思います。

§19Hirohide Yamaguchi

例えば、私どもが 7月1日に発表した短観の結果をみても、設備投資については、製造業が中心ではありますが、底堅い計画を維持しています。国内の設備投資を減額し、海外の設備投資を増やすという企業行動が広がってきている状況にはないのではないかと思います。そうお答えした上で、仮に空洞化が生じた場合に日本銀行として出来ることは何かというと、1 つはやはり物価の安定のもとでの持続的な成長を実現していくということだと思います。そのことを通じて企業が日本国内において投資をしたり雇用を増やしたりすることについて、少しでも安心感を持って行動出来るような環境を作っていくことが非常に大きいと思います。もう 1 つは、情報発信もあろうと思っています。企業の経営者の方々は様々な情報を捉えながら日本経済の先行き、あるいは業界の先行きを展望して、投資行動を決めていくのだと思います。その際に、日本銀行がわが国経済の先行きをどのようにみているのか、あるいは日本経済の先行きをより明るいものにするためにどういう政策行動を取っているのか、これらの情報は企業経営者の投資行動ないし雇用に対するスタンスにそれなりに影響を与えるものだと認識しています。

§20Question

午前中の山口副総裁の挨拶で、ヨーロッパの債務問題についての言及が印象に残ったのですが、挨拶でもおっしゃっていたように為替変動の影響を含めて、柔軟かつ果断に適切な措置を講ずるということですが、これはヨーロッパの債務問題に起因する円高のリスク等の懸念が山口副総裁の中で増大しているということなのでしょうか。この柔軟かつ果断に適切な措置というのは、以前よりも増してそういった措置を取る準備が出来ているということなのでしょうか。今日、IMFのレポートでも、日本銀行の方でデフレに対しての追加的な措置ということに関するレポートが出ているので、その点も含めてコメントをお願いします。

§21Hirohide Yamaguchi

さらなる円高の可能性をどうみているかについては、為替相場の先行きについてコメントしないというのが一貫した我々の立場ですので、そのことを繰り返させていただきたいと思います。ただ、円高の背景として、ヨーロッパのソブリン問題、それによる投資家のリスク回避姿勢の強まりがあると市場で言われていることは私自身理解しています。それから「柔軟かつ果断に」という表現が、私どもの政策対応について、これまで以上に前のめりの姿勢を示しているのではないかという趣旨のご質問かと思いますが、柔軟かつ果断に金融政策を行っていくことは常に変わらない我々の構えです。必要に応じて、柔軟かつ果断に適切な措置を行っていくことは、これまでの我々の基本的なスタンスそのものです。以上