西村副総裁記者会見(2012年12月5日)要旨
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§1Question
本日の懇談会出席者の発言を踏まえつつ、新潟県の足許の景気動向と先行きの見通しをお聞かせ下さい。
§2Kiyohiko Nishimura
本日、当地の行政、経済界並びに金融界を代表する方々から地域経済のお話を色々とお聞きしました。内容のある、様々なご意見をお伺いしましたので、後でご意見の幾つかをご紹介したいと思います。本日の意見交換を含めた新潟県の足許の状況ですが、これは、新潟支店が判断している通り、やはり「弱含みに転じている」という状況だと思います。主として、海外経済の減速が製造業の輸出、生産に影響しています。これは全国と同じで、新潟県においても、同じ問題が生じているということです。そのために生産が減少し、乗用車販売におけるエコカー補助金終了後の反動減の影響も存在しています。そういう中で、残念ながら、新規求人や所定外労働時間の減少という形で雇用面にも影響が表れている形になっています。次に、先行きの見通しです。今後は――これも全国と同じですが――、海外経済の減速した状態がなお続きますから、それなりの弱い動きが続くと思いますが、その後は、やはり次第に回復していくということだろうと思います。これについては、引き続き新潟支店とともにしっかりとみていきたいと思います。今回の懇談では、幾つか重要なお話を伺いました。特に今回の場合――ここのところ、いつもそうですが――、円高・デフレの問題が大きなトピックになりました。
§3Kiyohiko Nishimura
製造業の輸出へのマイナスの影響、販売の減少が強まっている、海外への進出が進み、国内、県内での需要、県内での企業活動が伸びない状況が続いていることについて懸念を抱いている方が非常に多く、そうしたお話を色々とお聞きしました。特に、中堅中小企業が多い新潟県では、企業経営者が大きな閉塞感を持っているとお聞きしました。海外需要もさることながら、復興需要に関しても、新潟県にはあまり及んできていないことが、新潟県の景気の現状における弱さの一環になっていると思います。さらに、日中関係の影響についてもかなり詳しくお話を伺いました。県内で予定されていたイベントがキャンセルされたり、宿泊客数が減少したり、間接的にということですが、東京の秋葉原に出荷していた炊飯器の売上が大きく低下したといったアネクドータルなお話をお聞きし、問題の重大さを改めて痛感致しました。ただ、新潟県のものづくりという面で、明るい材料も幾つかお聞きしました。航空機の部品製造に関する新たなプロジェクトが立ち上がったことや、メガソーラーへの取組み、もう一つは観光ですが、地域の特徴を捉えた食と観光に関するイベントの開催がとても良い波及効果を持っているというお話を伺いました。この他、インターハイや芸術イベントの開催によって交流人口が増加しているというプラスのご意見も伺いました。
§4Kiyohiko Nishimura
こうした特に明るい面での新産業というものに強いコミットメントをされていることを大変嬉しく思いました。それからもう1 点、これは当地の経済団体の方から、新潟県の人口の増加を目指した様々な試みをなされていることを伺いました。新潟県の人口を300 万人にしようという大胆な計画ですが、わが国が人口減少・少子高齢化という構造的な問題に直面している中でも、新潟県でこうした着想や取組みがなされていることは、大変注目したいと思っています。こうした中で、経済状況の改善に向けて、日本銀行の金融政策に対して強い期待の声も数多く寄せられました。私ども日本銀行としては、今後とも、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、最大限の努力を続けていくということを申し上げましたし、ここでも改めて強調したいと思います。
§5Question
先程の講演の中で、金融政策の運営について、「新しい手法も駆使しながら」という発言をしておられますが、これは、その前段でお話された新たな貸出制度を指したものなのか、それとも、それ以外のいわゆる第一段階の金融緩和関係の波及とか、為替とか、そういったものへのさらなる働き掛けなどを念頭に置いたものなのか、この辺をお聞かせ下さい。また、その場合、具体的に、どういった手法をイメージされているのかを教えて下さい。
§6Kiyohiko Nishimura
日本銀行は、今までも、それからこれからも、金融政策の手法、それからそのもとでの具体的な仕組みに関して、オープンで予断を持たず、色々な可能性を考えることをずっとしてきました。そういう意味で、日本銀行のこの新たな取組みは、そういった日本銀行の基本的な方針と言いますか、今までやってきたことの延長線にある話です。貸出支援も、そういう意味で、ここで言う「新たな手法」になるわけです。こういう形をとりながら、その新たな手法を考える時には、当然ですが、ベネフィットとコストを考えなくてはいけません。そういうものをきちんと考えながら、日本銀行としては、デフレ脱却と金融システムの安定といった日本銀行の基本となる目標に向けて、最大限の努力をしていくということです。
§7Question
2 点あります。1 つは、景気情勢とその対応ですが、本日午前中の講演でも、現在、より下振れリスクを警戒するという趣旨のご発言があったと思います。さらに、見通しが実現しない場合は、果断な対応を考えるというお話がありましたが、現在の情勢で下振れリスクを特により警戒されている理由と、下振れリスクが顕在化した場合の対応について、改めて副総裁のお考えを伺いたいというのが 1 点目です。もう1点は、本日の貸出支援基金のお話の中で、現在の閉塞感を打破するために成長期待を高めるというか、成長力を強化して成長期待を高める必要があるというお話がありました。日銀のこれまでの取組みもそうだと思いますが、一方で、昨今、選挙も近いので、金融政策がかなり争点になっています。個別のどこの政党の政策というわけではありませんが、全体的に、今まで日銀が言ってきた成長期待を高めるということではなく、「まず高い物価目標を立てて、いわゆるインフレ期待を高める」「貨幣的に物価水準にある程度期待を持たせた方が、株価も上がるし、円安にもなるのではないか」「例えば、2%なりのもっと高い目標を掲げるべきではないか」という意見も出ていますが、副総裁のお立場から、そういった考え方に対するご見解を伺いたいと思います。
§8Kiyohiko Nishimura
最初のご質問は、景気情勢をどうみているのか、そして、その状況が何らかの意味で悪化する、もしくはリスクが上昇するようなことがあった場合の対応についてということですが、これは講演の中で詳しくご説明した通りです。この夏頃からすれば、過去にリスクと思われていたものがいくつか顕在化してきた状況があったわけです。そういう中で、それについての対処は、9月と 10月を含めてやってきたわけですが、それで十分なのかどうかということは、きちんと検討しながら考えていく。もちろん、それ以降も新しい数字が出ています。鉱工業生産指数も、良くはありませんが、低下が止まるように見える数字も出ています。そういったものを含め、経済の今後の動きについて慎重に見極めていかなければならない。これから、またいくつか重要な指標も出てきますから、そういったものを慎重に検討して考えていくということです。問題の対応ですが、どの問題にも 1 つの対応で“cure all”、“panacea”というか、万能薬であるわけがありません。それぞれの問題に対して、一番効果のあるものは何かを考えながら、これからきちんと検討していかなければいけないと考えています。それから 2 番目のご質問ですが、選挙が近い状況ですから、これに関して、副総裁である私が何かコメントするのはふさわしくないと思いますので、その問題についてのお答えは控えさせて頂きます。
§9Question
今の話と少し関わるところもありますが、講演の中で、海外経済の減速が一段と長引くことで、日本の輸出と鉱工業生産の持ち直しが遅れると言われているのですが、先程指摘された生産の数字で、10月が 1.8%、10~12月期が前期比 0.8%で、とりあえず数字をみる限り、生産が先行きどんどん下がるようには見受けられません。一方、先程、本年夏頃から心配していたリスクが顕在化して 9、10月に金融緩和したと言われました。そうすると、今までのところの数字の悪化は想定範囲、つまり、9、10月に先行き景気が悪くなるだろうと思っていた範囲であって、それを超えるような悪い材料は現状では見受けられないということでよろしいですか。
§10Kiyohiko Nishimura
そこは非常に難しい判断を迫られるところだと思っています。ただ、鉱工業生産指数も――どの指数もそうですが――、後に revision もありますし、また、単月の動きはやはり注意してみなければいけないと思います。特に、予測に関して言うと、本指数とのサンプルの違いもあります。そういったものを含め、少なくとも出た数字がどんどん落ちていく数字でなかったことは望ましいことですが、それが全体としてのトレンド、一番手前の方のトレンドにどういう影響を与えていくのかは、もう少しみていかなければいけないと考えます。もちろん、鉱工業生産だけではなく、他の数字との整合性などを含めて考えていかなければならないと考えています。
§11Question
9月、10月の対応で十分かどうか、これから見極めていかなければいけないということですが、本日の講演内容をみると、やはり、下押し、ダウンサイドリスクを注意深くみていかなければならないことを考えると、どちらかと言うと、さらなる緩和、資産買取り等の増額が必要という可能性が高いと考えていらっしゃるのでしょうか。もう 1 つは、弊社のインタビューで、浜田宏一エール大学名誉教授が、さらなる金融緩和を行えば、もっとアグレッシブな金融緩和を行えば、数か月以内にデフレ脱却が実現できるという発言をしていますが、それについてのお考えをお願いします。
§12Kiyohiko Nishimura
これは、10月の展望レポートの見通しからみた時、今、経済のモメンタムがどういう方向に向いているかというと、少なくとも、ごく足許の鉱工業生産など、幾つかのプラス材料もありますが、全体としてみると、やはり下押し方向に向いているということが基本的な考え方になるわけです。それはどうしてかと言えば、経済の統計データというものは――私は、もともと経済統計が専門ですから――、まず、必ずしもその時の状態をうまく表していることにはならない。また、例えば、鉱工業生産で言えば、実はその指数そのものがちょうど端境期にあるので、それが本当に経済の状況をうまく表しているのかどうか、特に、変化の場合にうまく表しているのかどうかは、なかなか難しいところがあります。そういう色々な要素を合わせながら考えていかなければいけません。そういうことから考えて、全体としてみると、やはり下振れ方向のリスクの方をより強めにみていくことの方が正しい姿だと思います。ただ、これからいくつか重要なデータが入ります。海外について言えば、今週末に米国の主要なデータが出ますから、そういったデータも勘案します。
§13Kiyohiko Nishimura
今のように、世界経済のある種のシンクロナイゼーションが高まっている状況を考えると、他国の経済の動きがどういう形で日本に影響してくるのか――昔は、それにラグがあったわけですが、段々ラグが短くなっていますから――、そういったものを含めて幅広く考えていかなければならないと考えています。2 番目の点に関してですが、私は、浜田先生をよく存じ上げてはいますが、浜田先生がどういうことを仰ったのかは知りませんので、それについてのコメントは差し控えたいと思います。
§14Question
今まで出ている質問と重なりますが、景気について、より下押しというか、下振れ要因を強くみていらっしゃる。生産は、多少統計の作り方の問題も含めて仰っていると思いますが、その他の指標で、例えば内需の指標であるとか、海外の指標であるとか、10月の展望レポートの後に出ている指標でいうと、それ程すごく悪いというか、良くはないが、すごく悪いという印象も正直あまりないような気もします。色々とみた中で、副総裁の中では、どういったところを特に気にされているのか、改めて伺います。
§15Kiyohiko Nishimura
展望レポートの中では色々なリスク要因を述べています。そのリスク要因を1 つ 1 つ点検していけば、だいたい予測がつく形になりますが、その中でも、まだ大きな不確実性が残っているのは、やはり米国の「財政の崖」です。「財政の崖」が本当に落ちるかどうかは別にしても、緊縮財政の効果はそれなりに出てくると思いますが、それが一体どういう形になってくるのか、ということです。それから、欧州情勢が本当にどうなっていくのかは、ずっとリスク要因として残っているわけです。その中では、いくつかポジティブな要因がもちろんあるわけです。米国では、住宅市場が回復しているが、これも本当に持続性があるのかということは考えなくてはいけません。中国は、ごく足許の数字からみる限り、それなりの回復をしているようにみえるが、あれだけ過剰在庫があるにも関わらず、回復しているのは、一体どういうことなのか、ということも、もう一度考えていかなくてはいけないわけです。そういう意味で、今は、慎重にデータを見て、そして新しいデータがどんどん入ってきますから、その新しいデータとの整合性、新しいデータが持っている新しい情報はどこにあるのか、ということを考えながら判断していく状況にあると考えています。
§16Question
講演の中で、1%の物価上昇が見通せるという判断にはまだ至っていないので、資産買入れ等の基金の増額は、一応、今の段階では2013年末に終了するが、「その後も、この約束にしたがって基金の運営を行っていく」とされています。これは、仮に、この基金増額の終了の段階で 1%が見通せない時には、基金の残高を維持するだけではなく、その買入れも続けていくということなのか。既に、この基金が金融政策の主要なツールであるわけですが、2013年末以降も、もう今の段階でコミットして増額を続けるということなのか、もう少し、この基金の運営について説明して頂けますか。
§17Kiyohiko Nishimura
基金の運営については、明快だと思います。そこに書いてある通りです。今のご質問は、仮定の話になるのでお答えできませんが、基本的には、強力な金融緩和を続けるというコミットメント、つまり、中長期的な物価安定の当面の目途である 1%が見通せるようになるまで強力な金融緩和を続けるというコミットメントは、何の揺るぎもありません。従って、それに基づいて基金の運営がなされるということです。以上