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Bank of JapanPress conferenceJul 22, 2013Takehiro Sato, Board Member

佐藤審議委員記者会見(2013年7月22日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

3 点ご質問します。1 点目は、本日の金融経済懇談会での意見交換の模様と、それを踏まえた福島県経済の現状と見通しについて見解をお聞かせ下さい。2 点目は、当地の復興に向けたアドバイスを頂戴できればと思います。3 点目は、県内の金融の現状について見解をお聞かせ下さい。

§2Takehiro Sato

本日、当地を代表される方々と懇談会を開催し、様々なお話を伺いました。福島県内の金融経済情勢のほか、日本銀行の金融政策についても、有意義な意見交換ができたと思います。経済面では、製造業については、電子部品・デバイスなど一部業種における需要の持ち直しなど、改善に向けた動きもみられているというお話があったものの、総じてみれば、なお盛り上がりに欠けるとの印象を持ちました。特に、中小企業では、円安などに伴う燃料費や資材の高騰によって、マージンが圧迫されており、改善に向けた動きが波及していないというお話を伺いました。非製造業では、除染事業を含めた復旧・復興関連の需要が波及している業種もある一方で、原発事故に伴う風評被害が根強く残っているとのお話を頂きました。農業では、風評被害の影響によって、復旧・復興に目途がつかないといったお話のほか、観光業でもNHK大河ドラマ「八重の桜」の効果もあって、尐しずつ明るさを取り戻す方向にあるものの、全体としてはまだ厳しいというお話を伺いました。こうした中で、人口の減尐、避難者数の高止まりが続くもとで、福島県が如何に競争力を回復し、成長していくかが中長期的な課題であるというお話も頂きました。金融面では、預金について、東京電力からの賠償金支払いや各種保険金等の流入を主因に、高い伸びが続いているというお話を伺いました。

§3Takehiro Sato

一方、貸出については、そうした賠償金等の一部が借入れの返済に回っていることや、設備投資関連の前向きな資金需要が依然盛り上がりを欠いていることなどを背景に、伸び悩んでいるといったご指摘がありました。以上の点を踏まえ、福島県経済については、地域や業種によりまだら模様ではあるものの、全体としては、一部海外需要の改善や復旧・復興関連需要の増加を背景に持ち直しているとみています。今後も、復興関連需要が高水準を持続すると見込まれる中、生産面でも上向きの動きが出てくるものと期待されることから、全体として、持ち直しの動きが明確化してくると考えています。また、中期的には、除染作業や避難区域の再編などが進むにつれて、避難者の生活再建の動きも進展していくと見込まれるほか、県の推進分野と位置付けている再生可能エネルギーや医療関連の幅広い産業が、成長産業として育成されることによって、県経済のより本格的な復興が進んでいくと期待しています。2 点目の当地の復興に向けたアドバイスとしては、福島県経済の復興に向けて、引き続き様々な取り組みを一つ一つ積み重ねていく必要があると思いますが、まずは、除染作業や避難区域の再編等を含めた広い意味での環境の回復と避難者の方々の生活再建に向けた取り組みを、できるだけ迅速に進めていくことが大事だと思います。

§4Takehiro Sato

その上で、経済復興の観点から特に重要なことは、雇用機会の創出に繋がる成長企業や成長産業の育成ではないかと考えています。この点、福島県復興計画において、農林水産業や観光業の再生・復興とともに、創薬拠点の整備等を含めた医療関連産業の集積、再生可能エネルギーの導入拡大や関連産業の誘致といった方向性が示されていることは、中期的な視点から、成長分野を育成していく取り組みとして注目されます。また、こうした取り組みを、首都圏に隣接しているという地理的条件や、製造業の集積地である点、さらには、自然を含めた豊富な観光資源の存在など、既にある福島県の強みを活かす形で進めていくことができれば、県経済の復興・発展も、より力強く、スピーディに実現できるのではないかと思います。今後とも、産官学一体となった様々な取り組みが着実に実行され、福島県経済の復興とさらなる発展に繋がることを期待しています。3 点目の県内の金融の現状については、意見交換会の席上、預金が東京電力からの賠償金や復興関連の資金流入から増加している一方で、貸出は、そうした様々な流入資金の一部が借入れの返済に回っていることや、設備投資関連等の前向きな資金需要が依然盛り上がりを欠いていることなどを背景に伸び悩んでいるというお話がありました。

§5Takehiro Sato

県経済の復興を確かなものにしていく観点からは、金融機関には、前向きな資金需要の増加に繋がるよう、企業の成長をサポートする役割が期待されます。わが国経済が今後、緩やかな回復経路に復していく過程で、企業の設備投資スタンスも徐々に前向きになってくることが期待されます。金融機関には、そうした前向きな資金需要にしっかりと応えていくとともに、いわゆる「目利き」の力を発揮し、企業の成長に繋がる資金需要を掘り起こしていく取り組みが望まれます。また、当地では、県が推進分野と位置付けている再生可能エネルギーや医療関連産業において、全国有数の研究開発拠点を設立する動きや、産官学の連携を強化する取り組みなどが具体化しつつあると伺っています。金融機関には、そうした産業の集積や企業の育成、または復興に繋がる資金需要についても、適切に対応していくことが期待されます。日本銀行は、「貸出支援基金」や「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」を通じて、金融機関の前向きな取り組みを後押ししています。金融機関には、こうした仕組みも是非活用して頂きたいと思います。

§6Question

2 点伺います。1 点目は、本日の講演の中で、国債のデュレーションについては、個人的な見解として 6年を多尐割り込んでも問題ないと述べられていますが、なぜ 6年を割り込んでも問題ないとこの時点で触れられたのでしょうか。そもそも、4月の「量的・質的金融緩和」の枠組みの中でデュレーションを 7年程度に伸ばすこと自体、理論的なバックグランドが分かり難いという意見もあったように思います。この点も含めてお聞かせ下さい。2 点目は、昨日の参院選の結果を受け、アベノミクスへの全面的な信認が得られたと解釈すれば、日本銀行が目指す 2年で 2%の物価目標についても信認を得られたという見方もできると思いますが、佐藤委員のご所見をお聞かせ下さい。

§7Takehiro Sato

まず 1 点目のご質問ですが、4月4日の「量的・質的金融緩和」の実施にあたり、買い入れる国債の年限を 7年程度に延長することを決めましたが、この決定文には脚注があり、この脚注の中で、6年から 8年程度としているわけです。このように 7年程度プラスマイナス 1年という若干のアローアンスを設けているのは、7年という発行国債の平均残存年限通りに国債を買い入れることが実務的に果たして可能かという検討があったためです。具体的には、例えば30年あるいは40年といった超長期の国債は、特定の金融機関、具体的には生命保険会社あるいは年金基金などが ALM目的で買い入れを行っています。そうした金融機関の方々が銀行を通じて日本銀行のオペに応じることはなかなか難しいため、マーケットの平均残存年限である 7年程度を実現することは実際上難しいと思われます。だからこそ 6年から 8年程度というアローアンスを設けているということです。私個人の見解として、6年を一時的に若干割り込んでも問題ないのではないかというのは――これは金融政策決定会合で何回も確認していますが ――、オペレーションを弾力的に行っていくということです。

§8Takehiro Sato

弾力的に行っていくということの背景は、イールドカーブを安定させるためには中短期ゾーンが安定することが必要であって、逆に言うと、中短期ゾーンが安定して、そこがアンカーになれば、10年、20年あるいはそれよりも長期の金利は自動的に安定してくるであろうとの判断があったわけです。特に中短期ゾーンというと、4月の政策変更直後、あるいは 5月の連休明け辺りで金利上昇が激しくなり、特に中期ゾーンが売られましたが、この辺りを中心的に買入れていく、具体的には、3年から 5年程度の国債を買い入れています。こうしたことでイールドカーブ全体としても安定していく、あるいは安定化を図ることができるのではないかと思っており、そういう観点で、私は中短期を安定させることが重要と考えています。6年を若干割り込んでもよいのではないかというのは、それくらい柔軟で弾力的なオペレーションであるということです。ただし、これは私個人の見解です。2 点目の2年で2%のインフレ目標が信認を得られたのではないかというご質問ですが、そもそも 2年程度で 2%を目指すという物価安定の目標は、1月に日本銀行が機関決定をして、政府と日銀が共同文書を交わして、正式に採択したものです。2%の意味については、本日の講演でも触れましたが、諸外国の物価目標の枠組みと同じように、フレキシブルなものであると理解しています。

§9Takehiro Sato

そうしたフレキシブルな枠組みであるという理解は、政府首脳ともある程度共有されていると私は考えています。それはなぜかというと、消費者物価上昇率を2%のピンポイントで安定させることは、現在の金融政策の技術をもってしても不可能だからです。金融政策の効果の波及には短くて半年、長ければ 1年半とか2年程度のラグがありますので、金融政策の実際の運営にあたっては、そうしたラグを勘案しながら進める必要があり、効果が不透明な中、ピンポイントで2%の水準に安定させることは非常に難しいわけです。そうであるからこそ、今の枠組みは上下に一定のアローアンスのある仕組みとなっており、こうした理解は現政権の首脳とも共有できていると思っています。また、おそらく国民も機械的に物価だけが 2%上昇する世界を望んではいないと思います。目指すべきはあくまでも国民経済の健全な発展であり、すなわち経済が回復に向かう中で、重要なのは雇用情勢が改善に向かい、それがさらに賃金の回復に向かい、賃金の回復と整合的な形で物価がバランスよく上がっていくという姿を想定しているわけです。日本銀行としては、まさに、こうしたバランスある、国民経済の均衡ある発展を目指していくスタンスにあり、そうしたことについて国民の理解が進んでいくことを期待しています。

§10Question

今の点に関連して 1 点お聞きします。本日の講演の中で、佐藤委員は、「上下に一定程度の変動が許容される幅(アローアンス)があると考えるのが自然であり、アローアンスをどの程度みるかは政策委員間で多尐見解の相違があるかもしれないが、私自身は 2%を中央値としてある一定の範囲内で物価上昇率が安定する見通しが立てば、『量的・質的金融緩和』の主要な目的は達成できたと評価できる」とおっしゃっていますが、この一定の範囲内とは2%を中央値としてどの程度であればよいと考えているのか、具体的にお聞かせ下さい。もう 1 点は、同じく講演の中で、「日本銀行は追加策の発動を一切排除しているわけでなく、予期せざるテールリスク等が顕在化すれば臨機応変に政策を微調整することを排除していない」とおっしゃっていますが、金融政策決定会合で普段使われている正式な文言としては、「経済・物価情勢について上下双方向のリスクを点検し、必要な調整を行う」というものだと思います。佐藤委員が使われた「微調整」という文言は、私自身は初耳なのですが、この「微」が付いている意味といいますか、背景をお聞かせ下さい。推測するに、「調整」ではなく、敢えて「微調整」と述べられていることからすると、大きなリスクが顕在化したとしても 4月4日のような大胆な金融緩和は無理だということを暗に意図されているのか、その点をお聞かせ下さい。

§11Takehiro Sato

最初のご質問ですが、現時点で具体的なアローアンスの幅について言及するのは差し控えます。実際の物価のパスについては、足許、消費者物価指数でようやく前年比ゼロ%まで戻ってきて、今週発表の 6月分がプラスになるかどうかというところにきています。このプラス基調が定着してきて、もう尐し上に行くという感触が見えてこないと、このあたりのレンジを示すことが建設的でない結果を招く可能性もあると思いますので、現時点では言及を差し控えたいと思います。2 番目のご質問について、「微調整することを排除しない」と申し上げた意味は、基本的には、4月4日以降のステートメントで「上下双方向のリスクを点検し、必要な調整を行う」という文言の意味と大意は変わらないつもりです。「調整」を「微調整」としたことの意味ですが、ご質問の趣旨としては、これ以上大胆な緩和は無理ではないかということと理解しました。もちろん将来の政策のオプションをこの場で言及することは適切でないと思いますので差し控えさせて頂きたいとは思いますが、採れるオプションはまだあると思いますし、それが微調整の範囲内か、あるいは大幅な調整なのかは、かなり幅があると考えています。

§12Takehiro Sato

そういう意味で、仮に、テールリスク等が実現した時に何をするかということは、完全にフリーハンドというか、全くのオープンですが、「微調整」と申し上げたからといって実際に政策が文字通り「微調整」になるかというと必ずしもその限りではないと思います。

§13Question

先程の質問とも関係しますが、佐藤委員は2年程度で 2%という物価目標は、レンジ内となれば達成されたとの認識を持っていらっしゃるようですが、2%をピンポイントで、がむしゃらに目指して追加緩和をすることに関しては消極的であるとの理解でよいのでしょうか。また、そうした何が何でも2%を目指す政策を行うことによるリスクや副作用についてもお聞かせ下さい。

§14Takehiro Sato

ご質問の趣旨は、レンジ内であれば2%を達成したことになるのかということだと思いますが、先程も申し上げた通り、2%のインフレ目標、物価安定目標の枠組みは、上下に一定のアローアンスがある仕組みです。従って、そのアローアンスの中で安定する、あるいは安定が見込まれると判断できれば、「量的・質的金融緩和」の主要な目的は達成できたと判断できるのではないかと思います。ただし、その場合の前提条件としては、先程の繰り返しになりますが、決して物価がピンポイントで 2%に張り付くという世界を想定しているわけではありません。なおかつ、物価だけが上昇する経済は非常に困るわけであり、基本的には物価上昇と整合的な形で賃金の上昇が見込まれる、あるいは賃金の上昇が見込まれる程度に労働需給が逼迫していくという経済状況を作り出していくことが重要です。そうした雇用情勢が見込まれるようになるまで、私どもとしては「量的・質的金融緩和」を続けていくことをコミットしているわけです。それから 2%の物価目標の達成をがむしゃらに目指すことに伴うリスクあるいは副作用があるのではないかとのご質問ですが、この点についても何度も申し上げている通り、単純に機械的に 2%を目指すものではないということはご了解頂ければと思います。「量的・質的金融緩和」の推進にあたっては、先程のご質問と重複しますが、上下双方向のリスクを点検していくということです。

§15Takehiro Sato

その中には、「量的・質的金融緩和」に伴う副作用も当然点検の範囲内に入ってくるわけであり、そうしたリスク要因には常に目配りしたいと思います。

§16Question

本日の講演では、本年1月と 4月の金融政策決定会合で大きな決定があり、それを全会一致で決めたことに対する批判や疑問があることは承知しているが、日銀の政策として連続性もあると考えて頂きたい、という趣旨のことを述べられています。1月と4月の決定は、大きな決定だったということもあり、この間になぜ審議委員の方々がお考えを変えたのかということを改めてお話頂ければと思います。

§17Takehiro Sato

1月は物価安定目標の導入、4月は「量的・質的金融緩和」の導入を決定しましたが、これらは事実上、一体不可分のものでした。すなわち、日本銀行が1月に2%の物価安定目標を導入しましたが、その結果として――これは本日の講演でも触れましたが――、その後の 2月、3月の会合の議論の焦点は、いかにして2%の物価安定目標を達成するかという点にシフトしていきました。その中では、今の政策に繋がるような論点がいくつか出され、例えば、国債の買入れ年限の延長、あるいは輪番オペと資産買入れ等の基金の統合、あるいは ――これは実現しませんでしたが ――付利金利の引き下げといった色々なアイデアが問題提起されています。4月4日の政策決定に至る過程では、そこがあたかも不連続のように受け止められたかもしれませんが、私どもの中では、こうした2月、3月の一連の問題提起あるいは議論を受けて、4月に新しい正副総裁をお迎えし、その中で決めていったことであり、そうした意味では私どもの政策決定や投票行為は、むしろ連続性をもって受け止めて欲しいと考えています。突然豹変したということでは全くなく、議論の素地が徐々に出来ていったことは1月の物価安定目標の採択以降、2月、3月の議事要旨を丁寧にお読み頂ければ、お分かり頂けると思います。

§18Question

消費税の増税についてお伺いします。消費税の増税は来年の4月に第 1段を予定どおり行うべきなのか、景気を冷え込ませるので望ましくないという見方も出ていますが、どのようにお考えでしょうか。また、消費税を増税することで、実際に景気、特に消費を冷え込ませて、好循環に向かっている日本経済にダメージを与えるリスクはどれくらいあるとみているのかお聞かせ下さい。

§19Takehiro Sato

消費税率の引き上げに限らず、財政健全化は日本経済を持続的な回復軌道に乗せるための非常に重要なステップであると考えています。私どもは国債のグロス発行量の 7 割超を買い入れるという非常に大胆な政策を行っていますが、これはまかり間違えれば政府の財政ファイナンスのお手伝いをしているとみられかねないわけで、そうみられないためには、政府の財政健全化に向けた努力が非常に重要になってくると思います。その点、消費税率の引き上げは、財政健全化に向けた重要なステップということであり、その帰趨に注目しています。それから、財政健全化に向けた政府の取り組みを促すという点では、黒田総裁は政府の経済財政諮問会議の議員でもありますので、そうした場で総裁から政府に対して直接意見を申し上げることもできるわけです。日本銀行としては、そうした立場から政府の財政健全化に向けた取り組みを強く促していく、あるいは見守っていくスタンスをとりたいと思います。以上