宮尾審議委員記者会見(2013年4月18日)要旨
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§1Question
2 点質問します。1点目は、岐阜県内の経済状況をどのようにみておられるのか、午前中の懇談会を踏まえて、教えて下さい。2 点目は、アベノミクスの岐阜県内への波及の時期や効果をどのようにみていらっしゃるのか、お聞かせ下さい。
§2Ryuzo Miyao
1 点目に関して、今回、当地の経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状に関する貴重なお話や金融政策運営に関する率直なご意見を数多く頂き、極めて有意義な意見交換ができました。そうした意見交換も踏まえて、当地の景気動向について申し上げると、足許の岐阜県をはじめとする東海 3 県の景気動向は、名古屋支店で判断している通り、「緩やかに持ち直している」とみています。この主な背景としては、輸出が、日中関係の影響が減衰していることや米国向けの増加などから持ち直しているほか、個人消費も、乗用車販売が堅調に推移するなど、持ち直しの動きがみられており、そうしたもとで、生産が持ち直していることが挙げられます。本日の懇談会の出席者も、景気の現状についての認識は、概ね同様であり、一言で申し上げれば、岐阜県の景気は、円安の影響を受けて一部に明るい兆しがみられるということでした。その上で、今後の見通しについて申し上げると、海外経済の持ち直しや緊急経済対策の効果、さらには円安・株高の影響などから持ち直していくことが期待できるとみています。
§3Ryuzo Miyao
今回の懇談を通じて感じたのは、岐阜県は古くから、ものづくりあるいは製造業が盛んで、繊維や窯業、家具、刃物などの地場産業において、非常に高い技術力を育むとともに、そうした技術力を活かして、新たな需要の開拓に向けて果敢にチャレンジしていくフロンティア精神に溢れる企業が数多く存在する地域であるということです。さらには、高速道路網をはじめとする充実した交通ネットワークのほか、豊かな歴史・文化遺産などの強みを持ち、有力な観光地でもあるということも、改めて認識したところです。今回の懇談では、こうした強みを活かした力強い地域経済作りに向けたご意見を数多く頂き、非常に心強く感じた次第です。2 点目に関して、アベノミクスが岐阜県経済に与える影響についてですが、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく上で、必要かつ適切な政策の組み合わせだと考えています。こうした中で、日本銀行は、1月に「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、4月に決定した金融緩和策は、これを裏打ちする政策として、「量的・質的金融緩和」を導入しました。この政策は、金利の低下や株式などの資産価格の上昇といった波及ルートに加え、市場や企業、家計の「期待」を好転させる効果が期待できます。
§4Ryuzo Miyao
これらは、実体経済や金融市場に現れ始めた前向きな動きを後押しすることなどを通じて、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えています。先程申し上げた通り、当地の景気は緩やかに持ち直しているとみており、今回打ち出した金融緩和策は、個人消費などでみられ始めた当地における前向きな動きについても、全国と同様、後押ししていくものと考えています。
§5Question
2 点伺います。1 点目は、本日の懇談会における挨拶要旨をみると、政策公表後の国債市場の不安定な動きは、ある程度予測されていたという理解でよろしいでしょうか。また、今後市場参加者との対話を強化していくと述べられていますが、具体的にどのような事を検討されているのでしょうか。2点目は、挨拶要旨の 9 ページ目の脚注で、「国際的なスピルオーバー効果」について、外債へのポートフォリオ・リバランスと述べられていますが、今回の次元の異なる金融政策は、これを狙って立案されたということでしょうか。
§6Ryuzo Miyao
1 点目の、足許の国債市場の動向についてどのように考えるかということですが、今回の国債の買入れにより、毎月の国債買入れ額はグロスで 7 兆円になります。新規国債発行額の 7 割程度に相当する額を日本銀行が買い入れることになるので、相当な規模のオペレーションになります。足許の国債金利の動向については、基本的に、新たな金融緩和措置のもとで、新しい均衡点を探す動きと理解しており、市場の需給要因を反映した一時的な動きではないかとみています。いずれにしても、この状況が落ち着いていくかどうか、今後の市場動向は注意深くみていきたいと思います。また、国債買入れがスムーズに実施されるように、市場参加者との密接な意見交換も続けていきたいと思います。この点、先週、そして昨日も市場参加者との意見交換の場を設けました。そこで色々なご意見やご質問等を頂いていますので、そういったことも踏まえながら、今後スムーズな国債買入れに向けて、私どもが出来ることはないか、しっかりと考えていきたいと思っています。2 点目の「国際的なスピルオーバー効果」は、今回の「量的・質的金融緩和」における 4 つの波及経路の 3 番目、ポートフォリオ調整の派生形として、講演でお示ししたものです。これは、あくまでそういったメカニズムがあるという可能性をお示ししているものです。
§7Ryuzo Miyao
国際的なポートフォリオ調整の結果、外国に資金が流入し、海外経済を活性化します。それによって外需やグローバル企業の収益の増加をもたらし、国内経済に恩恵がフィードバックしていく、そういった効果だと考えています。一般的なメカニズムとして、こういった国際的なポートフォリオ調整がありうることを指摘したものです。
§8Question
2 点伺います。まず、金融経済懇談会における挨拶の中では、消費者物価の上昇率の見通しについて、「2014年度中に 1%程度を超えて高まっていく」と述べています。これは展望レポートで出されている中央値を上回っている訳ですが、宮尾審議委員としては、2014年度中に 1%を超えた後、物価の目標である 2%が、具体的にはいつ頃達成できるとお考えなのか、教えて下さい。
§9Ryuzo Miyao
この点は、次回の金融政策決定会合で経済・物価見通しに関する展望レポートを作成する際に、今回の「量的・質的金融緩和」の政策効果も含めた形で、先行きの経済・物価見通しが議論されることになります。講演で示した、「2014年度中に消費者物価上昇率が 1%程度を超えて高まっていく」という見通しのベースは、1月の中間評価時点での政策委員による 2014年度見通しの中央値である 0.9%という数値です。2014年度の平均が 0.9%ですから、2014年度中には 0.9%を超える、つまり、1%程度を超えて高まっていくとみているということです。講演で示したのは、あくまでも中間評価で示した見通しに基づくものです。今回、「量的・質的金融緩和」という政策を実施しましたので、その効果を含めた先行きの経済・物価見通しは、次回の会合で、メインシナリオおよびリスクの評価とともに、しっかりと点検していきたいと思います。
§10Question
関連でもう 1 点伺いますが、2%の目標を達成する道筋をきちんと示していくことが大事という問題意識があると思いますが、今の展望レポートは年度平均で数値を示していますので、2013年度と 2014年度の平均しか出ない訳で、2%という数字が出るかというと、今のままだと難しいのではないかと思います。そのことに対する問題意識、つまり、もっと先まで示したり、2%という数字が入るように何か今の展望レポートの数値の出し方を変えるといったことについて、問題意識はあるのでしょうか。
§11Ryuzo Miyao
展望レポートの表現、あるいは将来の経済・物価見通しをどのような形で示すかについては、今回、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に 2%目標を達成できるよう必要な政策を決定したということですので、その政策効果を織り込んだ形でどのように見通しを示すのが望ましいのか、現在の示し方に何らかの工夫や改善の余地があるのかどうか、そういった点も次回の金融政策決定会合の論点の一つとなりうると思います。いずれにしても、先行きの経済・物価の見通し、メインシナリオ、並びにリスクについてはしっかりと議論していきたいと思います。
§12Question
決定のプロセスに関して伺います。1月の金融政策決定会合で 2%の目標を決め、3月の会合では 1 人の委員が政策変更を提案されて、残りの方は全員反対しました。その後、前回の 4月の会合では、全員一致で新しい政策を決められた訳です。宮尾審議委員も、講演の中で、新体制で実施した方が効果的だと述べられていますが、その政策判断の連続性について、どのようにお考えでしょうか。新体制であろうと旧体制であろうと、必要であると思えば実施すべきと思いますが、3月時点の提案に反対されたことが分かりません。1 か月の間で変わったことといえば、総裁をはじめ執行部の 3 人が替わったくらいで、経済も順調に進んでいたと思います。そうした中で、何故 1 か月の間でこれだけ大きな変更に賛成したのか、政策判断の連続性という観点でお答え下さい。
§13Ryuzo Miyao
只今のご質問は、3月の会合で白井委員の提案に反対し、なぜ翌月、つまり 4月の会合で同様の提案に賛成したのかとの趣旨だと思います。まず、白井委員の提案、あるいはそれを巡る議論に関しては、既に公表されている議事要旨に示されている通りです。その提案は、従来あった基金の枠組みに、輪番オペの長期国債買入れを組み入れるという内容で、一つのオプションとして会合で検討された訳ですが、議事要旨にもある通り、いくつかの論点について更なる検討の余地があるといった意見もあり、その会合では賛成多数とはなりませんでした。一方、今回の提案は、量的にも質的にも相当踏み込んだ、新しい金融緩和の枠組みであり、前回の提案とは、枠組み自体が更に大きく変わっており、新しく組み立てられたものです。従って、3月の提案の採否と 4月の政策判断とは直接は関係ないと考えており、私の中では、2 回の会合の連続性は維持されていると思っています。
§14Question
3 点質問します。1 つ目は、2年程度を念頭に置いて、2%の物価目標を達成するために必要なことを全て「量的・質的金融緩和」に盛り込んだということですが、2年程度で 2%の目標達成は可能だとお考えなのか教えて下さい。先程も似たような質問に対して、次回決定会合で議論するとおっしゃった訳ですが、黒田総裁、岩田副総裁も、様々な場所で総裁個人の、あるいは副総裁個人の考えとして、「実現は可能である」という見方を既に示していますので、宮尾審議委員が個人としてどのようにお考えなのか、教えて下さい。2 つ目は、1 つ前の質問とも若干似ていますが、何故このような次元の違う金融緩和が白川総裁のもとではできず、黒田総裁が就任されて 2 週間経つか経たないかという時期に実行できたのかという点です。黒田総裁自身は、総裁就任前から白川総裁の5年間を振り返って、あるいはそれよりずっと前から、日銀の金融政策が不十分であると断言されています。つまり、宮尾審議委員が在任の間も含めて不十分であったと断定されています。このことを宮尾審議委員ご自身も認めるのかどうか、つまり、今までご自身が賛成されてきた金融政策運営がやはり不十分であったと認識しているのかどうか、教えて下さい。第 3 点として、何故今回、白川総裁が退任して、黒田総裁になったばかりのタイミングでこのような次元の違う政策が実行されたのか。
§15Question
白川総裁のもとでの金融政策運営については、宮尾審議委員もほぼ賛成されてきたと思います。それが、手のひらを返したように、黒田総裁になったということで、ほぼ皆さんが次元の違う金融緩和に賛同された訳ですが、これを外からみて、「執行部が提案したものには盲目的に賛成されている方が多いのではないか」という印象を持たれる方も多いと思います。今後、執行部が提案することが、もし仮に間違っていた場合、審議委員の方々がきちんとした判断で、違うものは違う、おかしいものはおかしいと、そういう判断がされるのかどうかということに、多くの人が危惧を抱いているのではないかと思います。この点について、何故、黒田総裁が就任して 2 週間経ったばかりのタイミングでこの政策が行われたのか、何故、白川総裁のもとでは行われなかったのか、教えて下さい。
§16Ryuzo Miyao
まず 1 点目ですが、今回の政策で物価安定の目標が 2年で達成可能なのかどうか、これは先程と同じ質問と思います。今回、私どもは 2年程度の期間を念頭において、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために今回の「量的・質的金融緩和」というパッケージを決定し、実行に移したということです。次回の展望レポートで、その政策効果も含めた形で、将来の経済・物価の見通しとリスクについて点検し、皆さんにお示しする考えです。2 点目と 3 点目は、併せてお答えしたいと思います。私は過去 2年半、包括緩和という枠組みのもとで、政策判断を行ってきました。包括緩和という枠組みは、ご承知の通り、非伝統的な緩和手段のメニューを揃え、政策の進め方としてはその効果を見極めながら緩和を強化していく、そういうアプローチで実施してきました。これにより景気の下支えに寄与してきたと私自身は考えていますが、残念ながらデフレの脱却には至らなかった点も事実です。私自身は、そういった包括緩和での経験があったからこそ、今回の「量的・質的金融緩和」に踏み出すことができたと考えています。異例の規模の国債買入れでもあり、この政策には相応のリスクが伴うことは事実ですが、それを上回る効果が期待できると考えています。また私自身は、この会合に至る以前から――具体的には 1月以降――、追加緩和の提案もしてきています。
§17Ryuzo Miyao
そういった意味で、それまでの政策判断と今回の 4月の政策判断との連続性は維持されていると考えています。
§18Question
再度お聞きします。黒田総裁も岩田副総裁も 2%の目標は 2年程度で達成できると個人の考えを述べています。宮尾審議委員が何故ここでご自身の考えを述べないのか、よく分かりません。それは、今は分からないということなのかどうか――今は答えられないということは分からないと受け止めざるを得ませんが――、そこを含めて、再度、達成できるとお考えなのかどうか、教えて下さい。また、黒田総裁は、総裁就任前から、宮尾委員の 2年半も含めて日銀の政策は不十分であると断言されています。それについて同意されるのかどうか、教えて下さい。
§19Ryuzo Miyao
1 点目については、繰り返しになって恐縮ですが、私どもが今回決定した政策判断は、できるだけ早期に 2%目標を実現する、その際、2年程度の期間を念頭に置き、そのために必要な政策は何かを考えて実施したということです。それを踏まえて、次回の展望レポートに向けてそれぞれの委員が経済・物価の見通しを作成するということになります。2 点目ですが、私自身は、先程申し上げたように、包括緩和は適切と判断して、景気の下支えに寄与してきたのではないかとみていますが、一方で、デフレの脱却には至らなかったというのも重たい事実だったと認識しています。
§20Question
地元の話について伺います。最初の質問にもありましたが、アベノミクスによる景気の持ち直しと言われている中で、今回の懇談会に出席された方々からは、いわゆる円安などによる輸出産業の持ち直しといったプラスの面と、原材料価格が上昇するといったマイナス面と、どちらの声の方が大きかったのでしょうか。また、岐阜県や東海地域においては、プラスとマイナスのどちらの効果の方が大きいと思われますか、この2 点についてお願いします。
§21Ryuzo Miyao
まず、懇談会で、アベノミクス、あるいは足許の円安・株高の影響に関するプラス面・マイナス面の評価について、どのような意見があったのか、改めて申し上げます。まず、円安の影響ですが、プラス面としては、輸出企業の業績が上振れているとか、外国人観光客の増加により街の賑わいが増しているといった、明るい動きがみられているという声がありました。一方で、今ご指摘があったように、ガソリンなどの燃料や原材料価格の上昇がみられ、それが収益の下押しになっている声が聞かれました。また、大企業中心にみられている恩恵が中堅・中小企業にはまだ至っておらず、その効果が得られるためには時間がかかるといった声も聞かれたところです。そういった両面の効果を合わせてどのような印象なのかということですが、全体としては、冒頭申し上げた通り、円安の影響を受けて明るい兆しに繋がっているのではないかと思っています。
§22Question
先程、展望レポートの示し方について、工夫や改善の余地があるかどうか、次回の金融政策決定会合の論点になりうるとおっしゃっていましたが、現在のレポートの示し方について、ご自身の認識として、どのような問題点があるのか、もう少し具体的にお聞かせ下さい。
§23Ryuzo Miyao
展望レポートの示し方については、私どもの経済・物価見通しという政策判断の極めて重要な判断材料の一つですので、それをどのように国民に伝えていくのが良いのかについては、これまでも不断に検討を続けてきました。今回は、2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に 2%の目標が達成できるよう、踏み込んだ政策を決定したということでもありますので、そういう意味からも、より望ましい形があるのかどうかの検討については、重要なポイントの一つになると思います。その点も含めて、次回の決定会合でしっかりと議論し、経済・物価見通しを示していきたいと考えています。
§24Question
本日の講演の中で、宮尾委員個人としては、景気の下振れリスクを強く意識していると述べられていました。これまでの包括緩和の枠組みでは、多くの委員の方が下振れを意識した時には色々と追加策が出ることが多かったと思いますが、今回これほど大胆な政策をやってしまうと、景気が大きく下振れた時の糊代が考えにくいといった声があると思います。この点についてどのように考えればよろしいでしょうか。
§25Ryuzo Miyao
ご質問は、政策判断の際にリスクをどのように評価するかということかと思います。経済・物価見通しには、上振れ・下振れの両方向があるため、上下両方向ともどのようなリスクがあるのかを毎回の会合で点検しながら、それを踏まえて適切な政策判断を行っていくということです。そういった政策判断の基本的な考え方は、これからも変わりません。私どもの対外公表文でも、「上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と記載していますので、将来の政策は、これまでと同様に、経済・物価見通しのメインシナリオとリスクを点検して適切な判断を行うということです。以上