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Bank of JapanPress conferenceAug 29, 2013Yoshihisa Morimoto, Board Member

森本審議委員記者会見(2013年8月29日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

2 点質問させて頂きます。1 点目は、当地での懇談会は 10年振りとなりますが、地元出席者からの声と感想をお聞かせください。また、2 点目は、岩手県は震災からの復興に向けて歩んでいる途上にありますが、岩手県経済の先行きについて、どのようにご覧になっているか、お聞かせ下さい。

§2Yoshihisa Morimoto

本日の金融経済懇談会では、当地の行政、経済界、金融界を代表する方々から、復興の進捗状況を含む地域経済の現状、あるいは、本行の金融政策運営に関する貴重なご意見を数多く頂き、極めて有意義な意見交換を行うことができました。まずは、皆様に感謝申し上げたいと思います。懇談会では、県内の経済・業界団体や金融機関を代表する方々から様々なご意見を頂戴しましたが、印象に残った話題について何点か申し上げたいと思います。1 点目は、東日本大震災からの復旧・復興は、行政機関や関係者の皆様のご尽力により、着実に前進しているとの印象を受けました。もっとも、懇談会では、復旧・復興関連工事における、資材・人員の不足といった課題が聞かれたところです。また、沿岸部では、県・国による中小企業等グループ補助金制度等の活用により、被災した事業者の設備復旧が進んでいるようですが、復旧までの間に喪失した販路の回復や、沿岸部を中心に業種を問わず不足している人員の確保など、解決すべき課題は未だ尐なくないとのお話も頂いたところです。関係者の皆様がこうした課題の解決に向け、不断のご努力を重ねられているほか、県全体として、単なる復旧に止まらず、発展的な復興に向かっている点について、非常に心強く感じた次第です。

§3Yoshihisa Morimoto

2 点目は、こうした復興に向けた動きを踏まえた岩手県の景気の現状についてですが、お話を伺うと、震災復旧・復興需要の増加などから、当地経済は全体としては緩やかな回復を続けていると感じたところです。生産活動については、円安等の輸出環境の改善から県内製造業の業況も全体として良い方向に向かっていますが、中小企業を中心に調達価格の上昇分を販売価格に転嫁しきれず、収益的に厳しいとのご意見もありました。岩手県では、自動車関連の生産拠点や電子・デバイスの生産拠点、下請け企業が尐なからず存在すると伺っておりますが、輸出量の増加が持続すれば、当地中小企業への波及効果も徐々に広がってくるのではないかと考えています。この間、岩手県経済の目下の牽引役は、公共部門と住宅部門で、全国的にも同じような流れにありますが、当地では特に強い動きにあると感じたところです。被災した沿岸部の護岸、港湾復旧や高規格道路の整備に向け大型予算が組まれ、公共投資は大幅に増加しています。住宅投資についても、災害公営住宅の着工が緒に就いたところであり、今後暫くは増加を続けるものと考えています。産業構造に占める建設関連のウェイトが相対的に高めである当県にとっては、大きな経済波及効果があると感じています。

§4Yoshihisa Morimoto

こうした中、地元金融機関では、被災企業の経営改善支援のほか、金融機関のネットワークを活用して被災企業の途切れた販路の復活と拡大をサポートしているといった話を伺いました。資金需要は、事業再建や事業活動の拡大に伴い生じるものと考えられますが、この点、県内の金融機関が企業活動を金融面からしっかりとサポートできる状況にあると感じた次第です。本行としても、仙台支店や盛岡事務所を通じて、こうした復旧・復興に向けた取組みを最大限サポートすべく、被災地域の金融経済動向を引き続き注視するとともに、適切に対応して参りたいと考えています。二つ目の復興に向けて歩んでいる県経済の先行きについてどのようにみているかといった話についてです。岩手県は、ご承知の通り、北海道に次ぐ広大な県土を有しておられ、豊かな農林水産資源や自然エネルギー資源に加え、魅力的な観光地も豊富にあります。また、原敬首相をはじめ複数の首相を輩出しているほか、啄木や宮澤賢治を生んだ県でもあり、天然資源や人材の面で非常に高いポテンシャルを有していると思います。足許の県内経済をみますと、復旧・復興関連工事を背景とした公共・住宅投資の増加などから、県内経済は緩やかな回復を続けています。復興に係る今年度の予算規模をみても、復旧・復興関連需要が牽引役となって、暫くは回復の動きを続けるとみています。

§5Yoshihisa Morimoto

もっとも、こうした復旧・復興の需要は永続するものではなく、需要が一巡した後の新たな県内経済の牽引役を今から大きく育てていくことが重要だと思っています。この点、岩手県は、世界三大漁場の一つといわれる三陸沖に面しているほか、ワカメやアワビ等の養殖、また、魚介類の加工等といった水産資源の大きな強みがあります。震災によりこうした資源、生産設備は甚大な被害を受けましたが、県による復興基本計画では、魚市場を核とした流通・加工の体制を整備する予定にあり、加工機能の集積や企業間連携により、水産加工業における高付加価値化の促進が期待されるところです。また、岩手県では、有名な前沢牛のほか養豚、養鶏といった畜産や木材バイオマス事業を含む林業も盛んであり、既にこうした盛んな農林水産業の付加価値の一段の向上──いわゆる六次産業化ですが──によって新たな成長の芽を生むことができると思います。また、再生可能エネルギーの分野では、岩手県が 24年3月に策定した「岩手県地球温暖化対策実行計画」によりますと、県内の再生可能エネルギーによる電力自給率を 32年度までに 35%まで引上げる計画にあります。岩手県の地熱発電や風力発電に必要な自然エネルギーの潜在力は、全国的にみて優位性があると思っており、こうした地域固有の資源をビジネスに活かしていくことも、県内経済の発展につながるものと考えます。

§6Yoshihisa Morimoto

また、観光の面でも、県の復興計画において、三陸沿岸の観光資源の再生と新たな魅力の創造が、話題のひとつに掲げられています。NHKの連続ドラマ「あまちゃん」が放映されたことで、久慈市を中心とした北三陸の観光が活性化していますが、一過性に止まらない観光客誘致への取組みが重要だと思っています。岩手県沿岸部では、震災によって失われたものは計り知れませんが、一方で「釜石の奇跡」と呼ばれた釜石市の子供たちによる自発的な避難行動にみられたように、津波の恐ろしさを知っている地域ならではの有形無形の防災策の価値が再認識されたのも事実です。県沿岸部における震災からの教訓を学ぼうとするニーズは決して小さくないと感じており、県は、防災のアドバイザーとして、他県にない経験を持つ強みがあると思われます。これまでの経験を他地域や後世の防災に活かす取組みを一段と加速・進化することで、新たなビジネスにつながることに期待したいと思います。最後に、本行としては、被災地復興に向け、震災後の4月から、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペ」を導入しています。また、「貸出支援基金」を設け、低利かつ長期の資金を供給し、緩和的な金融環境を企業や家計に最大限に活かして頂ける状況を創出するように取り組んでいます。今後も、こうした仕組みも活用され、岩手県経済の復興がより確かなものとなることに期待しています。

§7Question

日本の輸出について、先行き緩やかに増加するとのことですが、直近のデータでは、実質輸出が前月比―4.9%で、為替要因等が入っているとはいえ、全体として落ちています。新興国を含めて景気の減速が心配される中で、先行きの輸出動向と、世界経済を含めた新興国の先行き、下振れリスクをお伺いします。

§8Yoshihisa Morimoto

輸出については、ご承知の通り、7月は前月比―4.9%となりました。ただ、経済全体をみますと、このところ、海外経済は持ち直しに向かっており、これからも、こうした状況が続くことが期待できます。加えて、円高修正による影響もあって、ここ 1~3月、4~6月と増加してきており、特に4~6月は前期比+3.6%という数字になりました。7月については、先程、為替の影響があるとの話もありましたが、一部実質化するときの技術的な影響もあるようなので、もう尐し子細に分析する必要があると思っています。ただ、数量の方は増加していますし、鉱工業生産指数をみましても、7月についてはプラスの数字が予想されており、基本的には輸出は緩やかに増加していくと考えています。これらの動向を注視していきたいと考えています。世界経済の状況については、経済の不確実性の大きなリスクと思っていますので、しっかりとウォッチしていきたいと思います。

§9Question

追加で質問ですが、日本銀行の海外経済に関する判断が、ここ数か月、若干弱めの判断が続いているかと思いますが、海外経済がさらに落ち込んで日本の輸出が影響を受けるリスクについて、現状認識をお聞かせ下さい。

§10Yoshihisa Morimoto

海外経済について、米国経済は、ご承知の通り、財政の下押し圧力というか下押し要因はあるものの、堅調な民需、とりわけ個人消費が堅調であるほか、住宅投資等々も堅調です。住宅市場は、強弱の数字が入り混じることがありますが、基本的には、価格、販売戸数についても回復していると評価しています。こうした家計部門が企業部門にも影響して、しっかりと回復していくと考えています。ユーロ圏経済についても、ご承知の通り、後退を続けていましたが、ここのところ、マインド面の改善も徐々に図られてきていますし、この 4~6月の経済も、7 四半期振りにプラスに転化していますので、底入れから持ち直しを探る展開に基本的になっていると思います。新興国・資源国についてですが、中国経済については、色々懸念する声がありますが、政府が各種改革に取り組む中で、一頃と比べれば低めではあるものの、安定した成長が続いていると思います。内需は引き続き堅調に推移していますし、中でも個人消費は良好な雇用・所得環境を背景に 2 桁の伸びが続いているほか、固定資産投資も、インフラ・不動産投資に支えられ、前年比2 割増の伸びを続けています。ただ、生産活動をみますと、PMIはやや改善していますが、素材を中心に在庫調整の動きが続いていることなどから、一頃と比べて勢いを欠いていると思います。

§11Yoshihisa Morimoto

いずれにしても、中国経済の先行きは、堅調な内需に支えられ、現状程度の安定した成長が続くと思っています。ただ、このような中で、これから中国政策当局が、従来のスピードよりも質を重視した構造改革に取り組んでいく方針を強く打ち出すと同時に、経済成長にも目配りする姿勢も示しています。これから、構造改革を進める過程において不確実性は高いですが、今、申し上げた通り、経済成長にも目配りするという姿勢からすると、現状程度の成長は期待できると思っています。そのほかの新興国・資源国経済については、それぞれ国によって様々、区々であり、ご承知の通りですが、経常収支等々が弱い国については、米国のtapering 観測に伴い資金流出等がみられ、これからのリスクも考えられます。もっとも、新興国全体をみますと、中国経済は現状程度の安定、そのほかの国は様々で、注意は必要ですが、全体としてはある程度バランスしているとみています。海外経済全体としては、リスクはあるものの持ち直しに向かって進んでいると評価しています。こうした中で、輸出も、基本的には、海外経済の持ち直しとともに、円高修正が相俟って、基調的には増加していくと思っています。

§12Question

消費増税の関連で 1 点お伺いします。消費増税を行う場合、景気への悪影響を回避するために、財政出動や減税措置等の激変緩和策を求める声が出ております。そうした中で、日本銀行に対しても政府の対策と歩調を合わせて、との思惑が市場内に出ています。こうした状況の中で、日本銀行としては、2年で 2%の「物価安定の目標」が達成できる見通しであれば、そのようなことは必要ないとの考えにあるのでしょうか。また、予定通りに増税が行われなかった場合のリスクについて、どのようなことが想定されるのか、お聞かせ下さい。

§13Yoshihisa Morimoto

消費税の税率引上げの問題については、ご承知の通り、政府において経済状況等を総合的に勘案して判断されるという認識にあり、これが基本と思います。こうした中で、経済情勢について子細に色々チェックしているほか、有識者等々にヒアリングされていると認識しています。その上で、一般論として申し上げれば、大幅な財政赤字が続く中、既に政府債務残高は極めて高い水準にあることを踏まえますと、政府において、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を進めていくことが重要であると思っています。私どもとしては、その着実な推進を強く期待しているところです。そうした中、増税が行われた場合の経済対策としての、先程の話の財政出動等ということですが、政府が考えているところであり、コメントは控えさせて頂きたいと思います。そうした前提で、市場等において、政府と歩調を合わせて日銀がどうかという話ですが、政府の判断自体について、私どもは、どうなるかは分かりません。ただ、私どもとしては、経済の状況は緩やかに回復しつつあると認識しており、実体経済、金融市場にも、前向きな動きが広がっており、所得から支出への好循環もみられ始めている状況にあると思っています。こうした中で、物価も6月には前年比+ 0.4%となっており、私どもが考えているシナリオの中で動いていると思っています。

§14Yoshihisa Morimoto

今後も、こうした好循環のもとで、経済がバランス良く持続的に回復し、2%の「物価安定の目標」を達成していきたいと考えています。今は、経済が私どもの考えている状況で進んでおりますので、こうした状況下で、しっかり「物価安定の目標」の達成に向けて引き続き努力していきたいと思います。当然ながら、4月の量的・質的金融緩和を導入した際に、これからも経済の上下のリスク要因をしっかり点検し、必要ならば調整していく方針を出していますので、そうした一般的な対応は考えていますが、現在のところ、私どもが考えているシナリオの中で動いていると考えています。

§15Question

消費税について重ねてお伺いします。金融政策を語るときコスト&べネフィットということが言われますが、消費税を上げない場合、景気は一時的に下振れリスクを免れますが、逆に先延ばしすることで、より大きなリスクがないのかを改めてお聞かせ下さい。また、別件ですが、シリア情勢が緊迫化していますが、これが輸出、および日本の景気、円に与える影響について、どのようにお考えか、お聞かせ下さい。

§16Yoshihisa Morimoto

消費税率引上げによる景気への影響ですが、ご承知の通り、4月の展望レポートおよび、7月の中間評価において、経済・物価見通しをお示ししています。この中では、消費税率については、予定通り引上げられることを前提に作成しています。引上げられた場合の、いわゆる駆け込み需要とその反動が予想されますが、こうした点を考慮に入れて、2014年度は+1.3%、2015年度は+1.5%という潜在成長率を上回る成長を続ける── 景気の前向きな循環は維持されるのではないか──、との見解が、委員の大勢の見通しでした。従って、私どもは、導入された場合の影響は経済見通しの中で見込んでいます。シリア情勢の金融資本市場に与える影響については、従来からのイランあるいはエジプトといった中東情勢における地政学的なリスクに加え、ここにきてシリア問題が急激に浮上しています。今、国連を中心に国際的にどのような対応をとっていくのか、色々な調整が進められているかと思います。こうした緊迫した状況の中で、足許、原油価格が高騰してきており、ドバイ原油も110 ドルを超えています。

§17Yoshihisa Morimoto

足許、油にはこのような影響が出ておりますが、これ以外に国際的な影響ということで、国際金融資本市場にどういう影響を与えるかについては、どのような対応をとるのか、どのくらい続くのかにも左右されますので、その辺について、しっかり状況を注視していく、こういうことしか答えられないのではないかと思います。

§18Question

消費税率引上げに関連してお伺いします。本日の講演では、「わが国の財政状況は厳しい状況にあり、財政に対する信認が低下するような場合には、長期金利が景気・物価と整合的でない形で上昇する可能性がある」と話されています。消費税率引上げを予定通り来年4月、そして15年10月と、既に法律で決まっているスケジュールを何らかの形で修正する場合、先送りの方向で修正する場合も、こういうケースに当たるのか、つまり、長期金利が上昇する可能性があるのかどうか、お聞かせ下さい。

§19Yoshihisa Morimoto

引上げた場合の経済への影響ということで、緩和する方策とかを色々と考えている方がおられ、案が示されていますが、それぞれ考え方のメリットやデメリットを考慮されていると思います。その中で延期の影響が、実際、市場からどのようにみられるかは、過去にも例がなく、そうしたことで、どのような見方をされるのか、信認がどうなるのかについては、なかなか見極めをつけ難いと思います。いずれにしても、日本の財政が置かれているこの状況を考えれば、1月の私どもの物価安定目標を導入した時の共同声明におきましても、「財政運営に対する信認を確保する観点から持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」という方針を表明している中で、政府の対応にどのような受け止め方をするかについては、これに関しては市場の見方ということになりますので、私としてもコメントを控えさせて頂きたいと思います。ただ、消費税率引上げということだけに拘わらず、例えば、IMFの「スピルオーバー・レポート」におきましても、日本の財政、この辺の信認の問題ですとか、これによって、長期国債の信認が揺らいで、長期金利が上昇するようなことがあると、経済に大変大きな影響があるということが示されていまして、日本の財政に対する強い関心が寄せられているというのは事実だと思います。

§20Yoshihisa Morimoto

そういう面からも、どういった評価を受けるのかについては、政府の方でもしっかり、この辺も見極めて、色々考えていかれるのではないかと思っています。

§21Question

今日の講演の内容などを通して、海外経済が日本経済に与える影響というところで、海外経済の不確実性やリスクというのは、以前にも増して高まっているというような委員のご認識でよろしいでしょうか。

§22Yoshihisa Morimoto

従来から、日本銀行の今の経済・物価情勢を色々見通す中で、やはり最大のリスク要因は、海外経済ということで、これは米国の中では財政の問題がある他、ユーロはテール危機こそ遠のきましたが、そのほかの様々なリスク要因があります。また、新興国・資源国については、足許、米国の tapering観測等々も踏まえたリスク要因というのが考えられるようになってきています。いずれにしても、従来から、海外経済については、私どもの最大のリスク要因というように考えておりましたので、その点について、特に引き続きしっかりウォッチしていきたいという姿勢には、特に変化はないと思っております。

§23Question

講演の中でもありましたが、今後について、企業業績の改善が雇用者所得に波及するのが鍵ということで、雇用者所得の件を挙げていらっしゃったかと思いますが、円安・株高で企業業績が改善する中で、「中々まだ賃金に」という話や声がよくあるかと思います。どれ位で、雇用者所得への波及がみられるのか――時期とか、半年とか、1年とか――、をお聞かせ下さい。

§24Yoshihisa Morimoto

先程も多尐申し上げましたが、今の景気の現状は緩やかに回復しつつあると判断しております。金融市場ですとか、実体経済に前向きな動きが広がりつつあり、生産、所得、支出という好循環、こういった循環メカニズムが次第に働き始めているのではないかと認識しております。ご承知の通り、私どもは、こういった好循環が進んで、企業収益や雇用賃金の増加等を伴いながら―― いわゆる国民生活が豊かになる中で――、実体経済がバランス良く持続的に改善するもとで豊かになる、そういう物価が徐々に上昇していくという状況を目指しております。それで、企業収益は、おっしゃったような円高修正ですとか、株高等によるマインドの好転もあって、改善していますが、そういう状況のもとで、足許、雇用環境をみてみると、失業率、あるいは有効求人倍率も改善しており、そうしたもとで、所定内はまだマイナスですが、名目賃金はやや下げ止まりつつあり、そうした中で、雇用者所得も持ち直しに向かう兆しがみられます。今後、経済全体が改善するもとで好循環メカニズムが働いていくのではないかと考えており、雇用者所得の動きもしっかりとみていきたいと思います。

§25Yoshihisa Morimoto

時期について、これについては、今申し上げましたように、いわゆる、名目賃金の方についても、6月の特別給与の影響でプラスになっており、所定内給与はまだマイナスですが、これはもう、来年の春闘の動向をみるしかないので、いずれにしても、そういった時期的な問題としては ――それまでにも色々な動きがあるかもしれませんが――、基本的にはそういったことも睨みながら、いわゆる好循環の中で、雇用者所得全体も改善していくのではないか、そうした中で、徐々に物価も上がっていくという状態をしっかり目指していきたいと思います。

§26Question

委員が、日本経済が回復していると明確に言えるようになるには、賃金、設備投資が、ハードデータとして改善が確認されるまでは難しいという、そのようなご認識でいらっしゃるのか、あるいは、この辺がキーであるというところがあれば改めて、お聞かせ下さい。

§27Yoshihisa Morimoto

おっしゃる通りといいますか、内需の方については堅調ですし、外需の方についても、海外経済は、色々不確実性があるとしても、持ち直しに向かっていると思います。現状は足許、私どもとしては、緩やかに回復しつつあると7月段階で判断しましたが、その段階では足許の色々なハードデータとともに、短観の設備投資計画やD.I.といった、計画や景況感を含め総合的に判断し結論を出しました。翻って、例えば、皆様に注目されている設備投資、所得といった問題については、設備投資は4~6月のGDPでみると――9月9日の 2 次速報を待たないと、とは思いますが――、下げ止まりつつある状況です。機械受注等をみれば、4~6月も前期比+6.8%と結構高い数字になりました。雇用・所得環境をみますと、結局、所得につながっていくところの、雇用環境で、現実に改善しておりますし、所得環境も所定内給与を除いて改善に向かっていると思っております。従って、今後も、先行き改善していくと見込めるものの、ハードデータとして確認できていないということで、設備投資の動向や所得環境をしっかり点検していきたいということです。以上