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Bank of JapanPress conferenceAug 8, 2013Haruhiko Kuroda, Governor

総裁定例記者会見(2013年8月8日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融政策決定会合では、7 か月連続で引き上げてきた景気判断を据え置きました。その理由も含めて、会合のポイントをお聞かせ下さい。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という前回会合で決定した金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、 ETF、J-REITなどの資産について、4月4日の「量的・質的金融緩和」の導入に際し決定した買入れ方針を継続します。わが国の景気の現状ですが、前月と同様、「緩やかに回復しつつある」と判断しました。所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めており、引き続き設備投資や雇用者所得などのデータを確認していきたいと考えています。海外経済は、一部に緩慢な動きもみられていますが、全体としては徐々に持ち直しに向かっています。そうしたもとで、輸出は、為替相場の動きも下支えとなって、持ち直しています。設備投資は、企業収益が改善する中で下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられています。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっています。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加しています。求人倍率や失業率など労働需給の緩やかな改善が続き、名目賃金も概ね下げ止まりつつある中、雇用者所得は持ち直しに向かう兆しがみられています。

§3Haruhiko Kuroda

この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。新規の貸出金利が既往最低水準まで低下するなど、企業の資金調達コストは低水準で推移しています。CP市場では、良好な発行環境が続いており、社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いています。銀行貸出残高の前年比は緩やかにプラス幅を拡大しており、足許では 2%台前半となっています。物価面では、6月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は+0.4%とプラスに転じています。予想物価上昇率については、いわゆるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)などのマーケットの指標に加え、企業、家計、エコノミスト、市場参加者に対する様々な調査も踏まえると、全体として上昇しているとみられます。わが国経済の先行きについては、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられます。リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きく、今後の展開には注意していく必要があると考えています。以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場には前向きな動きが拡がっており、人々の経済・物価に関する期待は好転しています。

§4Haruhiko Kuroda

今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行います。公表文に示されている通り、全体として「緩やかに回復しつつある」との景気判断は前月と同じですが、前月よりも前進しているところもみられます。そうした中で、先程申し上げた「所得から支出へ」という前向きの循環メカニズムが、次第に働き始めていることは確実です。今後も、引き続き、設備投資や雇用者所得などのデータをよく確認していきたいと考えています。

§5Question

物価について伺います。6月の消費者物価は、1年2 か月振りにプラスに転じましたが、円安に伴うエネルギー価格の上昇が大きく影響しています。日銀は、需要増を伴う物価上昇を目指していると思いますが、足許の物価状況についての評価、受止めをお聞かせ下さい。

§6Haruhiko Kuroda

私どもは、前月も、消費者物価の前年比はプラスに転じていくとの見通しを示していたわけですが、6月の実績は、こうした私どもの見通しに沿った内容であったと思っています。やや子細にみると、6月の消費者物価が前年比+0.4%になったことには、石油製品や電気代といったエネルギー関連の押上げ分だけではなく、個人消費が底堅く推移するもとで幅広い品目に改善の動きがみられたことも影響しています。こうした改善の動きは、食料・エネルギーを除く消費者物価(いわゆるコアコアCPI)でみても、前年比マイナス幅が縮小していることに表れていると思います。先行きについても、先程申し上げたように、わが国経済が緩やかに回復し、需給バランスが改善していくもとで、消費者物価の前年比は次第にプラス幅を拡大していくとみています。

§7Question

消費税率の引上げに関して伺います。政府関係者の中から、引上げ幅を法律に盛り込まれている幅よりも小幅にして、緩やかに増税すべきだという声や、増税を先送りすべきだという声も出ていますが、予定通りに増税しなかった場合、市場や日本経済にどういった影響があるとお考えでしょうか。

§8Haruhiko Kuroda

いつも申し上げている通り、消費税率の引上げについては、政府において、経済状況等を総合的に勘案して判断されると認識しています。その上で、一般論として申し上げれば、大幅な財政赤字が続き、既に政府債務残高が極めて高い水準になっていることを踏まえると、政府において、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を進めていくことが極めて重要であると思っています。日本銀行としては、その着実な推進を強く期待しています。「中期財政計画」も示されたので、これに沿って、着実に財政健全化が推進されることを期待しています。

§9Question

消費税に関してお伺いします。日銀は、中期見通しを出されていますが、今、トレードオフとなっているのは「脱デフレ」と「消費税増税」で、どちらを取るのかという議論になっているのですが、消費税増税が脱デフレにとって非常にマイナスになるというお考えをお持ちかどうか教えて下さい。また、政府との共同声明の中で、政府には「持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進」してもらいたいという文言を盛り込んでいるのですが、持続可能な財政構造を確立する取組みを着実に推進するということに「消費税増税」が含まれるとお考えかどうかお聞かせ下さい。

§10Haruhiko Kuroda

1 点目は、「脱デフレと消費税増税は両立するか」というご質問だと思いますが、私は、両立すると思っています。以前にも申し上げた通り、政策委員会として、消費税率が法律通りに引き上げられることを前提として、展望レポートや 7月の中間評価における見通しを示しているわけです。7月の中間評価においても、政策委員の成長率に関する見通しの中央値は、13年度は+2.8%、14年度は+1.3%、15年度は+1.5%となっているわけであり、消費税率引上げの経済への影響については――もとより駆込み需要とその反動は予想されますが――、基本的には、景気の前向きな循環が維持され、基調的には潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高いと考えています。2 点目については、1月の共同声明で示されている政府の財政健全化へのコミットメント、約束は、まさにそこに書いてある通りだと思います。

§11Question

消費税の関連になるかもしれませんが、財政規律のことでお伺いします。総裁就任前の 1月の共同声明には、政府・日銀の間で、日銀が積極的な金融緩和をするという一方で、政府の方には持続的な財政構造の確立を求めています。金融政策運営の立場からみて、なぜ持続可能な財政構造の確立が必要、重要なのか、仮に持続可能な財政構造が確立されない場合に、引き続き大規模な異次元緩和を続けていくことが可能なのか、総裁はどのようにお考えでしょうか。

§12Haruhiko Kuroda

1月の共同声明は、まさに、そこに示してある通りです。日本銀行は、金融緩和を行うことによって、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する一方、政府は、第 2 の矢、第 3 の矢にあるように、当面は機動的な財政運営を行いつつ、中期的には財政再建を実現するとともに、第 3 の矢で示されている、成長戦略、民間部門を中心とした成長力の強化といった政策を実行することになっているわけです。ご指摘の日本銀行の金融緩和と政府の財政健全化は、確かに、関連しています。日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、その非常に重要な部分に、長期国債を幅広く、しかも大量に購入することが含まれています。これ自体は、2%の「物価安定の目標」を達成するために必要なものですが、その際、財政規律の緩みや、最近言われる「財政ドミナンス」、あるいは「財政ファイナンス」のような懸念が持たれ、その影響が長期金利に跳ね返るようなことがあると、せっかくの「量的・質的金融緩和」の効果が減殺される惧れがあります。もちろん、財政再建は、まさに財政そのものとして不可避・不可欠、絶対に重要なことであることはその通りですが、財政規律が緩むということがあると、間接的に、金融政策の効果に悪影響を及ぼす懸念があるということです。

§13Question

消費税と景気について 2 点伺います。財政健全化の重要性とか金融政策と財政再建の関連とか、色々とおっしゃっていますが、消費税の引上げについて、見送りなり、上げ幅の圧縮なり、当初の予定と異なるやり方とすべきとの意見が出ていることについて、率直にどう考えておられるのでしょうか。総裁は、「景気への影響はそれほどないのではないか」という発言をされていますが、それにもかかわらず、景気への影響を気にして「増税を予定通りやるべきではない」という声が出ていることについて、どうお考えなのか、という点が 1 つです。もう 1 点は、景気について「所得から支出への好循環が出つつある」とおっしゃいましたが、賃金のところで基本給はなかなか上がらないとか、物価のところも円安の影響で特に足許ガソリンが相当上がっているとか、一般からするとまだマイナス面が大きいと思いますが、これは本当に確実に良くなるのかどうか、伺います。

§14Haruhiko Kuroda

1 点目については、消費税率を2 段階で引き上げる法律自体、経済動向を踏まえて実施することになっています。経済動向をみることは当然であり、私は、それ自体を不思議なことだとは思っていません。そうしたもとで、政府においては、当然、経済動向を踏まえつつ、中長期的な財政構造の改革、健全化が行われることになると思いますし、そうなるべきだと思っています。2 点目の所得から支出への好循環というのは、部分的には既に起こっているわけです。例えば、雇用はかなり改善しています。先程申し上げたように、有効求人倍率は上がってきていますし、失業率も 4%を割って 3%台に入ってきています。賃金についても、所定外あるいはボーナス等々でプラスがみられる一方、所定内はまだプラスになっていないわけですが、雇用と賃金全体を掛け合わせた雇用者所得は増えてきています。また、夏のボーナスも、久方振りにプラスになっているようですので、雇用者所得が消費に結びついていく部分は始まっていると思います。これがさらに強まっていくことが望まれますが、既に始まっていることは事実だと思います。他方、企業の側をみると、企業収益はかなり好転していますが、設備投資は、一部に増加している部分もありますが、足許ではまだ具体的に増加していないわけです。

§15Haruhiko Kuroda

全体としては、まだ明確に増加を示していないわけですが、設備投資計画をみる限りは、相当プラス――一部の調査をみると、2 桁台のプラスという結果も出てきています――になっています。これらをみても、企業収益から設備投資への好循環が始まる兆しはあると思いますが、もう少しハードデータをみていきたいという気持ちが、政策委員の中にあるということだと思います。全体として、所得から支出への好循環は始まってはいますが、もう少しクリアなハードデータを、特に設備投資については、みたいと考えています。

§16Question

先程、消費税の増税先送りが日銀の異次元緩和に与える影響について、ご発言があったかと思いますが、改めて、もう少し分かりやすく教えて頂けますか。実際、来年春の増税が見送られた場合、日本銀行の国債の買取り政策に対して、どのような影響が出てくると考えられるのか。あるいは、政府内では、1年おきに 1%ずつ上げていくべきだといった主張もありますが、そういった増税のやり方を巡る議論について、改めて、総裁はどうご覧になっているか、お聞かせ下さい。

§17Haruhiko Kuroda

後者については、中央銀行として、どのようなやり方が良いかを申し上げる立場ではありません。何度も申し上げた通り、私どもとしては、法律で示されている形で、消費税率が 5%から2 段階で上がっていくことを前提として、経済・物価の見通しを出しています。日本銀行の金融政策については、先程申し上げたように、財政ドミナンス、あるいは財政ファイナンスではないか、という疑念が持たれると、国債金利に影響が出て、「量的・質的金融緩和」の効果が減殺される惧れがあります。一方、日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を 2年程度の期間を念頭に置いて実現するために必要な「量的・質的金融緩和」を行っている立場には変更ありません。従って、日本銀行としては、粛々と金融緩和を続け、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するよう努めることに尽きると思います。

§18Question

海外経済について伺います。「一部に緩慢な動き」があるとのことですが、具体的に、海外経済、特に新興国・資源国の現状とリスクをどうみているか教えて下さい。

§19Haruhiko Kuroda

海外経済の動向は、全体としては、先程申し上げた通り、徐々に持ち直しに向かう動きがみられますし、これが続いていくとみています。その中でも、米国経済が一番強い形で、緩やかながら着実に回復しているとみていますが、欧州でも、企業や家計のマインドが改善して底打ちを探っている状況ではないかと思います。一方、ご指摘の新興国・資源国の状況は、ややまちまちであり、素材産業などにおける過剰設備問題や幾分軟調な商品市況が影響していることは事実です。ただ、最近、大きな焦点となっていた中国経済についてみると、成長率は一頃よりもやや低くなっていますが、比較的安定した成長が続いています。中身をみても、内需が引き続き堅調ですので、先行きは、堅調な内需に支えられ、現状程度の安定した成長が続くとみています。中国の政府当局は、成長の「スピード」よりも「質」を重視し、各種の構造改革に取り組んでいますが、同時に、経済成長に目配りする姿勢も示しています。その意味でも、現状程度の安定した成長は続くのではないかとみています。新興国・資源国でも、それぞれ国によって違いがありますし、また一つの国の中でもセクター毎に違いがあり、一部に緩慢な動きがみられますが、全体としては、海外経済が先進国を中心に次第に持ち直していくという見通しには変更ありません。

§20Question

また消費税の話で恐縮です。年度ベースで日本銀行の数字をみると、成長が続くというのは明らかですが、ただエコノミストの予想などをみると、四半期ベースでは消費税を上げた後、マイナスの数字が予想されています。もしそうなった時に、しかも、予想以上に下方リスクというのが大きくなった時、日本銀行としては、緩和をさらに拡大する用意はあるのでしょうか。

§21Haruhiko Kuroda

来年4月に 3%、再来年の 10月に 2%、消費税率を引き上げるというのが、法律で示された 2 段階の消費税率引上げです。その影響については、先程申し上げた通り、駆込みあるいはその効果の剥げ落ちを含みながらも、私どもがみる限り、日本経済は 13年度、14年度、15年度と、潜在成長率を上回る成長を続けるであろうとみているわけです。四半期毎の数字その他は、色々な推計ができると思います。1997年に消費税率が 2%引き上げられた際も、その直後の四半期はマイナス成長になりましたが、そのあとはプラスに戻っていました。ただ、四半期毎の数字がどのようになるかは、その時点の景気動向等を踏まえて考えていかなければならないと思っています。日本銀行の金融政策、いわゆる「量的・質的金融緩和」は、2年程度で2%の「物価安定の目標」を実現するために必要かつ十分な金融緩和をするということであり、そのような目標に沿って行っていきます。もちろん、支障があれば、上下双方向の調整は行いますが、あくまでも、今申し上げた「物価安定の目標」に向けての金融政策であるということを再度申し上げておきたいと思います。

§22Question

昨日、BOEが、FRBに続いて、物価だけではなく雇用にある種の定量的な目安を設けて政策を行っていく方針を決めました。日銀も、従来、2%の物価安定目標を達成する上では、雇用・所得環境の好転を伴ったいわゆる「良い物価上昇」が重要であるという認識を示されてきたと思います。その意味では、日銀も、従来から雇用も意識して政策判断をされてきたと思いますが、物価だけでなく雇用にも何がしかの定量的な目安を設けて政策を運営することの是非について、日銀としてはどのようにお考えですか。

§23Haruhiko Kuroda

先日、BOEが金融政策委員会において、フォワード・ガイダンスの導入を決定し、昨日、その内容を公表したことは承知しています。また、ECBも、7月の政策理事会において、フォワード・ガイダンスの導入を決定しています。市場とのコミュニケーションとして、どのような方法が政策の透明性や有効性の向上につながるかは、経済・物価情勢あるいは金融市場の動向などによって違うため、国毎に様々です。各国の中央銀行は、それぞれが置かれた状況のもとで、最適の方法を追求していると理解しています。これは、米国のFRBも同様と思います。日本銀行としては、従来から、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続するということを申し上げていますが、この現在の方法が最も適切であると考えています。

§24Question

2 点お伺いします。1 点目は、海外経済の見方について、ステートメントの文言が前月と若干変わっていますが、全体のリスクは増えているのか、減っているのか、ご所見があればお願いします。2 点目は、予想物価上昇率について、今回、表現を強めていますが、BEI以外には、例えば、具体的にどこに着目して変えたのですか。また、良くなってきているとはいっても、米国と比べてBEIなどはまだ低く、それが円高要因になっているとの解説も聞かれます。ご所見をお願いします。

§25Haruhiko Kuroda

海外経済全体のリスクは、毎回の金融政策決定会合で色々と議論します。全体のリスクは、前月と比べて非常に大きな変化があったとは思いませんが、どちらかと言えば、若干、減少したようにみえます。米国が引き続き民需を中心に堅調に推移していることに加え、欧州も企業や家計のマインドが改善してきているので、先進国経済を中心に、海外経済は全体として持ち直しの方向に向かっています。また、新興国・資源国は、国あるいはセクターにより若干区々ではありますが、例えば、中国についてみると、現在のような成長率が安定的に続くとみられることなど、どちらかと言えば海外経済のリスクは、むしろ若干減った方向にあると思います。ただ、月々の変動は色々な要素を含むので、私どもが半年毎に展望レポートで行う評価のように、明確な判断が出てくるとは限らないと思います。ただ、どちらかと言えば、全体のリスクはむしろ若干減った方向だと思っています。予想物価上昇率については、色々な指標があり、先程申し上げた様々なアンケート調査――非常に幅広い調査から、ごく一部のエコノミスト等に対するアンケート調査まで――があります。また、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、定量的に計算できますが、計算の基礎になる物価連動国債(物価に対応して利子が変動する国債)の市場は、まだそれほど大きな規模になっていません。

§26Haruhiko Kuroda

私どもとしては、常に様々な指標──それも、月々、変動しますが──をみており、その全体のトレンドから、上昇傾向がはっきりみられると申し上げたのであり、どれか 1 つの指標だけに頼って断定的に申し上げることはしていません。

§27Question

「海外経済全体としてのリスクが若干減っている」ということですが、中国の政策当局は、中国経済は確実に減速していくとみているようです。その影響として、円安が昨年秋から始まっているにもかかわらず、日本の輸出は数量ベースではなかなか伸びない中で、本日の判断では、日本の輸出は持ち直しているということでしたが、先行きの回復ペースが若干弱いようです。先程言われていたように、生産・所得・支出のメカニズムは回り始めているかもしれませんが、日本の輸出が増加し、企業収益が増えないことには賃金とか所得もなかなか上がらないかと思いますが、目先の輸出の回復テンポ、増加テンポ、その辺のメカニズムと家計へのメカニズムへの影響を現状どのようにみていらっしゃるかお伺いします。

§28Haruhiko Kuroda

輸出は、明瞭に持ち直しています。この背景には色々な要因があると思いますが、米国向けなどを中心に自動車関連の輸出が増えていることや、昨年末にかけて、大きく落ち込んでいた対中国輸出が回復してきていることもあると思います。今後の輸出については、日本の主要な輸出市場である中国や米国、あるいは中国以外のアジア等々の市場の動きが鍵になります。先程申し上げたように、海外経済は全体としては徐々に持ち直しに向かっており、その傾向は緩やかながらも続いていくであろうとみています。従って、確かに、輸出は、大幅に伸びていくわけではありませんが、着実に伸びていくと思います。なお、輸出は非常に重要ですが、GDPに占める割合をみると、日本の水準は、確か米国と同じくらいで、中国や韓国、あるいはドイツなどと比べると大幅に低く──例えばドイツと比べると3分の1くらい――なっています。従って、輸出が伸びること自体は経済にとって非常にプラスになることは事実だと思いますが、輸出が伸びなければ日本経済が回復しないということではないと思います。ただ、今のところ、輸出は明確に持ち直してきています。その伸びは、確かに、それほど高いものではないことはその通りですが、世界経済の動向と見合った形で、あるいはそれ以上に伸びているということではないかと思います。

§29Question

3 点お伺いします。1 点目は、金融政策の少し先の話なのですが、2年で 2%を達成した後に、ゼロ金利政策はどうなってしまうのかについては、これまであまり言及されてこなかったと思います。常識的に言えば、達成してすぐにゼロ金利をやめるということは多分ないと思いますが、総裁ご自身は、どのようなイメージをお持ちなのか教えて下さい。2 点目は、今、米国で tapering の議論が盛んで、これによってマーケットはかなり振れているわけですが、この今の状況をみると、2年で 2%をかなり達成できそうだとなったとき、急にマネタリーベースを上げるテンポを下げてしまうと、マーケットに大きな影響が出る可能性もひょっとしてあるのかと想像できます。あまり今から予断を与えるご発言はないかと思うのですが、総裁はどうお考えなのか、教えて下さい。3 点目は、先程、海外経済のリスクについておっしゃっていましたが、リスクというのは、テールリスクみたいなものがブラックスワンのように急に出てくることがあると思いますが、その際、総裁は、いつも、今やっている政策は逐次投入ではなくて一括して出している、あとは微調整であるとおっしゃっているのですが、大きなリスクが出てきた時には、また別途考えると受け止めてよいのか、教えて下さい。

§30Haruhiko Kuroda

いずれも微妙なご質問ですが、1 点目は、要するに、2%の「物価安定の目標」が達成された後の「出口論」云々の話だと思います。先程申し上げたように、足許、生鮮食品を除くCPIが前年比で+0.4%にはなりましたが、2%の「物価安定の目標」を達成する、あるいはそれを安定的に維持するところには、まだまだ時間がかかりそうです。従って、ご指摘の点について、今、具体的に議論するのは時期尚早であると思っています。2 点目は、FRBの tapering の影響をみると、日本も、将来、「量的・質的金融緩和」を調整すると市場への影響が非常に大きいのではないかというご質問です。当然ながら、米国の状況は十分参考にさせて頂くつもりですが、日本と米国の経済、あるいは物価、金融資本市場の状況は、かなり違う面もあります。ご懸念のような、日本において何か問題が起こるようなことはないように、適切に対処していくということに尽きると思います。具体的なことについては、先程申し上げた「出口戦略」の議論ですので、まだ時期尚早であると思っています。3点目のテールリスクについては、欧州その他をみても、非常に小さくなってきているわけですが、「もし何か起こったらどうするか」という抽象的な想定の話です。

§31Haruhiko Kuroda

もちろん、何か大きなことが起こり、私どもが考えている「物価安定の目標」の達成が大きく損なわれる状況が起こるとすれば、当然、それに対応して、適切な政策を採るということです。日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定という、2 つの役割があり、それらの役割を適切に果たすことは当然です。仮定の問題について、「こうなったらどうする」、「ああなったらどうする」という議論をすることは、あまり生産的ではないという感じを持っています。

§32Question

消費税に関して「影響は少ないだろう」とおっしゃっていましたが、この根拠をもう少し詳しく教えて頂ければと思います。次に、消費税が上がった場合、金融政策でどう調整できるのか、という議論が少しあったと思います。金融政策の場合だとタイムラグがあると思うのですが、消費税増税のラグというのはあまりないと思っています。ラグに関しては調整できるものなのか、ということを教えて頂ければと思います。最後に、一般論で結構ですので、消費税を増税した上で、景気への影響を少なくするために、例えば、減税ですとか、補助金を出すような施策も考えられているようですが、「入れて出すのであれば、もともと入れなければよい」という議論もあると思います。この件に関しては、どうお考えですか。

§33Haruhiko Kuroda

まず、消費税率引上げの影響についてです。先程申し上げた通り、法律に示されている通りの引上げが行われた場合の成長率に関する政策委員の見通しの中央値は、13年度が+2.8%、14年度が+1.3%、15年度が+1.5%となっており、これらはいずれも潜在成長率を上回る成長率になっています。こういう成長見通しを持っている各政策委員が、どのようなメカニズムを頭に置いているのかは、それぞれの委員によるわけですが、抽象的に考えてみても、13年度の成長率は、消費税率引上げがない場合よりも、駆込みの効果で若干引き上げられ、14年度は、逆に、駆込みの効果が剥げ落ちると同時に、消費税率が 3%引き上げられることによる消費への影響もあり、成長率が先程申し上げたような+1.3%になるということだと思います。なお、消費税率引上げが予定通り行われた場合の、実質成長率や物価見通しは、展望レポートあるいは 7月の中間評価で示した通りであり、私どもとしては、当然、現在の「量的・質的金融緩和」を続けていくということです。政府が消費税率の引上げに際し、どういった措置を検討しているかは、政府の決定事項であり、私から申し上げることはありません。

§34Haruhiko Kuroda

一般論としては、かなりの規模の税制改革が行われた時に、経済に対する影響を緩和するような措置を採ること自体は、かつての消費税導入、あるいは税率の引上げの際にも行われていますし、特におかしいことではないと思います。どういう措置が行われ、それにどういう効果があるか、あるいは、それが適切かどうかについては、私はコメントする立場にありません。

§35Question

景気の見通しについて伺います。先日、内閣府が出した来年度経済の見通しによると、実質成長率が 1%、内訳は内需が 0.4、外需が 0.6 という感じで、内需の落込みを外需が補う姿を示しています。日銀は、内外需の内訳は出していませんが、日銀あるいは総裁自身は、来年度の消費税導入後の反動による内需の落込みを外需である程度補うとみているのかどうかをまずお伺いします。また、仮にそうだとすると、結構危ういと言いますか、海外経済次第みたいなところが出てくると思うのですが、その点についてもお伺いします。

§36Haruhiko Kuroda

ご質問の点について、私どもは、特に内外需を分けて各政策委員の見通しを集約して示しておりませんので、何とも申し上げかねるということです。経済見通しは、当然、内需、外需や、内需の中身についてもそれぞれ分けて見通しをつくる場合もありますが、そうでない場合もあります。日本銀行の展望レポートあるいは中間評価については、そうしたことについては、各政策委員が頭の中で考えていることであって、細かい内容をお示しすることにはなっていません。ちなみに、ほとんどの中央銀行も、同様だと思います。

§37Question

本日、政府において「中期財政計画」と「概算要求基準」が閣議了解されました。先程、総裁は「中期財政計画も示されたので、それに沿って着実に財政健全化が推進されることを期待している」とおっしゃいましたが、中身をみると、消費増税も織り込んでいないし、具体的な歳出削減も示していないのですが、それでも財政健全化が進むとお考えでしょうか。また、先程、「財政規律の緩みが、金融緩和の効果に悪影響を及ぼす」とおっしゃいましたが、「概算要求基準」は歳出にキャップもはめていませんし、実際に財政規律が緩んでいるようにはみえないのでしょうか。

§38Haruhiko Kuroda

私は、「中期財政計画」について、かなりしっかりしたものだと思っています。特に、2015年度までに基礎的財政収支の赤字の対GDP比を 2010年度と比べて半減することについては、かなり詳しく、具体的にどのようなことを行っていくかまで含めて議論されています。もちろん、具体的には、毎年の予算査定あるいは税収見通しなどで決まっていくわけですが、従来、政府が述べていたように、2015年度までに基礎的財政収支の赤字の対GDP比を2010年度と比べて半減することについて、具体的で踏み込んだ内容であると思っています。なお、2020年度までに基礎的財政収支を黒字にし、その後、債務残高の対GDP比を徐々に下げていくことについては、方向性はかなりはっきりしています。そのままの形で伸ばすと、まだ 2020年度ではギャップが残っているわけですが、そこは、2015年度の財政・経済の状況を踏まえ、さらに具体的に検討されていくということであり、経済財政諮問会議でも、2020年度に向けての財政健全化、財政再建の方策について、今後、議論していくことになっています。その意味で、私は、「中期財政計画」について、かなり明確に政府としてのコミットメント・方策を明らかにしたと思っています。

§39Haruhiko Kuroda

その上で、具体的に来年度予算あるいは 2015年度までの各年度の予算がどのように編成されていくかをよく注視していかなければならないと思っています。まさに、財政再建を「中期財政計画」に沿って毎年実施していかなければならないと思います。「概算要求基準」については、予算編成のやり方ですので、私から特別にコメントすることはありませんが、あくまでも「中期財政計画」に沿って、来年度予算もきちんと財政赤字が減らされることが必要です。それについては、政府としてコミットしているので、年末にかけて、私どもとしても十分に注視していきたいと思っています。以上