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Bank of JapanPress conferenceApr 27, 2012Masaaki Shirakawa, Governor

総裁定例記者会見(2012年4月27日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融政策決定会合の結果について、展望レポートの内容も含めて、ポイントを説明して頂けますか。

§2Masaaki Shirakawa

日本銀行は、本日の金融政策決定会合において、資産買入等の基金について以下の決定を行い、金融緩和を一段と強化しました。第 1 に、資産買入等の基金を、65 兆円程度から 70 兆円程度に 5 兆円程度増額することにしました。その内訳については、長期国債の買入れを、10 兆円程度増額することとしました。さらに、ETFの買入れを 2 千億円程度、REITの買入れを百億円程度、それぞれ増額します。一方、期間 6 か月の固定金利オペについては、応札額が未達となるケース――いわゆる「札割れ」 ――が発生している状況を勘案し、5 兆円程度減額することとしました。第 2 に、基金の買入れ対象となる長期国債および社債の残存期間について、買入れを円滑に進め、長めの金利へ効果的に働き掛ける観点から、従来の「1年以上 2年以下」から、「1年以上 3年以下」に延長することにしました。第 3 に、基金の 70 兆円程度への増額は 2013年6月末を目途に完了する予定です。なお、本年末時点における基金の規模は、従来通り65 兆円程度と致します。次回までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」というこれまでの方針を維持することとしました。こうした決定の背景となる経済・物価情勢について、展望レポートの内容も含めて、ご説明します。

§3Masaaki Shirakawa

昨年末にかけて緊張が高まった欧州債務問題やそれに伴う国際金融市場の動きについては、各国政府や中央銀行の取組みにより、今回のG20 の声明でも確認された通り、当時に比べ、全体として落ち着きを取り戻しています。そうしたもとで、いわゆるテイル・リスク、すなわち、国際金融資本市場が動揺し、世界経済が大きく下振れる可能性は低下してきています。海外経済については、なお減速した状態から脱していないものの、最近では、米国経済は緩やかな回復が続くなど、改善の動きもみられています。先行きについては、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもとで、新興国・資源国に牽引される形で、徐々に成長率が高まっていくと見込まれます。以上の海外経済動向のもとで、わが国の経済は、なお横ばい圏内にありますが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつあります。先行きについては、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられます。先行きの物価については、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、展望レポートの見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高いとみています。

§4Masaaki Shirakawa

こうした中心的な見通しに対する実体経済面での上振れ・下振れ要因として、4 つの点を指摘しました。第1 に、国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた海外経済の動向、第 2 に、復興関連需要を巡る不確実性、第 3 に、企業や家計の中長期的な成長期待の動向、第 4 に――これは展望レポートにおいて単独に取り上げるのは初めてですが――、わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題です。物価の上振れ・下振れ要因としては、まず、実体経済の変動に伴う物価の変動が挙げられます。物価固有のリスクとしては、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向と輸入物価の動向の 2 つを意識しています。以上の経済・物価見通しについて、日本銀行が金融政策を行う際の基本的な枠組みである 2 つの柱に基づいて改めて整理すると、まず第 1 の柱については、やや長い目でみれば、日本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられます。第 2 の柱に基づきリスク要因を点検すると、景気面では、欧州債務問題に端を発するテイル・リスクは低下していますが、国際金融資本市場や海外経済を巡り、なお大きな不確実性が存在します。また、国際商品市況の一段の上昇が、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下などを通じて、国内民間需要を下押しする可能性もあります。

§5Masaaki Shirakawa

復興関連需要については、今後の強まり方や経済効果などを巡って不確実性があります。この間、中長期的な成長期待については、成長力強化への取組み次第では、上振れ・下振れ双方向の可能性があります。財政の持続可能性確保へ向けた取組みも、経済動向に大きな影響を及ぼし得る要因です。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを注視する必要があります。先行きの金融政策運営については、以上の 2 つの柱による点検を踏まえて、強力な金融緩和の推進と成長基盤強化の支援の双方を通じて、デフレ脱却に向けて適切な政策運営に努めていきます。具体的に申し上げると、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進しています。こうした日本銀行の政策は、長めの金利およびリスクプレミアムの低下や、金融市場の安定等を通じて、経済活動を支えています。また、実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと考えられます。本日決定した金融緩和の一段の強化は、これまでの措置の累積的な効果と併せて、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを、さらに確実なものにすると期待しています。

§6Masaaki Shirakawa

なお、こうした強力な金融緩和の推進に当たっては、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかどうかを確認していきます。この点、わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、極めて重要であると考えています。わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面しています。こうした課題を克服し、新たな経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取込みや内需の掘り起こしを進める必要があります。また、このような企業の前向きな活動を支えていくために、政府が環境整備に努めることや、民間金融機関が成長基盤強化に向けた取組みを行うことも重要です。このように、デフレから脱却していくためには、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取組みを続けていくことが重要であると考えています。

§7Question

足許の経済・物価情勢が特に下振れている様子もない中で、今回追加緩和を決めたわけですが、その理由について、もう少し詳しくご説明頂けますか。

§8Masaaki Shirakawa

前回 1月の中間評価との比較でみると、今回、景気・物価のいずれも上方修正しています。景気・物価情勢が改善する中で金融緩和を強化することは、確かに例としてはあまり多くありませんが、過去にもなかったわけではありません。先程申し上げた通り、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性が高いと判断していますが、そうした蓋然性をさらに確実なものにしたいというのが、私どもの判断です。先程の話と多少重複する面がありますが、足許の状況をみると、現在、前向きな経済活動に拡がりがみえるなど、持ち直しに向けた動きが明確になりつつあります。海外経済をみても、欧州のテイル・リスクの後退や、米国経済も緩やかに回復する状況になっています。国内経済では、企業収益や企業マインドの改善あるいは設備投資の増加もみられるようになっています。家計部門も消費は底堅いわけです。復興関連の需要も増加しています。物価については、大きな流れを問うことが重要です。2009年夏、消費者物価の前年比は-2.4%と、近年のボトムでした。それ以来、マイナス幅は徐々に縮小し、本日発表された 3月の消費者物価指数は、除く生鮮食品ベースで+0.2%です。この消費者物価指数を購入頻度別でみると、購入頻度の高い財・サービスについては――これはプラスの世界ですが――、徐々に上がってきています。

§9Masaaki Shirakawa

企業行動をみても ――これはまだ大きな変化ではないかもしれませんが――、高齢者需要に対応した、様々な商品・サービスの開発が成功する事例が増加しており、価格が少しずつ上がっていく動きも出てきています。全体の指数でみると、先行きについては、2012年度は+0.3%、2013年度は+0.7%、さらにその先をみると、遠からず1%に達するというのが私どもの判断です。私どもとしては、このような、今、経済・物価の面で起きているよいモメンタムを大事にしたいということです。いずれにせよ、一昨年の秋に包括緩和を始め、昨年は3月、8月、10月、そして本年2月と、矢継ぎ早に増額し、さらに、今回の増額が加わったということです。この1年強の間に、基金の規模にして35 兆円の増額、長期国債にして27.5兆円の増額であり、大変な増額を行ってきています。先程申し上げた通り、経済に前向きなモメンタムが少しずつ働き始めているわけです。それから、金融政策には、効果波及の長いラグがあります。私どもとしては、展望レポートで記述しているような上下双方向のリスクに十分に注意を払っていくわけですが、景気・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくりと見極めていきたいと思っています。

§10Question

日本はいつデフレから脱却できるとお考えかを教えて下さい。併せて、物価上昇率が「当面の『中長期的な物価安定の目途』である1%に遠からず達する可能性が高い」と公表文にありますが、1%になるのはいつとみているかについても教えて下さい。

§11Masaaki Shirakawa

物価についての見通しは、今回、展望レポートで詳しく記述したつもりです。物価が徐々に上昇していくメカニズムと、その具体的な見通しの数字、それからそれにまつわる上下双方向の要因についても、先程申し上げた通りです。繰り返しになりますが、そうした上下双方向のリスク要因を意識しながら毎回点検をしていくということなので、今この時点で具体的に「何年何月」と言えるような性格のものではありませんが、大事なことは、基本的なメカニズム、それからその背後にある様々なリスク要因を認識していくことだと思います。

§12Question

デフレ脱却に向けて日銀は金融緩和を強力に推進しているということだと思いますが、デフレ脱却に向けて政府が取り組むべきことを具体的に分かりやすく教えて頂けますか。

§13Masaaki Shirakawa

先程2 つのことを申し上げました。1 つ目は財政の健全化に向けた取組み、2 つ目は成長力強化のための環境の整備です。まず、前者ですが、財政の持続可能性は、中央銀行の政策目的である物価の安定と金融システムの安定の重要な前提条件です。この点に関する信認が崩れると、中央銀行の行う政策自体の有効性が低下するのみならず、日本経済全体に悪影響が生じます。また、財政に関して不確実性が残ると、現役世代を中心として、将来の所得に関する不確実性が高まって、そのことが支出を抑制することになり、これがデフレの原因にもなっているわけです。そういう意味で、財政の健全化の道筋をつけていくことは大事であり、これは政府だけではなく、国民全体としてしっかり取り組んでいく課題だと思っています。それから後者の成長力強化についてです。成長を切り拓いていくのは、いつの時代でも企業であり、また企業を担う企業経営者、イノベーターだと思います。その上で、民間企業自身も、現に様々な取組みをしていると思いますが、これからも是非してほしいし、そうした民間企業のイノベーティブな取組みをサポートする環境をしっかり整備していくということは政府の役割だと思っています。この2 つが政府に対する要望ということです。

§14Question

今の質問と関連でお伺いします。「遠からず」とあるのは、14年度も含めてという解釈でよろしいでしょうか。

§15Masaaki Shirakawa

今回の展望レポートでは 2013年度までの数字を出しており、2014年度については数字は出していません。今回、あえて「遠からず」と言及したのは、先般「中長期的な物価安定の目途」を示して、多くの方から、目途に到達していく姿、道筋を示すべきだというご意見を頂戴し、そのご意見について私どもも、もっともだと思ったからです。計数で示すのは、本年の秋の展望レポートになります。「遠からず」は2014年度を含めてかというご質問に対しては、2014年度を含めて、ということで、3年先の経済予測は、景気でも物価でも、一般的にかなり精度が落ちてくるわけですから、私どもとして、大きな見通しや判断を持ちつつも、そうした見通しに拘泥するわけではなく、現実の経済の展開に即してしっかり点検していきたいと思っています。

§16Question

今回、J-REITとETFの買入れも増額されましたが、J-REIT百億円とETF2 千億円の額の意味合いを教えて下さい。

§17Masaaki Shirakawa

J-REITとETFといったリスク性資産の買入れについては、市場の規模、中央銀行としての財務の健全性からみたリスク・耐久力という 2 つの観点から点検する必要があると思っています。J-REITについては、日本銀行が5%を超えて所有すると、大口所有者として登場してくることになり、そうしたことは市場経済の中で適切ではないため、自ずと保有限度があるわけです。また、流通市場自体が大きくありませんし、この5%の保有限度を考えると、買入余力自体がそれほどあるわけではないということです。ETFについては、マーケットのバスケットですから、そうした問題はありませんが、大きな価格変動リスクを抱えています。その価格変動リスクは、最終的には国民が負担することになります。私どもは、通貨を発行する権限を国民からお預かりしている立場にありますから、当然、そうしたことへの配慮も必要になってきます。一方、日本銀行の持っているこの力を使って、リスクプレミアムに働き掛けたいという、両方のバランスを取って、今回、2 千億円という金額に決定しました。

§18Question

長期国債と社債の買入れ対象の年限を「1年以上 2年以下」から「1年以上3年以下」にしましたが、3年以下の金利に働き掛け、その金利が下がることにより、今度は、企業が 3年よりも 5年などさらに長い期間で借りることになった場合、さらに長い金利へ働き掛けていく可能性もあるのかどうか、お教え下さい。

§19Masaaki Shirakawa

従来は「2年以下」で、今回は「3年以下」としましたが、こうしたゾーンに働き掛けを行っているのは、再三申し上げている通り、実際の日本企業の資金調達構造をみると、このゾーンが多いためです。米国の場合、金融債務は、企業よりも家計が多く、その家計の借入れは圧倒的にモーゲージが多いです。モーゲージの借入は30年近いものが多く、また、企業の資金調達手段として多い社債の平均的な発行期限も 13年あるいは 14年と、非常に長いわけです。そうした金融構造であると、長い金利に働き掛けていくことが有効と思いますが、日本では、そのように長い調達はさほど多くありません。これは、日本銀行が従来から 3年以下を意識して基金での買入れを行ってきた理由です。今後、企業において長い期間の調達が増えた場合にどうするのか、というご質問ですが、企業の資金調達構造は、資金調達主体である企業と投資家の両方の相互作用の結果として決まってきます。これが、どのようになっていくのかは、もちろん今の段階では予測できませんから、仮定の質問には答えられませんが、それぞれの国の金融構造に即して、最も有効な金融政策の手段を考えていく必要があります。

§20Question

2 点お願いします。1 つ目は、半月前の決定会合では全員一致で追加緩和を見送り、今回は全員一致で追加緩和ということですが、この半月という期間で、どのような情勢に対する判断の変化があったのですか。2 つ目は、遠からず1%ということですが、消費税増税などの影響はどうみているのか、教えて下さい。

§21Masaaki Shirakawa

前回会合との比較でのご質問ですが、3月の会合で、1 人の委員から提案がありました。その委員の関係でのご質問については、私がお答えすることは差し控えたいと思います。前回この席でも申し上げた通り、展望レポートにおいて、先々の経済・物価見通しについて、体系的・包括的に点検していくことは、非常に大事な機会です。改めて、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく蓋然性について点検し、そうした蓋然性が高いと判断した上で、足許の明るいモメンタムについて後押しすることが、最終的に私どもの目的達成に有効であると判断しました。それが、今回全員一致でこうした措置になったわけです。2 番目のご質問について。消費税については、これから国会での審議にかかる段階ですので、日本銀行として消費税の引上げを見通しの中に織り込んでいるわけではありません。消費税引上げがあった場合、過去の内外の事例からみて、引上げ前には駆込み需要が発生すると言えますし、物価についても税の転嫁分だけ一時的に上昇することはあります。そうしたことは、脚注としては記載していますが、見通し自体には織り込んでいません。

§22Question

総裁は、最近、中央銀行が国債をあまりに大量に買うことに対して懸念を示されていましたが、そういう中で、あえて今回、国債購入の枠を10 兆円増額した理由をお聞かせ下さい。

§23Masaaki Shirakawa

まず、基金を増額した理由については、先程申し上げたことと重なりますので説明を省略致します。ご質問は、「あり得べき副作用をどのように考えたのか」ということだと思います。まず、国債の買入れは、金融政策の目的を実現するために行っており、財政ファイナンスを目的としたものではありません。そうした趣旨を明らかにするために、現在、「基金」という形で分別管理しており、これにより、国民、市場参加者あるいはマスコミの方が、しっかり監視出来るようにしています。一方、国債の買入れが多額に上っていくと、そうした日本銀行の意思にかかわらず、マーケットで「中央銀行による財政ファイナンスではないか」という見方が出てくることが、一般論としては、もちろんあり得ると思います。仮にそうなると、金融政策の効果が損なわれるだけでなく、先程申し上げた通り、日本経済に大きな悪影響を与えます。従って、そうした事態を避けるためにも、財政健全化に向けた取組みをしっかり進めてほしいと思います。そして、そうした取組みがしっかり進められていると、日本銀行による国債の買入れがマネタイゼーションであるとは誤解されないと思います。それから、ご質問には、マネタイゼーション、財政ファイナンスの問題から離れ、「低金利が続くことの副作用をどう考えたのか」という、もう少し一般的なご趣旨もあったように思います。

§24Masaaki Shirakawa

この世の中には、効果だけあってコストが何もない政策手段というものは存在しないだろうと思います。従って、どの中央銀行も、必ず効果とコストを比較して、最適な政策を追求しているということです。日本銀行も全く同じです。現在のような異例の状況、つまり、ゼロ金利が長く続き、中央銀行のバランスシートが各国とも非常に拡大している中で、今申し上げた効果とコストの比較は重要です。私が申し上げたかったことは、そうした副作用があるから金融緩和をするべきではないとか、金融緩和を止めるべきということでは全くありません。そうした副作用が小さくなるように、構造改革にしっかり取り組んでほしいというのが本意です。

§25Question

2 点ご質問します。1 つは、先程、「1%に遠からず達する」との点を説明されていましたが、この文言が入ったことで、具体的に時間軸が短くなったと受け止める向きもあります。この点に関して、14年度以降の政策へのインプリケーションをご説明願います。2 つ目は、 FRBなどは、緩和効果がどのように経済へ浸透していくか、波及経路を細かく説明していますが、日銀として、今回の資産買入れの増額が、何にどのように波及してデフレ脱却につながるのか、その波及経路をもう一度細かく説明して下さい。

§26Masaaki Shirakawa

まず、前者の時間軸に関する質問です。日本銀行の時間軸に関する考え方は、全く変わっていません。2月に決定した時、時間軸に関連して2 つのことを申し上げたと思います。1 つ目は、消費者物価の前年比上昇率 1%が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等により、強力な金融緩和を推進していくということです。2 つ目は、金融面の不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的成長の観点から問題が生じていないか確認する、ということを申し上げました。この 2 つの考え方は、全く変わっていません。物価については、私どもとして最大限の努力をして、的確な予測をしたいと思っていますが、予測には上振れ要因も下振れ要因もあります。そうした物価の動きを、毎回の決定会合でしっかり点検していきたいということです。従って、時間軸に関する考え方が変わったということでは全くありません。それから、2 つ目の金融緩和の効果がどのように及んでいくのかということです。私どももFRBと同じように色々な分析を行っていますし、そうした分析の成果のいくつかは公表しています。先程の説明と多少重なりますが、私は、3つないし4 つくらいのルートがあると考えています。

§27Masaaki Shirakawa

1 つは、基金の買入れによって、これは需給的な観点からですが、当該金融資産の価格が上がり、金利が下がることで、企業の資金調達コストが低下するということです。2 つ目は、先程の時間軸効果です。景気が持ち直し、企業の収益率が向上していくもとでも、消費者物価について前年比 1%が見通せない間は、実質的なゼロ金利政策等の強力な緩和政策を継続します。そうすると、同じゼロ金利であっても、その景気刺激効果はどんどん強くなっていくわけです。半年前、1年前のゼロ金利と、今のゼロ金利を考えると、今のゼロ金利の方が刺激効果は強くなっています。物価はまだ前年比1%に達するとは見通せていませんが、私どもの見通し通りに推移する一方、ゼロ金利を続けるとなると、景気刺激効果がますます高まっていくことになります。これが2 つ目です。3 つ目は、潤沢な資金供給を通じて金融市場の安定が確保されるという安心感です。企業が長期的な投資に取り組むためには、この金融市場の安定は、現在のような不確実性が高い時には、特に大きい要素です。4 つ目は、金融政策の固有の効果では必ずしもありませんが、私どもとしては、この極めて緩和的な金融環境を大いに活用してほしいと常に申し上げています。

§28Masaaki Shirakawa

様々な成長力強化の取組みの結果、あるいは規制緩和の結果、色々な投資のプロジェクトの採算性が上がってくると、従来は刺激効果を持たなかったものが顕在化してくるわけです。色々比喩を考えましたが――あまり適切ではないかもしれませんが――、ちょうど、オセロで一斉に黒が白に変わっていくように、これまでは強力な金融緩和を十分に活かしきっていなかったけれど、成長力強化の取組みが実を結んでいけば、その効果が顕在化して、どんどん黒が白に変わっていくということもあります。これは、いわば累積的な緩和の効果が顕在化していくということです。そうした形で経済が改善してくると、人々のマインドも好転していきます。こうした効果を期待しています。

§29Question

2 点伺います。1 点目は、国債買入れと銀行券ルールとの関係ですが、先程も分別管理というご説明をされていますが、今回、さらに長国の買入額を増やすことで、相当な額が日銀のバランスシートに載ってくると思います。今後の見通しとして、基金の分と輪番分を合わせると、日銀券の量に遠からず達すると思いますが、いつ頃達するという見通しですか。また、国債の残存期間を 3年まで延ばしていますが、輪番オペのデュレーションは 4年くらいだと思いますので、どんどん区別がつかなくなってくると思います。それにより、日銀券ルールが事実上、形骸化するという可能性もあるかと思います。どんどん日銀券を上回る額を買うことに躊躇はないのですか。これが 1 点目です。2 点目は、今回、追加緩和について事前に市場でも相当予測されていました。政治からもかなり、意見というか緩和への期待があって、特に一部の閣僚から具体的な手段への言及までありました。その他、日銀法改正への議論も含め、相当圧力が高まっていますが、そういった状況について、総裁はどういうお考えを持っているのか、中央銀行の独立性が侵されかねないことについて、どうお考えなのかお伺いします。

§30Masaaki Shirakawa

まず、国債の保有額が銀行券の発行額を上回るのはいつ頃かということです。もちろん、銀行券の増加のテンポに依存します。私どもの国債買入れテンポは、既に発表しており機械的に計算できますので、いつ頃上回るかは、銀行券の伸びに依存します。いずれにせよ、最近の銀行券の伸びと私どもが発表する国債買入れ金額から計算すると、この年末までに、銀行券を上回る状況になろうかと思います。これは、繰り返しになりますが、色々な前提の置き方次第で変わります。連休明けに、毎年公表している金融調節の年報を公表しますが、その中で、ご質問の件についても、グラフをもってお示ししたいと思っています。「躊躇がないのか」とのご質問ですが、先程もお答えした通り、私どもは、国債買入れを金融政策の目的遂行のために行っています。もちろん、これに伴う潜在的な問題点を意識した上で、それを最小限にする工夫をしながらやっていきます。最終的に日本銀行が財政ファイナンスを行わないという意思を、私も他の政策委員会メンバーも一致しています。この点は、私どもの言葉を信用して頂きたいと思いますし、私どもの行動をしっかり監視して頂きたいと思っています。また、様々な声や動きについてどう思うのかというご質問です。

§31Masaaki Shirakawa

経済・金融の安定を実現するためには、短期的な利害からは中立的な専門家組織が、やや長い目でみて金融政策を運営することが必要であり、そのために独立した中央銀行が不可欠であるというのが、多くの苦い歴史の教訓を踏まえて、現在世界で確立されている考えだと思います。このような考え方のもとで、実際に経済・金融の安定を実現するためには、まず何よりも、中央銀行自身が的確な判断に基づいて的確に政策を遂行していくことが大事ですし、同時に、そうした中央銀行の独立性を尊重するという習慣が社会に深く根付いていることが不可欠です。日本銀行としては、様々な声に謙虚に耳を傾けた上で、中央銀行として責任を持って金融政策を遂行していきたいと思っています。

§32Question

先程、先行きの物価について、2014年度を含めて、遠からず 1%という目途が達成される可能性が高いとおっしゃいましたが、一方で、本日発表の展望レポートによる政策委員の大勢見通しの対象期間では、消費者物価の前年比 1%が達成される見通しは立っていないわけです。大勢見通しにおいて1%が達成出来る見通しになっていないことが、今回の金融緩和の強化の決定の理由として、意味を持っていたのですか。もう 1 点、今後も 3 か月おきに大勢見通しが出るわけですが、そういった見通しは、今後の政策決定、政策判断にどの程度の意味を持っていくのですか。この 2 点について、教えて下さい。

§33Masaaki Shirakawa

最初のご質問ですが、今回の見通し期間である 2013年度までにおいて、見通し中央値で消費者物価の前年比 1%が見通せていないことが、今回の金融緩和強化の理由かという問いについてお答えすると、それはそうではありません。私どもの判断は、標準的・中心的な見通しの実現可能性を、より確かなものにしていくためということです。もちろん、私どもは、1%という姿を出来るだけ早く達成したいと思っています。しかし、金融政策の効果波及には、かなり長いラグがあるわけです。そのラグを無視して、無理に金融緩和を強化していくと、却って物価の安定が損なわれていくことになります。例えば、長期国債の月間買入れ額は、現状でも大変に大きな金額ですが、そういう中で、最適なスピードを超えてアグレッシブな買入れを行っていくと、確かに一時的に長期金利は下がるかもしれませんが、逆に中央銀行に過度に依存した市場になる結果、今度は何らかのきっかけで反転上昇することも起こり得るわけです。そうなると、金融機関にも大きな影響を与えることになり、結果的には、物価の安定、経済の安定自体を損なってしまうことになります。従って、私どもとしては、最適なスピードということも意識しながら、政策運営を行っています。大勢見通しの位置付けについてですが、私どもの金融政策の基本的な枠組みは、2 つの柱です。

§34Masaaki Shirakawa

第1 の柱で中心的な見通しを点検し、第2 の柱でそうした見通しに関わる様々なリスク要因、あるいは見通し期間を超えた、もう少し長いタイムスパンでのリスク要因を点検していくという、2 つの柱に基づくものです。大勢見通しの数字は、もちろん、これはこれで重要なものですが、私どもとしては、1 つ 1 つの数字自体より、どのようなメカニズムで、経済・物価がどういう方向に向かっているのかという方により力点を置いています。そうしたことを説明する上で、もちろん、数字は一定の優位性があるので「参考」としていつも出していますが、あくまでも、大きなメカニズムを中心に考えて頂きたいと思っています。

§35Question

2 点お伺いします。本日、買入れる国債の残存年限を「1年以上 2年以下」から「1年以上 3年以下」に延長するということですが、これを考える時、長めの国債を買えば買うほど、財政ファイナンスというか、そういったことを連想する人も増えてくると思います。そういった逡巡というか、「2年」から延長することについて財政ファイナンスということも懸念しなければならないと総裁はお考えになったのかを教えて下さい。2 点目ですが、総裁は先程、中心的なシナリオの実現可能性をより確かなものにするために、とおっしゃいました。それならば、5月と 6月の決定会合が終わって 7月にはまた中間評価があるわけなので、その度毎に、やはり金融緩和をすればよいのではないか、という考え方を持つ人も出てくると思いますが、今後の金融政策運営の考え方について、総裁のお考えをもう一度お聞かせ下さい。

§36Masaaki Shirakawa

残存年限 3年以下についてですが、もちろん、先程から申し上げている通り、財政ファイナンスと受け取られないように最大限の注意をしなければならないと思っています。しかし、この 3年への延長については、日本の企業の資金調達構造を考えると、合理的な判断だと思っています。従来は残存年限を 2年以下としていましたが、2年としたことによって、同時に隣接する3年にも染み出し効果があったと思います。2年物金利が既にかなり低下していますので、そういう意味で2年から3年に延ばすのは、自然だと思います。2 つ目は、先程どなたかのご質問にお答えしたことと重なりますが、金融政策の効果の波及には時間が掛かるわけです。従って、経済・物価がどういう方向に向かっているのかが重要ということです。今回は、先程申し上げたように、望ましい方向に向かっていることを確認したわけですし、そのパス自体も前回の中間評価に比べると上振れしたわけです。そうであれば、ここで緩和をしなくてもよいではないかというのがご質問の趣旨だと思いますが、私どもとしては、確かに、上振れている時に緩和を強化するということは、あまり例はありませんが、日本経済の長年の課題であった物価安定のもとでの持続的成長経路に明るい動きがみえ始めたこのタイミングで、このモメンタムを大事に育てたいということです。

§37Masaaki Shirakawa

従って、毎月毎月そういう思想でやっていく、ということではもちろんありません。大事なことは、大きな流れとしてどういう方向に向かっているのかということですし、そうしたゴールに向かう上で、日本銀行がどういう役割を果たしているのかということについて、皆さんの理解をしっかり得られているかということです。私ども自身はあまり宣伝が上手ではありませんから十分ではないのかもしれませんが、私どもの意思、気持ちはかなり伝わっているのではないかと思います。いずれにせよ、私どもとしては、今後とも上下双方向のリスク要因に注意を払っていくわけですが、景気・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極めたいと思っています。

§38Question

2 点お伺いします。1 点目ですが、物価に関しては国内の需給ギャップだけではなくて、例えば中国等からの輸入品の価格が中国での賃金上昇によってかなり上がってきており、今までもデフレの圧力は緩和してきていると思うのですが、今後の見通しに関連して、この点を日銀としてはどう考えていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。2 点目は、先程から何回もご説明されていますが、「1%に遠からず達する」だろうと明記されているのですが、そこに達した後の政策はどのようにイメージされているのか、可能な範囲で教えて下さい。

§39Masaaki Shirakawa

最初のご質問ですが、本日の決定会合でもそうした問題意識に基づく議論も行いました。将来の物価については、この記者会見では、よく需給ギャップ、あるいは予想インフレ率というエコノミストの使う言葉を用いて説明していますが、多少説明の仕方を変えて、今のご質問にお答えしたいと思います。月々の動きとは別に、少し長いタイムスパンで将来の物価をみた時に、最近いくつか興味深い動きが出ているという感じがします。1 つ目は、ご質問の中国での賃金上昇の結果、労働集約的な財の価格が上がってくることが、日本だけではなく世界各国で起こっていくのではないかという問題意識です。確かに上がっていくという面もありますし、逆にそうではなくて、ミャンマーやベトナムなど色々な国、あるいは中国の内陸部に生産拠点が移っていくということかも知れませんが、色々なシナリオが考えられます。いずれにせよ、中国での賃金上昇、あるいはもう少し一般的に新興国の経済の拡大に伴う資源価格の上昇が、色々な形で世界の経済・物価情勢にも影響を与えていくということが 1 つの注目点であろうと思います。2 つ目は、先程も少し触れましたが、今、日本においてシニア層向けの様々な商品開発が進んでいるということです。

§40Masaaki Shirakawa

本来シニア層というのは、年齢を重ねるにつれ、所得水準も生活環境も嗜好もそれぞれに異なってくるわけですから、その人その人のニーズに合ったサービスを提供していくことに成功すれば、潜在的に非常に大きなマーケットになります。若者のマーケットとは、やはり違うマーケットだと思います。そうしたマーケットの開拓に成功していくと、人々が付加価値を認めていることになるわけですから、より高い値段を払おうということであり、価格が上がっていく 1 つのモメンタムになっていくのだろうと思います。いったんそうした動きが出てくると、人々が感じる物価に関する感覚も少しずつ変わってくる、それが予想インフレ率だと思います。予想インフレ率というと何だか抽象的・無機的な感じがしますが、多分そういうふうに人々が感じる物価の動きということであろうと思います。そういう意味で注意をしてみていきたいと思っています。2 つ目のご質問、1%に達した後の政策のイメージですが、もちろん、私どもとして1%という状況をできるだけ早く実現したいと思っていますが、今はとにかく1%という状況をしっかりと見通せることがまず先です。従って、今、達成した後の政策について語るというのは、あまりにも時期尚早だなという感じがします。

§41Masaaki Shirakawa

抽象的な言い方になりますが、どういう環境になっても、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していくという、本来の金融政策の目的に照らして、その時点で的確に判断していきたいということに、現時点ではとどめたいと思います。

§42Question

先程から何度か、今回の緩和について、「明るい動きを後押しする」とおっしゃっていました。その一方で、「ただし、効果が出てくるには時間がかかる」とおっしゃっていました。では、この明るい動きを、マッチに火を点けると言いますか、加速させるためには、今すぐに必要なことは何か、一体どのようにお考えでしょうか。

§43Masaaki Shirakawa

今、いみじくも「マッチに火を点ける」という表現を使われました。振り返ると、日本の緩やかな物価下落は、ある日突然に起きたわけではなく、徐々に徐々に起きてきたという印象です。私が好んで使う比喩に即して言えば、「基礎体力が少しずつ落ちてきて、その結果、体温が下がってきた」ということです。従って、その人の体温がいきなりグッと上がるということではなく、やはり基礎体力を上げていき、徐々に徐々に身体が温まり、物価が上がってくるということだと思います。これは即効薬ではありませんが、現に私どもが取り組んでいることをしっかりやっていくということです。つまり、民間企業のイノベーションに向けた動き、それを支える金融機関の融資、民間の取組みをサポートする政府による環境作り、日本銀行による緩和的な金融環境を持続的に提供するという、この4 つの努力を重ねていき、その結果として、少しずつ体力がつき、体温が上がってくると考えています。逆に、直ちにパッと火が点くことは、多分、一過性のものに終わってしまうということだと思います。もし、そのように直ぐに火が点くということであれば、逆に、問題はそれほど難しくないということです。私どもが直面している問題は非常に厳しいものであることを認識した上で、しっかりと課題に取り組むことが大事だというのが、私の基本的な考えです。

§44Question

資産買入等の基金についてですが、今回一部減額して、他方では増額しており、そうしたケースは初めてだと思います。固定金利オペの札割れが起きているという意味では、緩和が十分できているという見方も可能ですが、一方を減らして他方を増やすことについて、その考え方を改めて教えて下さい。

§45Masaaki Shirakawa

札割れが生じているという事実は、民間金融機関に資金が十分にある、従って、これ以上の資金は要らないというシグナルであるとも言えます。量の面ではそうなのですが、金利の面では、短期金利がゼロになっている中で、金融緩和効果を作り出していくためには、長めの金利あるいはリスクプレミアムに働き掛ける途しか残っていないわけです。そのような観点からすると、主として 1年以下の短期金利である固定金利オペの世界ではなく、残存期間 3年以下と期間を延長したゾーンで買入れを行うことは、合理的な判断だと思います。

§46Question

いくつか構造的な問題への取組みについてお伺いしましたが、政府では、4月からデフレ脱却等経済状況検討会議をつくり、白川総裁もオブザーバーとして出席されています。この会議の内容について側聞するに、構造問題についてもかなり突っ込んだ議論をするという狙いと聞いています。政府のそうした狙いについて、総裁のご意見をお伺いしたいと同時に、この会議では、2013年、つまり消費税の引上げ前の段階でデフレ脱却の方向性ないし経済を上向きにすることを確実にするという方向性を目指しているとも聞いています。こうした点について、総裁のご意見をお聞かせ下さい。

§47Masaaki Shirakawa

ご質問のデフレ脱却等経済状況検討会議では、初回会合で古川大臣から――正確な文言は記憶していませんが――、デフレを生み出しやすい日本経済の体質改善に取り組んでいきたいというご説明がありました。私もこうした問題意識については、全くその通りだと思います。先程申し上げた、様々な構造改革の努力や財政健全化への道筋をつけることも、長い目でみてデフレ脱却に対して非常に有効な手段です。また、企業が新しい価値を創造して価格を引き上げていくことを社会として受け入れていくということ、ある種の規範、空気を作っていくことも大事だと思います。政府の政策について、私がコメントするのは適切ではないため差し控えますが、政府が出している中長期の経済見通しをみても、成長戦略シナリオと慎重シナリオという 2 つのシナリオを提示しています。このうち、成長戦略シナリオは意欲的な政策努力の目標という位置付けですが、こうしたことに取り組めば、成長率も物価上昇率も高まっていくという画が示されています。私どもも、基本的な見方は同じ判断に立っており、できるだけ早く、そうした望ましい姿を実現するような努力を、政府だけではなく様々な主体がしっかり取り組んでいくことが必要と考えています。また、様々な民間企業の取組み、イノベーションを社会として受け入れていくことが必要です。

§48Masaaki Shirakawa

誰かがデフレを解決してくれるのではなく、各主体がそうしたことに取り組んでいくことが非常に大事だと思っています。

§49Question

本日、総裁は財政健全化の重要性を指摘する一方、今回の追加緩和は財政ファイナンスではないことを強調されました。ただ、現在の国会情勢をみると、消費税引上げ法案が全く進んでいません。そうした中で、国債買入れを増額する、あるいは年限を延ばすことが、却って財政や通貨に対する信認を損なうのではないかという感じがしますが、ご見解をお聞かせ下さい。

§50Masaaki Shirakawa

繰り返しになりますが、日本銀行として、金融政策の目的を達成するために、今回の金融緩和を決定しました。日本銀行は、財政ファイナンスを行う考えは全くありません。日本銀行の金融政策が所期の効果を上げていくためにも、日本経済の健全な発展のためにも、財政の健全化に取り組むことは大事であり、是非、取り組んでほしいと思います。なお、消費税について、私が具体的なコメントをすることは差し控えますが、財政健全化への取組みは大事だと思います。

§51Question

固定金利オペの 5 兆円の減額について、2 点お伺いします。1 点目は、今後も市場動向次第では減額措置があり得るのか、2 点目は、過去にコミットした金額を減額すると、今後のコミットメントへの信頼が失われる恐れはないのかについてお教え下さい。

§52Masaaki Shirakawa

札割れの状況は、マーケットの状況如何で変わってきます。過去のオペへの応札状況をみると、ある時は非常に低調になり、そうした傾向が続くかと思えば、また順調になるということを何回か繰り返しています。従って、将来の札割れについても、マーケットの状況によるとしか言いようがないと思います。私どもが包括緩和のもとで基金を設けた趣旨は、再々申し上げている通り、長めの金利やリスクプレミアムに働きかけることが目的です。その全体としての目的を達成する上では、いくつかのコンポーネントがあります。目的遂行のために一番有効な方法を、常に金融経済の環境や市場の変化に基づいて見直していくことが、信認を低下させるとは思いません。むしろ、市場の状況が変わったにもかかわらず、最初に決めたことをひたすら実行するということでは、最終目的は実現できません。私どもの考え方をしっかり説明することにより、信認は維持されていくと思っています。以上