白井審議委員記者会見(2013年11月27日)要旨
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§1Question
2 点お伺いします。まず午前中の懇談会ですが、地元の方とはどのような意見交換をされたのでしょうか。もう1 点、徳島経済の印象についてお聞かせ下さい。
§2Sayuri Shirai
最初の意見交換会でどのようなやりとりがなされたかということに関してですが、本日は、徳島県の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見を多数頂き、大変有意義な意見交換ができ、改めてマクロ的な観点に加え、地域でどのようなことが起こっているのかという、ミクロ的な観点からの視点が重要であることを認識しました。こうした機会に恵まれ、ご出席頂いた方々や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。懇談会の場では多岐に亘るご意見を伺いましたので、全てを網羅的にご紹介することはできませんが、私なりに席上で伺った点を整理して申し述べたいと思います。まず当地の景気情勢については、集積が進むLED関連企業などにおける高水準の生産活動が行われているもとで、住宅・公共投資が増加しているほか、医療・介護や建設といった分野を中心に求人の大幅な増加がみられ、雇用・所得環境が労働需給面を中心に改善していることなどから、総じてみれば緩やかに回復しつつあるといったお話を伺いました。もっとも、地方と都市部、あるいは、グローバルな大企業と中小零細企業との格差についてのご指摘や、15年間続いたデフレの後遺症として、経営者の方々は足許の業績が良くなっていても先行きに対する不安を払拭できないため、設備投資や賃上げに対して慎重なスタンスから脱しにくいといったお話を頂きました。
§3Sayuri Shirai
また、わが国の成長戦略や少子高齢化への対策や人材の確保や育成の難しさなどについてのお話を頂きました。このほか、金融機関からは様々な工夫を行いながら、地元企業等の前向きな資金需要の掘り起こしなどの支援に積極的に取り組んでいるといったお話を伺いました。また、私から申し上げました日本銀行の対外説明を分かりやすくしていく努力を継続する点については、同感だという意見が多数寄せられましたほか、中長期的な日本の成長力向上に関して特に若い世代に対して勇気を与えていく観点から、重要であるとのご指摘も頂きました。私どもとしては、こうしたご意見も踏まえつつ、当地の金融経済情勢について、高松支店・徳島事務所を通じて引き続ききめ細くご意見を伺い、中央銀行の立場から、徳島県経済の発展に向けた皆様の前向きな取組みに対して、積極的にサポートしてまいりたいと考えています。2 点目の、徳島県の金融経済情勢についての認識ですが、徳島県の景気は、緩やかに回復しつつあります。個人消費は緩やかに持ち直しているほか、住宅・公共投資は増加しています。また、設備投資については、企業収益が改善傾向にある中で、短観における 2013年度の設備投資が底堅い計画となっているなど、持ち直しに向かう動きがみられています。こうした中、鉱工業生産は高水準で推移しています。雇用者所得は、概ね前年並みとなっていますが、労働需給は改善しています。
§4Sayuri Shirai
徳島県の有効求人倍率は、2013年8月には 1.05 倍と、1992年9月以来の水準を記録しています。今後、こうした労働需給のタイト化が、賃金に対してよい影響が広がり、ひいては、現状、緩やかに持ち直している個人消費が一段と活発になっていくことを期待しています。先行きも、徳島県の景気は、緩やかに回復が続いていくとみていますが、海外経済の動向や原材料価格の上昇の影響など留意すべき点もあります。徳島県経済にとっては、高水準の生産活動が所得・支出の増加に繋がっていくという好循環メカニズムがより広範に作動していくことを期待しています。
§5Question
徳島経済の潜在力や強みへの期待についてご意見があれば伺いたい。
§6Sayuri Shirai
今、申しましたように、LED関連や製造業のものづくりのところで非常に大きな企業があって、そこの企業の方々ともお話する機会がありましたが、非常に競争が国際的にも厳しくなっている中で、更に技術力を高めて頑張っていきたい、自分達で努力していくというお話を聞き、そういったところが将来期待できると思いました。また、高齢者の方達も多い中で、医療施設もかなり充実していると伺っており、こういったところがより発展していけばよいと思っています。
§7Question
2 点質問があります。1 点目、委員は経済・物価見通しの下振れリスクに関して指摘していらっしゃいます。具体的にどういう大きさのリスクとみているのでしょうか。2 点目、それらのリスクに対応して、具体的にどのような追加金融緩和策、あるいは調整が必要であるとお考えでしょうか。
§8Sayuri Shirai
私の中心シナリオに関しては、若干慎重ながらも、概ね展望レポートの中心的見通しに沿っていると判断しています。とはいえ、経済に関しては、海外経済の下振れリスクがあるのではないかということと、家計の雇用・所得動向に関して慎重にみていく必要があるのではないかということから、やや下振れの方に傾いているのではないかと、様々な分析等から判断しています。物価に関しては、これも中心的な見通しに対して若干慎重な見方をしていますが、概ね沿っていると判断しています。下振れリスクとして、中長期の予想インフレ率が想定した通りに上がっていかない可能性と、需給バランスに対する物価の感応度が想定したほど高まらないことに関して、現在はより下振れに傾いているのではないかと意識しています。これは、下振れリスクですから、中心シナリオとして反映させているわけではないので、ここをきっちりみていきたいという判断です。ご質問の追加金融緩和という点について、私は、否定はしません。もし将来的に追加金融緩和を考える場合には 2 つの可能性があると思っています。1 つは、今申しましたように、経済あるいは物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心シナリオを明確に大きく下振れさせるような可能性があると判断された場合には──これは日本銀行の金融政策の信認に関わることですので──、躊躇することなく、追加緩和すべきだと思っています。
§9Sayuri Shirai
もう1 つは、金融政策の信認だと思っています。私どもは 2%の「物価安定の目標」という大変チャレンジングな政策を今やっています。この私どものコミットメントを維持していくことが大事です。金融政策に対して、信認が大きく低下するようなことが仮にあるとすれば、その場合には、追加緩和を検討すべきではないかと考えています。
§10Question
分かりやすさを主張されていますが、主張されている内容自体はもっぱら分かりにくいというのが率直な感想です。まず、ご自身の見通しが、委員の中央値よりも低くて、さらにその上に下振れリスクを意識する必要があるというのであれば、ご自身のメインのシナリオ自体を引き下げて、佐藤委員とか木内委員のように展望レポートそのものに反対をされればよいのではないかと思うのですが、この点どうかというのがまず1点です。2 点目として、今の質問にも関連しますが、委員の中央値よりも緩やかなペースでしか2%に向かって上昇していかないとご覧になっていて、2%への道筋が「順調」というのは不適切であるとまでおっしゃっているわけです。だとすると、2年で 2%という目標そのものを反故にするものでなければ、2年で 2%を達成するために今この時点で追加緩和を提案すべきではないかと思うのですが、如何でしょうか。3 点目として、展望レポートの分かりやすさということで、展望レポートそのものに反対をされていますが、我々読者からすると、ちょっと問題としては瑣末ではないかと、それぐらいのことで反対するのではなく、この程度の話であれば、決定会合以外の時間にボードの方々とか事務方と一緒に議論されて、変えるところは変えればいいのではないかというのが率直な感想です。この 3 点目についても、ご意見をお願いします。
§11Sayuri Shirai
まず、3 点目からお答えすると、私は 4月にも同様の提案を出していますが、その趣旨について、もし展望レポートの表現・表記上程度のことに異議を唱えたとお考えの方がいれば、そうではないのです。私自身がなぜこれを4月から主張しているか理由を申し上げますと、実は私は審議委員に就任する前から、日本銀行の公式文書の書き方、表現が分かりづらい、どうしてこういうあまり一般的には使わない言葉を用いるのか、色々な説明が抽象度が高くて分かりづらい、という印象を個人的に持っておりました。審議委員になる機会を得た 2011年4月以降、私は与えられたあらゆる機会を捉えて、私自身が感じている分かりにくさを私なりのやり方で訴えてきました。この点、日本銀行も色々なところで努力をしていると思います。しかし、それでも分かりにくさがあり、日本銀行の書いていることは分かりづらいとして、文章を読むのを諦めてしまっている方達も多くいると思います。今回の挨拶要旨の脚注にも書きましたように、日本銀行の生活意識アンケート調査では、「日本銀行の外部に対する説明が分かりにくい」と言っている方達が約 60%で、「分かりやすい」と言っている方達が 6%です。なぜ私がこれを主張するかということを理解して頂きたいのですが、私どもは 1月に 2%の「物価安定の目標」を掲げました。
§12Sayuri Shirai
これは、予想インフレ率を引き上げていくという、先進国で他の中央銀行がやったことがない大変チャレンジングなものです。一般的に言って、国民の皆様、消費者の皆様からみてインフレを下げる政策の方が上げる政策よりも理解しやすいです。ですから、15年間のデフレの下で経済は決してよかったわけではないのですが、それでもインフレ率を上げるとなると、なかなか感情的に納得いかない方達が多いというのが事実です。今多くの国民の皆様は、メディアの皆様のご協力もあり、日本銀行が 2%の「物価安定の目標」を実現したいということはおそらく分かっていると思います。しかし、知っているだけでは実現しないのです。知っていることから、共感、理解があって初めて日本銀行の金融政策に対するサポートが生まれるわけです。そうなって初めて社会に根付いていくと思うのです。そのためには、これまでのような対外的な説明で十分なのかというと、おそらく十分ではないのです。そのぐらい大変なことをやっているのです。私は 2011年4月から改善について多くの指摘をしており、いくつかは私の意見を踏まえて反映されてきています。例えば、4月の展望レポートは、それまで非常に量が多くて重複感があったものが、かなり簡素化されました。この点は、私も訴えてきたことなので、歓迎しています。
§13Sayuri Shirai
また、4月に私が行った提案に関しては、消費税率引き上げの実質所得への影響の書き振りが中立的でしたので、もう少し踏み込んだ書き方が必要ではないかと提案しました。これは否決されましたが、10月の展望レポートでは改善されています。また、2 つの柱の記述が分かりにくいとの私の提案については、10月の展望レポートでは、脚注に、今年の1月の公表文を参照するようにと書かれています。それでもまだ、1月の公表文をみなければ分からないようになっているわけです。文章はその中で完結するようにしなければならない、という趣旨で、私はあえて一度否決された提案を出すのではなく、今回は、2 つの柱が何かということを冒頭に説明する形にすれば、少なくとも流れは読めるようになると思い、提案しました。もちろん、私の提案だけで分かりやすくなるとは思っていません。やはり普通では使わない言葉があって難しいので、満足しているわけではないのです。ただ、9 人の政策委員で決めることですし、そうした言葉に慣れている方、今のやり方がよいという方もいるかもしれません。しかし、少なくとも2 つの柱だけは説明が書かれていないので明らかに分かりにくいのではないかと思います。これは、日本銀行が 2%の「物価安定の目標」を実現するためにあらゆる努力をしなければならない中の一つとして言っているシンボルなのです。
§14Sayuri Shirai
ですから、展望レポートのみの問題ではなく、対外的な説明の分かり易さ向上に向けた一歩として、そういう考え方に向かっていきませんか、ということを言いたいのです。私どもからみて分かりやすいかどうかではなく、国民の目線に立った時に本当に分かりやすくなっているのか、展望レポートを読んでくださる読者の数を増やしていかなくては、どうやって金融政策に対するサポートが得られるのか、と私は思いました。これが、今回こうした提案に踏み切った背景です。2 点目について、私は、確かに中心的シナリオについて中央値の見通しよりもやや慎重だと申しました。ただ、リスクチャートをみて分かるように、中央値に対して上の見方をする方もいますし、下の見方をする人もいます。そういう中で多少のズレはありますが、中心シナリオの表現に関しては、概ね同意するということです。完全に一致するというのは中央値に近いことですが、審議委員の見方はそれぞれ違うわけです。その中で、私は確かに 2%の達成時期に関しては中央値に比べれば遅れるとみていますが、それでも「見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」という表現に大きな違いがないと判断したので、中心シナリオに関して反対していません。それよりも、私どもは、今、前例がない新しいことをやっているわけですから、実証分析をするにも非常に難しいわけで、当然、不確実性があります。
§15Sayuri Shirai
私はそれを率直に言っていきたいと思いました。今回の挨拶要旨の中で、「概念的チャンネル」として説明しましたように、2%を達成するためにはこういうチャンネルがあるかもしれないと思っています。概念的と申しましたのは、やったことがないものだからですが、頭では考えることができるチャンネルで、少しその兆しもみられます。ですからこれをしっかりみていきたい、と考えており、これが実現していけば私が懸念している下振れリスクは減っていくわけです。こうした観点から、下振れリスクをしっかり意識して、金融政策運営をやっていることを国民や市場参加者の皆様に率直にお伝えすることが、金融政策に対する信認を高め、将来の経済・物価見通しに不安をお持ちの方に少しでも安心して頂くことに貢献できるのではないかと思い、議案を出しました。「順調」という表現に関しては、それぞれの見方がありますので、他のボードメンバーがどのようにお考えになるかは、尊重したいと思います。ただ、挨拶要旨にも書きましたように、確かに今のところコアCPIは順調に 0.7%まで上がってきましたが、主因はエネルギー関連価格の上昇です。GDPギャップが改善していく、あるいは予想インフレ率が上がっていくことによる物価上昇は、これから本格化するのではないかと考えており、今はそれを見極める段階ではないかと思います。
§16Sayuri Shirai
それから予想インフレ率はかなり上がってきましたが、足許はやや横ばいか緩やかな上昇となっているようにデータでみえますし、2%からは距離がありますから、そういうことを考えますと 2%の目標達成への道筋の辿り方が順調かと言われると、そこまではちょっとまだ判断ができない、ということで「緩やかに」という表現が適切ではないかと判断しました。そして、私の提案が瑣末だというように表記上の問題だと捉える方がいらっしゃるかと思いますが、瑣末ではないのです。2%を達成することがいかに大変かということを踏まえると、国民の皆様が 2%の「物価安定の目標」を知っているだけでは駄目なのです。私どもは期待に働きかけようとします。その期待への働きかけは 2 種類あるのです。一つは、私どもの金融緩和に対する期待です。私どもの本源的な時間軸表現である 2%を安定的に実現するまで、「量的・質的金融緩和」を継続することを約束しており、しっかりとコミットを示していくということでやっていきます。もう一つの期待というのは、市場参加者と企業や家計の期待を上げていくということです。この点、2%をなぜ実現したいと思っているのか、なぜ1%より 2%がよいと判断しているのか、そういうことをもっともっと皆さんに理解して頂き、共感して頂かなければなりません。共感して頂いて初めて 2%は社会に根付くのだと思います。
§17Sayuri Shirai
展望レポートの文章の改善はそのための一つのきっかけに過ぎないのです。あらゆる努力をしなければならない。その中の一つとして言っていますので、決して瑣末なものではなく、非常に重いものだと思っていますし、これからも私はそれを訴えかけたいと思います。本日の懇談会でも、分かりやすさを高めていく点に賛同する声があったことは、国民の声ではないでしょうか。私はそういう立場から内部で色々な形で言ってきました。そして一部は、確かに改善されていますし、また色々な形で日本銀行が努力しているのは事実です。しかし、やはり国民の目線に立った分かりやすさ、いかにして 2%が重要かを理解して頂くところでは、大きな改善の余地があることは、生活意識アンケート調査をみても明らかなわけですから、ここは日本銀行が率直に真摯な気持ちでやっていく必要があるということです。4月の展望レポートにおいて提案を出したのは、新総裁になり、コミュニケーションを重視するというきっかけがありましたので、それを捉えて言いました。議案を出すことによって私の主張がより明確になりますから、これをきっかけにまたボードメンバーの中で色々な議論が出てくる可能性もあります。
§18Sayuri Shirai
そして、もう一つなぜ議案を出したかと言いますと、国民の皆様に、「日本銀行が今まで対外説明してきたことがまだ難しいのではないか、改善の余地があるのではないか」、ということを日頃考え、また、それを改善できるように努力していきたいと思っている人がいることをお伝えし、そこからまた日本銀行のコミュニケーションが改善していくきっかけが生まれるかもしれないと、そういう気持ちで議案を出しました。
§19Question
今の質問に関連するのですが、おっしゃりたいことはすごくよく分かるのですが、今の質問の 2 点目の分で、この展望レポートの反対をされる時に、9 人の中の中心的なシナリオをそこに載せるものなのか、それとも白井委員の中心的なシナリオが 9 人の中心的なシナリオと食い違っている場合には、いわゆる 2%の「物価安定の目標」が見通し期間の後半にという表現の部分も、仮に白井委員の中心的なシナリオがそれに齟齬をきたすのであれば、反対するべきなのではないか。それは、14年度に 1.3%、15年度に 1.9%という見方よりも、やや慎重な見方をされているということは、これより下だということだと思うのですが、それでも白井委員の中心的なシナリオが 14年度の後半から 15年度にかけて 2%を達成するというところの整合性を整理のためお聞かせください。
§20Sayuri Shirai
先程申しましたように、中心値があるということは、それより上でもっと早く達成するとみている人もいるのです。その方達はもっと早いと思っていても、中心的シナリオの表現に同意しているわけです。それより下の人も当然いて、その中でここならばある程度納得できるという表現が、「見通し期間後半にかけて2%程度に達する可能性が高い」という表現に凝縮されているわけですから、ご質問は、上の人にも同じことがいえると思います。私は、今の段階では中心シナリオよりも、ゆっくりだとみていますが、それでもその表現の中に概ね収まると判断しています。ここはぜひ主張したいところですが、私は 2%のインフレ目標が必要だということを就任前から思っていましたし、それが1月に漸く実現したわけです。1%より 2%の方が望ましいことは、分かっているわけです。日本の社会にとってどういうインフレが望ましいのかを考えた時に、達成できるかできないかというのは最善の努力をした後に決めることであって、まず日本の経済にとって何が望ましいインフレ率なのかと考えたら、これは 2%という数字なのです。今は最善を尽くすべきなので、2%が達成できないと思っていると思われることは本意ではありません。ですから、中心シナリオには同意しています。但し、不確実性がありますし、前例がない政策ですので、色々なことをチェックしなければならない。
§21Sayuri Shirai
今回の挨拶要旨では、こういうところをリスクとしてみていきたい、そういう点をみながらチェックしていきますよ、と概念的な経路で説明しています。チェックの結果として、中心シナリオから下振れるようでしたら、当然その中心シナリオを否定する時が来るでしょうが、今は、よいデータもいっぱいありますから、そこまでの状況になっていないわけです。そういう中で私は中心シナリオを支持しました。後は下振れリスクと思われる部分と概念的経路をしっかりチェックしていくということで──その経路が実現していけば私が懸念しているところがなくなるかもしれませんし──、中心シナリオには反対しませんでした。2%を掲げているわけですから、それに同意した以上は最善を尽くすべきなのです。2%の実現にあたり、家計の皆様、企業の皆様に無理があってはいけないので、どのくらい時間がかかるかとの見通し期間に関しては、不確実性が高いと常々言っています。でも 2%の目標に対し最善を尽くすということには、何ら変わりはありません。その意思がありますし、今はよいデータもありますから、中心シナリオに反対票を出すところまでいっていないという見解です。
§22Question
2 点あります。念のための確認ですが、白井審議委員は 2%を達成する時期というのをいつというようにお考えなのかをまず教えてください。それから、先程、追加緩和の条件が2 つあるとおっしゃいましたが、中心シナリオが大きく下振れする場合というのは理解できますが、もう1 つ日本銀行が採っている金融政策に対して信認が大きく低下する場合があればというようにおっしゃいましたが、この点についてもう少し具体的に教えて頂けますでしょうか。追加緩和も条件によって何をするかも変わってくると思いますが、国債をこれだけ既に日本銀行が買っている中、何かこれ以上できるのかというのが、市場がなかなか日本銀行の 2%を信じない理由の 1 つとなっている気もするので、国債をさらに買い増すということもオプションの 1 つとしてあり続けるのか。リスク性の資産を買った方がいいという見方もありますが、これについてどう思われるのでしょうか。これも確認ですが、先程、中心シナリオが下振れる可能性が高まれば躊躇なく追加緩和という話が出ましたが、これは日本銀行の中心シナリオや物価見通し自体に変化がない段階でも、そういう下振れリスクがさらに高まる場合には、フォワード・ルッキング的に先手を打って追加緩和するというような意味合いも含んでいるのでしょうか。
§23Sayuri Shirai
達成の時期は明確には申し上げられません。ただし、この見通しは以前から思っているもので、来年の2014年度に関しては 1%前後辺り、2015年度は 1%の半ばを若干超えるくらいで、2015年度末にかけて見通せるかどうか、というのが私の見通しです。2 つ目のご質問について、追加緩和を検討するのは、中心シナリオが下振れるケースと、もう一つは信認が大きく低下するケースです。信認というのは、私の考えでは、物価が 2%に向けて着実に上昇していく経路を辿っているかということが 1 つで、中長期の予想インフレ率が 2%に向けて上昇していく傾向がみられるのかということと、もう1 つは市場参加者の見方とのズレがありますが、そこのところがどうなっていくか、をみています。ただ、市場参加者との見通しの違いに関しては、2 つの背景があると思います。1 つは、15年もデフレできましたから、そう簡単にはできないだろうという見方が当然あると思います。ただ、例えば、アメリカのボルカーFRB議長が、大変なインフレ状況の下で、インフレを下げる金融政策を行った時に、多くの市場参加者は懐疑的でしたが、インフレの抑制は結構早く実現したのです。これまで、前例のないことなので、これを懐疑的にみる市場参加者の気持ちは分かりますが、だからといって実現できないわけではないです。
§24Sayuri Shirai
今回なぜ概念的なチャンネルを持ち出しているのかというと、私は2%を支持しているからです。2%を掲げたのですから、やれることは全てやるつもりでいます。その時に少しでも概念的というか論理的なところで説明できるものがあったら、ということで今回 1 つの考え方を展開してみました。9月のアメリカの講演でも 2年で 2%と、安定的に 2%を実現する、という 2 つの時間軸が矛盾しているとの内外からの声があったので、整理して説明しています。私が今 2%を掲げているということは、黒田総裁と全く同じ方向をみているのです。ただ、私どもは世界の主要銀行や世界の国際機関・有識者や市場参加者の色々な人々にも説明責任を負っていますので、そこにもう少し論理的な説明があったらよいのではないか、そういう形で私は黒田総裁を支えているつもりです。そこには何の揺らぎもありません。市場の見方と私どもの見方に今ズレがあるのは致し方ない面もありますが、やはり丁寧に、今後はどういうプロセスで 2%が実現できるのかをもう少し詳しい分析や考え方を出していく時が来ていると思います。そういう対応もやっていくことが重要で、その結果そうした経路が今後どうなっていくのか、ということをみていく必要があると思います。これが私の言う信認の意味です。3 つ目のご質問について、追加緩和の手段に関しては、申し上げられません。
§25Sayuri Shirai
黒田総裁も言っているように、大変なことをやっていることは分かっています。だからやれることは全てやると言っているとおり、やれることは全てやります。今申し上げることはできませんが、色々なことを日々考えています。国債のほか色々組み合わせがあるでしょうが、それ以上のことは今申し上げることはできません。4 つ目のご質問について、私の申しました下振れリスクが何ら変わらないのであれば、追加緩和する必要はないわけです。そこに何か大きな動きがあった時に追加金融緩和を検討するという可能性はあるということで、それが何も変わらなければ、例えば、今の状況は比較的堅調ですから、追加緩和の必要がないということと同じです。
§26Question
本日の講演要旨は、昨日出ました10月31日の議事要旨よりも若干慎重気味かなと思っています──下振れリスクに関して、講演でも言われていた賃金の動向だとか、先行きの中長期の予想インフレ率のところで──。そうすると物価見通しについては、講演でも言われたように、今年度下期には大体 1%いくと。今年の1月から 6月までのGDPをみると 4%ぐらいの成長をしているので、そこからみると需給ギャップというのは、しばらく改善方向に働くと思うのですが、そうすると、白井委員からみられて景気判断して政策判断するという時期というかタイミングに関しては、物価が 1%を超えてそこからどうなるか、そのときに予想インフレ率が上がっているか下がっているか、また、賃金が上げられているのか、前提条件で申し訳ないですが、白井委員が景気判断する上で、リスクを景気判断、政策判断に結びつける、その材料というかタイミングをどのようにみているのかお伺いしたい。少し違う質問で恐縮ですが、株式市場とか為替相場をみるうえで、先日、中国が設定した防空識別圏で日中の緊張が高まっていますが、これが新たなリスク要因に加わるかどうかを、どのようにみていますでしょうか。
§27Sayuri Shirai
最初の政策判断のタイミングに関しては、繰り返しになってしまいますが、この下振れリスクが顕在化するかどうかだと思います。中心シナリオの前提が、今回まとめて展望リポートに書いてありますが、何が前提になっているか、成長の見通し、物価の見通し、それが崩れる可能性があるときは、政策判断の1 つのタイミングになるわけです。ですから、まずは、日本銀行の基本的な見解のところにある前提をみるということと、それから下振れリスク、私の場合は既に2 つ挙げていますが、ここのところが顕在化するかどうかというのをいつもみています。データは色々変わり、見極めが必要ですから、1 回下振れ材料があったからすぐ判断ということではないと思います。そういう見極めの期間はあると思いますが、ある経済状況が起きたとして、それが長く持続するように思われるときは、政策判断の検討などもあり得ると思います。中国に関して、個別のことを申し上げるのは難しいですが、あらゆるものをみています。あらゆる政治情勢や経済のデータ、色々なものが影響していますから、1 つの国の問題を今私がコメントする立場にないですが、色々なものをみて、それが株とか為替にどういう影響を及ぼしているのかというのは、しっかりモニターしています。以上