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Bank of JapanPress conferenceSep 5, 2012Ryuzo Miyao, Board Member

宮尾審議委員記者会見(2012年9月5日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会では地元財界の方からどのような意見が出たのでしょうか。また、本日の議論も踏まえて、山口県の金融経済の将来性をどのようにお考えでしょうか。以上の2点についてお伺いします。

§2Ryuzo Miyao

本日の懇談会では、山口県の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関して率直なご意見を数多く頂くことができました。極めて有意義な意見交換ができたと思います。まずは、ご出席いただいた方々や、関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。懇談会の場ではご意見が多岐に亘ったため、全てを網羅的にご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話を整理して申し上げます。山口県経済については、まず第1に、円高が負の影響をもたらしているとの声が多く聞かれました。鉄鋼業や造船業のほか大手企業の下請けとなる中小・零細企業の業況が悪化していることに加えて、電機・電子部品関連企業の工場が撤退、閉鎖するという点で雇用にも影響してきているとの話がありました。第2に、化学等素材産業のウェイトが高い当地においては、電力コストの上昇が企業収益を圧迫することになるという点を懸念する声が聞かれました。この点は、国のエネルギー政策との関連も含め、影響を注視していきたいとのことでした。第3に、公共工事の減少に伴い、必要な道路等のインフラ整備が遅れているため、地域活性化がなかなか進まないとの声もありました。これについては、「岩国錦帯橋空港」ができることで、新たにビルやホテルが建設されるようになった点も踏まえて、インフラ投資の重要性について指摘する声もありました。

§3Ryuzo Miyao

第4に、こうした厳しい現状認識の下、行政としては、山口県の強みである産業基盤の集積を活かし、ものづくり力を蓄積すべく、「産業力のさらなる強化」、「港湾などのインフラの強化」、「工業系人材の育成」、「企業誘致の促進」、「中小企業のサポート」などに注力したいといったお話がありました。また、日本銀行への要望という点では、金融緩和を一層強化して欲しいといった声が聞かれました。一方で、金融緩和については、これまで十分対応してきているので、経済を好転させていくためには、政府や民間企業などが一体となって成長力強化に取り組む必要があるとのご意見もありました。また、各経済主体の前向きな意識を促すよう、日本銀行によるさらなる情報発信に期待するといった声も聞かれました。以上が懇談会での議論の概要でございます。次に、山口県経済の成長性に対する認識ですが、山口県経済の特徴、あるいは私なりの印象を交えながら、経済発展に向けたアドバイス――というと僭越ですが、そうした点について申し上げたいと思います。山口県経済の特徴については、懇談会の挨拶でも触れていますが、東アジアに近い競争上有利な立地にあるということ、素材産業、特に化学工業を中心として成長力のある産業が集積しているということ、素材産業を中心に労働生産性が高いということが挙げられます。

§4Ryuzo Miyao

最近でも、本行の下関支店が公表した短観の結果をみても、山口県内企業における今年度の設備投資計画は、昨年度に続いて全国を大きく上回る高い伸びを維持するなど、製造業を中心に積極的な投資姿勢が維持されているようにみられます。今後も持ち前の中長期的視野に立った積極的なイノベーションに対する姿勢を維持していただき、山口県経済の特徴や強みを活かしつつ、新しい分野の育成に向けて変革をさらに進められることや、それらを通じてさらなる発展を遂げられることを期待しています。また、山口県内には、魅力的な観光地や名所・旧跡が多く、観光資源が極めて豊富な地域であると認識しています。山口県の観光産業が、県内の各地域の強みを連携させることなどを通じて、一段と盛り上がることも期待しています。

§5Question

2点伺います。1点目は、先週、西村副総裁が、バーゼルでの講演の中で、日本銀行のマーケットインテリジェンスあるいは情報収集力について、一生懸命やってはいるけれどもまだ「long way to go」であるという趣旨の、オフィシャルの場での発言にしては厳しいことをおっしゃっていましたが、宮尾委員もそうしたご認識があるのか、あるいは日本銀行の情報収集力について何か問題視する点があるのか、教えて下さい。2点目は、本日の挨拶の中で、従来、金融緩和によって長めの金利を低下させることでポートフォリオ・バランス効果を狙ってきたが、投資家のリスク回避姿勢による長期金利の異例の低下によって「向かい風」になっているというご指摘がありましたが、「向かい風」になっているということは「長めの金利を低下させることによる刺激効果は当面期待できない」というご見解なのか、そうだとすると、講演の中で指摘された景気・物価の下振れリスクについて、宮尾委員個人として意識しておられる処方箋があるのか、手詰まりだということなのか、この点についてのご見解をお伺いします。

§6Ryuzo Miyao

まず1点目、日本銀行の情報収集力に関する認識ですが、私自身としては、日本経済全体、地域経済に関する情報、あるいは世界経済に関する情報の収集の点において、日本銀行は必要な情報をしっかり収集できていると認識しています。西村副総裁のご発言の趣旨を私が必ずしも十分把握しておりませんので、この点についてはこのような回答とさせていただきます。2点目ですが、日本銀行では、包括緩和、資産買入等を含めて金融緩和を強化してきたわけですが、その効果についてどう考えているのかというご質問であったかと思います。本日の講演で触れているように、長めの金利の低下あるいは各種のリスクプレミアムの低下を通じて、幅広く金融環境の改善を促すことで、例えば、投資家や企業、家計のコンフィデンスが改善し、最終的には景気・物価を下支えるという効果が期待されるなど、これまでの累次の資産買入、金融緩和によって効果が発揮されてきていると認識しています。その上で、足もと、投資家のリスク回避あるいはリスクに対する慎重姿勢、安全志向が、政策効果への「向かい風」になっていると申し上げているわけですが、これは政策効果がないという意味ではなく、政策効果が基調として働いている一方、それを上回る逆風、向かい風というものが作用していて、政策効果を全体として見えにくくしているということを申し上げています。

§7Ryuzo Miyao

従って、政策効果がない、あるいは手詰まりであると認識しているわけではありません。そうしたリスク回避の動きが今後終息に向かうのか、引き続き重石となっていくのか、あるいはさらに増大していくのかという点については、引き続き十分に状況を注視していきたいと考えています。

§8Question

景気と物価の見通しに対する認識について、本日の冒頭挨拶の中でも、全体として改善方向にあるが気懸かりな要素が増えつつあるといった発言もされていますし、下振れリスクを意識して3点挙げられていますが、そうすると、今後、日銀の対応として追加の金融緩和の必要性をどう考えていくのか、現段階での見解を教えていただきたいと思います。あわせて、物価については、10月に公表予定の展望レポートに向けて、今後、どのような点をチェックしていく必要があるのか教えて下さい。

§9Ryuzo Miyao

1点目ですが、景気の現状認識、先行きのメインシナリオ、あるいはリスクの評価という点について、ご質問があったとおり、足もとまでは、外需の減速を堅調な内需がカバーしており、全体としては緩やかに持ち直しつつある、という回復のシナリオは変えていません。一方、ごく直近では、幾つかの懸念材料があるということで、3点指摘していますが、「輸出・生産の減速が続き一部で在庫の積み上がりもみられる」、「設備投資の先行きに関して機械受注に弱めの動きがみられる」、「幾つかのマインド指標に鈍化の兆しが窺われる」などの懸念材料がみられるため、こうした動きが一時的なものかどうか注意深くみていく必要があると認識しています。先行きのリスクに関しても3点、「海外経済が一段と減速するリスク」、「円高が進行するリスク」、「輸出・生産の回復がさらに後ずれして、内需から外需へのバトンタッチが上手くいかないといったリスク」があると認識しています。こうした先行きの見通しとそれに伴うリスクの評価について、毎回の決定会合でも点検していますが、特にこれから10月にかけてしっかりと点検して参りたいと思います。そのうえで、金融緩和の必要性についてですが、これはいつも繰り返し申し上げているとおり、景気・物価の先行き見通しを入念に点検し、必要と判断される場合にはしっかりと対応する、細心かつ果断に措置を講じるという姿勢でいます。

§10Ryuzo Miyao

そういう意味で、今後も適切な金融政策運営に努めていきたいと考えています。展望レポート作成に向けて、物価の見通しについても同様です。今日の冒頭挨拶でも触れていますが、景気に対する下振れリスクを意識していることから、物価の見通しに対してもやや下振れリスクを意識しています。そういう点も含めて、しっかりと今後の見通しとリスク評価について入念な点検を行っていきたいと思います。

§11Question

外需を堅調な内需が補ってシナリオ通りという話だと思いますが、一方で、内需をみていると、個人消費を中心に最近やや弱めの数字もちらほら出ているかと思いますが、内需の持続性をどのようにみているのか教えていただけますでしょうか。

§12Ryuzo Miyao

内需の持続性については、基本的な回復のメカニズムとして、例えば個人消費に関しては、まず、堅調な企業収益を背景として、雇用所得環境が緩やかに改善し、賃金も下げ止まる中で、個人消費が支えられていくというメカニズムがポイントの一つになろうかと思います。あわせて、内需でもう一つの重要な項目である設備投資に関しても、やはり企業収益が出発点になると思います。短観等でもみられるように、今年度は非常にしっかりとした投資計画が示されており、足もとまでは設備投資は緩やかな増加基調を続けていますが、先行きに関しては、先程申し上げたように、機械受注の動きなど、懸念材料が散見されますので、そういった設備投資や個人消費の両面から、内需の持続性についてより入念に点検して参りたいと考えています。

§13Question

講演を聞きますと、内外需、世界経済の回復に対して随分慎重な見方をされていると思いますが、そうした中で日銀が言われている今年度の上期の回復への復帰ということですが、現状まではシナリオ通りに来ているけれども、先行きのリスクが多いということで、中国にせよヨーロッパにせよ、この先すぐに回復が早まることは考えづらいかと思います。一方で、内需も先程言われていた懸念材料がある中で、日銀が想定していた日本経済が緩やかな景気回復に復する時期が多少後ずれしているような印象もあります。1カ月、2カ月遅れても、その回復のメカニズムが壊れていなければ問題ないかと思うのですが、こうした点についてお伺いします。

§14Ryuzo Miyao

先程のご質問への回答とやや重複しますが、回復のメインシナリオは変えていませんが、一方でリスクには注意が必要だと思います。回復が後ずれするという点に関しては、先行きのリスクで申し上げた3番目――輸出・生産の回復が更に後ずれし、内需から外需へのバトンタッチがうまくいかないといったリスクに注意していかなければならないという認識です。基本のメカニズムに関しては、先程企業収益を起点としたメカニズムをご説明申しましたが、そういったメカニズムは引き続き期待できるのではないかと考えています。

§15Question

先程、地元の山口の財界の方から日銀に対する要望として、金融緩和を更に強化してほしいという要望があったとご説明がありましたが、それに対して宮尾委員はどのように答えられたのかということと、今後更に追加緩和する際の一番重要なポイントはどの辺になるか、教えていただけますか。

§16Ryuzo Miyao

1点目の金融緩和をより一層強化して欲しいというご要望に対して、私自身は、先程と同じようなお答えですが、そういうご要望・ご意見をしっかりと受け止めた上で、先行きの景気・物価情勢を入念に点検して、必要と判断される場合には適切な措置を講じて参りたいとお答えしました。2点目ですが、もし金融緩和を強化すればという仮定の質問なので、一般論として、私自身の普段の心構えということで申し上げると、まず、長めの金利の低下と各種のリスクプレミアムの低下を通じて、幅広く金融環境の改善を促して、最終的には景気・物価を下支えする効果を期待している、あるいはそういう効果が発揮されているという認識をベースにしています。その一方で、今申し上げた効果の大きさあるいは持続性に関しては、当然不確実性があるわけですし、また、資産買入という非伝統的な政策に特有の弊害やリスクにも十分留意しながら、政策運営・政策判断を適切に行っていかなければならないと考えています。

§17Question

3点伺います。1点目に円高が企業収益に悪影響を与えているという点は講演でも指摘されていますが、これだけ円高が長期化すると日本経済に相当ダメージを与える、つまり円高から起因するリスクで追加緩和の必要性がどれほど出てくるかという点について少し具体的にお願いします。2点目に、最近金融市場に資金が随分潤沢に出ており、日銀のオペでも札割れが起きたりしています。そうすると短期国債とか短いところではなく、より長い長期国債を買った方が資金の供給が円滑に進むのではないかとの視点から、日銀はもっと長期の国債を買うべきだという人がいますが、そうした意見に対してどのようにお考えでしょうか。3点目として、外債を購入すべきという声も依然ありますが、それについて改めてご見解をお願いします。

§18Ryuzo Miyao

1点目の円高のリスクをどのように受け止めて政策行動に反映させていくのかというご質問については、先程から申し上げているように、円高を含め我が国の景気・物価の先行きの見通しあるいはリスクをこれから丹念に点検して、適切な政策判断を行っていきたいということに尽きると思います。2点目は、オペで札割れが起こっていること、あるいはそれに対する政策対応について、というご質問です。例えば、資産買入等の基金による長期国債買入について、札割れは、毎回発生しているわけではありませんが、先月数回発生しました。この札割れには、先進国共通の国際的な低金利環境の下で、我が国の国債利回りも極めて低い水準まで低下していることが影響していると思います。札割れが今後どういう状況になるかは、市場の日々の動向によっても影響を受けますので、市場の動向や入札の状況などを注視して参りたいと思っています。現時点では、資産買入等の基金の積み上げが著しく困難となるほど札割れを懸念しているという認識ではありません。従って、現時点では、札割れによって基金の積み上げが予定通り着実に行われないという状況ではないと考えていますが、今後もしっかりと状況を注視していきたいと思っています。3点目、外債の購入についてどう考えるのかということですが、最近の議論は、基本的に円高の是正を念頭に置いた為替介入と同種の効果を念頭に置いたものだと認識しています。

§19Ryuzo Miyao

こうした為替相場の安定を目的とする外国為替の売買については財務大臣の所管ですので、日本銀行はあくまでも国の事務の取扱をする者として行うという認識です。この点は日本銀行法第 40 条2項に定められています。

§20Question

円高の進行リスクですが、現在でも70 円台後半ということでかなり厳しい状況で推移していると思いますが、更に一段と進むリスクは、具体的には、例えば欧州の危機が更に再燃してユーロの価値が下がるということを通じて更に円高が進むというシナリオを想定していらっしゃるのか、それとも、例えば中国とかまた別のところの景気の問題で円高が更に進んでいくということなのか、この辺のメカニズムをどういう風にお考えになっているのか、教えて下さい。

§21Ryuzo Miyao

円高が更にもう一段進行する場合のメカニズムについては、今ご指摘の通り、国際金融資本市場の緊張感が更に増して、人々のリスク回避の姿勢がより強まるというのが、考え得るメカニズムの1つではないかと考えています。以上