総裁定例記者会見(2014年2月18日)要旨
Full text
§1Question
本日の決定内容について、とりわけ貸出増加支援制度の延長・拡充の狙い、それからこのタイミングでそれを決められた理由についてご説明下さい。
§2Haruhiko Kuroda
本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。また、本日は、近く期限が到来する貸出増加支援資金供給、成長基盤強化支援資金供給、被災地金融機関支援資金供給について、それぞれ1年間延長することを決定しました。その上で、貸出増加支援資金供給については、金融機関が貸出を増加させた額の 2 倍まで、日本銀行から資金供給を受けられることとします。また、成長基盤強化支援資金供給については、本則の総枠を 3兆 5 千億円から 7 兆円に倍増します。さらに、この両方の資金供給について、固定金利 0.1%で 4年間の資金供給を受けられることとします。「量的・質的金融緩和」により供給している大量のマネタリーベースが、金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みに利用されることは極めて重要であり、今回の見直しは、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムを強化するものです。喩えていえば、「量的・質的金融緩和」の導入でエンジンの馬力を大幅に上げたので、その性能を十分に活かすためにタイヤを強化したと言っても良いと思います。
§3Haruhiko Kuroda
最近では、銀行貸出の前年比は 2%台半ばの伸びとなっており、マネーストックは 4%台半ばの伸びとなっています。このように銀行貸出やマネーストックの伸び率は高まってきていますが、今回の見直しが、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待しています。わが国の景気ですが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが引き続き働いており、家計支出の一部で消費税率引き上げ前の駆け込み需要も顕在化しています。従って、景気の総括判断としては、先月と同様、「緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている」としました。海外経済は、新興国の一部になお緩慢さを残していますが、米欧などの先進国を中心に回復しつつあります。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にあります。設備投資は、企業収益が改善する中で、持ち直しています。公共投資は増加を続けています。雇用・所得環境が改善する中で、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しています。住宅投資や乗用車などの耐久財の消費には、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加しており、サービスや建設など非製造業の活動も引き続き堅調に推移しています。
§4Haruhiko Kuroda
物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、 11月は+1.2%、12月は+1.3%と、このところ 1%台前半となっています。除く食料・エネルギーの前年比も改善傾向を続けており、12月は+0.7%となっています。予想物価上昇率は、全体としてみれば上昇していると判断されます。わが国経済の先行きについては、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。その後は、次第に上昇傾向に復し、見通し期間の後半、具体的には 2014年度の終わり頃から 2015年度にかけて、「物価安定の目標」である 2%程度に達する可能性が高いとみています。リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、わが国経済は潜在成長率を上回る成長を続けており、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。
§5Haruhiko Kuroda
その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。
§6Question
2 点お伺いさせて下さい。1 点は、新興国経済の不安が再燃していますが、週末開かれるG20でどのような分析がなされ、あるいはどのような政策・対策が議論されるのか、見通しを教えて下さい。それからもう 1 点は、国内経済についてです。消費税の増税まで 1 か月強になりましたが、駆け込み需要とその反動に関し、これまで再三シナリオについてご説明頂いております。そのシナリオに狂いがないかどうか、改めてお聞かせ下さい。
§7Haruhiko Kuroda
まず、1 点目について、国際金融資本市場では、現状、経常収支の赤字などの構造面での脆弱性を抱える一部の国において、神経質な動きがみられています。これら新興国では、当面、成長に勢いを欠き、不確実性も高い状態が続くとみられます。もっとも、米国をはじめとした世界経済の回復テンポが今後、増していく中で、やや長い目でみて、その好影響はこういった新興国経済および市場にも及んでいくと考えられます。G20では、通常通り、世界経済の現状と先行きや、国際金融情勢について、活発な議論が行われると思います。その中では、新興国市場の動向についても、取り上げられることになると思います。そのほか、議長国のオーストラリアは本年のG20の目標として、成長と雇用を促進すること、経済の頑健性を高めることを掲げています。今回のG20では、こうした構造問題に対しても、11月のサミットに向けて、どのように議論をしていくかについても、意見の交換が行われると思います。2 点目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動については、先程申し上げた通り、駆け込み需要は、既に家計支出の一部で顕在化していると思います。例えば、住宅投資については、昨年秋までに契約ベースで発生した注文住宅の駆け込みが、若干のラグを伴って着工に移されてきています。
§8Haruhiko Kuroda
また、乗用車や家電など耐久財の消費についても、このところ駆け込みの影響が強まってきているのではないかと思います。さらに、衣料品や雑貨などの耐久財以外の消費についても、今後、3月にかけて駆け込みが発生すると予想されます。ただ、住宅投資の増加あるいは個人消費の底堅さの基本的な背景には、冬のボーナスの増額など雇用・所得環境の改善があり、先行きも、雇用・所得環境の改善が続く中で、住宅投資や個人消費は、こうした駆け込みとその反動という振れを伴いつつも、基調的には、底堅く推移するとみています。
§9Question
2 点伺います。景気について、総裁は常に、振れを伴いつつも回復するとおっしゃっています。しかし、先日発表されたGDPの内容をみると、消費は、耐久財以外の勢いが弱いというか、春先の勢いがなかったほか、輸出も、円安で伸びると期待していたところ、なかなか伸びてきませんでした。その点について、想定外の結果が出ているとみていらっしゃるのか、お伺いします。2 点目は、今回の貸出支援関係の拡充です。去年の 4月にやれることは全てやるということで緩和を行ったわけですが、今回の措置は、いわゆる追加的な緩和策とみているのか、総裁の中でどういう位置付けで考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
§10Haruhiko Kuroda
まず 1 点目の、景気の現状と先行きの判断ですが、これは今日発表した「当面の金融政策運営について」という文章の中でも述べている通り、先月と全く変わっていません。昨日発表された昨年10~12月期のGDPの 1 次速報値は、前期比年率 1%と、7~9月期と同程度の成長率となりました。昨年前半のかなり高い伸びからみると鈍化していますが、国内民間需要の堅調さを背景にして、潜在成長率を上回る成長が続いていることには変わりありません。特に内需をみると、設備投資が、企業収益の改善に伴い伸びがプラスになったほか、個人消費も、冬のボーナスの増額もあって底堅い伸びを続けています。耐久財だけではなくて、いわゆるサービス、旅行やその他についても、底堅く伸びています。外需は、輸出が新興国向けを中心に勢いを欠いている中で、輸入の伸びがかなり高まっていて――これはもちろん、基本的には内需の堅調さを反映したものであると思いますし、あるいは一部に駆け込みの影響も入っているかもしれませんが――、純輸出がマイナスとなり、成長率を押し下げる要因になっています。しかし、内需の方は、特に民間需要を中心に堅調ですので、基本的に景気の前向きな循環が続いていることを確認できたと思っています。
§11Haruhiko Kuroda
2点目のご質問ですが、貸出支援等の 3 つの制度について、それぞれ1年延長し、特に貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の 2 つについては、大幅な拡充を図りました。この趣旨は、最初に申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」の実体経済への波及効果を強化するということです。金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みを促すということでかなり思い切った拡充をしたわけであり、そういった意味では、「量的・質的金融緩和」の効果をより強くし、より確実なものとするものであると思っています。
§12Question
貸出増加支援制度に関してですが、ステートメントにもあるように、金融環境は既に緩和状況にあって、銀行貸出も増えています。今回の制度見直しでどれだけ貸出が増えるのか、資金需要という面ではまだまだと思いますが、資金需要についてどのようにみていらっしゃるのか、ご所見をお願い致します。
§13Haruhiko Kuroda
最初に申し上げた通り、貸出は着実に伸びを高めていますが、こうした制度を拡充することを通じて、さらに貸出が増加していくことを期待しています。今回の公表文の別紙として「貸出増加支援資金供給等の制度見直しの骨子」が付いていますが、貸出増加支援資金供給について、金融機関の貸出増加額の 2 倍相当額の貸付を行えるようにすることによって、今の制度の利用率と同程度という仮定で、最終的な貸付残高は30兆円程度になると見込まれます。これは金融機関による貸出をかなり押し上げる効果を持つのではないかと思っています。本制度の利用状況をみると、大手銀行はほとんどフルに使っているようですが、地域銀行はまだあまり利用していないということもあります。今回、貸出増加額の 2 倍相当額の貸付を受けられること、また、4年固定 0.1%という貸付金利ということもありますので、相当に本制度の利用が増えるだろうとみています。それが、金融機関による貸出全体を押し上げていく効果もあろうと思っています。なお、成長基盤強化支援資金供給の本則も、総枠を倍にするだけでなく、1 行あたりの上限を 1,500 億円から 1 兆円に引き上げました。普通に考えるとほとんど限界にならないような範囲まで上限を引き上げていますので、貸付金利が 4年固定で 0.1%ということもあって、これもかなり利用されるのではないかと思います。
§14Haruhiko Kuroda
従って、両制度とも、特に前者は量的に、後者は成長基盤強化といった面で、相当プラスになるのではないかと思っています。
§15Question
先程、GDPにつきまして、堅調な内需を背景に伸びが続いているとおっしゃられていましたが、今年度については、日銀の見通しである+2.7%を下振れるのではないかという声が多く聞かれます。その場合は、需給ギャップの改善が遅れる可能性もあります。このような見通しの下振れと、その際の政策対応について、繰り返しになるかもしれませんが、改めてお聞かせ下さい。
§16Haruhiko Kuroda
最初に申し上げた通り、毎回、金融政策決定会合で色々な議論が行われるわけですし、経済・物価情勢を点検して、上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということであり、その点には全く変わりありません。従って、ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行うことになります。もっとも、今のところわが国経済は順調に推移し、日本銀行の経済見通しに沿って動いていると思っており、今の時点で+2.7%の経済成長が達成できないとは考えていません。先程申し上げたように、1~3月期は若干の駆け込みもあると思いますし、10~12月期の成長率でも潜在成長率を上回っていますので、GDPギャップはさらに縮んでいると思います。今後もGDPギャップは縮小していき、最終的にはプラスになり、物価上昇率あるいは予想物価上昇率を押し上げていくと思います。
§17Question
2 点お伺いします。まず、貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の規模は 2 倍、それからそれぞれ 1年間延長するということです。規模を 2 倍にした根拠について、かなりアナウンスメント効果を狙っていらっしゃるという印象があるのですが、改めてお聞かせ下さい。もう 1 点は、昨日のGDPの 1 次QEでも、輸出が前期比+0.4%と、伸びとしては非常に弱いことについてです。外需がなかなか伸びてこない中で、消費増税後の景気の落ち込みを迎えると、景気の牽引役が不在という形になると思います。今後の輸出の伸びに、海外経済、特に新興国の懸念が与える影響をどうみていらっしゃるのか、お聞かせ下さい。
§18Haruhiko Kuroda
まず 1 点目の、貸出増加支援資金供給あるいは成長基盤強化支援資金供給について、前者は、貸出増加額まで貸付を受けられるというものから、貸出増加額の倍まで貸付が受けられるものにしました。また、後者は、総枠を 3兆 5 千億円から 7 兆円と倍にしました。理由は、それぞれにあります。貸出増加支援資金供給の方は、先程申し上げたような形で大手銀行は相当活用している一方、地域銀行はまだそこまで活用していません。そういう中で、これを 1年延長し、その際にいわばインセンティブを一層強化するという意味で、貸出増加額の 2 倍まで日本銀行からの貸付を受けられることにしました。また、0.1%の固定金利で 4年間借りられることで、金融機関としては金利リスクに対する耐性を強化できます。これによって貸出増加を相当程度支援しますので、この利用が進むだろうと思っています。一方、成長基盤強化支援資金供給は、3 兆 5 千億円という総枠が決まっていました。先程申し上げたように、貸出増加支援資金供給の方は総枠がないので、貸出を増やしていけば、いくらでも日本銀行から借りられますが、こちらの方はそもそも総枠が 3 兆 5 千億円となっており、現状それに近いところまで残高が来ています。そして、一部の銀行では 1 行あたりのリミットまで残高が来ているということで、これを拡大する必要があります。
§19Haruhiko Kuroda
倍に拡大すれば、おそらく十分なだけの拡大になるだろうと、こちらの方は総枠を 2 倍にしました。従って、それぞれに 2 倍にした理由があり、これらはいずれも貸出増加あるいは成長基盤強化に向けた日本銀行としての強い支援の姿勢、メッセージを含んでいるものとして決定したのです。2 点目の外需については、昨年から申し上げている通り、4月に「量的・質的金融緩和」を決めて以来、内需は想定したよりやや強め、外需はやや弱めでした。それは昨年10~12月期のGDPでもそうなっており、足許も若干その傾向があります。ただ、輸出は、プラスには転じています。米国については、債務上限問題を解決し、民需が強い中で、その勢いが家計から企業に及びつつありますので、米国の成長は次第に加速していくというのは、ほとんどコンセンサスです。中国については、色々な懸念を示す方もいますが、やはり 7%台半ばの安定的な成長が続くという見通しがほとんどコンセンサスになっています。アジアの中でも、NIEsは回復して、成長率も高まっていますし、輸出も伸びています。ASEANがやや勢いを欠いていますが、そうした中でも、フィリピンなどは、かなり好調といいますか、成長率を上げてきています。こういった世界経済全体、アジア経済の動向をみると、輸出も緩やかに持ち直していく、伸びていくのではないかと思っています。
§20Haruhiko Kuroda
昨年10~12月期のGDPでは、輸出はプラスですが、輸入が相当伸びた結果、外需はマイナスとなっています。その輸入の伸びには内需が強いこともありますが、一部駆け込みの影響も入っているかもしれませんので、先行き駆け込みの反動は、輸入にもあり得るということです。駆け込みの部分は剥げ落ちることになりますので、外需がずっと大きなマイナスで続くこともないのではないかと思っています。いずれにせよ、輸出については、米国経済は極めて順調ですし、欧州経済も立ち直ってきていますので、アジアの特にASEAN諸国がどのように動いていくかが注目と思います。
§21Question
2 点伺います。本日、日銀の決定会合の後、日経平均株価が急騰し、400~500 円近い上げで終わっているわけで、決定会合が一つの大きな材料になったということです。決定会合を受けた市場の反応について、総裁のお考えがあったらお聞かせ下さい。2 点目は、経常収支の黒字が急減しており、赤字に転落するのではないかという見方も多いですが、これはあくまでも一時的な現象で、やがて輸出が持ち直してきて黒字基調が拡大していくのかどうか、総裁は、経常収支の黒字の減少自体を懸念されておられるのかどうか、お伺いします。
§22Haruhiko Kuroda
1 点目は、株価の日々の動きについてコメントすることはあまり適当でないと思いますので、お答えを差し控えさせて頂きます。株価の中長期的な動きというのは、やはり基本的には、足許の企業収益、それから今後の企業収益の動向で決まってくるものだと思っています。確かに、短期的には様々な要因で動きますので、今年に入って、新興国、資源国の通貨・株価の動きから、先進国の通貨・株価にも一定の影響が出たように、色々な動きがあると思いますが、基本的には、企業収益が中長期的な株価の一番大きな決定要因だろうと思っています。ちなみに、日本企業の収益は大幅に改善していますし、今後も改善の動向が続くと思います。そういった意味から言うと、株価が上がってもおかしくはないのですが、それはあくまでもトレンドの話であり、その時々の株価の変動については、色々な要素がありますので、コメントは差し控えさせて頂きます。2 点目の経常収支については、ご指摘のように、このところ黒字幅が縮小していますが、その主な理由は、貿易収支が大幅な赤字になり、それが拡大しているためです。この間、所得収支は引き続き黒字であり、黒字幅は拡大しています。従って、当面の経常収支の動向という面では、貿易収支がどうなるかということに尽きると思います。
§23Haruhiko Kuroda
今後、海外経済の回復やこれまでの為替相場の動きを背景にして、輸出が緩やかに増加していき、それに伴って貿易収支も緩やかに改善していくと思われますので、経常収支はこのところずっと黒字幅が縮小してきましたが、今申し上げたように貿易収支の赤字幅が縮小していけば、経常収支の状況も改善していくだろうと思っています。従って、特に経常収支について何か懸念を持っているということはありません。
§24Question
月毎の国債の買入れ方針についてお伺いします。国債の残高が年間に50 兆円程度増えるペースで買い増していく、月毎に緩和の度合いが強まっていくということですが、昨年の 5月30日に、毎月7 兆円強程度の国債を買っていくということをおっしゃっています。もちろん柔軟にやっていくということは書いてあるのですが、今年単純に計算すると、平均で大体 6.5 兆円の月毎の買入れで、大体 50 兆円の残高というのは達成されるとみられています。そこで先月国債買入れは 7 兆円に達しなかったわけです。改めて日銀の月毎の国債の買入れの方針について、総裁から教えて下さい。
§25Haruhiko Kuroda
今質問された方自身がおっしゃったように、「量的・質的金融緩和」のもとで、長期国債を年間約 50 兆円に相当するペースで保有残高が増えていくように買い入れていくということです。これは、保有残高の増加ですから、毎月、ネットで国債を増加させていくということです。今触れられた、毎月のグロスの買入れ額については、金融市場の動向などを踏まえて、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、弾力的に運用しています。実際、昨年のグロスの買入れ額をみますと、月によって 6~8 兆円といった程度で幅があります。今後も 6~8 兆円程度を基本としつつ、市場動向を踏まえて弾力的に運用していく方針です。従って、「量的・質的金融緩和」のもとで長期国債の保有残高を増やしていくという政策には、全く変化がありません。
§26Question
駆け込み需要について、例えば 1月の新車販売などをみると、前年比で 3 割とか、かなり大きなオーダーで増えていますが、顕在化している駆け込み需要は大体想定内の規模でしょうか。それとも相当上回っているとすれば、それは 4月以降どのようなインパクトがあるのか教えて下さい。
§27Haruhiko Kuroda
どれだけが駆け込みかというのは、駆け込みがない場合の新車販売が具体的に想定されないとはっきりしないわけです。ご指摘のように 1月の新車販売は、トレンドというか、色々なところから想定される数字よりもかなり多いのだろうと思います。そういう意味では、おそらく駆け込みの要素が含まれているだろうと思います。ただ、具体的にどのくらいが駆け込みかということは分かりません。基本的に所得あるいは雇用の状況について、将来が非常に暗い、所得が増えないとみると、駆け込みも何も、そもそも新車をそんなに買わないことになってしまいます。1月の数字はおそらく駆け込みで相当上振れしているとは思うのですが、駆け込みがなくても、そこそこ堅調な新車の売れ行きというのが底流にあるのではないかとも思われます。具体的に、どの程度が駆け込みで、どれが駆け込みでないかというのは、蓋を開けてみないと分かりません。自動車あるいは一部の家電製品に駆け込みの要素が含まれていることは確かだと思いますが、量的にどれぐらいかと申し上げるのは、なかなか難しいと思います。
§28Question
2 点伺います。まず、前回の決定会合のステートメントのリスク要因のところで日本経済を取り巻くリスクについて多少上向きの判断をされた後に、米国の金融緩和縮小をきっかけにして、かなりマーケットが荒れました。今日の総裁のご説明でも中国なり米国なりASEAN 等については前向きになっているという話がありましたが、最近問題になっているフラジャイル・ファイブと言われる国々については、米国の金融緩和縮小の影響が相当出るのではないかという懸念が拡がっていると思います。その点について、ある程度長引くとお考えなのか、それとも一時的なものですぐに戻ると思われているのでしょうか。次に、今回の貸出支援資金供給等の 2 倍について、2 というところは、昨年の「量的・質的金融緩和」導入の時と同じように分かり易さを意識されたのでしょうか。
§29Haruhiko Kuroda
1 点目について、まず、米国の資産買入れプログラムが少しずつ縮小していくことの影響がどのように及ぶかですが、何が原因で、何が原因でないか、というのはなかなか言い難いと思います。前回の決定会合以降の状況でみると、一部の新興国・資源国の通貨や株がかなり売られたことは事実です。その後、そうした通貨や株も一部戻っているところもありますし、また、アジアの多くの新興国はそもそもそうした影響をほとんど受けていないので、一概には何とも言い難いということがあります。それから、影響を受けた一部の新興国・資源国も、それぞれの経常赤字や財政赤字、インフレ状況などに対応して金融政策やその他の対応策を打ってきており、それらを含めると今後もまた同じようなことが起こるとも言えないと思います。他方でこういうことが起こったということは、そういうリスクはあり得るということを示したわけですので、十分によくみていく必要があると思います。特に、構造的な問題を抱えた新興国・資源国については、その市場の変動というリスクを考えていく必要があると思っています。ただ、全体として、前回の決定会合でみた海外経済の動向についての基本シナリオが変わったということはないと思います。次に、貸出増加支援資金供給あるいは成長基盤強化支援資金供給について、前者は、貸付限度額を金融機関の貸出増加額の 2 倍相当額にしました。
§30Haruhiko Kuroda
従来は、貸出増加額相当額でしたが、それを倍にしました。それから成長基盤強化支援資金供給については、総枠を 3 兆 5 千億円から 7 兆円に倍増したということで、それぞれ 2 倍にしました。先程申し上げたように、それぞれの 2 倍にした根拠は、この制度の仕組みそのものに沿って若干違いがあります。貸出増加支援資金供給の方は、もともと総枠が青天井になっておりますので、むしろ、貸出増加1に対して2の貸付を日本銀行が行うことによって、さらには、貸付金利を 4年固定 0.1%とすることによって、貸出を増加するインセンティブを非常に強化することです。他方、成長基盤強化支援資金供給の方は、先程申し上げたように、3兆 5 千億円の総枠がほとんど消化されており、しかも、一部の銀行について 1行あたりの上限に来ていることがありますので、そういった限定要因を取り払うという意味で、総枠を倍にし、1 行あたりの上限を大幅に引き上げたということです。いずれも分かり易くという意味はあると思いますが、別に 2.5 倍にするとか 1.5 倍にするとか、そういう意味ではなくて、まさに貸出増加支援資金供給については貸出増加額の倍まで貸付け、成長基盤強化支援資金供給については従来の総枠を倍にするということです。
§31Haruhiko Kuroda
それぞれに倍にする理由があり、1年間延長するに際して大幅に拡充し、金融機関のより積極的な取組みを促し、また、企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すのに必要な措置であると考えています。以上