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Bank of JapanPress conferenceMar 28, 2012Ryuzo Miyao, Board Member

宮尾審議委員記者会見(2012年3月28日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会では、地元経済界の方々とどのようなお話をされたのかということと、千葉県内の経済状況について、どういった印象をお持ちになったのかお聞かせ下さい。

§2Ryuzo Miyao

本日の懇談会では、県、市、経済団体など、千葉県の各界を代表する方々から、地域の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見等を数多く聞かせて頂くことができました。極めて有意義な意見交換ができたと認識しています。まずは、ご出席頂いた方々や関係者の皆様に深くお礼を申し上げたいと思います。昨年3月の東日本大震災の発生から 1年が経過しましたが、千葉県でも大きな被害が発生しました。改めて、犠牲者やそのご家族の方々に、心からお悔やみを申し上げるともに、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる皆様方に心から敬意を表したいと思います。最近の千葉県経済の動向ですが、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きが続いており、全国と似通った動きをしていると理解しています。設備投資は、千葉県も東日本大震災で生産設備に甚大な被害が生じたことから、その修復の動きもあって緩やかに増加しています。個人消費もエコカー補助金の再導入の効果などもあって底堅く推移しています。また、住宅投資や公共投資は横ばいで推移しているようです。こうした動きは、千葉県経済をマクロベースで捉えたものですが、ミクロベースでみると、「厳しい」という先が尐なくないことも認識しています。本日の懇談会では、県内の景気動向については、そうした「厳しい」という声が相対的に多かったように思います。

§3Ryuzo Miyao

第一に、円高に関しては、「足許の円高修正の動きを歓迎しつつも、京葉工業地帯の多くの製造業にとって、なお重石となっている」というご指摘がありました。また、「県の補助金で誘致した企業が撤退したり、地元の雇用が失われている」というお話もありました。一方、「今後、仮に円安方向に向かうとすれば、食糧価格が上昇していく可能性もあることを懸念している」という声も聞かれました。第二に、復興需要関連では、「総じて補正予算関連の発注が遅れている」とのご指摘がありました。一部の地域では順調に工事が発注され、建設業等で繁忙度の高い状況となっているものの、「復興需要の本格的な顕現化はもう尐し先ではないか」といった声が多かったように思います。第三に、人口減尐についてですが、「千葉県では、これまで人口の増加が続いてきましたが、昨年は人口が減尐に転じたことが注目を集めている」というお話がありました。震災に伴う液状化問題や一部地域での放射能問題などが一つの原因とみられているようですが、「千葉県経済の成長という観点からは注意しなければならない」という声がありました。

§4Ryuzo Miyao

一方、千葉県が有するポテンシャルとして、第一に、全国上位に位置する農・漁業県であるということ、第二に、臨海部に日本最大の素材エネルギーの供給基地である京葉工業地帯が拡がっていること、第三に、首都圏のベッドダウンとして機能し、商業施設やレジャー施設も集積していること、第四に、観光名所も数多くあること、などが挙げられました。意見交換の中では、私ども日本銀行への要望もありました。第一に、「強力な金融緩和を継続して金利を安定的に推移させて欲しい」という声、第二に、「成長基盤強化支援について、3月の政策決定で小口融資枠を追加されたことは非常に良い話であり、もっとアピールしてはどうか」という声、第三に、「2月の政策決定で、円高の修正あるいは株高の動きが後押しされた面もあるので、今後も政策について、わかり易くアピール度を高めて欲しい」という声、最後に、「日銀だけで成長力を高められるとは思えないため、国民が一丸となってしっかりと取り組んでいく必要があるのではないか」というご意見等がありました。

§5Question

2 点お伺いします。本日の冒頭挨拶で、金融緩和について、円高修正と株高にかなり効果があったと言及されていますが、前回 3月の金融政策決定会合で、委員は追加緩和を提案されています。改めて、提案された理由をご説明下さい。次に、景気に関する認識について―― 本日の挨拶でも触れられていますが――、米国もかなり景気が戻ってきているというご認識だと思いますが、今の国内景気については、横ばい圏内で推移し、2012年度前半から持ち直すとされています。この回復スピードは、日銀の想定よりも多尐早くなっているのかどうか、ご認識をお聞かせ下さい。

§6Ryuzo Miyao

1 つ目は、3月の金融政策決定会合での基金増額の提案理由に関するご質問です。私自身は、そのタイミングで基金の増額を実施することが適切であると判断して提案しました。その提案理由や議論の詳細については、議事要旨あるいは議事録の形で国民に公表されることになっていますので、来月公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。2 つ目の景気認識については、基本的に、これまで想定していたメインシナリオに概ね沿った動きであると認識していますが、冒頭挨拶でも触れた通り、いくつか変化点もあります。まず、欧州債務問題に伴う深刻な金融システム不安といったテールリスクが後退していること、2 番目は、米国経済の改善に底堅さが窺われること、3 番目に、わが国の金融環境の改善がみられること、といった変化点があります。一方、注意しなければならない点として、欧州経済の停滞がやや長期化するリスク、2 番目は原油価格の動向、最後に、中国経済の足許における減速の動きが今後どうなるか、といった点があります。いずれにしても、大きな意味で、今のところメインシナリオに概ね沿った動きとみていますが、この点については、4月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。

§7Question

2 点お伺いします。まず、2月の決定会合の議事要旨をみると、「物価安定の目途」について、1%ではなく、もう尐し高めの数字が議論されていた様子が窺われます。委員としては――どのような意見を出されたかは公表できないと思いますが――、1%よりも上の目標を掲げることのメリットとデメリットについて、どのようにお考えか、教えて下さい。公式見解としては、余り高い数字を掲げると、長期金利が上昇するリスクがあるということと思いますが、政府の方では、その点は、デフレ脱却できれば余り問題ではない、あるいは名目成長率が高くなればさほど問題ではないとして圧力を高めていると思いますが、この点についてご説明下さい。2 つ目は、白川総裁が 3月24日土曜日にワシントンで金融緩和の副作用に焦点を当てた講演をされています。ドラギ氏やシュタルク氏など欧米中銀の要人は、ここへ来てインフレの怖さにも目配りをしようという発言を増やしているように思います。こうしたことが、2月に決められた日銀の政策の構えに対して影響があるのか、お聞かせ下さい。

§8Ryuzo Miyao

まず 1 点目の「物価安定の目途」としての1%の妥当性についてですが、「物価安定の目途」を検討するに当たり、いくつかの検討項目があります。最初に、消費者物価指数の計測誤差、2 つ目には、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクに備えた「のりしろ」、3 番目に、家計や企業など国民の物価観、という3 つの観点を踏まえて検討してきました。このうち、3 番目の物価観に関してみると、わが国ではデフレに陥る前から海外主要国に比べて一貫してインフレ率は低い水準にあるため、そうした物価観から一気に高い物価上昇率を目指すという場合には、家計や企業が却って大きな不確実性に直面する可能性があるほか、長期金利の上昇が生じるリスクも考えられます。こうした事情を勘案して、政策委員会の決定として、当面、消費者物価上昇率でみて 1%を目指すという決定をしました。これが未来永劫 1%なのかというと、「物価安定の目途」については、今後、日本経済の構造変化がどのように進むかということも影響してきますので、そうした構造変化の進展等を見極めつつ、原則として、ほぼ1年ごとに点検していく方針です。

§9Ryuzo Miyao

2 番目の副作用に関しては、特にインフレが発生するのではないか、言い換えると、中央銀行の積極的な国債購入が財政ファイナンスと誤解され、あるいは見做され、長期金利の高騰、あるいはインフレの発生につながるリスクがあるという問題かと思います。この点は、中央銀行の積極的な資産買入れが財政ファイナンスと誤解されることがないよう、私どもとしても、しっかり情報発信をしていかなければならないと思っています。財政ファイナンスと誤解されてしまうと、様々な潜在的な副作用、問題が生じると認識しており、ご指摘のあったインフレもそのリスクの一つだと思います。そうであるからこそ、財政ファイナンスと認識されるリスクを顕現化させないよう、中長期的な財政規律を担保していくことと、わが国経済の成長力を高めることが何よりも重要と認識しています。

§10Question

まず、3月の決定会合で資産買入れ基金の増額を提案されていますが、間もなく 4月上旪にも次の決定会合が開催されます。どのように臨まれるのかを教えて下さい。2 点目として、先程、財政赤字をファイナンスすることが目的ではないとおっしゃった国債買入れの件ですが、基金の枠組みは、導入以来拡大の一途を辿っています。その意味で、何らかの歯止めが必要ではないか、という点についてお聞かせ下さい。

§11Ryuzo Miyao

まず、次回以降の金融政策決定会合に対しての構えですが、私どもが金融政策決定会合に臨む一貫した構えとして、将来の政策判断について、事前にコメントしたり、詳細を申し上げることは適当ではないと思っており、この点についてはコメントを差し控えさせて頂きたいと思います。毎回の金融政策決定会合では、それまでに利用可能となった経済物価情勢や金融環境など様々な情報を点検して、適切な判断を行っていくということで、次回会合以降も、そうした姿勢で臨んでいきたいと思います。次に、基金での国債購入が拡大してきた中で歯止めが必要ないのかというご質問です。私どもの国債購入は、まず、資産買入れ等の基金を通じた国債の買入れは、現在、総額19 兆円となっています。これは、デフレ脱却に向けた金融政策として実施するものです。これとは別に、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的で実施している国債購入は年間 21.6 兆円です。これは、金融政策目的ではなく、満期まで保有するものであり、「日銀券ルール」という歯止めをしっかりかけて、それに基づいて管理しています。前者は金融政策目的で、後者は成長に合わせた現金通貨の供給のための国債購入であり、両者は異なる目的で区別して管理・決定されているものであることをご理解頂きたいと思います。

§12Question

追加で質問します。冒頭挨拶では、財政赤字のファイナンスは基金についての言及でしたので、後者の成長通貨供給オペではなく、基金の歯止めをかける必要がないのかという点についてお答え頂きたい。

§13Ryuzo Miyao

繰り返しになりますが、基金については金融政策として実施しています。成長通貨の供給目的で行う国債買入れは日銀券ルールに基づいて管理しているということです。

§14Question

挨拶要旨の 8、9 ページの記述について伺います。まず、8 ページでは、「2月の決定後の状況を振り返りますと、今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)を通じて」とあり、この意味がよく分からないのですが、この「根拠」とは何かということと、これ自体が何を言わんとしているのかご説明頂きたい。次に、9 ページの「このように、強力な金融緩和がもたらす改善の波及経路が筋道をもって予想され、見通されるものだとすれば、足もとまでの金融環境の改善は決して短命に終わるものではなく」とある箇所です。これは、日銀の政策を信じれば、円安が進み、株高になるということをおっしゃっているのか。また、「筋道をもって予想され」の「筋道」とは何かを教えて下さい。もう 1 つは、白川総裁は、国会で議員の方々から、米国FRBのツイスト・オペのようなことを行わないのか、と質問されたのに対して、否定的な見解を示されたようですが、委員のご見解をお聞かせ下さい。

§15Ryuzo Miyao

まず、「今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)」の「根拠」ですが、私どもは、2月の金融政策決定会合で、「物価安定の理解」から「物価安定の目途」に変更し、当面、消費者物価上昇率1%を目途として、それを目指すことを日本銀行の判断として示しました。そういう形で、デフレ脱却に向けた強いコミットメントとして、金融緩和姿勢をより明確化した形で、国民の皆様への約束を強化し、より強いメッセージを発信しました。こうした私どもの政策姿勢の明確化が、ここでいう「根拠」です。次に、「強力な金融緩和がもたらす改善の波及経路が筋道をもって予想され」の「筋道」です。挨拶の中で申し上げていますが、日本銀行の金融政策だけではなく、海外経済の改善とも相俟って、これまでもしかすると先送りされ、あるいは手控えられてきた感のある潜在的な設備投資需要に働き掛けて、強力な金融緩和が改善の波及経路に従って実際に効果を発揮していくということが、ここでいう「筋道」の内容です。3 点目ですが、仮に、オペレーション・ツイストを行った場合には、長期金利の低下を促す効果がある一方で、中短期ゾーンの金利の上昇を招く可能性があると認識しています。現時点では、そうしたリスクを冒す必要はないのではないかということです。

§16Ryuzo Miyao

言い換えると、緩和的な金融環境を維持していくという意味では、時間軸効果や中短期ゾーンの金利を低位安定させることを通じて、イールドカーブ全体に働き掛けていく現在の方法が有効と考えています。

§17Question

先程も質問がありましたが、3月の決定会合の中身は、この場では申し上げられないということですが、本日、委員が述べられている景気判断は――日本および海外の動向ですが――、3月に委員が考えられていたものと変化があるのかないのか、お伺いしたいと思います。

§18Ryuzo Miyao

繰り返しになりますが、3月の金融政策決定会合の議論に関わってくるため、議事要旨をご覧頂ければと思います。

§19Question

前回会合からまだ 1 ヶ月も経っておらず、その間、日本を含め、海外の経済動向に大きな変化があったように見受けられない気がします。本日公表されたものは、委員の正式な景気判断であると思いますが、そうすると、前回の会合で追加緩和を提案された理由がはっきりしません。先程から「議事要旨の公表を待って下さい」とおっしゃっていますが、ご自分の発言であれば、ある程度はお話しできる範囲でお話し頂くのが、それぞれの委員のアカウンタビリティだと思いますが、如何ですか。

§20Ryuzo Miyao

繰り返しになりますが、金融政策決定会合の議論の内容に関わってくることですので、詳細については、議事要旨をお待ち頂ければと思います。

§21Question

2 点お伺いします。1 つ目は、挨拶要旨 9 ページにある「強力な金融緩和がもたらす改善の波及経路」は、もっぱら、金融緩和が一因となって進んでいる円高の修正、株価の上昇、金利の低下をもって、「金融環境の改善」とおっしゃっていると思います。今は、ひと頃に比べれば円安、株高で推移しているから良いですが、これが再び円高に向かったり、株価が下落したりすれば、委員がおっしゃる「金融環境の改善」が消えていく可能性があるわけです。委員や日本銀行の方々は、それを止めるように一段の金融緩和に踏み切ることをお考えなのでしょうか。また、マネタリーベースが、3月にかけて、伸び率が急激に下がっています。こういう数字をもって、日銀が強力な金融緩和を推進してくれると期待している市場参加者その他は、「日銀はやる気が余りないのではないか」と思う可能性があります。この点についてご説明下さい。

§22Ryuzo Miyao

1 点目ですが、「金融環境の改善」ということで、金融市場の現実の動きは――冒頭挨拶でも触れていますが――、様々な要因が影響しています。基調的あるいは持続的な要因もあれば、短期的な要因もあると思います。それぞれを明確に区別することは難しいですが、私がここで申し上げているのは、現在観察されている動きの背後にある一つの要因として、波及経路に沿った基調的な動き、あるいは持続的な動きを反映している可能性があるのではないか、という認識を示しています。2 点目は、マネタリーベースの変化についてのご質問ですが、この2月、3月では、当座預金の変動に伴った動きが一つの要因として考えられます。財政資金の変動等によって、当座預金が比較的大きく変動したので、その結果がマネタリーベースの短期的な動きに現れた可能性があると思います。いずれにせよ、そうした動きの要因も含め、マネタリーベースの動き、マネー指標の動きについても、注意深く点検していきたいと思います。

§23Question

いくつか出た質問に関して、追加で 2 つ伺います。まず、先程、別の方の質問にもありましたが、「基金の歯止め」についてです。輪番オペで買っている国債には日銀券ルールがあることは分かりますが、基金についても歯止めが必要ではないかというのが質問の趣旨だと思います。輪番オペと基金の分を合わせると――基金は別ということですが――、結果的に、日銀券ルールの額に達してしまう可能性がある訳で、長期金利に影響する可能性はゼロではないと思います。基金の額について歯止めが必要ないのか、改めて確認させて下さい。もう 1 つは、挨拶要旨の8、9 ページでおっしゃっている「経路」や「筋道」に関してですが、委員のご認識として、2月の追加緩和後の円高修正や株高は、金融緩和の効果が相当大きかったとのご認識なのか、改めて確認させて下さい。

§24Ryuzo Miyao

繰り返しになりますが、1 点目の基金による国債買入れは、金融政策です。金融政策ということは、最後まで持たない可能性も当然あるわけですので、状況に応じてフレキシブルに対応し得るものと思います。一方、経済成長に合わせて現金通貨を市場に供給する目的での国債購入は、満期まで保有する固定的なものです。これは、日銀券ルールに基づいて管理するという区分けをしています。2 点目は、金融緩和の効果についての認識ですが、挨拶要旨でも触れている通り、金融緩和は、金融環境の改善の動きを形成する一つの要因であったとみています。そういう意味で、金融緩和の効果があったと私はみています。以上