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Bank of JapanPress conferenceJul 27, 2011Hidetoshi Kamezaki, Board Member

亀崎審議委員記者会見(2011年7月27日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会での意見交換を踏まえて、東海地方および三重県の景気の現状と先行きについてのご見解をお伺いします。

§2Hidetoshi Kamezaki

本日の金融経済懇談会では、当地の経済界、金融界を代表する方々と地域経済の現状について意見交換を行いましたが、ご出席の皆様から地域経済の現状について率直なご意見を数多く頂き、極めて有意義な意見交換ができました。改めて、本日ご出席頂いた方々に感謝を申し上げたいと思います。本日の意見交換を踏まえ、ご質問いただいた三重県を始めとする東海 3 県の景気について述べたいと思います。当地の景気についてですが、震災の影響などによって一時的に大きく落ち込んだというお話を伺いました。養殖業の被害など直接的なものがありましたほか、部品不足による工場稼働率の低下や、イベントの延期などの影響から宿泊キャンセルが多くみられたとのことでした。もっとも、輸出の減少に歯止めがかかり、生産が回復してきているうえ、倒産件数も減少してきているとのことで、当地の景気には底打ちの動きがみられるというお話を伺いました。このような状況の下で、当地は外需関連の製造業のウェイトが高いこともあり、このところの急速な円高進行に対する強い懸念の声が多く聞かれました。やや長い目でみれば、この円高が地域経済の空洞化に繋がるのではないかと懸念する声もありました。このほか、高齢化の進行や過疎化による産業の衰退を心配しているというお話もありました。もっとも、先行きを悲観する声だけではありませんでした。

§3Hidetoshi Kamezaki

例えば、趨勢的な円高は所与のものとして覚悟し、それに耐えられる産業構造を構築していくべきとの意見が聞かれました。また、観光資源などを核に内需拡大を図っていかなければならないとの意見もありました。私がこうした意見交換や昨日来の当地での滞在を通して感じたことは、当地は産業構造といい、観光資源といい、非常に多様性に富んでいるということです。これには率直に言って驚きを覚えましたが、当地の大きな強みだと思います。特に、当地には伊勢神宮という日本人の精神の拠り所でもある他に代え難い国民資産がありますが、日本だけでなく、世界にアピールできるものだと感じました。こうした優位性をうまく活かして当地が益々発展していくことを期待しています。こうした意見交換も踏まえて、足もとの三重県を始めとする東海 3 県の景気動向については、本行の名古屋支店の方で判断している通り「なお厳しい状況にあるが、持ち直している」とみています。サプライチェーンの着実な修復を背景に、震災後に大きく落ち込んだ生産活動がこのところ明確に持ち直してきているところが主な要因です。

§4Hidetoshi Kamezaki

先行きについては、様々なリスク要因はあるものの、部品・部材、電力などの供給面での制約がさらに和らぐことにより生産活動が回復を続けると見込まれることに加え、被災地の復旧・復興に伴う需要増加や海外経済の高い伸びを背景とする輸出の増加などから、景気は緩やかな回復を続けると考えています。日本銀行としては、こうした当地関係者の努力がより大きな成果に繋がっていくよう、中央銀行の立場から、しっかりとサポートしてまいりたいと考えています。

§5Question

原子力発電所の運転停止に伴う影響はどのようなものでしょうか。

§6Hidetoshi Kamezaki

電力制約の影響という観点でお答えしますと、これは大変大きな問題だと考えています。現在、定期点検後の原子力発電所の運転再開については、不確実性の高い状況になっています。この問題が日本経済に与える影響としては、次のことを考えています。まず、この電力不足が直接経済活動を制約することが考えられます。原子力発電所は13 か月に一度、定期点検を行わなければなりませんが、その後の運転が再開できないということであれば、来年春頃には全ての原発が停止してしまいます。それによる電力供給の減少分を、各電力会社が持つ他の発電手段で補うことは現時点では難しいとされています。従って、この場合には電力不足は避けられないものと考えられます。また、電力にかかるコストが、経済に与える影響も考えられます。原油価格が高止まりする中、火力発電のコストは相対的に高い状況にあります。また、再生可能エネルギーも、発電効率がまだ高くなく、設備の設置の面も含めてコスト高です。一方、原子力発電を継続するにしても、安全強化のためのコストが必要です。いずれにせよ、この電力コストはこれまでより高いものとならざるを得ず、その分を国や電力会社、企業や家計のいずれが負担するにしても、経済活動の重荷になることは避けられません。さらに、こうした電力不足への懸念やコストの増加は、設備投資の海外シフトや国内企業の競争力低下を招く可能性もあります。

§7Hidetoshi Kamezaki

このことは、日本経済の中長期的な成長力の低下要因ともなりかねません。もっとも、過去の日本が被った戦争の災禍やエネルギー危機などへの対応をみても、日本人は一度目標を定めれば、経営者、従業員を問わず全員の創意工夫の下、極めて大きな力を発揮して、それを達成してきています。今回も、電力不足を克服すべく、太陽光、風力、水力、バイオマス、あるいは地熱等の再生可能エネルギーとのベストミックスを追求する過程で、日本が優位性を持つ省エネ技術をさらに伸ばす、などといった底力を発揮することは十分考えられます。大事なことは、危機に際しても決して悲観することなく、前向きに取り組んでいくことだと思います。

§8Question

特に浜岡原子力発電所の運転停止が当地の経済活動に対してどのような影響を及ぼすとみているのかお聞かせください。

§9Hidetoshi Kamezaki

浜岡原子力発電所の運転停止が、直接的にどのような影響を及ぼしているかという定量的なデータを持ち合わせていないので、残念ながらお答えできません。ただ、浜岡原子力発電所の停止の問題は、個別の問題というよりも、全国的な原発再開に向けた動きに繋がる大きな問題だと考えられ、浜岡原発に限定して考えることは、日本経済への中長期的な影響を考えるには必ずしも十分ではないと思います。

§10Hidetoshi Kamezaki

<櫛田名古屋支店長>浜岡原子力発電所の運転停止の影響について少し補足させて頂きます。当地も含めてサプライチェーンの復旧から生産活動がまさに回復しようとしていた時に、浜岡原子力発電所の運転停止の報が入りましたが、地元経済界では衝撃をもって受け止められました。もっとも、その後、企業サイドの努力――自動車業界などでの休日シフトや中部電力による休止していた火力発電所の再稼働など――によって、経済活動に大きな影響を与えずに済むところまできています。その将来的な意味合いとしての問題は、亀崎審議委員がお答えした通りですが、浜岡原子力発電所の運転停止自体が当地の経済活動に大きな影響を及ぼすことは回避できていると認識しています。

§11Question

このところ円高が進んでおり、本日も 77 円 70 銭台まで円高が進んだようですが、現在の円高についてどのようにお考えでしょうか。輸出に与える影響も含めてお聞かせください。

§12Hidetoshi Kamezaki

最近の為替相場の動向をみると、円の対ドルレートは円高方向で推移しています。また、対ユーロでも欧州周縁国におけるソブリンリスク問題の影響などから 1 ユーロ 113 円前後と、このところ概ね円高方向で推移しています。為替円高については、原油や食料品といった原材料などの輸入コストを押し下げるというプラスの面もありますが、震災後の落ち込みから持ち直す途上にある日本経済に対し、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じて、マイナスの影響を及ぼす可能性があるため、私としては極めて慎重にみています。やや長い目でみても、高い法人税率やFTA/EPA交渉の遅延、日本の震災リスク、そして先程の電力供給懸念など、企業立地に不利な条件が多い中、さらなる為替円高が加わることで、企業の海外シフトの加速や、中長期的な成長期待の低下が生じないか、しっかりとみていく必要があります。いずれにせよ、日本銀行は、先行きの経済・物価動向について、為替変動の影響を含めて注意深く点検しながら、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路へと復帰するという目的達成のため、必要な施策をプロアクティブに実施していくべきだと考えています。

§13Question

2 点質問させて頂きます。1 つ目は、円高についてです。最近円高が進行しているにもかかわらず、株価が比較的底堅い動きになっていると思います。これについて、円高の企業マインドへの波及経路が少し弱いという感じがするのですが、円相場と株価の関係、企業マインドとの関係をどのように分析しているのでしょうか。もう 1 点は、米国の債務上限引き上げ問題が、世界の金融市場あるいは日本の金融市場・金融システムにどのような影響を与え得るのか、リスクとして懸念していることがあれば、お聞かせください。

§14Hidetoshi Kamezaki

1 点目の円高傾向にあるにもかかわらず株価が底堅い状況にあるということについては、円高の企業マインドへの影響はどうかという主旨のご質問だと思いますが、これは日本経済がショックから立ち直っている途上にあるということが要因の一つにあると思います。もう一つは、足もとの円高が日本経済のファンダメンタルズを素直に反映しているのかというと、私は若干疑問を持っています。このところの為替相場の動きをみると、例えば、欧州のソブリンリスクの問題において、ストレステストを終え、ギリシャの支援を行うといったニュースでも動いています。足もとでは、猶予期限が目前に迫る中での米国の債務上限引き上げ問題の動向も為替相場にかなりの影響を及ぼしているというように思います。この米国の債務上限引き上げ法案については、私自身も極めて重要な法案だと思っており、この問題を巡る米国議会の動きが為替相場の動きに影響しているとみています。7月14日の上院において、「もし連邦債務上限の引き上げに失敗して米国債がデフォルトした場合、米国経済のみならず世界経済にどのような影響があるのか」という質問に対し、バーナンキ議長が「米国経済のみならず世界経済に影響する深刻な金融ショックとなり悲惨な状況となるだろう。米国債は担保や証拠金として幅広く用いられており、そのデフォルトは金融システムに混沌をもたらすだろう。

§15Hidetoshi Kamezaki

デフォルトあるいはデフォルトの可能性を排除するためにあらゆる手段を講じるよう議会に促したい」と発言しています。現在、8月2日のデッドラインを目指して懸命な議論が行われていますが、残された数日以内に民主党と共和党の両党の妥協案が両院を通過し、大統領の署名に至るよう米国のリーダーの知恵を信じて、注意深く見守っているところです。2 点目のご質問についてですが、バーナンキ議長も言われているように大変大きな問題だと思っています。

§16Question

仮に米国債がデフォルトとなった場合、あるいはデフォルトにはならなくとも格下げになった場合、日本の金融機関あるいは金融システムにも影響が及ぶとみているのでしょうか。

§17Hidetoshi Kamezaki

相当大きな問題を引き起こすことになると考えられます。従って、何としても、そういった状態に陥らないような方策を講じて頂きたいと思います。現在の金融市場をみると、欧州の周縁国で起きた問題でも、これだけの国際的な金融市場の不安定さをもたらすわけです。ましてや世界最大のGDPを誇る米国の経済が国際的な金融市場に与える影響は計り知れないものがあり、日本はそこから免れることはできないと思います。

§18Question

円高に対する政策対応についてお伺いします。先程、プロアクティブに対応されるということでしたが、円高が企業収益などに影響を与える前に政策対応するといったような、さらなる金融緩和の必要性についてどのようにお考えでしょうか。

§19Hidetoshi Kamezaki

日本銀行は、ご存知のように足もと大変潤沢な資金を供給して、極めて緩和的な金融環境を整えています。そして、さらにどういう手を打つかというご質問だと思いますが、私は2007年に審議委員になって以来、毎回の金融政策決定会合では、その時点で入手し得る情報やデータを分析して実態の把握に努めるとともに、金融経済のメカニズムやトレンドなどをできる限り虚心坦懐に見極めるよう心がけています。そのうえで日本経済が物価安定のもとでの持続的成長を達成するために何が必要なのか、またどういう手段あるいは施策を講じるべきかをあらゆる選択肢を排除せずに、また受動的に受け止めるのではなくて、主体的に能動的に必要な施策を講じていくべきだと考えています。従って、あらかじめこうであるということを申し上げるということではなく、先程申し上げたように金融政策決定会合のその日まで、刻々と動いていくこの金融経済情勢を常に考えながらその必要性を考えるということであって、今現在、何か手を打つのかと言われれば、今現在はそれを考えていません。

§20Question

今の質問とも関連するのですが、先程、円高の影響について極めて重要な局面であるといわれましたが、そういう情勢認識であると、やはり政策対応が必要になってくるのではないかと思います。逆にそういう極めて重要な局面にあるにもかかわらず日銀は何もしないとなると、これはプロアクティブとはいえないのではないかと思いますが、改めて政策に対する姿勢をお聞きしたいと思います。

§21Hidetoshi Kamezaki

私が申し上げている極めて重要な局面というのは、このところの円高傾向が実体経済にどのような影響を与えるかということです。為替相場そのものを目的に金融政策を行っているわけではありません。足もとの円高は、先程ご質問にもありましたように米国の債務上限引き上げ問題の影響を受けていると考えられます。この円高が定着するのか、さらに進むのか、またこれが短期間なのか、もっと続くのか、そしてそれは実体経済・企業・家計にどう影響して、目的である持続的な成長の達成を阻害していくことにならないか、といったことを非常に慎重に見極めなければならない重要な局面にあるという意味で申し上げました。当然のことながら、そういう全ての点検をして必要と判断した場合は、プロアクティブにアクションを起こすということです。

§22Question

さらなる金融緩和についての先ほどの質問のところで、あらかじめこうであるとはいえないとおっしゃった点についてですが、今現在、何らかの措置を取る必要はないとおっしゃられたのでしょうか。

§23Hidetoshi Kamezaki

はい。今の時点、現時点ではということです。

§24Question

現時点では特に手を打つ必要はないとお答えになったという理解でよろしいでしょうか。

§25Hidetoshi Kamezaki

はい。

§26Question

産業界を中心に為替介入を求める声が大きくなっていますが、その点についてお考えをお聞かせください。

§27Hidetoshi Kamezaki

為替というものは、本来、経済のファンダメンタルズを反映すべきものですが、それが急激に、過度に変動するなどしたときには、介入は一定の効果があるのではないかと思います。しかし、それも様々な状況によると思います。どのような背景によりその為替の変動が起きているのか、単独で介入した方が良いのか、協調で介入した方が良いのか、といったこともあります。それが一時的に変動を抑えたとしても、また元に戻ってしまうということで良いのかといったこともあります。これについては様々な見方があります。ご存知のように為替介入の実施の権限は財務大臣にありますが、実施した場合の影響など、あらゆる角度から慎重に検討されて決定されるものであると認識しています。以上