総裁定例記者会見(2012年5月23日)要旨
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§1Question
本日の金融政策決定会合の結果について、ポイントをご説明頂けますか。
§2Masaaki Shirakawa
本日の決定会合では、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」というこれまでの金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。まず、海外経済をみると、全体としてなお減速した状態から脱していませんが、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられています。こうしたもとで、わが国の景気の現状については、4月の展望レポートでお示ししたように、「なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」と判断しています。需要項目別の動きをみると、輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっています。国内需要では、公共投資は増加しています。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にあります。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にあります。生産は、なお横ばい圏内にありますが、以上の内外需要を反映して、持ち直しに向かう動きがみられています。先週公表された実質GDPは、昨年10~12月期の前期比が上方修正され、横ばいでの伸びとなったあと、1~3月期は、個人消費や公共投資といった内需を中心に、前期比年率+4.1%としっかりとした伸びになりました。
§3Masaaki Shirakawa
この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いています。すなわち、コールレートが極めて低い水準で推移する中で、企業の資金調達コストは緩やかに低下しています。CP市場では、良好な発行環境が続いています。社債市場の発行環境も、総じてみれば良好な状態が続いています。また、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いており、企業の資金繰りも、総じてみれば改善した状態にあります。中小企業の資金繰りに関する指標をみると、基調的に改善が続いており、一部の指標については、2000年以降の平均的な水準を上回っています。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2月は+0.1%、3月は+0.2%と、このところ概ねゼロ%となっています。わが国経済の先行きについては、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられます。もっとも、以上の中心的な見通しを巡っては、様々な不確実性が存在することには注意が必要です。
§4Masaaki Shirakawa
まず、欧州債務問題の展開についてみると、国際金融資本市場の動揺から世界経済が大きく下振れるというテイル・リスクは、昨年末頃との比較では低下しているとみられますが、欧州各国の財政・経済構造改革を巡る情勢の不透明感が増す中で、最も強く意識しておくべきリスク要因だと考えています。国際金融資本市場では、短期資金市場は総じて落ち着いた状況にありますが、欧州債務問題を巡る懸念等から、欧州周縁国の国債利回りが上昇するなど、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要があります。米国経済については、企業部門が比較的堅調であるなど、改善の動きがみられていますが、家計のバランスシート調整圧力が残る中で、景気の回復力について注意深くみていく必要があります。世界経済の牽引役として期待される新興国・資源国についても、新興国が物価安定と成長を両立する形で経済がソフトランディングできるかどうか、なお不透明感が高い状況が続いています。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要があります。日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識しています。この課題は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものです。
§5Masaaki Shirakawa
金融面からの後押しという点では、日本銀行は強力な金融緩和を推進しており、来年6月末にかけて、基金による長期国債買入れの残高をあと 20 兆円程度積み増していく途上にあります。日本銀行としては、引き続き適切な政策運営に努めて参ります。
§6Question
ギリシャの再選挙実施が決まる中、欧州債務問題が再び緊迫してきていますが、債務問題のリスク評価についてもう少し踏み込んでご説明頂けますか。
§7Masaaki Shirakawa
最近の欧州情勢をみると、ギリシャでは、連立政権樹立に向けた協議が不調に終わり、再度総選挙が行われることになったほか、スペインでは、財政再建に対する不透明感が増す中、不良債権の増加から金融機関の自己資本に対する懸念が高まるなど、一部で不安定な動きがみられています。ギリシャ、スペインの国債利回りは上昇しているほか、世界経済の先行きに対する不透明感も加わって、投資家のスタンスも全般的に慎重化しています。こうした中で、欧州経済は、輸出に持ち直しの動きがみられるものの、域内の内需低迷が足枷となって停滞しています。また、各国間の景況感格差は拡がっています。ドイツでは、1~3月の成長率がプラスとなったほか、失業率が東西ドイツ統合以降の最低水準を記録するなど、景気は底堅いと言えます。一方、イタリアやスペインなど周縁国では、厳しいクレジット環境と緊縮財政の継続から景況感が悪化しています。建設投資など内需の減少からマイナス成長が続いており、失業率も上昇しています。先行き、欧州債務問題の展開によっては、財政、金融システム、実体経済、三者間の負の相乗作用が強まり、周縁国を中心に欧州経済が下振れる可能性もあります。
§8Masaaki Shirakawa
こうしたもとで、債務問題を抱える欧州の国々は、欧州債務問題の抜本的な解決に向けて、中長期的な取組みである財政再建・構造改革と、短期的な成長をどのように両立させるのか、という難しい課題に直面しています。これを乗り越えていくためには、各国政府は、抜本的な歳入・歳出の見直しを通じて財政健全化を実現するとともに、産業競争力強化や対外不均衡是正につながる、労働市場改革や競争促進などの構造改革にもしっかりと取り組んでいくことが不可欠です。同時に、中央銀行の立場から申し上げると、金融機関の自己資本の充実を含め、成長の基盤となる金融システムの安定と強化に十分目配りすることが重要であると考えています。この最後の点について申し上げると、資金市場の安定が極めて重要な鍵を握っています。この点、現在のところ、ECBによる大量の資金供給の効果に加え、突発的な金融市場の混乱に対応するファイヤーウォールの拡充などもあり、銀行間の資金調達市場は総じて安定しています。しかし、こうした措置はあくまでも「時間を買う」措置であり、確保された時間は限られています。各国政府や関係当局が、こうした認識に立って、直面する課題に迅速かつ着実に取り組み、欧州経済の持続的な成長と安定へ向けて展望を拓いていくことを強く期待しています。
§9Question
2 点あります。1 点目は、昨日、大手格付会社が日本国債の格付けを一段階下げたことについてのご所感と、前回の展望レポートで、財政再建に向けて取組みが不十分であると市場に評価された場合、金融機関の経営や日本経済に悪影響が及ぶとありましたが、改めて財政再建への取組みをどのように評価されているのでしょうか。2 点目が、三菱東京UFJ銀行のイランの口座が米国の裁判所の指示を受けて凍結されており、この解決策として日銀の口座で代替する案が上がっているようですが、これは可能なのか、実現の可能性についてお教え下さい。
§10Masaaki Shirakawa
まず、格下げについてですが、各格付機関の判断について、私からコメントすることは適当でないと思います。あくまで一般論として申し上げると、現在、日本の国債は円滑に消化されています。このことは、市場参加者が、現在の日本の財政状況は確かに厳しいけれども、最終的に財政再建にしっかり取り組む意思と能力を有していると判断していることを表していると考えています。わが国において、大幅な財政赤字が続き、一般政府債務残高が極めて高い水準となっていることを考えると、成長力の引上げとともに、財政の持続可能性を確保するための取組みを着実に進めていくことが、極めて重要です。前回申し上げた通り、財政の持続可能性は、物価の安定と金融システムの安定の基礎です。また、将来の財政に対する不安があると、現役世代の消費支出に対する抑制要因にもなり、そのこと自体がまた、経済の低成長あるいはデフレの原因にもなっていくと考えています。第 2 問の三菱東京UFJ銀行についてのご質問ですが、日本銀行は、各国中央銀行や国際機関に対し、円資産を管理・運用するための預金等のサービスを提供していますが、個別の取引についてはコメントしないことになっていますので、発言を差し控えたいと思います。
§11Question
ギリシャ問題に関連してお伺いします。日本の金融システムおよび実体経済にどういう形でリスクが及ぶ可能性があるのかについて、その波及経路と、それから、日本への影響の可能性がどのくらいあるとみておけばよいのか、少し詳しく教えて頂けますか。
§12Masaaki Shirakawa
ギリシャの問題あるいは欧州債務問題の日本経済に対する影響という点で、色々な整理の仕方が可能ですが、私はいつも3 点に分けて整理しています。1 つ目は、貿易を通じる経路です。欧州の経済が、先程申し上げたリスク要因が顕在化して下振れていくと、日本の欧州に対する輸出が直接減少すると同時に、欧州向けの輸出の多い国、例えば中国向けの輸出を通じて間接的に日本経済に影響する。これが第 1 のルートです。第 2 のルートは、欧州問題が深刻化し、投資家のリスク回避姿勢が強まってくると、これまでの経験からすれば、安全通貨の1 つである円が買われる、円高になるという傾向が生まれやすくなってきます。そのことが企業マインドあるいは収益等を通じて、日本経済を下押しする要因となります。3 番目が、資金市場が不安定化すると、そのことが世界の金融市場の不安定化につながり、全般的に経済の下押し要因となるということです。最後の資金市場の不安定化は、リーマンショックの時もそうですが、これが一番大事な鍵を握っています。先程、欧州問題に関する質問の最後で、この資金市場の話を申し上げましたが、現在のところ、資金市場は総じて安定しています。私としては、第3 の要因は、本質的であり一番重要なルートだと思っています。
§13Masaaki Shirakawa
それぞれの確率、可能性についてですが、現実に、欧州経済が地域別にみて一番弱いという言葉が、この債務問題が既に投影していることを示しているわけであり、これがより深刻な形にならないように、先程申し上げた取組みをしっかり進めてもらいたいと考えています。
§14Question
国債買入れオペの札割れが相次いでいますが、今後、追加緩和などが必要になってきた時、その手段が限られることにもなってくるかも知れません。今後、その運用に当たり、どのような態度で臨まれるのか、また、銀行の資金調達需要について、どうみておられるのかお伺いします。もう 1 つは、先程、ギリシャや欧州情勢の日本への影響についてのお話がありましたが、米国への影響等をどうみればいいか、お願い致します。
§15Masaaki Shirakawa
まず、国債買入れの「札割れ」についてのご質問ですが、ご案内の通り、5月16日にオファーした資産買入等の基金の長期国債買入れのうち、「残存期間 1年以上 2年以下」については、いわゆる「札割れ」が生じました。5月18日にオファーした成長通貨オペでも、「残存期間1年以下」について「札割れ」が生じました。「札割れ」が生じた背景としては、2 点あると思います。第 1 点は、こうしたゾーンの金利水準が一段と低下していることです。これは、日本銀行による金融緩和効果がそれだけ強力に浸透しているということでもあり、その意味では、意図した効果が実現しているということだと思います。もともと金融緩和を進めていけば――現在、強力な金融緩和を進めているわけですが――、こうした「札割れ」が発生する可能性が高まることは意識しており、先月27日の緩和措置の際にも、この観点から固定金利オペを減額しました。もう1 つの「札割れ」の要因は、このところ国際金融資本市場で神経質な動きもみられる中、いわゆる「質への逃避」が影響し、安全資産としての国債の需要が高まっている側面もあると思います。こうした動きが今後どのように展開していくかについては、その背後にある欧州情勢と併せて注意深く点検していきます。日本銀行としては、引き続き、オペの応札状況や市場全般の情勢を見極めながら、金融資産の買入れ等を着実に進めていく方針です。
§16Masaaki Shirakawa
次に、欧州問題が米国経済に与える影響についてのご質問です。先程申し上げた通り、貿易チャネル、為替チャネル、金融チャネルと整理した場合、貿易チャネルについては、日本、米国とも、欧州に対する輸出比率自体はそう高いわけではありません。一方、為替チャネルについては、円とドルのレートがどうなっていくかということですが、いずれにせよ、円、ドルとも、一般的には安全通貨とみられる傾向があるということだと思います。最後に、資金市場を通じる金融チャネルですが、もし不測の事態が起これば、国、地域を問わず全世界に影響が及ぶため、そうした事態は絶対に避けなければいけないと思っています。それから、先程、日本に関するご質問で1 つ言及することを失念致しました。日本の金融機関の欧州周縁国に対するエクスポージャー自体は大きくありません。その意味で、金融機関を通じる直接的な影響は限定的と思っています。
§17Question
「札割れ」について、このような状況が頻発していくと、日銀のマネーの供給が計画通り進まないことが生じかねないわけです。そうした中で、例えば、先般、3年まで延ばした残存年限をさらに延ばすとか、当座預金の付利を引き下げるといったことが、今後、選択肢として入ってくるのでしょうか。
§18Masaaki Shirakawa
私どもは、基金の買入れ残高について、本年末の目途、来年6月末の目途を示しています。この目途を確実に達成していくという方針は変わっていません。マーケットのことですので、時々、色々な変化がありますが、私どもが持っている手段を使って確実に達成していくということです。当座預金の付利水準の引下げについては、日本銀行として金融緩和政策を行うことによる金利低下の効果と、他方で市場金利が低下し過ぎて短期金融市場における流動性が低下し、いざという時に市場参加者が資金調達を行おうとしてもなかなかできないという副作用があります。その双方を勘案した上で、現在の枠組み、つまり、「0.1%の超過準備への付利金利と、0~0.1%程度の金利誘導目標」という組合せのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されると考えています。従って、それらの金利の更なる引下げは、デメリットが大きいという点で、現在の水準が実質的なゼロ金利だと考えています。また、基金の残高目途を達成するために、残存年限を拡大する選択肢があるかというご質問も、先程申し上げた通り、今の「札割れ」は、足許の欧州情勢に関する要因を反映している面もあります。今後、こうした傾向がどの程度続いていくかにも依存しますが、直ちに足許の「札割れ」で基金の残高目途の達成が難しくなるとは考えていません。
§19Masaaki Shirakawa
いずれにせよ、私どもとしては、基金の残高目途を達成するように努力していくということです。
§20Question
2 点お伺いします。1 つ目は、2月の政策決定会合以来、3 回の政策決定会合の「当面の金融政策運営について」の中で、金融政策上のキーワードではないかと思いますが、「強力な金融緩和を推進していく」という言葉がありました。その言葉は、先程の冒頭のご説明の中にはありましたが、声明の中には入っていませんでした。この声明発表後、マーケットの中で、日銀の緩和姿勢について、より中立的な要素を意識しているのではないかという受け止め方があったらしいのですが、総裁としては、この点について、意図的に落とされたのかどうか、コメントを頂きたいと思います。2 つ目は、欧州の金融システム問題が非常に重要であるという再三のご指摘には同感です。欧州では、ギリシャの帰趨にかかわらず、連鎖を食い止めるためのファイヤーウォールというか、システムの安定を強化するための議論が色々なところで出ているようです。セントラル・バンカーとして、総裁の目からみて、現在の欧州の金融システムを安定化させるための予防システムとして、どのような論点が重要であるとお考えか、教えて下さい。
§21Masaaki Shirakawa
1 点目については、日本銀行が中立的なスタンスになったということは全くありません。日本銀行の政策スタンスは、4月の展望レポート発表時の公表文に書いた通り、「強力な金融緩和を推進していく」ということで、全く変わっていません。日本銀行の金融緩和政策については、4月末の公表文で丁寧に書いており、それを、もう一度読み上げさせて頂き、その考え方が全く変わっていないということを申し上げます。前回公表文の第 4 パラグラフは、「日本銀行は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な金融緩和を推進している。こうした日本銀行の政策は、長めの金利およびリスクプレミアムの低下や、金融市場の安定等を通じて、経済活動を支えている。また、実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと考えられる。本日決定した金融緩和の一段の強化は、これまでの措置の累積的な効果と併せ、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを、さらに確実なものにすると期待している。」としました。第5 パラグラフは、「上記の強力な金融緩和の推進に当たり、日本銀行は、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかどうかを確認していく。
§22Masaaki Shirakawa
わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要である。」としました。最後の第 6 パラグラフは、「デフレからの脱却には、急速な高齢化のもとでの趨勢的な成長率の低下という、長期的・構造的な課題への取り組みが不可欠である。こうした課題を克服し、新たな経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取り込みや内需の掘り起こしを進める必要がある。また、このような企業の前向きな活動を支えていくために、政府が環境整備に努めることや、民間金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを行うことも重要である。このように、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことによって、デフレ脱却は実現していく。」としました。こういうことを毎回の公表文に書くというのも、一つの手ですが、毎回この文章を書くというのもどうか、ということで、今回は「適切」という言葉で表現しました。もし、「強力」ということについてご懸念があるということであれば、そこは全く変わっていないことを改めて強調させて頂きます。
§23Masaaki Shirakawa
2 点目のご質問は、欧州の金融システムの安定維持のため、中央銀行の立場からみて何が必要かということです。いくつかの要素がありますが、 1つは、不良債権の発生により自己資本が不足すると思われる金融機関については、しっかりと資本注入を行うことが不可欠であると思います。他国の中央銀行総裁として、どこまで申し上げてよいか、判断に迷うところでもありますが、日本の場合、預金保険制度により、預金が一定金額まで保護されています。欧州の場合は、ユーロ圏全域をカバーする預金保険制度が存在しているわけではありません。このため、人々の間に不安心理が発生すると、預金がシフトしやすい状況があることも、問題意識として高まってきているように思います。そうした問題についての検討も必要です。それから、最終的に金融システムが不安定化してくる時には、中央銀行の「最後の貸し手」という機能が重要になってくると思います。いずれにせよ、これは、当面の問題が拡大することをどう防ぐかという問題意識での話であり、大もとの問題を解決することがもちろん大事です。この点については、先程申し上げましたので、同じ説明を繰り返すことは控えたいと思います。
§24Question
先程の質問と若干重なりますが、「強力な金融緩和」という言葉が消えた点についてですが、昨年以降、短くとも「強力な金融緩和政策を推進する」という 1 行が入っていたわけです。改めてこれを外したというのは、ここにきて突然「長過ぎる」と思い始めたということなのでしょうか。それから、これに関係あるかと思うのですが、最近、行内の人事異動が発表されましたが、これは政策姿勢と何ら関係ないという理解でよいかどうか、確認させて下さい。
§25Masaaki Shirakawa
これはしつこいようですが、全く関係ありません。日本銀行はオフィシャルな文章で「強力な金融緩和政策を推進する」と 2月に発表し、4月の文章にも書いています。ご質問は、「その文章を反故にする」ような趣旨に聞こえましたが、そうした意図は全くありません。そうした誤解がないように、皆さんの報道をよろしくお願いします。それから、人事と政策は全く関係ありません。
§26Question
日銀は、「強力に金融緩和を推進していく」とずっと言い続け、実行されています。一方、国会などでは、まだ日銀は足りないのではないかという批判も出ています。その現状について、どのように分析、受け止められているのかお伺いします。
§27Masaaki Shirakawa
様々な立場でのご発言があるわけで、その方々の考えやお気持ちがあると思いますので、私が解釈してコメントするのはあまり適切でないと思います。ただ、いずれにしても経済・物価の現状について、まだ望ましい姿ではないという認識は私どもも同じで、そうした認識が発言の背後にあるのだと思います。金融政策の技術論については――これまでの繰り返しになりますが、改めてお答えすると――、主要国が現在行っている金融政策は、非伝統的政策とよく言われています。確かに、バランスシートの大きさ、あるいは買っている資産の種類からみて、まさしくこれは非伝統的だと思います。ただ、金融緩和政策の効果を実現していくルート自体は別に非伝統的ではなく、あくまでも伝統的なルートです。要は、金利水準がどれだけ下がっていくかということを通じて実現するわけです。FRBもそうですし、日本銀行もそうですが、長めの金利を引き下げていく――あるいは日本銀行の場合は、リスクプレミアムに働きかけるとも言っていますが――、要は金利水準を下げていくということです。その金利水準自体が、長期の国債金利をみても、社債のスプレッドをみても、相当に低い水準です。確かに、低い水準からすると、それ以上の低下余地が少ないということにはなりますが、私どもとしては、それでもそういうことを通じて金融緩和政策の効果を実現しようとしているわけです。
§28Masaaki Shirakawa
この金利という点では、実際に企業が資金調達する際の社債の金利、あるいは貸出の金利を、名目でみても長期のインフレ率を差し引いた実質金利でみても、日本の長期金利は、米国と同じかそれより低いと思っています。金融緩和政策の波及の第1 段階は、日本銀行が行動を採って金融環境に働き掛けるという段階で、この第 1段階は非常に緩和的です。しかし、そうした金融環境が用意されているにもかかわらず、なかなか企業が本格的には投資していかないことに大きな問題があると考えています。この第2 段階については、成長力の強化が大事だとみています。私どもとしては、第1 段階の金融面の下支えと第 2 段階に対応した成長力の強化という2 つの面が相俟って、望ましい姿になっていくと思っています。
§29Question
先程から欧州の問題で色々と質問が出ていますが、見解として、「昨年末から今年の初めにかけてのようなテイル・リスクについてはやや薄らいだ」というお話は変わっていません。しかし、前回から今回の会合に至る過程では、ギリシャの総選挙やフランスの大統領選挙がありました。日銀からみて、欧州に対するリスク要因が高まっているのか、あるいは今まで通りで変わっていないのか、その判断について、本日の会合では、どのような話になったか教えて下さい。
§30Masaaki Shirakawa
前回の会合以降に起きた大きな出来事といえば、何といってもギリシャとフランスの選挙であったと思います。そうした選挙を通じて示された政治的な意思の意味合いをどのように量っていくのかということだと思います。この間に経済の実体そのものが大きく変化したというよりも、ユーロ圏の各国政府や国民の意思をどうみていくのかということだと思います。これについては、色々な解釈・議論がありますが、欧州各国や関係機関が直面する多くの困難を克服して、先人が築き上げてきた欧州の通貨統合を維持していくという強い意思を持っているように感じられます。ちなみに、ギリシャの世論調査では、8 割近い国民がユーロ圏残留を支持しているということです。また、ドイツやフランスなどユーロ圏首脳やECBのドラギ総裁は、第2 次金融支援実施の際に合意した財政再建策や構造改革の着実な実施を求めた上で、ギリシャに対して必要な支援を実施することを表明し、ギリシャがユーロ圏に留まることを強く支持しています。ご質問された、前回と今回との比較でどうか、ということで申し上げれば、このような政治的イベントが起きたことは経済の安定にとってマイナス方向の要因です。
§31Masaaki Shirakawa
ただ、その上で、経済・金融に対して最終的にどのように影響していくのか――つまり、テイル・リスクが本当に顕在化していくのか――については、今申し上げた政治情勢をどのように読んでいくかに帰着するように思います。
§32Question
本日、国会で日銀の理事から、目標と目途について、目標という表現をすると機械的になるから目途にしたとの発言がありました。「機械的になる」とは具体的にどういうことなのかをお伺いします。また先程、バランスシートの話で非伝統的な政策を欧米が行っているということですが、欧州や米国がマネタリーベースを 2 倍、3 倍にしていて、日本はそれ程までは上げておらず、マネーの差で為替が円高に振れているという意見があります。これに関しては、どのようなご意見をお持ちでしょうか。
§33Masaaki Shirakawa
まず、中央銀行として、物価安定の姿を数値的に示していく際に、それぞれの中央銀行が色々な表現を使っています。BOEは「 target」ですし、FRBは「goal」、ECBは「definition」です。日本銀行の場合、物価安定の数値表現をどういう言葉で表すと一番私どもの政策運営の考え方に近いのかと考え、「中長期的な物価安定の目途」としました。ご質問の、機械的な金融政策の運営というのは、望ましい物価上昇率と、現実の物価上昇率、あるいは例えば先行き 1年なり 2年の予想物価上昇率との間に差があれば、その差を解消する方向で金利を上げるなり下げるという方式、これを「機械的な運営」と呼んでいます。こうした機械的な運営は、インフレーション・ターゲティングが採用された直後は確かに、ニュージーランドなどでも行われましたが、その後、機械的な運営は却って経済の変動を大きくするという反省から、今では、機械的な運営を採っている中央銀行はどこにも存在していないと思います。あくまでも最終的な目標は、物価の安定を通じて経済の持続的な発展を図っていくことですから、そうした観点に照らして政策を運営しているということです。その点、日本の場合、ターゲットという言葉が――多分、初期のインフレーション・ターゲティング論の名残もあったのかと思いますが――、多少、機械的な運営と今でも誤解されている面がないとは言えません。
§34Masaaki Shirakawa
私どもとしては、大事な金融政策の考え方の話ですから、先程申し上げた考え方に、一番近い数値の表現は何かと考え、それは「中長期的な物価安定の目途」だと考えました。マネタリーベースについてですが、記者会見の席でも何度も申し上げ、多くの記者の方は既にお聞きになった話になりますが、あえてお答えします。まず、事実として、マネタリーベースの大きさのGDPに対する比率は、先進国の中では日本が最大です。日本銀行による量の拡大は、他の先進国に比べかなり早い時期から始まっていました。日本は、バブルの崩壊やその後のデフレ、あるいは金融危機を早く経験し、1990年代の終わり位からマネタリーベースが急激に増えたわけです。例えば、リーマンショック以降だけに絞ってみた場合、日本銀行の量の拡大が、その時になって初めて拡大した中央銀行に比べて、多少スピードが遅いと映る面があるかと思います。そのことが、日本銀行の量の拡大が少ないという批判の大きな理由になっているのだと思います。ただ、いずれにしても、現在はゼロ金利環境で、マネタリーベース――中央銀行が出すお金――を保有することのコストは、ゼロになっているわけです。従って、FRBでもそうですし、日本銀行でも、大量の資金供給を行っても、そのお金を金融機関がそのまま中央銀行に預けるという、いわば両建ての現象が起きているわけです。
§35Masaaki Shirakawa
量に関する限りは、「暖簾に腕押し」と言いますか、量をいくら出してもその量をそっくりそのまま中央銀行の口座に持っているわけです。従って、金融緩和がどの程度、経済に対して刺激効果を持つのかを議論する場合、今の環境のもとでは、量ではなく金利をしっかりみていくことが大事です。この点は、日本銀行だけでなく、FRBのバーナンキ議長もいつも言っていることです。
§36Question
先程、テイル・リスクは昨年末に比べ低下したけれども、最も強く意識すべきリスクである、というお話がありました。また先程、総裁からはギリシャ国民の 8 割はユーロ残留を望んでいるというお話がありましたが、マーケットでは、ギリシャがユーロ圏を離脱するのではないかと公然と言われています。総裁がおっしゃる「最も強く意識すべきリスク」の中に、ギリシャのユーロ離脱が含まれているのかどうか、また仮にそれが起こった場合、日本経済に深刻な打撃を及ぼし、例えば日銀が想定する景気回復のシナリオをかなり下振れさせるような惧れがあると認識しているのかどうか、総裁のご認識をお願いします。
§37Masaaki Shirakawa
この件に関して、ユーロ圏以外の国の中央銀行の総裁として、どういう言葉でコメントするのが一番適切なのかと、言葉を選んでいるのですが、もちろん中央銀行ですから、様々な事態を常に考えて、景気判断、金融情勢の判断を行っていますし、政策の判断も行っています。離脱について言うと、これがもたらす問題についての関係者の発言を紹介しましたが、私どもとしては、評論家ではありませんから、確率が高いとか低いとかを言うのではなく、欧州の当事者がしっかり問題に取り組んでいくことを強く期待し、そうした取組みを促していくこと、そうした考え方を、国際会議等を通じてしっかり伝えていくことが大事だと思っています。中央銀行という立場からは、先程来強調している通り、金融システムの安定をしっかり維持していくことが大事だと思っています。
§38Question
先程、総裁は3 つの経路によって日本経済に影響があるとおっしゃいましたが、実際にギリシャがユーロを離脱した場合は、この3 つの経路を通じて日本経済にどの程度の影響があるとお考えになっているのですか。
§39Masaaki Shirakawa
これは仮定の質問ですから、仮定の質問にはお答えをしません。先程の、欧州債務問題が日本経済にどういう影響を与えるかという問いへの答えで、代えさせて頂きたいと思います。
§40Question
総裁はかねてより、金融緩和の副作用に注意が必要だと強調されていますが、政治の側からは一部、「副作用を心配するのは、実際に物価上昇が目途とする 1%を超え始めてからでいいのではないか」という指摘が依然としてあるわけで、これについてどうお考えなのでしょうか。現在、消費税の議論が国会で行われていますが、一般的に、消費税議論が行われている時に景気の状況が良くないということは、民主主義の国ではその議論に対してかなりマイナスの作用を及ぼすと思うのですが、こうした消費税議論と景気の状況についてどのように見られているのか、お伺いします。
§41Masaaki Shirakawa
中央銀行としてどのような政策を行う場合でも、必ず、効果と副作用があり、効果だけがあって副作用が全くないということは、どのような政策でもありません。従って、中央銀行である以上、効果と副作用を点検して、その上で最適な政策を追求していくのは当然のことです。日本銀行は、そうした両方を判断した上で、現在の政策が、今の日本の状況の中では最適であると判断しています。私の気持ちは、副作用があるから例えば現在の金融緩和政策を行うことが適当でないということは全くなく、今、私どもが強力に行っている金融緩和政策の効果を最大限に活かしていくためには、そうした副作用が生じないような努力を一生懸命やっていく必要があるということです。日本銀行が強力な金融緩和を行っていることに、様々な批判を受けますが、日本銀行はもっとアグレッシブに金融緩和をやれという批判と、日本銀行は副作用に目をつぶって金融緩和をやりすぎているという両方の批判を受けているわけです。後者の批判については、副作用として、例えば様々な構造改革への取組みが遅れているということが言われるとすれば、構造改革にしっかり取り組んでいく――私の言葉で言うと成長力強化にしっかり取り組んでいく――ことが大事であり、成長力強化に取り組まないから金融緩和を行うことが適当でないと言っているわけでは全くありません。両方が必要だということを、私は繰り返し申し上げています。
§42Question
緩和効果は、金利が低下することによって十分に浸透しているというお話がありましたが、金利の水準自体、10年債では 10年振りに近い低水準になっているとか、2年債であれば 0.1%を切っているという状態について、かなり下がり過ぎではないか、逆に、将来急反騰するリスクが高まっているのではという指摘があります。現状、相当下がり過ぎの水準ではないかとの指摘があることについて、どのようにみていらっしゃいますか。
§43Masaaki Shirakawa
中央銀行として、長期金利の水準について高過ぎるとか低過ぎるとか、そうしたコメントは控えたいと思っています。ただ、日本の場合、国債を大量に保有しているのは金融機関です。金融機関が、現に取り組んでいることであると思いますが、リスク管理をしっかり行った上で、自らの体力に見合った形でリスクを取っていく、そのもとで金利が形成されていく、ということが大事であると思っています。
§44Question
実際、一般的に為替を気にしている方、円高による影響を相当気にしている方が多いと思うのですが、その関係で最近、為替を円安に進めるために、外債を買うべきだという話がかなり出ています。日銀の立場としては、法改正がないと難しいと皆さん言いますが、政府と協力して、為替に効果があるような新しい政策を考える必要がないのかどうか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。
§45Masaaki Shirakawa
現在、外国為替資金特別会計は、短期証券を発行でき、これを通じて調達した円資金で、外債を購入できるわけです。この点を考えると、今提案されている様々な議論は、「外国為替資金特別会計による為替市場介入の是非」という形で本来議論されるべきテーマだと思います。いずれにせよ、外債購入に関する最近の議論は、基本的に円高是正という為替介入と同種の効果を念頭に置いているように思われます。こうした為替相場の安定を目的とする外国為替の売買については、日本銀行はあくまでも「国の事務の取扱いをする者」として行うこと、言い換えれば、為替介入が財務大臣の所管であることが、日本銀行法第 40 条で定められています。従って、繰返しになりますが、この提案を――その政策としての是非は別にして―― 、もし行おうと思うのであれば、政府の外為特会で今現在でもできる話です。その上で、この政策をやることが是か非か、政府がご判断になる性格の問題だと思っています。
§46Question
2 点お伺いします。1 点目は米国の景気動向についてです。先程、緩やかに回復しているとおっしゃいましたが、最近の様々なデータを見ると、強気な見方と弱気な見方が結構交錯していて、分かれています。米国の潜在成長率を 2%程度と仮定した場合、その程度の成長はこれからしそうだとみているかどうか、お聞かせ下さい。2 点目は、ドット・フランク法がこれから施行され、様々な規制が課されることにより、米国経済に下押し圧力がかかると思いますが、この点をどのように考えればよいのか、教えて頂けますか。また、関連して、日本の金融機関にも当然影響が出てくると思いますが、そこはどの程度の影響があると考えればよいのか、現在お分かりの範囲で結構ですので、お考えをお聞かせ下さい。
§47Masaaki Shirakawa
米国の潜在成長率については様々な見方があり、今おっしゃった 2%という見方もあると思いますが、もう少し高い見方をする人もあるように思います。いずれにしても、現在の米国の失業率の高さを考えると、仮に潜在成長率並みの成長をしても、失業率が低下するにはまだ不足しているわけですから、ここ暫くは潜在成長率を上回る成長率を実現していきたいというのが、 FRBの経済予測に出ている判断だろうと思います。それから、2 点目ですが、ドット・フランク法に限らず、様々に提案されている金融規制が経済に対して影響を与えていくということは、定性的には、もちろんあると思います。ただ、このドット・フランク法の問題は、当面の景気との関係で議論するというよりは、やはり、米国のその他の金融規制もそうですが、米国または世界の金融システムの安定という観点から、どのような規制監督が望ましいのかということを議論すべきもので、その上で、そうした規制監督が要因となる景気への影響も考慮した上で、最適な金融政策は何かを考えていくことが、基本的な筋だと思います。
§48Question
本日の声明の中に、新興国や資源国に牽引される形で回復経路に復していくとありますが、最近の中国の統計などを見ると、だいぶ景気が減速していると思うのですが、それが日本経済に与える影響を、中国の現状の景気認識とともにお話し願います。
§49Masaaki Shirakawa
中国経済については、全体として減速がやや長引いているかなという印象はあります。具体的には、輸出の減速に加え、これまでの金融引締めの影響もあって、耐久消費財や民間不動産投資の増勢が幾分鈍化しています。もっとも、雇用・所得環境は良好ですし、全体では、幾分減速しつつも、内需を中心に高めの成長を続けていると思います。先行きを展望すると、当面は、不動産を中心に固定資産投資の減速などが長引く可能性もありますが、一方で、インフレ率の低下や良好な雇用・所得環境、さらには、先般の省エネを目的とした消費促進措置等が個人消費を後押ししていくとみられます。さらに、やや長い目でみると、中国経済の成長ポテンシャルは引き続き高く、都市化の進展などに支えられ、潜在需要は増加を続けると見込んでいます。日本から中国経済をみた場合、日本から中国に輸出している財は、部品、中間財、生産財などですので、現在、中国で輸出や固定資産投資が減速していることの影響が、割と出やすい分野の輸出が多いと思います。従って、中国経済全体の話と、日本企業からみたその輸出への影響は、少しまた違ったところもあるように感じています。いずれにせよ、中国経済の先行きは、欧州経済と並んで非常に大事な要素だと思っており、注意深くみています。
§50Question
今、政治の中で「日銀法改正」という言葉がよく出ており、その中で「日銀の独立性を侵すので、それは認められない」という意見もあります。日銀の独立性は、各国の中央銀行と比べて違うという意見もあるのですが、手段の独立と目標の独立という意味で、その辺りに関して日本銀行としてはどのような解釈をしているのでしょうか。
§51Masaaki Shirakawa
どの国でも中央銀行の目的は、中央銀行が決めているわけではありません。例えば日本銀行については、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ことが日本銀行の使命、金融政策の使命として規定され、はっきり目的として定められています。従って、目的自体を中央銀行が勝手に解釈しているところは、どこにもありません。おっしゃっているのは、多分、物価安定の数字の決め方について、いくつかのバリエーションがあるということですが、この点については、英国のように財務大臣が物価安定の数字を決める国もありますが、FRBやECBのように中央銀行が決めている国・地域もあります。また、中央銀行と政府が決めている国もあります。いずれにせよ、金融政策の基本的な目標は、どの国でも法律によって定められています。日本銀行は、与えられた日本銀行法の目的に沿って、その目的を達成するために、自らの責任と判断で金融政策をしっかり決定し遂行していくということです。その際に、もちろん、様々な意見に耳を傾け、政府との関係でも、密接な意思疎通を図っています。以上