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Bank of JapanPress conferenceJan 22, 2014Haruhiko Kuroda, Governor

総裁定例記者会見(2014年1月22日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融政策決定会合の決定事項について、展望レポートの中間評価も含めてご説明をお願いします。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。わが国の景気ですが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが引き続き働いており、これまでと同様、「緩やかな回復を続けている」と判断しました。先日開催された支店長会議でも、全ての地域から「回復している」あるいは「回復しつつある」との報告が聞かれており、景気回復の裾野も着実に拡がってきています。また、「このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている」ことについても、総括判断で付言することにしました。海外経済は、新興国の一部になお緩慢さを残していますが、米欧などの先進国を中心に回復しつつあります。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にあります。設備投資は、企業収益が改善する中で、持ち直しています。公共投資は増加を続けています。雇用・所得環境が改善する中で、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しています。住宅投資や自動車などの耐久財の消費には、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられています。

§3Haruhiko Kuroda

以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加しており、サービスや建設など非製造業の活動も引き続き堅調に推移しています。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。貸出金利は既往最低水準まで低下しており、企業からみた金融機関の貸出態度も改善傾向が続いています。銀行貸出残高の前年比は 2%台半ばのプラスとなっており、とくに中小企業向け貸出残高の前年比はこのところプラス幅を拡大しています。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、上昇品目の広がりを伴いながらプラス幅の拡大を続けており、11月は+1.2%となっています。除く食料・エネルギーの前年比も改善傾向を続けており、11月は+0.6%となっています。予想物価上昇率は、全体としてみれば上昇していると判断されます。経済・物価の先行きについては、今回の会合で中間評価を行いました。昨年10月の展望レポートで示した見通しと比較しますと、実質GDP成長率、消費者物価ともに概ね見通しに沿って推移すると見込んでいます。すなわち、経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくと考えられます。また、物価面では、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。

§4Haruhiko Kuroda

その後は、次第に上昇傾向に復し、見通し期間の後半、具体的には 2014年度の終わり頃から 2015年度にかけて、「物価安定の目標」である 2%程度に達する可能性が高いとみています。ただし、複数の委員は、昨年10月の展望レポート時と同様、物価の見通しについて、より慎重な見方を示されました。リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は 2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。また、海外経済を中心として下振れリスクはこれまでより低下してきています。今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。

§5Question

消費増税が近づいていますので、その点について伺います。「駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていく」と総裁はおっしゃいました。現時点で、駆け込み需要と反動についてどうみていらっしゃいますか。また、駆け込みと反動減が均されても、消費税が 3%上がる中で賃金がそれほど上がらないとなれば、実質賃金の低下は避けられないと思いますが、これをどのようにこなして、潜在成長率を上回る成長が可能とお考えか、ご説明をお願いします。

§6Haruhiko Kuroda

消費税率引き上げの影響についての基本的な考え方は、昨年10月の展望レポートの時点から変わっていません。先程申し上げた通り、消費税率引き上げは駆け込みとその反動減という一時的な振れをもたらすものの、日本経済で働いている前向きの循環メカニズムは途切れず、基調的には緩やかな回復を続けていくとみています。これも先程申し上げた通り、駆け込み需要は、既に家計支出の一部で顕在化してきており、住宅投資あるいは自動車などの耐久消費財でそうした動きがみられています。1~3月期にはこの影響はかなり出てきて高めの成長になるとみています。一方、その反動で 4~6月期の成長率は、かなり鈍化すると予想しています。ただ、7~9月以降は、反動の影響が減衰していく上、公共投資が高水準を続け、輸出や設備投資も緩やかに伸びを高めていくと見込まれますので、次第に潜在成長率を上回る成長経路に復していくと考えています。消費税と実質賃金の関係についてですが、消費税は消費に対する課税、税負担ですので、消費税率の引き上げは家計の実質所得にマイナスの影響を与えることになります。

§7Haruhiko Kuroda

もっとも、第 1に、政府において各種の経済対策が講じられること、第 2 に、消費税率引き上げは家計部門で既に相応に織り込まれているとみられること、第 3 に、財政や社会保障制度に関する家計の将来不安を和らげる効果も期待されるといったことから、消費税率引き上げによる家計の購買力低下の影響を緩和する力も働くと考えられます。こうしたことも踏まえて、日本銀行の見通しは作成しています。

§8Question

総裁はダボス会議にご出席されるとのことですが、どういったお話をされるご予定か、お聞かせ下さい。

§9Haruhiko Kuroda

私は、過去 15~16年、ほぼ毎年色々な立場でダボス会議に参加してきましたが、今回は、日本銀行の総裁として 2 つのセッションに参加することになっています。1 つが「2014年の世界経済見通し」、もう 1 つが「金融政策の将来」というセッションです。前者では、各国の政策担当者が同じパネルに参加されますので、そういった方から経済の動向、政策の道筋などを伺いたいと思いますし、私からは日本経済の当面の見通し、政策動向等についてお話をしたいと思います。有意義な意見交換ができるのではないかと期待しています。後者では、先進国各国の非伝統的金融政策を巡る色々な論点について、忌憚のない意見交換ができればと思っています。なお、私の過去の経験から申し上げると、色々なパネルやセッションに参加することも非常に有意義ですが、その他にも様々な人と場外で色々な非公式の意見交換ができること――英語で言えば、コリドー・トークというのでしょうか――もメリットだと思っていますので、そういったことを期待しています。

§10Question

2 点お伺いします。先行きのリスクについて、先程のご説明では海外を中心に下振れリスクは低下してきているとのことでした。本日のステートメントでも、リスク要因について、前月あった「不確実性は引き続き大きい」という記述が削除されていますが、消費税率引き上げの影響については、久しぶりの増税ですし、反動については予想し難い面もかなり大きいと思われます。実際、マーケットでは、増税後の景気悪化に対応して日銀が追加緩和するという見方もかなり強いです。先程の総裁のご説明では、政府の経済対策や家計の織り込みその他で十分カバーできているということですが、日銀として何らかの措置を採る必要性、可能性も、低くなっているとみていらっしゃるのでしょうか。2 点目は、少し先の話になりますが、来年10月からの再増税、10%への増税について、安倍総理は、年内に判断したいというお話をされています。再引き上げを先送るべき等の色々な議論がなされる可能性があると思いますが、総裁は予定通りやるべきとお考えでしょうか。昨秋は引き上げを見送った場合のリスクについて言及されていましたが、再引き上げを見送った場合のリスクについても何か考えているのかを確認させて下さい。

§11Haruhiko Kuroda

第 1 点目については、ご指摘の通り、従来からリスク要因として海外経済の不確実性を挙げていましたが、先程もご説明した通り、米国、欧州といった先進国の回復基調が明確になってきました。これを踏まえて世界経済全体としてのリスクが低下してきているとみています。ちなみに、IMFも新しい世界経済見通しを発表しましたが、先進国を中心にして、2014年の成長率見通しを上方修正しています。世界経済全体の経済成長率は、2013年より 2014年、2014年より2015年というように、だんだんと高まっていくとみられています。従って、ステートメントには、リスク要因として非常に大きいというよりも、むしろ、リスク要因として残っているという意味で、3 つを挙げています。なお、消費税率引き上げの影響については、先程申し上げた通りであり、駆け込み需要とその反動は、いわばプラスとマイナスで打ち消してしまいますが、課税という意味では、個人の税負担の増加ですので、可処分所得の減少になり、様々な影響が出てきます。

§12Haruhiko Kuroda

他方で先程申し上げたように、政府がかなりの規模の経済対策を合わせて行うことにしていること、消費税率引き上げは家計にある程度織り込まれていること、そして何よりも重要なことは社会保障その他のシステム、制度が中長期的により安定的になることが家計に好ましい影響を与えるであろうこと、を考えると、今回の展望レポートの中間評価にある通り、2014年度、2015年度とも潜在成長率を上回る成長が続き、基本的に好循環を持続していくとみています。第 2 点目は、政府で議論し、最終的には国会でお決めになることですので、今の時点で私が何か特別なことを申し上げるつもりはありません。私どもとしては、一昨年の夏に与野党の合意で成立した法律によって、2014年4月に3% 、2015年10月に 2%消費税率が引き上げられるということが定められていますので、そういったことを金融政策あるいは経済・物価の見通しの前提としているということです。

§13Question

2 点お伺いします。本日、展望レポートの中間評価では、総裁からのご説明の通り、複数の委員が物価についてより慎重な見方をされています。こういった慎重な見方は、市場でも引き続き根強く残っていると思いますが、4月の「量的・質的金融緩和」の発表時あるいは 10月と比べると、総裁がおっしゃる通り、物価の水準は、概ね日銀の見通しに沿ってきています。こうした環境でありながら、一部の委員あるいは市場がなお、物価上昇率 2%に対して慎重な見方をしているのはなぜなのでしょうか。どのようなギャップがあると分析されていますか。また、今回の政策では、「期待の自己実現」も政策効果の大きな柱になっていると思いますが、予想物価上昇率が8~10 か月くらい経っても上がってこないことが政策に何らかの悪影響を及ぼすかどうかについて教えて下さい。

§14Haruhiko Kuroda

物価については、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を決定し、その後着実に実行する中で、実際の物価上昇率も徐々に上がってきており、先程申し上げたように、生鮮食品を除くベースで+1.2%、食料・エネルギーを除くベースでも+0.6%になっています。そうした中で、最近の民間の見通しは徐々に上昇しており、2013年度あるいは2014年度について、私どもの見通しとかなり近い数字になってきていると理解しています。ただ、2015年度の見通しについては、依然として私どもの大勢見通しと民間の見通しとにややギャップが残っていると思います。前にも出た論点ですが、経済成長率については、私どもと民間の見通しにそれほど大きな違いはありません。そういう意味では、需給ギャップがだんだん縮小し、いずれプラスになるという方向については、あまり違いはないと思いますが、予想物価上昇率について、まだ民間の方がやや慎重な見方をしているのかなという気がします。ただし、民間の見通しがどういう経済モデルを想定して立てているのかなど分かりませんので何とも申し上げかねますが、おそらく、予想物価上昇率の今後についての考え方が違うのかと思います。

§15Haruhiko Kuroda

以前から申し上げている通り、日本銀行が物価上昇率 2%を 2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現する、そのために「量的・質的金融緩和」を導入すると単に言ったからといって、予想物価上昇率が直ちに 2%に跳ね上がるとは思っていません。そういった政策のアナウンスメントに対応してフォワード・ルッキングに上昇する部分もあると思いますが、実際に物価上昇率が上がっていく過程の中で、いわばバックワード・ルッキングに予想物価上昇率が上昇していく要素も、両方あると思います。私どもは、私どもの大勢見通しが正しいと思っていますし、実際に物価上昇率が上がってくる中で予想物価上昇率も徐々に上がってきています。そうした傾向が続いていく中で、私どもが申し上げているように、見通し期間の後半、具体的には 2014年度の終わり頃から2015年度にかけて、2%程度に達する可能性が高いとみています。

§16Question

昨年の 1月22日に日本銀行が 2%の「物価安定の目標」を導入してから、本日でちょうど 1年になります。「物価安定の目標」を導入するメリットについて、先程、総裁から、2%という目標を掲げたからといって、すぐに期待物価上昇率は上昇するわけではないというお話もありました。目標を定めたことの効果について、この1年間の動きをみていてまだ効果は出ていないのか、それとももう手応えを感じつつあるのか、また、人々の期待が目標の設定によってどのくらい変化したか、ということについて、総裁のご見解をお伺いできればと思います。

§17Haruhiko Kuroda

私どもとしては、もちろん手応えを感じています。先程申し上げた生鮮食品を除くベースで+1.2%、それから食料、エネルギーを除くいわゆるコアコア指数でも+0.6%になっています。物価上昇率は、徐々にですが、明らかに上昇しています。予想物価上昇率も全体としてみると上昇しており、先行きの見通しについては、先程申し上げた通りであり、「量的・質的金融緩和」は効果を発揮していると思います。ご指摘のように、昨年の 1月には、2%の「物価安定の目標」を決定して、これをできるだけ早期に実現しようということでした。4月4日には、これを「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」ために必要にして十分なだけの金融緩和措置を採るということで、「量的・質的金融緩和」を導入しました。2%の「物価安定の目標」も非常に重要ですし、それをいわば「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という決意のもとに、「量的・質的金融緩和」を導入して、これを毎月着実に実行してきているということも極めて重要な要素であろうと思っています。

§18Question

2 点お伺いします。短観やさくらレポートでは景況感が良いと言えると思いますが、今月9日に日本銀行が発表した「生活意識に関するアンケート調査」では、個人の景況感が 2 期連続で悪くなっています。個人の景況感が上がってくるには何が必要と考えていらっしゃいますか。もう 1 点、本日の決定会合で白井委員が、リスク要因として、「国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきである」と反対した背景はどのようなことでしょうか。

§19Haruhiko Kuroda

まず第 1 点ですが、ご案内の通り、日本銀行の短観も、各支店長からの報告も、企業の景況感あるいは今後の経営方針を聞きとったものです。企業の景況感は、大幅に改善していますし、狭い地域やごく一部の業種または大企業だけということではなく、地域、業種、企業規模のいずれにおいても、より幅広く改善がみられ、回復していると思います。他方で、個人の場合は、雇用・所得の動向を気にしているのではないかと思います。そうした中で、雇用者数は顕著に増加していますが、所定内給与は、所定外給与や特別給与のようにはなかなか上がらず、名目賃金の上昇はまだ小幅にとどまっています。つまり、雇用者数と名目賃金を掛けた雇用者所得はある程度は上昇していますが、名目賃金、特に所定内給与の改善がなかなかみられていません。今後の所定内給与、特にベアの問題についてどのようになるか注視しており、具体的な話を聞いた限りでは、久方ぶりにベアが実現する企業も多いようです。そういったことが実現する過程で、個人の景況感についても、顕著な改善がみられてくるとは思いますが、現時点では、企業の景況感に比べると、家計の景況感の改善はやや遅れていると思います。また、白井委員の件については、白井委員は対外公表文で指摘した 3つのリスク要因に加えて、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきではないかと言われました。

§20Haruhiko Kuroda

詳細については、次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。

§21Question

先程のベアの話にも関連しますが、春闘が事実上スタートしています。賃上げの帰趨は、物価の先行きを見通す上で大変重要だと思います。この春闘と賃上げの動きは、日本銀行が「物価安定の目標」の実現可否を判断する上で重要な材料になり、従って、物価見通しが実現する可否は、春までにある程度みえてくるのでしょうか。また、先般、米国のルー財務長官が、日本について、為替に過度に依存すれば長期的な成長はないという円安牽制発言ともとれるご発言をしています。こうした発言を受けて、円安につながりやすい金融緩和策を継続し難くなるのではないかという見方もあるのです。このような見方について反論等があればお願いします。

§22Haruhiko Kuroda

まず第 1 点目ですが、所定内賃金の低迷が続いている 1 つの要因は、パートの賃金が正社員の賃金よりも低いために、パート比率が高まると所定内賃金の上昇率が低めに出るということがあります。ただ、常用労働者の賃金が上昇することは、雇用者所得の引き上げにプラスですし、個人消費をさらに強める意味でも重要です。それを通じて「物価安定の目標」を実現に近づける上でも非常に重要だと思いますが、ベアだけが物価上昇率を決めるわけではありませんので、私どもは色々な指標、経済動向をみながら物価見通しを作り、金融政策を運営しています。第 2 点目については、私どもの金融政策は、以前から申し上げている通り、国内の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために行っているものです。為替について、特定のレベル――円安にせよ円高にせよ――を狙って行っているものではありませんので、特に私どもの金融政策が影響を受けることはないと思います。

§23Question

米国において、地区連銀が個人の景気判断とか金融政策の先行きについて、個々の見解を自由に言っているかと思います。日本においても、審議委員の方々が、地方で経済や金融政策の先行きをコメントしているかと思います。アカウンタビリティーの面からすれば当然とは思うのですが、コメントによっては、日本銀行として行っている金融緩和の効果を下げたり、市場のノイズとなり市場を混乱するような状況があると思います。それぞれの委員がどこまで自由に自分達のコメントをしてよいのか、また政策の先行きを言ってよいのかについて、総裁はどのように考えているか教えて下さい。

§24Haruhiko Kuroda

日本、あるいは米国、英国の場合でも、今や多くの先進国では、政策委員会のようなボードで金融政策を決定することにしています。そのボードのメンバーが、それぞれ独立で、それぞれの方の考え方に従って意見を述べ、多数決で必要な決定を行う形になっています。日本、米国、英国のどこでもそうですが、それぞれの方がそれぞれの見解を述べられることは、何ら問題ないと思っています。ただ、ボードとしてどのように決定してきたのか、これから決定していくのかということについて、すなわち、ボードとしての話になってくると、一定の制約はあり得るとは思います。しかし、それぞれの方が独立に審議に参加する形になっていますので、それぞれの方が一委員として発言されること自体は、問題ないと思います。

§25Question

2 点お伺いします。岩田一政元日銀副総裁が先週、先程のルー米財務長官の発言で、「ああいう発言が米国当局からパラパラ出てくるとなると、緩やかな円安基調というのも、ちょっと止まってしまうのではないか」とその辺のリスクを心配していらっしゃいましたが、これは今後の政策波及経路に影響はありますでしょうか。2 点目は、欧州を中心に米国も含めてディスインフレ傾向が少しずつ顕著になってきていると思います。コモディティも金物中心に中国の影響で随分下がっている中で、日本だけ経済・物価の好循環が続いても、海外の影響があると、15年度の物価上昇率 1.9%というのは実現できるのでしょうか、改めてお伺いします。

§26Haruhiko Kuroda

1 点目については先程申し上げた通りです。私どもの金融政策は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することが目的、目標でありますので、特に制約になるとか、問題があるとは考えておりません。なお、為替の動向について、具体的なコメントは差し控えたいと思います。2 点目の欧州を中心としたディスインフレ傾向、あるいは一次産品の価格の高騰が止まったというか一部下がっていることが、日本の物価上昇率にどう影響を与えるかということについてです。まず、欧州のディスインフレ傾向について、確かに物価上昇率が低下してきていることは事実ですが、欧州経済は持ち直していますし、IMFの見通しでも 2014年、2015年と成長率がだんだん上がっていく見通しですので、ディスインフレというか、デフレに近づいていくという心配はあまりしていません。現に、欧州の期待物価上昇率も 2%程度で比較的安定しておりますので、欧州を先頭にして世界経済がデフレに近づいていくとかディスインフレがどんどん進んでいくとは思っていません。一次産品の価格動向を注視はしていますが、大きく上がったり下がったりしますので、それによって日本の「物価安定の目標」が達成できなくなるとか、非常に難しくなることはないと思います。過去 15年間、日本だけデフレだったのです。

§27Haruhiko Kuroda

他の国はそういう経験をしていなかったわけですから、逆に言えば一次産品の価格が上がらないとか下がるとか、あるいは一部にディスインフレになる国があったとしても、わが国がそれに引きずられてディスインフレ、あるいはまたデフレに戻ってしまうことはないわけです。一次産品の価格動向は、もちろん注視はしていますが、日本銀行の「物価安定の目標」に向けた政策努力またその効果については、何ら懸念する必要はないと思っています。

§28Question

先程、CPIの見通しについて、暫くの間、1%台前半で推移し、その後は上昇傾向となり、来年度中には 2%程度までいくとおっしゃいましたが、この「暫くの間」というのは一体どれくらいを想定していらっしゃいますか。また、その後の「上昇傾向」についてです。今の円相場の水準が続くならば、今年の 5月ぐらいになると円安による輸入物価押上げ効果は落ちて、その分が剥げてくる可能性が高いと思うのですが、それを乗り越えて「上昇傾向」が維持できる経路をどのように考えておられるか、GDPギャップも含めて教えて下さい。また、政策委員会の中には、慎重な見通しもあると思います。これは、今回も木内さんが異論を唱えておられていたことなどにも現れていると思いますし、他の委員にももう少し慎重な見方があると思うのですが、その点について、政策委員会の中でどんな議論が行われているのかも教えて下さい。

§29Haruhiko Kuroda

2 点目については、先程申し上げた通り、次回の金融政策決定会合後に今回の議事要旨が公表されますので、それをみて頂きたいと思います。1 点目の、「物価安定の目標」に向けて進む道筋です。色々な前提のもとでみると、エネルギー価格などが物価を押し上げていた部分はだんだん減衰していく一方、GDPギャップは少しずつ改善していき、インフレ期待も、少しずつ上がってきており、今後も上がっていくと想定されます。エネルギー価格による押し上げが小さくなるということと、内需を中心に、経済取引全般について需給がタイトになってきて、少しずつ幅広い品目で物価面の改善がみられるということの、両方の面があります。それがちょうど綱引きで、概ね現状程度の 1%台前半という水準が、「暫くの間」――これは、半年程度だと思って頂いてよいと思いますが――、続くだろうとみています。その後は、前者の部分はなくなりますので、後者の部分だけになってきます。さらに、後者の部分についても、潜在成長率を上回る成長が続くわけですので、当然、GDPギャップがずっと改善していきます。そうした中で、物価上昇率が上がり、インフレ期待も上がっていくという形で、物価が上昇していくとみているわけです。その結果として、ここにあるような見通しができているということです。

§30Haruhiko Kuroda

ちなみに、政策委員の大勢見通しの表をみて頂いても分かるように、基本的に、昨年10月時点の展望レポートとほとんど変わらないのですが、仔細にみると、消費者物価の上昇率については、例えば足許の 2013年度については幅がだいぶ縮んできていますし、2014年度、2015年度についても、幅のうち、下の方が上がってきています。個々の物価見通しはそれぞれの政策委員の方々の見通しですが、その全体を大勢でみれば、中心値は変わっておりませんし、その幅も、少し下の方が上がってきているということでして、そういった見通しを、政策委員会として持っているということだと思います。

§31Question

物価は、日銀がみている通り順調に 2%に向かっているということですが、市場では日銀の追加緩和期待が根強くあります。その中で、仮にこのまま順調に推移した場合、調整は必要ないことになると思いますが、例えば、今日の決定会合の後などは一旦、株安になったり円高になったりしています。追加緩和に関する思惑があるため、緩和がない場合に市場が荒れ、株安になったり円高になったりすることについて、総裁は懸念を持っていらっしゃいますか。

§32Haruhiko Kuroda

マーケットの状況については常に注視していますが、全体の動きについて何か特別な懸念を持っているかと言われれば、持っていません。その 1 番大きな理由は、4月4日に「量的・質的金融緩和」を決定し、その後、半期毎の展望レポート、またそれを中間評価することを続けてきていますが、基本的に、物価は想定した道筋を辿ってきているということです。当然、物価見通しについて上下双方向のリスクはあり得るわけですが、これまでのところそういうリスクは顕在化していませんし、そういうリスクが顕在化しなければ、現在の政策が続いていくということです。「マーケットはマーケットに聞け」というくらいで、マーケットはマーケットで色々動くと思いますが、実体経済の動きと物価の動きを十分注視して、適切な金融政策を運営していくことに尽きると思います。

§33Question

ダボス会議にご出席されるということで、2 点確認させて下さい。おそらく、日本銀行総裁でダボス会議年次総会に出席されるのは、極めて異例で初めてではないかと思うのですが、日銀総裁の立場としてご出席されることの意味合い、抱負のようなものを教えて下さい。また先程、有意義な情報交換をされたいとおっしゃっていましたが、日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、外国当局、外国人投資家、企業など、皆さんが注目しているところだと思います。総裁として、どのようなメッセージを発していきたいと考えているかを、もう少し教えて頂ければと思います。

§34Haruhiko Kuroda

ダボス会議には、過去に副総裁が出席したことはあると思いますが、確かに日銀総裁が出席したことはないのかもしれません。私自身は、先程申し上げた通り、この 15~16年間、毎年出席していましたので、よく知っている人もいますし、そのような意味で有意義な意見交換ができることに期待しています。なお、ダボス会議には、他の先進国や新興国の中央銀行総裁が数多く出席しており、そのような意味でも、有意義な意見交換ができるのではないかと思っています。2 点目については、先程申し上げた通り、日本経済は想定した通りに進んでおり、2%の「物価安定の目標」に向かって着実に、順調に推移しているということです。そうした中で、経済・物価だけではなく、成長や雇用など、日本経済の各方面について色々なご質問もあるかもしれませんので、それらにも適切に答えていきたいと思っています。以上