← Back
Bank of JapanPress conferenceJun 21, 2012Koji Ishida, Board Member

石田審議委員記者会見(2012年6月21日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

まず、本日の金融経済懇談会の中身と、印象的な地元関係者からの発言がありましたら、その要旨と、それに対する所感についてお伺いします。

§2Koji Ishida

本日の金融経済懇談会には、地元の経済界、金融界を代表される方々のご出席を賜り、地域経済の現状や金融政策運営に関する貴重なお話や示唆に富むご意見を数多く頂きましたので、まずその点について御礼を申し上げます。懇談会の場では、ご意見が大変多岐に亘って出ました。全てを網羅して申し上げるのは非常に難しいので、私なりに席上でお聞きした話題を整理して申し上げます。1つ目は、当地の景気は、九州新幹線の全線開業効果に牽引されるかたちで、全体として着実に持ち直しの動きが続いているということです。新幹線の全線開業により、関西地区や中国地区からの観光客が増加し、街の賑わいが増しているというお話や、そうした中で、各種経済団体の方々を中心に様々な創意工夫を講じられ、対処されていることを伺いました。この点、当地は桜島や温泉など、豊富な観光資源があるほか、食の分野にも恵まれた土地柄であり、そうした地域の特色を上手く活かしていることが、経済の底堅さの原動力になっているという印象を受けました。2つ目は、当地の経済が、県全体としては、今申し上げましたように、持ち直しの方向にありますが、県内での業種間の格差が大きいということです。

§3Koji Ishida

先程申し上げた通り、新幹線の全線開業効果を受け、観光などサービス関連業種を中心に明るい話が聞かれた一方、製造業に関しては、世界的な競争激化を背景とした国内大手電機メーカーの撤退の動きにより、現状は厳しくなっているという話もお聞きしました。また、製造業撤退の背景には、為替円高の影響が尐なからずあり、金融政策運営に当っては、そうした点もしっかりと考慮して欲しいとのご意見も伺っています。また、建設業についても、公共工事の減尐等を受け、大変苦しいというお話を伺いました。3つ目は、離島経済の現状について、新幹線の全線開業効果がなかなか波及してこない中で、豪雤による災害の発生や、それに伴い主要な農作物も不作に見舞われるなど、厳しい状況に置かれているとのことです。私どもとしては、鹿児島県内の金融経済情勢について、鹿児島支店を通じて、今後ともきめ細かなモニタリングを続け、中央銀行の立場から経済の持続的成長の実現や、金融システムの安定の確保を図りながら、鹿児島県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へと繋がるようサポートして参りたいと思っています。

§4Question

今のお話との関連で伺います。午前中の懇談会の挨拶要旨を読ませて頂き、鹿児島県経済について、非常に明るい展望を持てましたが、これから、鹿児島が具体的に、アジアなどに観光地、観光客を誘致したり、アジアに食を売り込んでいくに当たり、それを実現するには具体的に何が必要なのかについて、アドバイスを頂けますか。

§5Koji Ishida

鹿児島県経済の今後の展望ということで申し上げます。当面は、九州新幹線の全線開業効果が牽引役となって、引き続き持ち直しの動きが続くとみられますが、より長い目でみると、グローバルな競争が一段と激化する中で、当地ならではの比較優位を持った分野での差別化を図ることが、経済を持続的に回復・発展させていくうえでの大きな鍵になると思います。その意味では、豊かな観光資源を利用した観光振興や第一次産業を核にした農商工連携という、これまでの地元における取組みをさらに発展させていくことが必要だと思います。そうして、例えば、食材なり観光なりの良質な資源がありますので、これらを上手くミックスし、情報発信をしていくことが必要ではないかと思います。私も、当県が全国的に高いシェアを誇る1次産品の多さに改めて驚き、日本あるいはアジアの食糧基地としての大きな潜在力を感じたところです。これから、首都圏を中心とする大消費地での鹿児島ブランドへの認知度をさらに高めていき、それが販路の拡大や売り上げの増加という形で効果を出せば、その後、またその力を利用してアジアへの展開も図っていかれるということだと思います。

§6Question

質問が 2 点あります。1つ目は、FRBがFOMCでツイスト・オペの延長を決めました。足許のマーケットは円安に尐し動いていますが、こうした状況が、日銀の金融政策運営上、どのような影響があるかを伺います。2つ目は、国会同意人事で日銀の審議委員のお二方の欠員が一応解消することが決まりましたが、一方で、産業界のご出身の方が――石田審議委員は銀行のご出身ですが――、割合として尐し減ってしまう形になります。これは、政策運営上、影響があるのかどうか、ご見解をお願いします。

§7Koji Ishida

昨日、FOMCにおいて、政策金利の誘導目標を据え置くとともに、昨年9月から実施されているオペレーション・ツイストを本年末まで延長することが決まりました。今回の決定は、公表文にもありますが、国際金融資本市場において神経質な動きが続く中、先行きの経済物価動向を点検した上で、引き続き、長期金利の低下を促し、緩和的な金融環境を維持することが適当との観点から、なされたものと認識しています。この決定の内容自体については、他国の政策ですから、私の立場からコメントすることは差し控えたいと思いますが、今回の措置が、米国経済の回復に貢献するとともに、世界経済に好影響を与えることを期待しています。審議委員の出身等についてのご質問ですが、審議委員については、「両議院の同意を得て内閣が任命する」こととなっており、審議委員としての私の立場からは、申し訳ございませんが、コメントは差し控えさせて頂きます。

§8Question

本日の懇談会での挨拶の中で、経済の見通しについて、「外需が強まり、復興需要が減衰に転じる」とありますが、その時期について、具体的にいつ頃を想定されておられるのか。もう1点、欧州問題に関する記述で、「最終的にはドイツを始めとする欧州中核国の努力により事態の極端な悪化は回避されるとみて」いるが、「抜本的な解決には尐々時間が掛かる」とされています。「尐々」というのは、具体的に、どういったタイミングで、どういう状況を想定されているのか、現段階でのお考えをお伺いします。

§9Koji Ishida

最初の点について、具体的なタイミングは、なかなか難しい点があります。財政出動が途切れれば、その反対側、翌年にはマイナスの影響が出てくるわけです。そういう財政出動の山を超えてきたとき、マイナスのエフェクトが出るわけです。その財政出動のスケジュールがどうなるかということに関して、従来の見通しからみれば尐し遅れ気味に出てきているという印象もあります。それを正確に予測し、あるいは私どもの予想の中で組んでいくのは難しいとは思いますが、 4月の展望レポートで、本年度、来年度の成長率をみると、来年度が尐し下がってきているというところは、その辺りからマイナス影響が出てきているとみていたということかと私は思います。それからもう1つ、欧州問題の抜本的な解決にはどのくらい時間が掛かるのかということに関しては、なかなか分かり難く、「尐々」という言葉は、私としては、「それほどすぐには」という意味で、例えば、ここしばらくの間に片付くと考えて対応していく種類のものではない、というのが私の真意です。

§10Question

「尐々」というのは、逆に、「しばらく」というか、「尐しの時間では解決しない」という認識の方が正しいということですか。

§11Koji Ishida

そうです。

§12Question

先程の質問でも触れましたが、どういう状況が整うことが、この抜本的解決の糸口あるいは第一歩になるとお考えですか。例えば、先週から今週にかけても、ギリシャの選挙やG20など色々な動きありましたが、一方で、スペインの利回りがまた心配になったり、あちこちで色々な問題が出てきています。どういう状況になると、その抜本的解決への第一歩というか、糸口が見出せるかお伺います。

§13Koji Ishida

それは――以前から言われていることですが――、金融政策の統合があって財政政策の統合がないもとで、各国の不均衡が生じたとき、調整の道が非常に閉ざされているということです。従って、各国の不均衡を何らかの形で調整するようなメカニズムへの展望ができてきたとき、というのが私の考えです。

§14Question

本日の挨拶では、やはり欧州の問題が引き続き最大のリスクだということになっており、これがもし、例えば、4月の展望レポート時より、もう尐し深刻になっていて、外需の復元が遅れ、年度前半での景気回復というメインシナリオに影響がどれぐらいあるのか、ご所見を伺います。

§15Koji Ishida

ご案内の通り、日本銀行が、展望レポート自体の見方を正式にもう一度見直すのは 7月になります。その時には、また足許とは違う色々な資料が出ていることが考えられますが、今の段階で言えば――本日の挨拶要旨にも書いてありますが――、外需の出足が思っていたより弱い一方、内需の方は思っていたより若干強いと、それをオール・イン・オールで言えば、当初思っていたラインとは、それほど大きく変わっていないということであり、今の段階で言えば、取りあえずオンラインにきているということです。

§16Question

先程の審議委員人事に関連してですが、お二人とも、先月の時点では、日本銀行の持っている物価見通しよりも低い予想をされていました。来月、中間評価がありますが、午前中の挨拶の中でも、1%を目指して強力に緩和を進めていくとされていますが、石田審議委員は、もし、中間評価において、2013年度の物価見通しが、+0.7%から下がるようであれば、緩和すべきとお考えですか。

§17Koji Ishida

+0.7%というものは、ある意味で中心的な数値です。各委員の持っている予想値というのは――展望レポートにも出ていますが――、一定の幅の中に散らばっていたわけです。私の見通しがどこにあるかは言えませんが、必ずしも+0.7%かどうかは確かではないということであり、1つには、+0.7%が変わるかどうかによって、私の意見が直ちに変わるわけではないということです。もう1つは、インフレ率についてみていく場合、例えば、原油あるいは他のモノで、今年は価格が上がり来年は下がる、あるいは今年価格が下がって来年は上がるようなことがあったとすると、やはり均してみていった場合にどうなのか、ということになると思います。来年の+0.7%が下がったとしても、その次の年にどう跳ねるのかがまた議論になるわけです。+0.7%は、+1%と関係はしていますが、リンクしているかといえば、直接のリンクはしていないというものだと私は理解しています。尐し説明が分かり難いかもしれません。

§18Koji Ishida

要するに、+0.7%の後、翌年はどこへ行くのか、+0.7%が下がった時に、物価のモメンタムが下を向いていたら評価は変わってくると思いますが、数値は尐し下がっても、引き続きモメンタムは上を向いている、力強いところがあるということならば、評価は変わらないかもしれないという意味で、+0.7%という数値自体が変わるかどうかということと、その評価は、直接はリンクしないと思います。その評価は、その後の見通しがどういうものになるか、ということになると思います。

§19Question

新興国について伺います。中国等で、尐し息切れが目立つのではないかという雰囲気になっていますが、この辺りの下振れリスクについて、現在、どうみていますか。

§20Koji Ishida

新興国・資源国については、国、地域によるバラつきが拡がっており、全体として一括りで評価するのはなかなか難しいと思います。そういう意味で、各国あるいは地域別で申し上げます。中国は、やはり成長自体はなお高めだとは思いますが、今までの金融引き締めや不動産取引の抑制策から、成長ペースが鈍化してきている、減速してきている可能性があります。一方、NIEs、ASEANについては、設備投資が緩やかに増加しており、個人消費も底堅く推移しているとみており、持ち直しつつあるのではないかと思います。インドやラ米は、成長ペースが鈍化してきていますが、最近では、為替の下落等もあり、また、金融緩和を背景に減速に歯止めがかかりつつあるとみています。

§21Question

そうすると、結局、トータルとしては、プラス方向なのか、マイナス方向なのか、どちらでしょうか。足許の推移は、見込みと比べてどうみているのでしょうか。

§22Koji Ishida

見込みと比べると尐し弱いとみています。やはり、中国も自律的な問題もありますが、欧州の減速の影響が案外と効いているという感じがします。ただ、一方で、足許の数字だけをみると、米国向け輸出等もかなり根強そうであり、米国がこのまま緩やかに伸びていけば、新興国も、それほど、下押しされずに済むのではないかとみています。

§23Question

鹿児島の話に戻させて下さい。先程のお話の中で、観光関係は新幹線全線開業効果で非常にいい一方、製造業の空洞化や、建設業での公共工事減尐の影響や、離島も厳しいというお話がありました。それぞれ、どのようにしていけばいいのか、アドバイスなどがあればお願いします。

§24Koji Ishida

私は、コンサルタントではないので、どれほどの意見かということにはなりますが、1つは、やはり新幹線の全線開業効果を広い地域や業種に広げていくような努力が必要ではないかという気がします。全線開業効果も、地域間で随分差があるということです。観光は良いとは言いながら、必ずしも全ての地域、あるいはかなり広い地域に均霑しているわけでもありません。これから、そういう繋がりを、皆さんが上手く作り上げていければ、業界や地域の連携が拡がり、観光のメニューが拡がっていけば、非常によろしいのではなかろうかと思います。また、他の第 1 次産業についても――本日の講演でも申し上げましたが――、もともと非常に力が強いわけです。また、資源はまだまだ沢山あり、使われていない農地も広く、海岸線は非常に入り組んでいて、養殖等に好適な湾も大きいわけですから、そこでさらに養殖技術や栽培技術を、あるいは品種改良を続け、かなり手数をかけて端正込めて作ったものが今までよりも高値で売れてくれば、またそれにより、例えば、農家の建設需要、流通需要、運輸需要など、関連する産業に波及していくと思います。やはり何かを起爆剤として強みを発揮し、裾野効果が出てくるようにしていくのがよろしいのではないかと思います。

§25Koji Ishida

本日の懇談では――先程は申し上げませんでしたが――、既に、当地の企業でも、アジアに目を向けて色々と拠点を展開されているところがあることや、地域金融機関でも、現地企業とのビジネスマッチングをサポートしているというお話もありました。地方でグローバル展開をしようとすれば、ノウハウ等の面でご苦労が多いと思いますし、特に中小企業については、そういうハードルがなかなか高いと思います。やはり、そういう課題について、行政や企業間の協力・連携というものを深め、補っていくことが必要ではないかと思います。答えになっているかどうか分かりませんが、潜在的な成長余地はあるのではないかと思います。観光面では、私も当地を色々と回ってみましたが、色々なスポットがありますが、その間の移動については必ずしも円滑になっていないと思います。そういうものについて整備を図っていくことが、例えば、当地では、現在、大変不況になっている建設業等の商売を増やしていくことにも通じるように思います。そういう波及効果も含めた、将来に向けての戦略的な施策があれば、非常によろしいのではないかと思います。

§26Koji Ishida

例えば、錦江湾には色々なクルーズ船が来ているわけですが、一番大きなクルーズ船にもし今のバースでは水深が足りないということがあれば、そこをもっと深くする、あるいは市内へのアクセスを改善するなど、まだまだ色々とやれる方策はあるのではないかと――素人なりで恐縮ですが――、そう感じた次第です。

§27Question

経済の方は、日本銀行のみているように、だいたい見通しの通り、オンラインできているということですが、7月に、更なる何らかの行動、金融緩和をする必要性について、どうご覧になっていますか。

§28Koji Ishida

最初に、どういう意味でオンラインかを申し上げます。私どもが認識する経済指標にはタイムラグがあり、今は4、5月の数字をみているということです。7月になってみることができる数字は、修正値等も含めると、随分変わってくることはあり得ます。従って、今、オンラインだから政策を見直さない可能性が非常に強いとは言い切れないと思います。もともと、中央銀行は、世界中で、それぞれの国が置かれた経済金融情勢を綿密に点検し、必要であれば金融政策はやると、果断に実施してきているものです。これは日本銀行でもそうです。やはり、ぎりぎりのところまで情報を集め、やるべきものはやる。もともと、できればやらないとか、やりたくないとか、そういうことはありません。7月になって、全く予断なく各種の情報を集めてみて、議論の上、金融政策を考えていきたいと思います。以上