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Bank of JapanPress conferenceNov 21, 2013Haruhiko Kuroda, Governor

総裁定例記者会見(2013年11月21日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融政策決定会合の結果について、ポイントをご説明下さい。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。わが国の景気ですが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが引き続き働いており、総括判断としては、これまでと同様、「緩やかに回復している」としました。海外経済は、新興国の一部で緩慢な動きもみられていますが、米欧経済で改善の動きが続き、中国も安定した成長を続けるなど、全体として緩やかに持ち直しています。そうしたもとで、輸出は、振れを伴いつつも、持ち直しの傾向にあります。設備投資は、企業収益が改善する中で、持ち直しています。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加しています。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられる中で、引き続き底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加しており、サービスや建設など非製造業の活動も引き続き堅調に推移しています。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。企業の資金調達コストは引き続き低水準で推移しており、CP・社債市場の発行環境も、良好な状態が続いています。

§3Haruhiko Kuroda

マネーストックの前年比は、銀行貸出の増加などからプラス幅を拡大しており、最近は 4%程度の伸びとなっています。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、上昇品目の拡がりを伴いながらプラス幅を拡大しており、このところゼロ%台後半で推移しています。予想物価上昇率については、各種のアンケート調査などを踏まえると、引き続き全体として上昇していると判断されます。わが国経済の先行きについては、生産・所得・支出の好循環が持続するもとで、緩やかな回復を続けていくとみられます。物価面では、消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみています。リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースや財政問題の帰趨など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きく、今後の展開には注意していく必要があると考えています。以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は 2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。

§4Haruhiko Kuroda

その際、経済・物価情勢について、上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。

§5Question

7~9月の実質GDPは、消費に一服感がみられたことと、設備投資の伸びも鈍化したという結果になりました。今後、内需主導の成長シナリオに影響はないでしょうか。

§6Haruhiko Kuroda

7~9月の実質GDPの 1 次速報値は、前期比年率+1.9%となりました。年率 4%程度の高成長が続いた本年前半からは減速したものの、堅調な内需に支えられた景気の前向きな動きは続いていると判断しています。GDPベースの個人消費をみると、1~3月、4~6月と 2 四半期連続で高い伸びとなったあと、7~9月は、大きな反動もみられずに、底堅い動きを続けています。最近でも、自動車販売が明確に増加し、旅行などサービス消費も堅調さを維持するなど、全体として基調に大きな変化はないとみています。また、GDPの設備投資は、4~6月に続いて 7~9月も小幅ながら増加しました。先行指標である機械受注をみると、これまで弱めに推移してきた製造業を含めて改善傾向がはっきりしてきており、先行きも企業収益の改善に伴って、設備投資は緩やかな増加基調を辿るとみています。このように内需が堅調さを維持する中で、外需もこの先、緩やかながら増加していくと見込んでおり、わが国経済は、生産・所得・支出の好循環を持続するもとで、緩やかな回復を続けていくとみています。

§7Question

2 点お伺いします。まず、物価の認識についてですが、足許、総裁がおっしゃる通り物価上昇傾向にあるのですが、その要素の中で、エネルギーを中心に、円安による影響が一定程度あると思います。総裁は、それをどの程度であると認識なさっているのでしょうか。相当程度あるとみていらっしゃるのか、あるいは、大したことはないとみていらっしゃるのか。もう 1 点は、こうした物価の構造がある中で、総裁がおっしゃるような物価の上昇は、持続可能なのでしょうか。

§8Haruhiko Kuroda

2 つの質問は関連していると思います。消費者物価指数の動きをみると、確かに、初めはエネルギー価格の上昇――これは円安の反映でもあると思いますが――が先導していた傾向がありましたが、このところ、幅広い品目に改善の動きがみられており、食料・エネルギーを除いた物価指数――いわゆるコアコア指数――の前年比も、5年振りくらいでしたでしょうか、マイナスからゼロになってきており、物価の動向は、今や、かなり幅広い品目で下げ止まりないし上昇がみられるようになっていると思います。為替は、今後も変動があると思いますが、現在のような内需を中心とした経済成長が持続していくもとで、消費者物価の上昇率も次第に上昇していく、そして 2%の「物価安定の目標」を達成できると考えています。

§9Question

先程の質問で内需の話がありました。内需の柱は個人消費だと思いますが、やはり一時と比べると個人消費の勢いが鈍ってきた、人によっては「個人消費に一服感が出てきた」という指摘がされています。総裁は、個人消費の現状について、どのようにみていらっしゃるのでしょうか。また、これから消費増税を前に、駆け込み需要が顕在化すると思われますが、そういう駆け込み需要を除いても、個人消費は実体として回復していくのでしょうか。

§10Haruhiko Kuroda

ご指摘のように、個人消費については、最近、マインドの指標である消費者態度指数が比較的大きく変動した、あるいは、百貨店の売上高も少し低調だったということがありますが、先程申し上げたように、自動車販売は明確に増加しているほか、旅行などサービス消費も堅調さを維持しており、個人消費の基調に変化はないとみています。先行きは、雇用・所得環境の改善が続くと見込まれますので、個人消費は引き続き底堅く推移するとみています。ただ、マインド面を含めて、個人消費の動向は引き続きよくみていきたいと思っています。なお、来年4月から消費税率が 3%引き上げられますので、その前の駆け込み、その後の反動といった動きはある程度予想されますが、それらを除いても、底流として、個人消費は底堅く推移していくと考えています。

§11Question

2 点伺います。先程、欧米景気について「回復していく」とおっしゃいましたが、最近の欧米の中央銀行の動きをみると、欧州で利下げしたり、米国の次期議長に内定しているイエレン副議長が雇用について非常に厳しい見方をされたりと、比較的、厳しくみている印象があります。米国は金融緩和を継続する、欧州ではこれからさらに強めるような動きになっていますが、今後、再び緩和競争的な動きになってくる可能性があるのか、総裁はどのようにご覧になっていますか。1 点目と関連しますが、各国の緩和の動きに対応して、緩和頼みのマーケットになる、マインドもそのようになっている可能性があると思います。例えば、米国が緩和を続けるとなるとダウが最高値になったりしますが、中央銀行頼みの期待の高まり、マインドについて、どのようにご覧になっていますか。

§12Haruhiko Kuroda

欧米など諸外国の金融政策、なかんずくその今後について、直接的にとやかく言うことは避けたいと思いますが、初めに申し上げた通り、欧米先進国の改善は続いています。これは、欧米の中央銀行自身が認めているところです。特に、米国経済については、政府機関の一部閉鎖や債務上限問題などの色々な動きがあったことで心配する向きもあったようですが、結果的に、短期的な小さな影響にとどまったとみられており、先行き財政面からの下押し圧力がさらに小さくなっていくもとで、米国経済の回復テンポは徐々に速まっていくとみています。米国を含めて、海外の方もそのようにみていると思います。また、欧州は、長く景気低迷が続いていましたが、4~6月、7~9月と 2 四半期連続でユーロ圏の成長率がプラスになり、持ち直しに転じつつあります。企業や消費者のマインドも改善が続き、生産も底入れしているようです。先行きについても、今後も持ち直しの動きは続いていくと考えていますし、ユーロ圏、その他海外の方も同様に考えていると思います。欧米先進国の景気は、緩やかな回復ではありますが――欧州は特に緩やかですが――、引き続き回復テンポは次第に高まっていくと考えられますので、そうしたもとで、海外経済について、半歩程度ですが、判断を前進させたところです。2点目ですが、金融市場がその時々の金融政策等に反応して変動することはあり得るわけです。

§13Haruhiko Kuroda

そうしたことも含めて、市場の動向には今後とも注意していきたいと思いますが、先程申し上げた通り、欧米を中心とした先進国経済は緩やかに回復していくとの見通しを持っており、先月までよりも判断を半歩進めたところです。

§14Question

今の質疑に関連して、EC Bが過去最低の金利に利下げしたということを踏まえて、市場関係者の間からは日銀への追加の金融緩和の期待の高まりもあるのですが、その点について、総裁はどのようにみていらっしゃるのでしょうか。

§15Haruhiko Kuroda

先程も申し上げたように、あるいは毎月の「当面の金融政策運営について」で繰り返しているように、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、物価あるいは経済情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。当然、今申し上げたような上下双方向のリスクが仮に顕現化すれば、躊躇することなく政策は調整されるわけですが、現時点では、先程申し上げたような実体経済および物価の動向を踏まえ、現状の「量的・質的金融緩和」を継続するということで、本日の金融政策決定会合は一致しています。ご質問の点については、この決定で回答は出ていると思います。

§16Question

2 点伺います。1 点目は、先程、海外経済の見方を半歩進めたという点について、欧米経済を中心にご説明されましたが、新興国や中国の経済の現状と先行きについて、どうみられているのかを改めてご説明頂きたいと思います。2点目は、輸出についてです。輸出の判断は、今回のステートメント上は変わっていないのですが、10月の貿易統計は、大分増えています。逆に、7~9月のGDP速報値は、マイナスに転じています。海外経済の見通しを踏まえて、輸出について、現状、先行きをどのようにみられているのか、お願いします。

§17Haruhiko Kuroda

まず、新興国のうち、日本経済との関連が非常に大きい中国経済をみると、内需が極めて堅調であり、安定した経済成長を続けています。今後についても、経済改革を進めつつ、安定した成長を続けていくとみています。その他の新興国は、確かに、一時に比べると金融環境がタイト化している影響もあって、当面、成長にやや勢いを欠く状態が続く可能性もあります。このところ一部の新興国への強い成長期待に陰りがみられる中で、構造面の課題に焦点が当たっており、新興国の間でもやや区々になっている状況です。ただ、もう少し長い目でみると、米国をはじめとして先進国経済の回復の好影響が及んでいくにつれ、新興国の成長率は再び持ち直していくと見込まれます。構造問題への取組み、あるいは国際金融資本市場の反応などをよくみていく必要がありますが、全般的に、新興国経済が大きく下方にいくリスクは、あまり大きくないと思っています。輸出については、ご指摘のように、月々振れがあるわけですが、全体としてみると、緩やかに回復しています。確かに、4月に比べると、海外経済がやや弱めだったので、輸出もやや弱めとなっていますが、他方で、内需がやや強めということで、内需が相当引っ張る成長になっています。ただ、先程申し上げたように、海外経済の判断を、半歩程度ですが、前進させたことからご理解頂けるように、輸出についても、先行き緩やかに回復していくとみています。

§18Question

先週発表された銀行決算において、貸出の伸び率が大体 3%くらいでしたが、日本銀行が大量に資金供給している中で、この数字をどう評価なさいますか。また、さらに伸ばすには何が必要とお考えですか。もう 1 点、昨年の解散から大体 1年経ちました。アベノミクス全体の評価と、さらに経済を底上げするには何が必要とお考えですか。

§19Haruhiko Kuroda

第 1 点の銀行貸出ですが、少しずつ増加のテンポが速くなってきてはいますが、経済の緩やかな回復と同様に、貸出の増加も緩やかなものになっているということだと思います。何度も申し上げている通り、金融環境は、極めて緩和された状態にあります。金利の面でも量の面でもそうなっていますので、私どもとしては、現在の「量的・質的金融緩和」を継続していく中で、次第に経済も持続的な成長軌道に乗り、銀行貸出も自ずと増えていくと思っています。なお、ご承知のような貸出増加支援その他の特別の施策も講じていますので、これが銀行貸出の増加にさらに貢献していくことを期待しています。アベノミクスの評価については、私から全般的なことを申し上げるのは僭越だと思いますが、金融緩和、弾力的な財政政策、そして成長戦略ということで、全体として、これまでのところ、日本経済を緩やかに回復させており、今後その回復が持続すると思っています。なかんずく、第 3 の矢といわれている成長戦略は非常に重要だと思います。今国会でも、たくさんの法案が提出されていて、それらがスムーズに実施されることが重要ですし、さらには次期通常国会に向けて、さらなる構造改革が進められていくものと思っています。従って、成長力を底上げするための成長戦略――最近の呼び方で言えば「日本再興戦略」――の実行を加速し、強化することが極めて重要であると思っています。

§20Question

2 点お伺いします。最近、宮尾審議委員など色々な方が講演で、物価の期待を上げるに当たって、足許の物価水準が日本の人々の物価観を上げていってくれるというご説明をされています。具体的に、CPIの前年比が毎月だんだん高まることが期待を上げていくのか、今の 0.6%なり 0.7%という水準がしばらく続けば「デフレには戻らないな」という形で浸透していくのか、もしくは、やはりCPIが下がり始めると期待も上方シフトは難しいと考えざるを得ないのか、ご見解をお願いします。2 点目は、来年度、東京電力の電力料金値上げの可能性が高く、10%以上の値上げもあり得るかと思われますが、仮に、消費増税と同時に電力料金値上げも実施された場合の経済への影響について、ご所見があればお願いします。

§21Haruhiko Kuroda

期待物価上昇率がどのようなメカニズムで変わっていくかについては、学界でも色々な議論があります。大まかに言って、当局がコミットメントを示すことによって期待が上昇するという、いわゆるフォワード・ルッキングに期待が上昇する要素もあるでしょうし、足許の物価上昇率に応じて、いわば適応的に物価上昇期待が変化するという、いわゆるバックワード・ルッキングな期待物価上昇率の変化も、両方あり得ると思います。現在、色々なアンケート調査や市場の指標などから推計される予想物価上昇率の上昇の中にも、おそらくその両方の要素が入っているのだろうと思います。従って、足許でプラスの物価上昇が続き、さらにはその物価上昇のテンポが上昇していくということになると、おそらく、予想物価上昇率にもプラスの影響が出てくるだろうと思います。先程申し上げたように、現時点でも、既にある程度、予想物価上昇率が上昇しているとみられますが、そこには、足許の物価が上がってきていることの影響もあるでしょうし、当局として 2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、「量的・質的金融緩和」を続けていることの影響もあろうと思います。電力料金のご質問については、個別の価格について何か予測めいたことを言うのは差し控えますが、全体として、生産・所得・支出の好循環が続くもとで、物価が上昇していくことを期待していますし、そのようになると思っています。

§22Question

2 つお伺いします。1 つは、海外経済については、半歩進められたという話で、確かに数字はそうなっていると思うのですが、一方でCPI上昇率の低下にみられるように、既にデフレの前兆ではないかというような見方が論調として相当拡がっています。この矛盾する動きをどのようにみているのでしょうか。もう 1 つは、緩和期待という質問に対して、上下両方向のリスクが顕現化すれば調整するという話で、引き締める方については、簡単ではないにしろ、量的緩和を少しずつ小さくしていけばよいのかなと思いますが、緩和する方の有効な手立てというのは、4月に緩和なさった時に、「やれることは全てやった」とおっしゃっていたということもあり──別に揚げ足を取るつもりはないのですが──、日本銀行にとって有効な緩和の手立てというのは本当にあるのでしょうか。

§23Haruhiko Kuroda

1 つ目のご質問については、中央銀行当局も含めて欧米で言われているように、米国の回復テンポはさらに加速していくと思われるほか、欧州も底入れをして、緩やかに回復していくとみられるなど、景気は回復してきています。もっとも、足許、依然として、いわゆる需給ギャップは残っており、失業率も金融危機が起こる前の水準に比べると高く、特に欧州はかなり高くなっています。景気自体は、今申し上げたように、回復しつつあるし、欧州も底入れして緩やかに回復していくであろうと思いますが、物価上昇率については、特に欧州を含めて、デフレではありませんが、ややディスインフレの傾向がみられることは事実と思います。そのこともあって、おそらく、ECBは金利の引下げを行ったのであろうと思います。2 つ目のご質問である日本の金融政策については──先程申し上げたことに尽きるわけですが──、上下双方向のリスク要因を点検し、必要に応じて調整することに変わりありません。上下双方向のリスク要因を点検し、必要に応じて調整するやり方も色々あると思います。現時点では、日本経済は、予想された経路を辿っており、上下双方向のリスクが、今、顕現化しているわけではありません。具体的な上下双方向の調整のやり方について話すのは時期尚早だと思いますが、上下双方向に政策の余地はあると思います。

§24Question

2 点お伺いします。1 点目は、出口戦略について、今語るのは時期尚早とのことですが、一方で、出口に向かうに当たって、必ず発生するコストというものがあると思います。例えば、これだけの規模の当座預金が積み上がると、付利を上げたときに、日銀の利払い負担がかなり増えることがほぼ想定され、その結果、国庫納付金が減るのではないかと思います。先日も、民間研究機関の方で、3年程度は国庫納付金がゼロになるのではという研究もありましたが、そういった、出口に伴って国民負担が発生する可能性やリスクについて現時点でどう考えていらっしゃるか、お聞かせ下さい。2 点目は、それに伴って、民間からは、政府と日銀の間でその辺のコストの負担のあり方も含めて──これは緩和の効果を上げるという意味もあると思いますが──、予め取り決めをしておくべきでないかという提言がありました。かつて、日銀法にも損失補填の条項というものがあったわけですが、そういう事前の政府・日銀の間の取り決めの必要性というものについてはどうお考えでしょうか。

§25Haruhiko Kuroda

出口戦略について、具体的なイメージを持って議論するのは時期尚早だと思いますので、ご指摘の点についても、何か具体的に申し上げることは難しいと思います。出口戦略を具体的に議論するに当たっては、当然、その時々の経済あるいは金融の状況を踏まえて、最適な方法を選択するわけです。日銀の収支にどういう影響があるかは、今、ご質問の中に出ていたようなことも含め、議論する際の金利の仮定やシナリオなどにもよるわけですので、具体的なことはコメントを差し控えたいと思います。

§26Question

少し気の早い質問で大変恐縮ですが、あと 1 か月程で本年も終わります。本年は、黒田総裁にとっても、日銀にとっても大きな転換点を迎えた年であると思いますが、1年を振り返っての感想と来年に向けた抱負をお聞かせ下さい。

§27Haruhiko Kuroda

年末までまだ 1 か月以上ありますので、本年の全体の感想や来年の抱負を言うのは少し早過ぎると思いますが、私は、8年以上マニラに住み、アジア開発銀行という国際機関の総裁を務め、3月20日に日本銀行総裁に任命され、住居もマニラから東京に移ってきたわけですので、当然、生活面でも仕事の面でも、大きな変化がありました。現在、私が何よりも考えているのは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に、2年程度の期間を念頭に置いて実現するということで「量的・質的金融緩和」を導入しましたので、この金融政策が最大限の効果を発揮し、日本経済が 1日も早くデフレから脱却するということです。そして 2%の「物価安定の目標」が実現されることが重要であり、必要であり、かつ一番大きな課題であると思っています。この課題は来年も続いていくと思っています。

§28Question

4月に異次元金融緩和を始めてから6 か月以上経ったと思いますが、総裁が順調に物価目標に向かっていくとおっしゃっている半面、マーケットのエコノミストやストラテジストの間では、「日銀が 2年程度で 2%の物価目標を達成することはできない」という見方が大勢をいまだに占めています。総裁としては、これは何が違うとお考えでしょうか。ストラテジストやエコノミストの方々が見落としているものはどういうことなのでしょうか。

§29Haruhiko Kuroda

民間のエコノミストの方々が色々な経済見通しを出され、議論されることは結構なことだと思います。ただ、民間のエコノミストの方々の予測・予想について、私どもがとやかく言うのも如何なものかと思います。現時点では、見通しに違いがあることは、その通りだと思いますが、民間の方々の見通し自体も、この 7 か月間で変わってきています。私どもとしては、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために必要かつ十分な「量的・質的金融緩和」を 4月4日に導入し、それを毎月着実に実行し点検してきており、そうした目標に向けて、実体経済も物価も着実に動いているとみています。私どもの見通しはそういったものです。民間の方々が色々な見通しを持っておられることは、私どもから何か言うことではないと思っています。

§30Question

2 点あります。1 点目が日米のCPIですが、瞬間的に総合でみると日本の 9月が 1.1%、米国の 10月が 1.0%で、総裁の努力の成果もあって、日本の方が久方振りに上にいっているのですが、こういう状況というのは――もし日本の政策が上手くいけばということではあると思いますが――、ちょっと続きそうだとみていらっしゃるのでしょうか。2点目は、日銀が非常に注目している賃金の動向ですが、国税庁が正規と非正規の所得について、この間、初めて出しましたが、やはりかなり差がついていて、なおかつ、非正規のシェアが趨勢的に上がってきて、多分、足許で 35 からもう少し上にいってしまったかもしれないと思われます。これは、当然、日本経済やマクロ政策にすごく影響があると思うのですが、特に、一人当たり賃金というものをみたときに影響が出てしまって、日銀が遂行している金融政策に少し影響が出るのか否か、ご見解を伺います。

§31Haruhiko Kuroda

日米欧の消費者物価指数の上昇の程度は、これまでも色々な違いがあったし、今後もあろうかと思います。欧米には欧米の経済情勢があり、それぞれの金融政策を行っています。欧米では、2%の物価安定目標というのは、ほとんどコンセンサスといいますか、一般的に行われていますし、物価上昇期待も 2%近傍でアンカーされていると伺っています。一方、日本の場合は、15年続いたデフレから脱却すべく、最大限の努力をしている過程であり、少しずつ消費者物価上昇率もプラスになり、今後、プラス幅を拡大していくと思います。物価上昇期待も少しずつ上昇してきていると思います。賃金については、ご指摘のように、所定内賃金がなお小幅なマイナスになっている主たる理由として、パート比率の趨勢的な上昇あるいはパートの労働時間の短時間化などよる影響が大きいことはその通りです。統計上、全体の所定内給与がパート比率の上昇などによってややマイナスにはなっていますが、フルタイム労働者の一人当たり名目賃金は既に下げ止まっており、パート労働者の時間当たり名目賃金はごく緩やかにプラス幅を拡大しています。また、所定外賃金、ボーナス、さらには雇用自体がかなりのスピードで拡大していますので、いわば名目賃金と雇用を掛け合わせた雇用者所得でみると、プラスが実現しているわけです。

§32Haruhiko Kuroda

私どもとしては、当然、所定内給与を含めて名目賃金が今後さらに上昇していくことを期待していますが、足許、まだ所定内賃金が小幅なマイナスになっていることはその通りであり、来年の春闘を含めて、様々な形で名目賃金がさらに上昇のテンポを高めていくことを期待しているわけです。以上