西村副総裁記者会見(2011年11月30日)要旨
Full text
§1Question
本日の京都府金融経済懇談会でどのような意見、要望が出たのか、具体的にお聞かせください。
§2Kiyohiko Nishimura
京都府の各界を代表する方々から地域経済の現状と課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なご意見、しかもかなり率直なご意見を数多く頂きました。まずは、本日ご出席頂きました皆様に感謝を申し上げます。懇談会の場では大変たくさんのご意見が出ましたので、この場で全てをお話することはできませんが、ポイントを 2 点に絞って申し上げたいと思います。冒頭の私のスピーチでも、産・学・公の連携、そしてその下での京都の強みについて触れました。私は様々な情報から類推してお話したわけですが、皆様からはもっと具体的なお話を頂きました。行政については、府と市が一体となって支援する体制を強化されていることが印象的であったほか、同時に財政再建にも前向きに取り組んでいることをひしひしと感じることが出来ました。なかなか難しい経済状況ですが、そのような素晴らしい努力がなされていることに感銘しました。産・学・公の連携では、「産業コンソーシアム」を立ち上げて定期協議をされているほか、大学との密接な連携を図っており、「大学の街・京都」を色々な意味で京都の活性化につなげていきたいというお話を伺いました。また、中小企業の経営に関する塾を開催したり、京都は学生、とりわけ留学生も多いことから、企業と学生が触れ合うような場も設けているというお話を頂きました。もう 1 点は、円高やデフレに対する極めて厳しいお声を頂きました。
§3Kiyohiko Nishimura
円高によって中小企業を中心に製造業が大きな打撃を受けているほか、円高で一見利益を受けているようにみえる輸入関連企業などでも値下げ要請が強く、結果的に収益が出ていないというご意見を頂きました。また、京都は観光産業が極めて重要な位置付けにありますが、国内の観光客が戻ってきている一方で、海外の観光客の戻りは悪く、その要因の一つは円高だろうということで、日本銀行としてきちんとした対策を講じて欲しいとのご要望を頂きました。為替に関する議論では、韓国との比較が話題となり、ウォン安と円高でダブルパンチを受けているというお話があり、この問題の所在についてもしっかりと考えて欲しいというご意見を頂きました。
§4Question
地元企業の中間決算でも円高の影響を大きく受けている先が多く、政府も介入をして若干は円安方向に戻りましたが、地元企業が期待しているほどの水準には戻っていません。80 円/ドルを下回る状態が続いているため、企業にとって非常に厳しい状況だと思うのですが、為替見通しに関する意見は聞かれましたか。
§5Kiyohiko Nishimura
為替の見通しについて出席者の方からお話があったわけではありませんが、円高についてどう考えるか、といったご質問はありました。それに対する答えとしては、特に京都のように輸出産業が多く、しかも中小企業も多いということで、輸出や企業収益の減少が企業マインドの悪化を通じて日本全国にもマイナスの影響を及ぼす可能性については、十分に注意する必要があると考えています。仮にファンダメンタルズで説明できないような大幅な円高が持続することになると、海外生産へのシフトが臨界点を超えて非連続的に、しかも不可逆的に加速するというリスクがあるわけですので、こういうことについては十分注意して考えていかなくてはならないと思っています。ただ、円高そのものは、世界の為替レートの色々な動きの中の一つとして生じているものですから、現在のような欧州の情勢、そしてそれに対しての「不人気投票」というような言葉で言われるように、一番今のところ安心できるところはどこかという点で、比較的日本の立場が強いために──これは比較の問題ですが──、どうしても日本に色々としわ寄せが来がちであることについては、十分考えていかなければなりません。
§6Kiyohiko Nishimura
それから、一般論として申し上げれば、為替レートが自由に動く国に対しては、動かない国がどこかにある時には、為替レートが自由に動く国に色々な大きなショックが起こった時の調整の圧力、重圧がより一層かかってきますので、そういう意味でファンダメンタルズから説明できない状況に対しては、これまで同様きちんとした態度で対処することが重要と考えています。
§7Question
スピーチの中で「京都は世界的にも有数の潜在力を持つ魅力的な地域」という話がありましたが、京都でも円高や人口減少は他の地域と同様で、楽観的な経済状況ではないと思います。現在の京都の経済状況と今後の方向性についての見方をお聞かせ下さい。
§8Kiyohiko Nishimura
これは京都だけではなくて日本全国に関わることであり、また、現在は経済規模でみて全世界の 3 分の 2 くらいに関わることですが、少子高齢化が進むと、色々な意味で経済にミスマッチが生じてくることになります。そうなると自分のマーケットは段々と小さくなり、分断されていきます。そうした中でも、付加価値が作れる強靭な「知恵」と「なりわい」が一緒になった地道な努力が日本全国でも必要ですし、京都でも必要だと思います。京都は実際にこれまでやってきたわけですし、特に短期の収益ではなく、長期の収益、「まち」の収益、社会の収益という視点で考えている経営者の方々が多いので、私としては心強い思いをしました。
§9Question
欧州債務問題に関連してお伺いします。昨日、欧州財務大臣の会合において、IMFの資金基盤拡充について話し合われましたが、市場全体の安定のためにIMFの資金基盤を拡充していくことの実現可能性について、どのようにお考えでしょうか。また、そこでの日本の役割についてお考えがありましたら、お伺いしたいと思います。
§10Kiyohiko Nishimura
報道で存じ上げているだけですので、具体的な内容についてのコメントは差し控えさせて頂きたいと思います。一般論として言えば、欧州の政府債務問題がこれだけ大きな世界的な問題になっていることを考えると、 IMFという経済の安定性に重要な役割を果たしている世界的な機関が何らかのかたちで役割を果たすことは、ごくごく自然なことだと思います。わが国もIMFの一員として、しかも重要なメンバーの一員として枠組みの中で出来ることを考えることは望ましいことだと思います。
§11Question
政府・日銀が為替介入を行ってから今日でちょうど 1 か月になりますが、為替介入の効果について、どのような効果があったのかお聞かせ下さい。また、京都は輸出産業が多いということで、本日の懇談会でも円高に対する懸念や要望が相次いだようですが、日本銀行としてどのような決意で取り組んでいくのか、お聞かせ下さい。
§12Kiyohiko Nishimura
為替介入についてですが、為替の決定要因は世界全体の動きの中から決まっていくことですし、その中で欧州発の金融問題というのは非常に大きかったと思います。そうした点を頭に入れた上での為替介入ということを考えて頂きたいと思うのですが、私は為替介入の効果というのは十分にあったと考えています。それは、具体的なレートに関して効果があったというよりは、過度の為替変動は望ましくない、それは許さないという政策当局の見方が浸透したという意味で、重要な役割を果たしたと考えています。それから金融政策の件についてですが、ご承知の通り複雑な力があちこちで動き、そうした中で世界経済が動いているというのが今の状況です。状況の変化を注意深く把握し、どのようなオプションがあるのかということを常に考えながら、その時点、その時点で一番望ましい政策を、先を見ながら考え、必要があれば適切に遂行していくということが、今一番必要だと思っています。
§13Question
本日の挨拶の中で、米国経済への見方について、「再び慎重化するようなことがあれば、国際金融資本市場の動揺が一気に拡がっていく可能性がある」と述べられていますが、米国経済のどういう点に、どのような慎重な見方が出ると懸念されているのでしょうか。また、これに関係しますが、時間を稼ぐためには欧州中央銀行による相当緩和的な政策が今後必要という見方が英米系メディアを中心に非常に増えています。欧州中央銀行による金融緩和の米国当局への影響と日本当局への影響について、お伺いします。
§14Kiyohiko Nishimura
米国経済については、スピーチの中でも説明したように、成長率がだんだん低くなると、ちょっとした動きにも影響を受けてしまいます。私は経済統計を教えていましたので、しばしばみてきたことですが、どんなデータにもノイズが含まれており、伸び率が高い時はノイズが少々あっても大きな影響を及ぼさないのですが、伸び率が段々下がっていくと小さなノイズがものすごく大きな影響を及ぼします。ノイズであるにも拘らず実体経済が動いているのではないかと経済主体は思いがちですので、それをきっかけにいろいろな連鎖作用が起きてしまうのではないか、ということを私は一番心配しています。特定のどの指標が問題になるかということは、予め分かりませんが、何かデータが出たときに、特にこういう時期は単純に鵜呑みにするのではなく、いくつかのデータを相互にチェックしながら実体経済がどうなっているのかをみなければなりません。したがってマーケットが 1 つのデータに過度に反応するようなことになったときには、実体経済を評価する人がそうした問題点をきちんと理解していることが重要になるということを説明しました。
§15Kiyohiko Nishimura
それから、欧州の金融政策がどうなるのか、それが米国の金融政策にどういう影響を及ぼすのか、日本の金融政策にどういう影響を及ぼすのか、というご質問でしたが、結論としては、他国の金融政策について評価を申し上げないということが私の信念ですので、お答えできません。ただ、一般論で言えば、世界経済がインターコネクテッド(相互連関)するようになり、同じように金融政策も相互連関性が高くなっているわけですから、以前に総裁が申し上げたことでもありますが、1 つの国の金融政策が他国を通じて自国に影響を及ぼすことも考えて金融政策は行われることが、この3年ぐらいの間の私どもの経験から必要なことだという理解になっています。したがって、そういうことは他の国の金融政策においても十分考えてなされているだろうと考えています。以上