総裁・副総裁就任記者会見(2013年3月21日)要旨
Full text
§1Question
総裁・両副総裁に伺います。まず、就任に当たっての抱負と、これまでの経験をどのように活かしていきたいとお考えかについて、お願いします。(黒田総裁)この度、日本銀行総裁を拝命しました黒田でございます。なお、先程開かれた政策委員会において、委員の互選で議長に選任されました。よろしくお願い申し上げます。総裁就任に当たって、一言申し上げたいと思います。日本経済は、過去 15年近くもの間、デフレに苦しんでいるわけであり、このデフレから脱却して 2%という物価安定目標をできるだけ早期に実現することが、日本銀行として果たすべき一番大きな使命であると思っています。従って、両副総裁とチームを組んで、その大きな目標に向けて最大の努力をしていきたいと思っています。もちろん、金融政策は政策委員会で決定されますので、具体的な金融政策の内容等については、政策委員会で十分審議をし、まさに審議を尽くして、適切な政策を打ち出していきたいと思っています。その際、私の経験や、色々な人的なネットワークなど、お役に立てるものがあれば、もちろん何でも活用してやっていきたいと思います。何と言っても、物価の安定、それから、もう 1 つの使命はもちろん金融システムの安定ですが、日本銀行がそういう中央銀行の役割を十分果たしていく上で──具体的に仕事を進めていく上で──、特に 2 つの重要な点を考えていかなければならないと思っています。
§2Question
1 つは、金融や経済が非常にグローバル化しているわけですので、日本銀行の行う金融政策について、広く対外的にも、また市場関係者にも、十分クリアに説明するということ、また、金融システム安定の面で、中央銀行間で色々な連絡・協調が重要性を増していますので、そういった面でもさらなる努力をしていくことが必要だと思います。そうした面で、先程申し上げた通り私の経験や人的なネットワークがお役に立てばと思っています。もう 1 つは、日本経済と言っても、東京・大阪・名古屋だけで経済が成り立っているわけではなく、全国津々浦々、様々な経済活動があるので、そういった各地域の経済・金融動向を、日本銀行が持っている、全国に張り巡らされた支店あるいは事務所の力を最大限活用して、地域経済や中小企業の状況をよく把握し、それを金融政策に役立てていくことが重要ではないか、そういった面での努力もさらなる強化が必要だろうと思っています。私ばかりがあまり長く話すのも恐縮ですが、私自身は政府機関や国際機関、大学など様々な場所で仕事をしてきましたが、いつも、与えられた使命、役割を最大限実現、達成するために全身全霊を傾けて努力してきました。今回の日本銀行総裁という大変大きな、重い役割に対しても、全身全霊を傾けて努力していきたいと思っています。(岩田副総裁)この度、副総裁を拝命しました岩田でございます。よろしくお願いします。
§3Question
私は、長い間、金融論、特に金融政策について研究してきました。特に、日本経済がバブル崩壊により景気後退に入った 1992年頃以降の日本銀行の金融政策をずっと研究し続けてきました。当初は、資産デフレと金融政策の関係が非常に重要だったのですが、その後、日本経済が、1998年頃から消費者物価上昇率でみると毎年マイナスになるというデフレに突入してくる中で、デフレから脱却するためにはどのような政策がいいかということを研究してきました。私の研究では、インフレターゲットの採用国が、その当時までで 10年くらいの経験を積んできたわけですが、かなり良い成績を挙げていました。そういうことが参考になり、また、1930年代のアメリカがデフレから回復してくる、昭和恐慌から日本経済が回復してくる過程に関する研究も同時に進め、そういう研究を進めるにつれ、インフレ目標政策、あるいはインフレターゲットという金融政策のレジームへ転換することが日本のデフレ脱却には不可欠だと思ってきました。そういう研究を続けていたら、「瓢箪から駒」と言いますか、自分自身が言ってきたことを実際の政策に活かす場を与えられ、研究だけでなく実践の場に移すということで、非常に大変な重責を担ったと思っています。そういう自分が培ってきた学問的な研究を支えにしながら、中曽副総裁とともに、総裁をしっかりと支えていくのが私の役割だと思っています。
§4Question
どうぞよろしくお願いします。(中曽副総裁)この度、副総裁を拝命しました中曽でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。黒田総裁を支え、岩田副総裁と力を合わせて、物価の安定と信用秩序の維持という日本銀行の使命達成にしっかりと貢献できるように努めていきたいと思います。これまでの経験をどのように活かすか、というご質問についてですが、私自身、日本銀行に 35年間勤めてきましたので、その経験を十分に活かして、業務組織運営に関し、日本銀行法の定めに従い、職員の力を束ねて総裁をしっかりと補佐していくことが、私に課せられた重要な使命であると自覚しています。政策面については、政策委員会の一員として、しっかりと議論に貢献していきたいと思っていますが、その場合、私なりに貢献できる分野がいくつかあるかと思っています。1 つは、1993年から 7年間在籍した信用機構課における日本の金融危機への対処や、あるいは 2001年から約 8年間在籍した金融市場局における市場運営の業務を通じて得た知識・経験、こういったものを今後の政策論に是非活かしていきたいと思っています。さらに、そうした業務を通じて、これまでに築いてきた海外中央銀行幹部との人的ネットワーク、これを通じて日本銀行の金融政策とその目的とするところをしっかりと説明し、理解を求めていくことも私の役割と認識しています。
§5Question
私自身、微力ではありますが、副総裁として、全職員と一丸となって、黒田総裁を全力で支え、全身全霊を傾けて職務にまい進していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
§6Question
次に、黒田総裁にお伺いします。総裁は、国会の所信聴取の席などで、2%の物価目標に関して、「2年程度で達成は可能である」という趣旨の発言をされていると思います。この点について、改めて、総裁の決意をお伺いします。また、具体的にその目標に到達するために、どのような手段を講じていく考えがあるのかということも伺います。それから、例えば、臨時会合等を開くなどして、早期に政策対応を講じるようなお考えもあるのかどうかについても、ご意見をお願いします。(黒田総裁)白川前総裁のもとで、政策委員会が、既に 2%の消費者物価上昇率を目標・ターゲットと定め、それをできるだけ早期に実現するよう、金融緩和を推進することを決めているわけですから、当然、これに沿って、最大限努力することになると思います。この 2%という物価安定目標は、政府と日銀との共同声明に明記されているわけですが、共同声明の中では、金融緩和とともに、機動的な財政運営あるいは成長戦略、そして中期的な財政健全化の取組みが、政府の役割として示されています。日本銀行としては、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することに尽きると思いますが、その場合、各国の状況をみると、物価安定目標の達成に向けて2年程度を一種のタイムスパンと考えている中央銀行が多いようです。そうしたことも十分勘案し、2年程度で物価安定の目標が達成できれば非常に好ましいと思っています。
§7Question
次に、そのための手段ですが、これはまさに、さらに量的ならびに質的な緩和を進めることに尽きると思います。量的な緩和が不可欠であることは事実ですが、単に、マネタリーベースを増やすことにとどまらず、資産側で、イールドカーブ全体の引下げや、必要に応じてリスクプレミアムの引下げを促していくことを通じ、量的ならびに質的な両面から大胆な金融緩和を進めていくことで、2%の物価安定目標を達成すべきであるし、達成できると確信しています。それから、政策委員会等の会議の運営については、今、私から特にコメントするべきではないと思っています。
§8Question
岩田副総裁と中曽副総裁にそれぞれお伺いします。まず、岩田副総裁は、約 20年前の「岩田-翁論争」以降、一貫して日銀の金融政策を批判してこられたと思いますが、改めて、これまでの日銀の政策のどういう点が問題で、それをこれから、日銀内部からどのように変えていくお考えなのか、お伺いします。中曽副総裁は、これまで日銀内部で政策対応に携わってこられたわけですが、これまでの日銀の政策対応が果たして十分だったのかどうか、仮にそうでないとするならば、どのように改めることができるのかという点について、お伺いします。(岩田副総裁)いわゆる「岩田―翁論争」というのは、当時、要するに、「日本銀行が長期的にマネーストックをコントロールできるか」という問題について、私は、「長期的にはコントロールできる」という立場だったわけです。ただ、98年頃から実際にデフレになると、その論争も超えたところに金融政策の問題が出てきました。なぜデフレになるかというと、一旦デフレになるとデフレ予想ができ、デフレ予想があるからこそ、そのもとで皆さんが行動することでさらにデフレになってしまうという、トートロジー(同語反復)のようなことになってしまいます。
§9Question
デフレ予想が生じたときは、逆に、インフレ予想を起こさない限り、デフレは脱却できないというのが私の立場であり、果たして、日本銀行が、金融政策によってデフレ予想を覆してインフレ予想に転換できるのかという点が、今までの日本銀行と私の立場とが必ずしも一致していないところではないかと思います。私は、2%のインフレを達成するため、あるいはデフレを脱却するためには、2 つの条件が必要だと思っています。1 つは、2%のインフレ目標を大体いつ頃までに責任をもって達成するのかということに日本銀行がコミットするということです。これにコミットすることが、非常に大事なことです。大体いつ頃までに達成するかということについては、主要国の中央銀行は、大体、「中期的」とか「ミディアムターム」という言葉で表現しています。その「ミディアムターム」というのが実際何年くらいなのか、色々な研究者が調べたところ、大体 2年くらいということになっています。平均すると 2年くらいでインフレターゲットの中に入っているので、そういう経験から言っているわけです。2 つ目は、そういう意味で、2年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。
§10Question
そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。従って、まず、インフレ目標を、中期的に責任をもって達成するというコミットメントが必要であり、この立場に立った上で、今、黒田総裁がおっしゃったような、量的・質的な緩和を進めていくということです。コミットメントと、コミットしたことを実際に行っていることを市場に知ってもらう意味では、政策金利がほとんどゼロになっている中で、量的緩和しかないと思いますので、その量的緩和について――黒田総裁がおっしゃったように、その手段としてどういうものを買うかという「質的」なところまで含めて――、これから政策委員やスタッフの方と議論しながら、しっかりと、2年後くらいまでにはインフレ目標を達成できるように全力を尽くしたいと思っています。(中曽副総裁)まず、ご質問に答えるに当たって、日本銀行のこの 5年間の施策を振り返ってみたいと思いますが、非常に多くの施策を実行してきたということは言えると思います。第 1 に、リーマン・ショック後、経済が大きく落ち込んだ後に、わが国の金融システムの安定を維持することは、流動性の供給を通じてできたと思います。
§11Question
第 2 は、長めの市場金利の低下と各種リスクプレミアムの縮小を促す観点から、包括的な金融緩和政策を実行したことです。さらにいえば、金融機関の一段の積極的な行動と、企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すといった観点から、成長基盤強化あるいは貸出増加を支援するための資金供給を創設してきたという経緯もありました。このように、日本銀行は、デフレの克服に向けて多くの政策を実施してきましたが、現在、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、引き続きゼロ%近傍で推移しています。未だにデフレ克服に至っていない、結果が出ていないという事実は、重く受け止める必要があると思っています。その意味では、政策面ではさらなる工夫の余地があったのかもしれません。「具体的にどういう点か」というご質問だったと思いますが、1 つは包括緩和のもとで資産の買入れが十分であったのかどうか、あるいは成長基盤強化ないし貸出増加支援のための資金供給以外に採る道はなかったのか、それ以外の政策はなかったのかということです。また、申し上げたように、数多くの政策を実施してきたわけですが、その結果として、政策全体の枠組みや狙いなどが複雑で、分かり辛くなった面があったのではないかと思っています。こういった点も踏まえて、今後の政策立案、運営、そして説明の仕方について、今申し上げた点を是非活かしていきたいと思います。
§12Question
新しい政策については、所信で申し上げたように、日本銀行の機能をフルに活用しながら、前例にとらわれることなく、常に新しい発想で政策を産み出して実行していきたいと考えています。具体的な政策の中身については、これから政策委員の皆様と、じっくりと議論していきたいと思っています。
§13Question
2 点伺います。1 点目ですが、2%の達成時期について、麻生財務大臣と安倍首相でニュアンスが随分違うと思います。その辺りをどう受け止めていらっしゃるのか、お伺いします。2 点目は、物価連動債について、日本では必ずしも流動性の大きなマーケットはないわけですが、これから政策を打っていく中で、人々の期待インフレ率が上がっているか、それは何をもって確認されていくのか。黒田総裁にお伺いします。(黒田総裁) 1 点目のご質問については、先程申し上げた通り、2%の物価目標が定められており、できるだけ早期に実現することが中央銀行の責務と思っていますので、当然これまでお話したようなタイムスパンを念頭に置きながら全力を尽くしていくことに尽きると思います。この物価安定目標──総合消費者物価で 2%の前年比上昇率──というものは、政府との共同声明という形で出ていますが、中央銀行として、日本銀行政策委員会が決定したものですから、日本銀行として、当然責任をもってその早期実現を図るということに間違いはありません。物価連動債の話はご指摘の通りですが、米国あるいは英国では、物価連動債がかなりの程度、発行されています。しかし、量的には、通常の固定利付国債に比べると発行残高が小さいと思います。それでも、それを使って債券市場のインフレ予想を計算することはよく行われます。
§14Question
日本も、一定量の物価連動債が発行されているわけですが、量的に極めて小さいので、それも 1 つの参考としつつ、その他にマーケットのアンケート調査であるとか、様々な指標を通じてインフレ予想を知ることも金融政策の運営の面で重要なことだろうと思っています。
§15Question
日銀は、現在の金融緩和策に関して「包括緩和」という呼び方をして、いわゆる以前の「量的緩和」とは一線を画しているのですが、黒田新総裁になられて、この量的緩和を、呼び方のみならず名実ともに復活させるご意向があるのか。その場合、資金供給の量に関して、何らかの新しいターゲットを設けるとの考え方がおありなのか、お聞かせ下さい。(黒田総裁)先程来申し上げている通り、量的・質的な両面で大胆な金融緩和を進めていく必要があることは、以前から申し上げている通りです。総裁として、そのような観点から金融緩和を進めていきたいと思っています。ご質問の「量的緩和」が何を意味するかは色々な議論があるところです。例えば、米国のQE1、QE2、QE3は、量的緩和1、2、3とも言われています。ただ、FRBは、QE1を始めた時、「クレジット・イージング(信用緩和)」という言い方を使って、アセット・バック・セキュリティ(資産担保証券)などを大量に購入することによって、リーマン・ショック後のいわば凍りついた状態になっている資産担保証券やその他の市場の機能を回復させ、金融緩和の効果がよりスムーズに実体経済に波及していくことを考える、と言っていたと思います。このように、「何が量的緩和なのか」は色々な議論があると思います。
§16Question
ただし、量的緩和が、単にバランスシートの負債側の量を増やすことだけで、資産側で何が増えているのかを考慮しないことだと言われると、それは多くの学者が言うように、金利がほとんどゼロである政府短期証券によって資産側をどんどん増やし、負債側で、マネタリーベース、金利がゼロ近い日銀当座預金を増やしていっても、一体どのくらい効果があるのかと思います。もちろん、量的緩和によって流動性が非常に大きくなることが、他のアセットにスピルオーバーしていく、あるいは実物投資や消費に代替していく効果――これをポートフォリオ・リバランス効果と呼ぶのかどうか分かりませんが――もあり得ます。この意味で量的緩和は必要です。しかし、それだけで良いのかというと、やはり、資産側の質的な中身をみて、より長期の金融資産の購入によってイールドカーブをもっと下げていくことが必要です。どのような資産を購入していけば良いかについては、より効果的な金融緩和になるよう、市場への影響や経済の動向などを十分勘案して、政策委員会で決定していく必要があると思いますが、端的に言って、量的な面と質的な面との双方が相俟って、2%の物価安定目標の達成に向けて、大胆な金融緩和を進めるということに尽きると思います。
§17Question
金融政策運営上、資産価格をどのようにみるか、お伺いします。白川前総裁時代の日本銀行は、単に物価だけをみるのではなく、資産価格に生じる不均衡、いわゆるバブルにも配慮すべきである、すなわち物価目標が達成されなくても、資産市場に一種の不均衡が生じるのであれば、緩和から手を引く可能性もあるというスタンスを採っていました。一方、昨日、FRBのバーナンキ議長はそれとは正反対に、金融政策はいわゆるバブルの抑制に割り当てるべきではないという、伝統的なFRBのスタンスを示したと思います。そこで、黒田総裁にお聞きしたいのは、2%の物価目標の達成に向けて全力を傾けるということですが、仮に、その 2%が達成されないうちに、資産市場に何らかの不均衡が生じた場合も、基本的には物価目標の達成に向けて金融緩和を続けるのか、あるいは逆に金融緩和を止める可能性もあるのかについて教えて下さい。(黒田総裁)非常に重要な論点だと思いますが、現実的な可能性を勘案しながら議論していくべきと思います。そのような観点からみると、現在、日本の資産市場に何か大きなバブルが生じているとか、生じそうである、その懸念がある、とは考えていません。むしろ、現在の課題は、15年続いたデフレからどう脱却するのかということです。消費者物価上昇率は、最新時点でもまだマイナスです。
§18Question
それが一番大きな課題であり、今ご質問された、常にあり得るけれど、当面は余りありそうにない仮定のことを議論しても、金融政策の当面の課題に対応することにはなり難いのではないかと思います。ただ、中央銀行は、常に色々なことを慎重に勘案していますので、資産価格を勘案しない、物価安定目標だけで消費者物価しかみないということはありません。雇用やその他国民経済の健全な成長に資するものになっているかどうかをみています。日本銀行法でも、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」とされているので、当然、その中で、資産価格などもみていくことは間違いありませんが、資産価格をターゲットにするわけでもありませんし、今、バブルの懸念があるという状況にはなっていないと思います。
§19Question
2%の物価目標を目指す上で、今後の不動産投資信託(REIT)の買入れ枠の拡大をどう考えているか、それが不動産価格にどう影響するのか、教えて下さい。(黒田総裁)金融緩和については、「できることは何でもやる」というスタンスで、2%の物価安定の目標の実現に向かって最大限の努力をすることは、現在の日本銀行の使命だと思っています。従って、REITを含め、様々な金融資産の購入について、市場の状況や経済の動向を踏まえて、政策委員会で十分議論していくべき問題であると思っています。REITと不動産価格との関係については、当然関係があるわけですが、REITの購入を進め、不動産価格をターゲットにして金融政策を進めているわけでは、これまでもなかったですし、今後もそういうものではないと思っています。
§20Question
現在の包括緩和の仕組みは、資産買入等の基金という形で「量」と「質」の両方を目安として表すような政策になっており、今の黒田総裁のご発言を聞くと、それでも構わないのかなという印象を持つのですが、現在の資産買入等の基金という枠組みに何か不都合な点、あるいは不十分な点があるのであれば教えて下さい。また、お三方にお聞きしたいのですが、端的に、デフレの原因をどうお考えでしょうか。先立ってお辞めになった白川前総裁は、「潜在成長力の低下が 1 つの原因だ」とおっしゃっており、一方で、安倍総理のように、「貨幣現象だ」というお考えもあると思います。これらも踏まえて、デフレの原因をどうお考えか、お聞かせ下さい。(黒田総裁) 1 点目について、日本銀行としても色々なことをやってこられたのでしょうが、その結果――先程、中曽副総裁も言われたように――、非常に分かり難くなっていると思います。バランスシートの負債側と資産側で、どのような動きになっているか、それをどのような方向に向けようとしているのかということが、もっと端的に分かるような金融政策を運営することが、やはり市場との対話を強化する意味でも重要だと思います。それを超えて、どのような内容の金融緩和策をとるべきかについては、あくまでも、これから政策委員会で議論して決めることだと思います。
§21Question
ただ、量的、質的な緩和を大胆に進める必要があることは間違いなく、また、2%の物価目標をできるだけ早期に実現するということは、日本銀行にとって最大の使命になっていると思います。次に、2 点目のデフレの原因についてです。私は、以前から、物価に影響を与える要素は一杯あると言っています。デフレに影響した要素としては、90年代以降、金融機関の問題によるデレバレッジがあり、円高があり、さらには新興国からの安い物資の輸入の増加があり、ある時は石油価格が下がったりと、色々な要素が、その時々の物価上昇率に影響してきたことは間違いありません。その中に、金融政策の失敗もあったかもしれませんが、あらゆる要素が物価上昇率に影響していることは事実です。ただ、それは原因の問題であって、物価安定を確保する責務が誰にあるか、となると、これはどこの国でも中央銀行にあるわけです。従って、様々なデフレの要因があったら、それを克服するように様々な緩和策を採って、デフレが続かないようにする責務が中央銀行にはあります。デフレの原因を、色々な要素を測って研究すること自体は意味があると思いますが、中央銀行としては、「色々な原因でデフレになっています」と言っても――先程、岩田副総裁も言われたように――、責任を阻却することはできないと思います。
§22Question
2 点お伺いします。これまで海外などからあった円安誘導批判について、どうご覧になっていますか。もう 1 点は、確認ですが、外債購入の必要性について、どうお考えでしょうか。(黒田総裁)最近起こっている状況は、基本的には、リーマン・ショック後に行き過ぎた円高が起こり、その修正過程だと思います。ただ、それがどこまで続くのか、あるいは、どういう水準で安定するのかということ、つまり、為替の問題については、何とも申し上げられません。為替の安定の責任は財務省にあるわけで、日本銀行には物価安定の責任があるということです。外債購入については、為替に影響を与える目的で行うと為替介入になります。G7、G20でも、為替レートは基本的に市場に任せるべきで、異常な場合に単独あるいは協調して介入することはあり得るとしても、基本的にマーケットに任せることになっています。そういう国際的な合意に従うべきであろうと思っています。それから私が聞いている限り政府としても、最近、為替介入は行っていませんし、円安に誘導したということはないと思います。
§23Question
2 問あります。1 問目は、先程、総裁から「市場との対話」というワードが出ました。白川前総裁は、常に、市場との対話は不十分だった、あるいは上手くいっていなかったという批判にさらされていたと思うのですが、どういったところに問題があって、あるいは黒田総裁がどういうところを改善していくのか、先程の「分かり易さ」というところもあると思うのですが、その辺りをお聞かせ下さい。2 問目は、黒田総裁と岩田副総裁にお伺いします。以前から、「リフレ派」、「異端」というような言われ方もされていたところもあるお 2 人で、ただ、持論を変えなかったお 2 人だと思います。現在、今までと若干持論が変わってきているような方々もいる中で、お 2 人が選ばれた意味はあると思いますし、リフレ派という方が世の中で若干増えているような気がするのですが、その辺り、特に岩田副総裁にお伺いしたいのですが、どう思われているでしょうか。(黒田総裁) 1 問目の「市場との対話」ということですが、これは、別に大げさに何か宣伝をするとか、あるいは、市場関係者が色々と言っていることを、ずっと全部、金融政策がフォローしていくとか、そういうことではないわけです。
§24Question
あくまでも、市場の状況をよく把握する、市場関係者の議論はよく把握すると同時に、政策委員会で決めた金融政策は分かり易く市場関係者に浸透させていく、それを助けるということが――英語ではfacilitateと言います――、市場との対話を強める意味で非常に重要だと思います。その点については、私ども 3 人は最大限の努力をしていきたいと思っています。第 2 のご質問は、私よりもむしろ岩田副総裁に向けられたものと思いますので、岩田副総裁にお譲りします。(岩田副総裁)「リフレ派」という言葉は、我々が言っている意味で必ずしも理解されているとは思いません。「リフレーション」という言葉を最初に言ったのは、1930年代のアーヴィング・フィッシャー教授だったと思います。フィッシャーは、基本的に、「デフレの中で、雇用が失われ、経済成長が低下していく状況にある時、デフレを止めなければならないのだが、その時に、デフレが始まった前の物価水準までとにかく戻すために金融を緩和する」という意味で「リフレーション」と言ったわけです。しかし、現在は、物価水準をデフレになる前の元にただ戻すというだけではなく、実際には、経済は、ある程度の物価上昇があった方がむしろ安定することが分かってきました。
§25Question
特に、1990年代ぐらいから、ニュージーランドが始めたインフレーション・ターゲットの中で、2%ぐらいの方が、だんだん失業率も低下して、雇用も最大化するし、経済も成長するということが経験的に分かってきたのです。従って、リフレ政策は、やはり 2%ぐらいのインフレ経路を上手く歩むように、金融政策を運営するという考え方だと思います。「2%のインフレ目標」とは、あくまで手段であって、その方が、最終的には、雇用もよいし、成長率も上がるという実績があります。それが何故かについては、色々あり、本日はそこまでの説明はなかなか大変ですが、そういう経験が、短い国でも 10年、長い国では20年ぐらいの実績があるのです。そういう意味で、2%ぐらいというのは、国際標準として、主要国ではそのぐらいの経路が、企業活動も上手くいき、投資行動も上手くいき、貯蓄行動も安定していくという実績のもとに、リフレーションは出てきているのです。「2%ぐらいのインフレ」というと、何か大変なインフレとなってしまう、日本だけが凄いインフレになるのではないか、と思われるかもしれませんが、世界が、この 20年くらいで経験を積んだ実績のある目標だということです。
§26Question
黒田総裁にお伺いします。前総裁の白川さんは、財政ファイナンスはしないと度々おっしゃっていました。この点について、黒田総裁はどのようにお考えなのか。白川さんは、そう言いながらも、せっせと買入基金で国債を市場から買いました。それで、日銀はたくさん国債を抱え、「マネタイゼーションではないか」という人もいました。この財政ファイナンスとオペの境目をどうお考えになるのでしょうか。国債など色々と財務省でご経験になったと思いますが、消化能力というのは、ある意味で、市場で満腹感が出ると、金利が上がります。ただ、どんどん日銀が買い上げていれば、その機能が失われるかも分からない。そういうことに対して、どうお考えになるのか。あるいは、金利が上がった時に、これは上がったから市場の警告と考えて、もう止めようかなと思うのか、上がったなら、どんどん買いまくって、さらに下げようとするのか。これは仮定の質問ですから微妙かも分かりませんが、そういうところの基本的なスタンスをお伺いします。(黒田総裁)主要国の中央銀行は、いずれも、基本的には国債を引き受けることはしないということになっています。日本の場合も、財政法によって、日本銀行は原則として国債の引受けはできないということになっています。一方、市場でのオペレーションの対象として、どういった債券、金融資産が適切かということは、中央銀行が一番よく知っているわけです。
§27Question
中央銀行が、自主的に市場の動向をみながら、金融調節の手段として何が一番適切かを考えて選択してきています。現時点で言うと、日本だけではなく欧米のほとんどの国が、オペレーションの対象として国債を使っているわけです。これは、国債の市場が一番広く深く流動的だということで、それを活用しているということだと思います。従って、中央銀行が、自主的に、金融政策の手段として国債を市場から買い上げるということは、中央銀行として当然のことで、特別に財政ファイナンスであるということにはならないと思います。ちなみに、ご承知かと思いますが、300年以上の伝統のあるBOEも、昔はほとんど民間の手形の買入れ、売却で金融調節を行っていたわけですが、そのうち政府短期証券に移り、このところはBOEも他の中央銀行もそうですが、長期国債を含む幅広い国債を、さらには――FRBなどが一番大幅にやっているわけですが――、資産担保証券その他各種の民間の金融資産も大量に購入する形になっているわけです。これは、あくまでも、金融政策を自主的に運営する上で適切な金融資産を選択し、それをマーケット・オペレーションの対象にしているということだと思います。なお、国債自体の問題、あるいは財政規律の問題、これはあくまでも政府・国会の責任です。
§28Question
先般の共同声明でも、政府は当面景気刺激策を採るわけですが、中長期的な財政再建に対する姿勢は全く変えないで財政規律を守ると言われているわけであり、これは極めて重要なことと思っています。
§29Question
少しミーハーな質問ですが、最初の会見でないと伺い難い気がするので、岩田さんから年の順、お三方に答えて頂きたいのですが、今回のポスト、非常に重要な責務を担われることになられたと思うのですが、オファーがあった時に「わが意を得たり」ということだったのか、それとも、躊躇はあったけれども引き受けられたのか、その辺りの思いをそれぞれに伺いたいと思います。それから、両副総裁には、先程、デフレの原因についての質問がありましたが、飛んでしまったようなので、それについてもお答え頂けたらと思います。(岩田副総裁)「わが意を得たり」ということは、全然ありませんでした。むしろ、この 3月で本来は定年退職するので、実は定年退職後の生活を楽しみにして生活設計しており、急にアベノミクスが出て来て、世の中が急に変わり、何か私の言っているような政策に転換するのかなという気持ちがありました。そういうことですから、最初の頃は、自分の生活とは余りにも違うので、自分で副総裁になるというのはあまり歓迎しないという気持ちでした。
§30Question
しかし、そのうちにだんだん周りが「お前しかやる人がいない」と言い出して、首相からも「どうか」と言われ、周りの人もそう言っているうちに、自分も、「そういう政策を採るべきだ」と言ってきたので、やはりここで尻込みしてはいけないのではないかな、という気持ちにだんだん変わってきて、最後はお引き受けすることに踏み切ったというのが正直な気持ちです。(黒田総裁)私は、これまでマスコミの方にも申し上げていた通り、アジア開発銀行(ADB)の総裁として、実は一昨年の 11月に 5年の任期をもって再選され、まだ任期が 4年くらいあるということですし、ADBの仕事に十分満足しているということで、全くそういったことは考えていませんでした。ただ、具体的に、そういうお話があった時に、十分考えた上で――これは 1 人で考えましたけれども――、お引き受けすると決断した次第です。(中曽副総裁)私も、本来であれば理事の任期が昨年の 11月に切れているはずであったわけですから、この新体制への移行というのは、どこか遠くでみていることになるのだろうと思っていたのは事実です。そういう意味で、結果的には大変重たい責任を持つことになったと、今は覚悟を新たにしています。
§31Question
一方、冒頭で述べた通り、私のキャリアでは、銀行危機以来、危機対応に追われ、結果的にこれまで日本経済の再生という、目指していたことが果たせないままになっていたことも事実であり、できれば自分の手でその課題の達成に貢献したいと思う部分もありました。今は、日本銀行、中央銀行の幹部職員として、ずっと思い続けたことでありますが、今日生きる世代だけでなく、明日の世代の国民のために、安定した経済社会を構築するという揺るぎない信念と、折れない心を持っていきたいと思っています。デフレの背景についてのご質問もありましたので述べさせて頂きます。おそらく、デフレが続いている背景については、90年代から長く続く慢性的な需要不足に加え、リーマン・ショック以降の景気の落込みもあって、マクロ的な需給バランスが悪化した状態が続いてきたことが大きいと思います。ここに、人口の減少、特に労働人口の減少という要因、構造的な要因も複合的に加わって、デフレが続いてきたと思っています。金融政策の責任については、先程、黒田総裁が言われた通りだと思います。金融政策がデフレ克服に向けて果たすべき役割は大変重要だと思っていますし、2%というターゲットを政策委員会自らの責任で決めた以上、この実現に向けて全力を尽くさなければならないと思っています。
§32Question
その上で、物価上昇が実現していく状況について、企業収益が改善する、あるいは賃金、雇用が増加する、つまり国民生活がより豊かになるような状況を伴いながら、物価上昇率が徐々に高まっていく好循環を作り出していくことが必要だと思っています。そういった点を踏まえると、日本経済の競争力や成長力強化に向けた幅広い主体の取組み、これが進展することも必要だと思っています。仮に、そういう取組みが進展すれば、金融政策の効果は一層高まると思いますし、その分、物価目標の達成時期も早めることができるのではないかと私は思っています。(岩田副総裁)デフレの原因についてです。貨幣的な現象と我々は考えますが、その意味が誤解を招き易いので、少し説明します。例えば、現在、アベノミクスで、安倍首相が大胆な金融緩和を言われ、市場が期待していることで、マーケットのインフレ予想が随分上がってきています。これは、物価連動債などでみると、急激に上がってきています。0.7%くらいだったインフレ予想が、今は 1%を超えていると思います。そうすると、皆さんの行動が、インフレ予想のもとでの行動に変わってくるということです。そうすると、だんだん需要が増えてきて、だんだんデフレギャップが無くなってきて、物価が下げ止まって上昇に転ずるということですが、その時に足許では、マネーストックが増えていないところに注目して頂きたいと思います。
§33Question
つまり、インフレやデフレは貨幣的現象だという場合に、足許でのマネーストックと物価上昇率との関係があると言っているのではないのです。これは、市場が非常に長期の予想をして、貨幣供給の経路はどうなるだろうと予想して、そして、将来は貨幣供給がどこかで増えてくることを予想し、「ということは将来インフレになるのだから、例えば今のうちに買っておいた方が良い」という行動が出てくるのです。そのようにして、足許の物価下落が止まっていくということです。ですから、長期的にみると、貨幣供給の増加率と物価の上昇率は、非常に相関関係が高いのです。しかし、短期的にみると、例えば、今、マネーストックは全然増えていませんが、物価はだんだん下げ止まってくるということです。貨幣供給と物価の関係とは非常に長期の関係であって、短期的に、足許で貨幣と物価との関係があると言っているのではないのです。デフレ脱却の歴史では、1930年代の昭和恐慌もそうですが、基本的には、金融政策によってデフレ予想からインフレ予想に変わることで、最初に出てくるのは、自己資金を使って、あるいは増資をして企業が設備投資をするということです。何故かというと、企業は、デフレのもとでは、自己資金の使い道が無いために自己資本、内部留保をたくさん持っているので、銀行に借りにいくわけではないのです。
§34Question
内部留保は 2011年末のデータをみると、企業は 220兆円くらいの現金・預金を持っています。金融機関ではない企業です。何故それだけの現金・預金を持っているかというと、デフレ期待で使い道が無いためです。そのために、ただ持っているだけなのです。これが、インフレ予想が出てくると、最初は株や外貨に移りますが、やがて物・設備投資や在庫投資に移ってくるというように、今、凍りついている貨幣が動き出すということです。簡単に言えば、最初に起こってくることは、貨幣の流通速度が高まるということです。それによって、物の支出に使われるようになる。今までは、ただ貯蓄資産として持っていた貨幣が、物の支出に使われるようになることを、デフレ脱却の歴史がいつでも示しています。同じことがつい最近の日本でも起こっています。小泉内閣の時代、2001年から 2006年、2007年ぐらいまで景気が回復しますが、この小泉改革の時、最初から 3年半、銀行の貸出はずっと減っています。凄く減っています。それにもかかわらず、どこからお金が出て設備投資や生産のファイナンスをしたのかというと、全部、内部留保や現金・預金の取崩し、増資です。銀行の貸出に頼らないので、その過程ではマネーは増えていないのです。このように、マネーが動かなくなっている、家計に加え企業までがマネーをたくさん持っているのがデフレの特色です。
§35Question
これは、デフレが15年も続いたから、そうなってしまっているのです。そのお金を、最終的に物の支出へ動かしていくことが金融政策の役割です。そして、経済活動が段々活発になってくると――小泉改革の時も大体3年半くらいまではむしろ銀行貸出が減りながら――、景気が回復しています。同じく、1930年代に米国がデフレ不況から回復する、日本が昭和恐慌から回復するときも、貸出が増え始めるのは回復が始まってから大体 3年半から 5年くらいです。最初、銀行貸出は増えていないのです。長期的にはその後から貨幣はどんどん増えてきます。長期的にみると、最終的に貨幣が増えないとやはり物価は上がりません。長期的には、貨幣と物価の間では関係はみられると思いますが、おそらく、ここから回復していく過程では、「それほど貨幣は増えていないではないか」、「銀行貸出は増えていないではないか」とおっしゃる方がいると思いますが、それがいつでもデフレを脱却する過程の特色です。
§36Question
改めてお伺いしたいのですが、2年で 2%の物価上昇目標が達成できなかった場合の責任の取り方と日銀法改正について、それぞれ、黒田総裁と岩田副総裁にお伺いします。(黒田総裁)先程申し上げた通り、政策委員会で 2%の物価安定目標を定め、それをできるだけ早期に実現することが、日本銀行としてのコミットメントになっていますので、その 1日も早い実現を目指すということに尽きると思います。その場合、「どのくらいの期間で」ということは、色々な要素があると思いますが、諸外国の例をみても、2年程度が1 つの目処になっていることは事実です。そういうことを念頭に置いて、1日も早い物価安定目標の実現に努めるということです。日本銀行法についてですが、いずれにせよ、私どもは、現行日本銀行法のもとで仕事をしているわけであり、日本銀行法改正は、最終的に国会が決める話ですので、私から何か申し上げることは差し控えたいと思います。(岩田副総裁)先程申し上げた「中期的」とは、大体 2年ぐらいであり、2%は 2年ぐらいで達成しなければいけないということです。2年経って、2%がまだ達成できない、2%近くになってもまだ達成できていない場合には、まず果たすべきは説明責任だと思います。ただ、その説明責任を自分で果たせないということ、単なる自分のミスジャッジだったということであれば、最高の責任の取り方は、やはり辞任だと思っています。
§37Question
まずは説明責任を果たせるかどうかが基本だと思います。日本銀行法改正については、長期的には、法的な担保をもって物価目標を決めていく仕組みの方が必要だと思います。どの人が総裁、副総裁あるいは審議委員になるかに関係なく、どのような人がなっても、基本的には 2%あるいは 3%という――それはその時の政権によって違いますが――、物価目標をきちんと法的に担保することは、長期的には必要だと思います。
§38Question
2 点伺います。1 点目は、総裁は国会の所信聴取で、2014年からの無期限の国債買入れという日銀の緩和策について、「前倒しも検討する」という趣旨の話をされています。それは現在も変わっていないのかについて伺います。もう 1 点は、物価を押し上げていくということだと、心配されるのは金利の上昇とよく言われますが、その金利の上昇リスクと、それが経済に及ぼす影響についてどう考えているかをお聞かせ下さい。(黒田総裁)国会でも申し上げましたが、「できることは何でもやる」という姿勢で、2%の物価目標をできるだけ早期に実現することに尽きますので、前倒しであろうと何であろうと、必要なことは何でもやります。具体的にどういうことをやるかは、これから政策委員会で十分に審議をして決めることになると思います。金利の上昇云々の話は、多分、長期金利の話をされているのだと思います。短期金利は、事実上、どこでも中央銀行がコントロールできるわけですが、長期金利は、必ずしも常にコントロールできるわけではない要素もあるわけです。ただ、長期金利が、短期金利の将来の予想の積み重ね、さらに流動性の問題等で説明できるとすれば、短期金利と長期金利はつながっているという面はあります。
§39Question
ただ、今のご質問は、おそらく、日本銀行が短期金利をゼロに近い、0~0.1%程度で推移するよう誘導してコントロールしていても、長期金利が上がってしまったらどうするのか、という話だと思います。景気がどんどん改善していく、物価がどんどん上昇していく、あるいはそういう期待がはっきり出てきた時に、長期金利に何らかの影響が出てくる可能性は当然あるわけです。しかし、その場合も、問題は実質金利であり、私は、直ちに実質金利が上がるとは思いません。従って、景気が良くなり、物価上昇率が 2%に向けてだんだん上昇していく中で、名目金利がそれを反映して若干上がることはあり得ると思いますが、にわかに実質金利が上昇することは考えていません。景気が急拡大して、もの凄く資金需要が高まってそういうことになる、ということは絶対にないとは言えませんが、景気が好転する、改善すること自体は好ましいわけで、今すぐ実質の長期金利が上昇するような局面は想定し難いと思います。問題は、物価上昇率あるいは物価上昇期待が 2%に向けて上昇していくことが 1 番大事であり、その中で、それを反映した若干の名目金利の上昇があったとしても、実質金利は引き続き低い、あるいは金融緩和によって長期の実質金利はむしろ低下していく──名目的にも当面は低下するかもしれませんが──と思います。
§40Question
いずれにせよ、直ちに実質金利が上がって困ることになるということは、全く想定し難いと思います。
§41Question
先程、緊急決定会合についてはコメントすべきではない、ということでした。また、適切な政策を十分審議して決めたいということでもありました。ということは、急いで会合を開くよりも、しっかり審議して会合を開きたいということなのかどうか。また、ボードメンバーの方々とも、既に、個別に会われたのかどうか。それと、日本銀行という、この大きな組織を運営するに当たって、どのようなことを考えているのか、今後、人事などについて、何か外から呼ぶことがあるのかどうか、そういったことについて教えて下さい。(黒田総裁)政策委員会の金融政策決定会合は、スケジュールがもう公表されているわけです。もちろん、事情に応じて臨時会合も過去開かれたこともありますし、そういうことが不可能だということではありませんが、いずれにせよ、臨時の金融政策決定会合があるかないか、というようなことは、私から申し上げるべきでないと思います。それから、人事等については、当然、スタッフとも十分に意思の疎通を図りつつ、組織の長としてやっていくことになると思いますが、人事で一番重要なのは――常にそうですが――、それぞれの人の能力というものを、メリットベースで能力を踏まえ、一番適切な人事配置にすることが重要だと思っています。
§42Question
黒田総裁が考える量的・質的に大胆な緩和を行うことによって、実体経済にどのように波及していくのかという「経路」について、まだ具体的な策は出していないのですが、考え方について、改めて教えて下さい。(黒田総裁)金融政策の波及経路、チャネルについては、色々な議論があり、先程、岩田副総裁が非常にクリアに説明されましたが、実体経済という時に、企業と家計とが主役として浮かび上がってきます。企業も、大企業、中小企業によって相当違い、大企業の場合は銀行の融資に依存する割合が非常に小さくなってきており、内部留保あるいは資本市場での調達が非常に大きくなっています。中小企業の場合は、銀行を中心とした金融機関による融資に頼る面が非常に大きいです。従って、金融緩和が行われる際、どういう経路で実体経済に影響が出てくるかという時に、企業を考えてみると、通常の場合であれば、短期金利がプラスですので、短期金利を下げることによって、長期にもある程度影響するし、短期の色々なファイナンスのコストも下がるということで、様々なプラスの影響も出てくるわけです。簡単に言えば、銀行貸出の金利も下がるし、アベイラビリティも拡大することによって、中小企業などの設備、その他の資金需要に、より応え易くなって、中小企業の経済活動を活発化します。
§43Question
あるいは、大企業で言えば、金融緩和を通じて、株式市場や債券市場に資金が流入して株価や債券価格が上がるという形で、より資金調達が容易になってくるということで、これまた大企業の経済活動を刺激する。そのようなチャネルがあるわけです。それらに加え、「期待」というか「予想」の影響も無視できないわけで、特に、ゼロ金利下、短期金利がほとんどゼロに張り付いているもとで、量的・質的緩和を進める際には、期待への働き掛け、期待の果たす役割というのは実は非常に大きいわけです。もっとも、実は、短期金利を操作することによって金融を緩めたり締めたりという、通常の金融政策のもとでも、期待の要素は非常に大きいのです。僅かな短期金利の変化をもたらすことだけによって、企業の経済活動が変わるとはなかなか想定し難いですが、中央銀行はそのような行動を、例えば、インフレ抑制のために短期金利を上げていくと示すこと、必要があればインフレ抑制のために幾らでも金利を上げていくという決意を示すことで期待に働き掛け、インフレ・プレッシャーを抑制するのです。逆に言えば、デフレの場合は、デフレ期待を弱めていくことによって、金融政策の効果がより大きく出てくるという面もあります。
§44Question
実は、期待に働き掛けることは、量的緩和や短期金利がゼロになった局面で非常に重要ですが、通常の短期金利を操作する形での金融政策においても、予想やコミットメントの役割が非常に大きいと思います。家計については、株あるいは債券価格が上がった時の資産効果もありますし、あるいは住宅ローン等、比較的長期の金利が下がる時に、住宅投資に刺激的に働くというような様々なチャネルがあります。私は、何か1 つだけ、例えば銀行貸出だけに絞って、それしかチャネルがないというのは正しくないと思います。
§45Question
1 点目は日銀の独立性についてです。総裁は、国会で説明された際、日本銀行の独立性は法律で確保されているとおっしゃっていますが、その中身は、政策の「目的の独立性」ですか、それとも「手段の独立性」ですか。米国のアダム・ポーゼン氏に聞くと、「目的」を決めるのは elected official で、中央銀行には政策の「目的の独立性」はなく、「手段の独立性」があるのであって、この点は彼が一緒に本を書いたバーナンキ氏とも共有していると話しています。総裁は、日銀の独立性とは、どの独立性と思っていますか。2 点目は、今のマーケットについてです。バーナンキFRB議長がQE2の効果について聞かれた時によく言っていたのが、QE2をアナウンスした時から株価が上がり始め、株価が上がったのが最大の効用との発言をされています。昨今のアベノミクスで株価が上がってきており、総裁も緩和について「できることは何でもやる」とおっしゃっていることで、期待も醸成されていると思いますが、今のマーケットの状況をどうご覧になっていますか。3 点目は、インフレ期待について先程言及があり、景気が転換する際にはインフレ期待がシフトすると言われていますが、今そういう状況にありますか。総裁が先程おっしゃった、15年間デフレが続いている中で、今はどういうポイントにあるのか、そのチャンスが来ているのか否か、教えて下さい。
§46Question
(黒田総裁)第1点の日本銀行の独立性については、何度も申し上げますが、現行日本銀行法で担保されていると思います。どういった独立性か、今おっしゃった、「目的」まで含めたものか、「手段」だけなのかという議論は色々あります。現実問題として、ほとんどの国で物価安定目標を中央銀行が決めているわけですが、その際には、政府と十分協議をして決めているわけです。もちろん、政府が決めて、中央銀行がそれに従うBOEのような例もあります。ただ、そのBOEでも、もちろん、中央銀行と政府が十分協議をして、その上で政府が決めています。従って、ご指摘の点は、法律・制度を仕組む上で色々な議論があるところと思いますが、いずれにしても、中央銀行の独立性というものは、長い歴史の中で、それが中長期的に望ましいということで生まれてきたものです。具体的な法律・制度の仕組み方は各国でそれぞれあると思いますが、私どもとしては、現行日本銀行法に沿って政策を行っていくことに尽きると思います。次に、金融緩和に応じて株価が上がることについてです。それ自体は、当然予想されることであり、企業にせよ家計にせよ、プラスに働くと思います。
§47Question
しかし、株価は色々な要素で動くので、金融が緩和されると株価が上がる傾向があるかもしれませんが──ちょうど、為替レートは金融が緩和されると、他の事情が等しければ下落する一定の傾向があることと同じで──、それがいつまでも続くわけではなく、色々な要素に影響されるので、資産価格は十分注視していく必要があるとは思います。現在起こっている株価上昇自体は、別に不思議なものでもないし、経済にとってプラスであろうと思います。3 点目のご質問については、先程、岩田副総裁も言われたように、ある種の指標で測るとインフレ期待が上昇しつつあることは事実と思います。マーケットの色々な方の意見を聞いても、インフレ期待が、これまでのように非常に低い、あるいはネガティブな状況から転換しつつあることは事実だと思います。それは、2%の物価目標を達成する上でプラスだと思いますが、既にもう何も追加しなくても 2%にいくという状況ではないと思います。さらなる大胆な量的・質的な緩和がなければ、2%に早期に達することはないと思いますので、少しインフレ期待が出てきたこと自体、あるいはデフレ期待が弱まりつつあるのは好ましいことですが、まだ、金融政策のさらなる緩和が不要になったような状況では全くないと思います。
§48Question
2 点伺います。2%の物価目標を達成するに当たって、最大のハードルは何であるとお考えですか。何が上手くいかなければ、この目標は達成困難になりますか。本日の会見は、ある意味では、国民の一部も大分期待を持ってみていると思います。先程、2年というコミットメントに対して「1日も早く実現する」とのお話でしたが、ご自身の任期中にデフレから脱却することを約束することはできるのでしょうか。(黒田総裁)私は、2%の物価目標達成が容易だと言っているわけではなく、色々な困難があると思いますが、達成しなければならないし、達成できると確信をしています。逆に、達成できるまで、可能な限りのあらゆる手段を講じていく決意です。任期中にデフレから脱却できるのかとのご質問です。両副総裁は 5年の任期で任命されていますが、私は、実は前総裁の残任期を務めることになっており、4月8日までです。いずれにせよ、早く 2%の物価目標を達成しなければならないと思っています。また、2%の物価目標とは、「2%に達したら終わり」という意味ではなく、2%をアンカーにして、その周りで物価が緩やかに変動するということです。
§49Question
中長期的にみて、まさに国民経済の健全な発展に資することが金融政策の責務ですから、「2%になったから後はもういい」という話ではなく、常に 2%程度をターゲットにして、インフレにもデフレにもならないような金融政策運営を続けるということだと思います。
§50Question
日銀は、物価上昇率について、これまで生鮮食品を除くコア物価指数で考えてきましたが、これをコアコアにするとか、新しい物価指数を考えるというお考えはありますか。また、デフレが 15年間続いてきたとおっしゃっていますが、同じように、自殺者も 15年間続いており、3 万人になります。国民経済の健全な成長ということと自殺者が高止まりしている状況が続いていることは、金融政策の影響もしくは責任みたいなものはありますか。可能であれば自殺については 3人に伺いたいと思います。(黒田総裁)物価指数については、「除く生鮮食品の消費者物価指数」でみていくことでよいと思います。食料品やエネルギー関係のものを全部除いてしまうと、カバレッジが相当低くなり、消費者の実感と相当離れてしまう惧れがあります。その点、「除く生鮮食品」であれば、カバレッジが極めて高くなりますし、天候などによって大きく振れる生鮮食品を除いてみた方が、ある意味では、より正確です。もちろん、米国などは、おっしゃったように、エネルギーなどを除いた、日本で言う「コアコア」でみている一方、ECBなどは、全てを入れたヘッドラインの指数でみているなど、色々な国があるわけです。
§51Question
ただ、実際問題として、どこの中央銀行でも、例えば、国際的な石油価格が突然上がった時に、それがその後もどんどん上がっていくのではなく、一時的に物価上昇率が上がっても、2 次効果、3 次効果を防止して、また 2%に戻ってくることが重要なわけです。色々な要素を十分勘案して物価安定目標は運用されるわけですので、具体的な指標がどうかというのは、先程も申し上げたように、各国で違いますが──それはそれぞれの国の経済や政策を巡る環境を反映していると思いますが──、最終的に言えば、どこの中央銀行でも、色々な一時的要因やその他の要因をみながら、しかしそれぞれの国にとって一番分かり易い指標を使って、物価安定目標を運用しているということだと思います。今の時点で、私は指標を変える必要があるとは思っていませんが、逆に言うと絶対変えてはいけないということでもありません。それは、各国の状況をみても様々であるわけなので、日本経済の状況が違ってくれば、当然、変わってもいいし、政策環境が変われば、また考慮に値すると思います。検討を排除するつもりはありません。ただ、何度も申し上げますが、それが何か物価安定目標の運用に非常に大きな違いをもたらすことはないように思います。
§52Question
自殺云々の話は、昔から有名な──確か大学の時に習いましたが──、デュルケムという有名な社会学者の研究など色々ありますが、私が日本銀行総裁として、わが国における自殺の原因について特別の知見があるわけでもありません。何度も申し上げますが、日本銀行としてなすべきことは、物価の安定──2%の物価安定目標の達成──を通じて、国民経済の健全な発展に資するということに尽きると思います。それ以上のことについて、私から何か申し上げるのは僭越だと思います。
§53Question
先程、金融政策の経路というお話しがありましたが、通貨の経路のお話が出ませんでした。つまり、ドル円の水準を目標にしなくても、かなり円安にならないと物価目標を達成できないという考えと懸念が、特に海外にはあります。それについてお考えをお聞かせ下さい。海外市場参加者の理解を促進する意味で、もしよろしかったら英語でもお答え頂きたく思います。(黒田総裁)日本語でお答えしますが、金融政策が為替レートに影響することは事実です。そして、他の事情が一定であれば、金融緩和をした時に為替レートは下落する傾向があります。金融を緩和すること自体は、要するに景気が落ち込んでいる、あるいは物価が下落している、物価安定目標を達成できていないという状況ですから、どちらにしても為替レートの動きが日本経済にとってプラスに働くことは事実です。しかし、2 つ条件をつければ、1 点目は、金融政策は為替レートをターゲットにしているものでは全くないということです。2 点目は、為替レートの動きは様々なファクターによって影響されるということです。従って、為替レートだけを頼りにしてデフレを脱却するというのは適切でないと思いますが、現時点で、円高修正がデフレ脱却に貢献するかと言えば、それは貢献すると思います。
§54Question
確認的な質問で恐縮ですが、日本の場合、国内の主要な銀行がたくさん国債を持っているという特殊な事情があるわけです。2%を 2年で達成した時に──その時のイールドカーブの形状にもよるとは思いますが──、金融システムへの負荷についてどのようにお考えなのか、分かり易くお願いします。(黒田総裁)幸いにして、物価安定目標が早期に達成された時には、それ以上どんどん物価が上がっていくことは、当然のことながら物価安定目標の目的に合いませんので、出口戦略を検討することになると思います。ただ、いずれにせよ、米国にしてもどこにしても、今はまだ、出口戦略を具体的に議論する状況にあるとは考えていないわけです。ましてや、日本は、15年続きのデフレですから──まだ足許で消費者物価が下落しているわけですから──、今、出口戦略を云々するのは時期尚早だと思います。幸いにして早期に物価安定目標が達成されれば、その時点で、金融システムへの負荷についても適切に検討すると思いますが、私自身は、金融システムに大きな影響が出てくるとは考えていません。ご質問された方がおっしゃったように、出口戦略と言っても、イールドカーブの具合やその時の状況を踏まえ、金融システムの安定は当然考慮されるべきことです。ですが、やはり一番重要なことは、物価安定目標の達成──インフレもデフレも回避するということ──に尽きると思います。
§55Question
端的に 2 点伺います。1 点目は、物価安定目標の 2%には、今後予想される消費税の引上げ分は含まないという理解でよいのか、また、含まないとすれば何らかの形で上昇した分を除いて計算するのか、ということです。2 点目は、量的にもさらに緩和すると、当然国債の購入量は増えていくと思いますが、財政ファイナンスと思われないために何らかの歯止めが必要なのか。現在、銀行券ルールはほとんど形骸化していますが、ルール自体不要なのか、代わるルールが必要なのか、どうお考えでしょうか。(黒田総裁)第 1 点は、非常に重要な点だと思います。先程申し上げたように、2%の物価安定目標という時に、どういう消費者物価指数を使うのかは、総合消費者物価指数ということになっています。ただ、消費税率が 3%上がった時に、非課税品などを除くと、消費者物価指数がどの程度上がるのが自然なのかはよく政府に聞かなければいけません。仮に、それが 2%程度だとしても、消費者物価指数の動きは対前年同月比でみますから、12 か月経つと、前年比はまた元に戻って下がってしまいます。従って、消費税率引上げの影響は、一時的な要因に過ぎないわけです。その意味では、そういう一時的な色々な要因がある時に、それを考慮してその分を除いてみたら、結局 12 か月経ったらこうなってしまうということを当然考慮しながら、金融政策をみていくことになると思います。
§56Question
生鮮食品を除く消費者物価指数でみるのは、一時的要因を除くということです。石油価格でも一時的な要因で上がっているものを除くかどうかについては、先程申し上げたように議論があるわけですが、一時的要因も facevalue でそのまま受け入れ、「これで物価が上がったから、もう物価安定の目標は達成できたからいい」、というものでは全くありません。そういう意味では、ディスカウントして考えなければならないと思います。それは十分考慮していくと思います。従って、そういうものを除いたところでどういう数字になるかを、当然みていかなければならないと思います。2点目の財政ファイナンスについては、何度も申し上げますが、中央銀行が、自主的に金融政策の調節手段として、市場から様々な金融資産を買入れたり売却したりするマーケット・オペレーションは、中央銀行にお任せ頂くということになっています。そういうものでなく、政府が赤字を出して国債を発行したら、中央銀行がそれを引き受けるということは全く考えていないわけで、法律で原則として禁止されています。従って、そういう中で、中央銀行が――日本銀行だけでなく、FRBでもECBでもどこでも――、自主的に金融緩和の手段として国債を購入するのは、何ら財政ファイナンスでもないし、全くそういう問題はないと思います。
§57Question
また、日銀券ルールのようなものがないと財政ファイナンスになるとか、その懸念があるということはないと思います。FRBもECBも、現在、そういうルールを持っているとは承知していません。以上