森本審議委員記者会見(2014年2月20日)要旨
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§1Question
2 点質問させて頂きます。まず、今回の金融経済懇談会の印象を教えて下さい。また、和歌山県の景気の先行きについてどういった捉え方をされているのか教えて下さい。
§2Yoshihisa Morimoto
1 点目の本日の金融経済懇談会の印象ですが、本日の懇談会では、和歌山県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話や、本行の金融政策運営に関する率直なご意見・要望を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で頂いたご意見・ご要望は多岐にわたりますので、特に印象付けられたことを整理して申し上げたいと思います。第 1 に、当地の景気は、個人消費にはやや弱さが残るものの、公共投資の下支えなどもあって、一進一退ではありますが、緩やかに回復しているとのご指摘が聞かれました。企業の業況感についても、なお業種毎のばらつきはみられるものの、改善の動きが徐々に広がってきているとのことでした。第 2 に、為替円安等に伴う原燃料価格の高騰や、労働需給の逼迫による人件費増加などのコストアップが、収益を圧迫しているとのお話もありました。私どもとしては、当地においても景気は堅調さを増しており、これらの懸念を乗り越えていくモメンタムは強まっているとみていますが、今後も引き続き、景気の情勢を注意深くみていきたいと考えています。
§3Yoshihisa Morimoto
第 3 に、本年7月には「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録10周年を迎えるほか、来年には「高野山開創1200年」、「紀の国わかやま国体・障害者スポーツ大会」と、当面、当地への誘客イベントが続くため、観光客の増加が期待できるとの明るいお話があり、また、主要道路網の整備もつれて進んでいるとのことでした。さらに、産業活性化に向けて産官学が一体となった取組みを進めておられるほか、商店街のリノベーションなど商業地の活性化に向けた取組みも進めておられました。こうした取組みが、当地の観光振興や市街地の活性化、企業誘致に生かされていくことを期待したいと思っています。私どもとしては、本日頂戴したご意見等も踏まえながら、引き続き、当地経済の持続的成長の実現、金融システムの安定確保など、和歌山県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくよう、しっかりとサポートして参りたいと考えています。2 点目の和歌山県経済の先行きについてというご質問ですが、現状も併せて簡単にお話しさせて頂ければと思います。和歌山県の景気は、緩やかに回復していると判断しています。特に内需が堅調だと思います。消費は、百貨店の一部で大阪市中心部への顧客の流出がみられているようですが、乗用車販売や外食など、総じて好調です。住宅投資も、前年を大きく上回っています。
§4Yoshihisa Morimoto
この間、「近畿自動車道紀勢線」などの建設が進むなど、公共投資は高水準で推移しています。こうした需要動向の下で、有効求人倍率が上昇するなど労働需給は改善しており、雇用者所得も増加しています。また、当地の生産も、主力産業である「鉄鋼」や「化学」といった素材関連を中心に、昨年以降、持ち直しているところです。このように、和歌山県経済は、緩やかに回復しているとは言えますが、当地は中小企業の割合が高く、その中には依然として業況の厳しい先もあるとみられるため、その点は注意してみていく必要があると考えています。こうした現状から、当地経済の先行き・将来性について申し上げると、当地は、素材関連の製造業が多く集積しているほか、農林水産業や観光業に強みがあります。具体的にみると、農林水産業では、梅やみかんといった果樹のほか、マグロやクエなどの養殖に高い技術力を有しておられます。観光業でも、パンダなどで人気の動物園・水族館や、「紀伊山地の霊場と参詣道」には、国内外から多くの観光客が訪れているようです。先行きも、「和歌山県長期総合計画」の下で、これら基幹産業の収益性強化や各種インフラの整備を図りながら、当地の競争力に一段と磨きをかけて、国内外の需要をこれまで以上に取り込み、和歌山県経済の持続的な成長につながっていくことを期待しています。
§5Yoshihisa Morimoto
日本銀行としても、「量的・質的金融緩和」や、今回、拡充・延長した「貸出増加支援資金供給」等の制度を通じて、当地の皆様の前向きな取組みをしっかり後押ししていきたいと考えています。
§6Question
講演で、上下双方向のリスクを点検されるとおっしゃっていますが、森本委員からみられて、現状、上下双方向のリスクのバランスがどうなっているか、お伺いします。今日、1月の輸出の統計が出ましたが、やはり引き続き弱い数字でした。日銀は、先行き海外経済が持ち直して緩やかに増加するというシナリオを持っていると思いますが、昨年の 4月から輸出は回復する回復すると言い続けていて、なかなか実現していないと思います。加えて、最近は、景気ウォッチャーや消費動向調査などのマインドのデータや、株も今日、結構下がっています。このように、輸出と消費の面からみると、下振れの方が大きいのではないかと思いますが、見解をお伺いします。
§7Yoshihisa Morimoto
かねて申し上げている通り、我が国の経済は、緩やかに回復を続けており、生産・所得・支出の好循環が維持される下で、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていると思っています。その上で、上下双方向のリスク要因ということですが、まず内需については、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費は堅調に推移しています。設備投資についても、これは10~12月のGDP速報で確認されたように、プラスの伸びを示しています。機械受注の動き等、心配な面はありますが、これは月々の振れが大きい指標ですし、均してみれば 3 四半期連続で伸びてきています。更新需要は相当積み上がっていますので、先行きに関する色々な調査によっても、堅調な計画が立てられており、設備投資は、企業収益が改善する下で、堅調な動きをするのではないかと思っています。このほか、住宅投資もご承知の通り増加傾向ですし、公共投資も、色々な経済対策によって、高水準の動きになっています。このように、内需は、足許、堅調な動きとなっています。一方、外需の方は、以前から「内需はやや強め、外需はやや弱め」と申し上げていました。
§8Yoshihisa Morimoto
10~12月の輸出は 1.1%とプラスになってはいましたが、製造拠点の海外移転の問題や、生産が、このところ堅調な内需に振り向けられている面があったり、また、基本的には、日本との関係が深いASEAN等で少し弱い動きがみられるということで、ご指摘の通り、輸出については勢いを欠く状況が続いています。ただ、これについても、先進国を中心に先行き緩やかな回復が期待できますので、つれてこういった新興国も徐々に回復テンポを強めていくのではないかと思っています。従って、外需はやや弱めではありますが、そうした状況の中で、トータルとしては、私どもが色々と申し上げているようなリスク要因が顕在化してきている状況ではないと判断しています。
§9Question
リーマンショック以降、世界経済は新興国を中心に成長してきましたが、今年以降は先進国が中心となって引っ張っていくことが見込まれています。こうしたバトンタッチはうまくいくのか、また、それはいつ頃とお考えでしょうか。その際に、新興国を最大のリスク要因として捉えていらっしゃるか、お聞かせ下さい。
§10Yoshihisa Morimoto
リーマンショック以降、中国の 4 兆元の投資が大きな牽引力となり、世界経済を引っ張ってきた面があります。その後、米国においても色々な対策がとられ、緩やかな回復傾向になっていますし、ユーロ圏についても、色々マイナス要因はありましたが、このところ 3 四半期連続でプラスの伸びになっており、家計や企業のマインド指標も改善されてきています。一方、牽引してきた中国についても、一時の高い伸びはありませんが、中国当局は、構造調整と成長を両立させることを絶えず発信しています。何より、堅調な内需に支えられていますし、また、輸出についてもこのところ回復傾向がみられるため、中国は、7%台半ばの安定した成長を続けており、今後もそのように見込まれると思います。そうした中で、米国の、いわゆるテーパリングが意識される下で、経常収支赤字や財政収支赤字、インフレ等、構造的な問題を抱えたいわゆる「脆弱な」新興国において、米中の一部弱めの指標に反応して、通貨や株で色々変化がありました。確かに、新興国のリスクが指摘されていますが、2014年のIMFの先進国の成長見通しが上方修正されているように、米国は、財政の下押し要因が剥げてくるほか、緩和的な金融環境が継続される状況の中で、堅調な民需を背景に、これからも堅調な回復が続くという見通しが、大体コンセンサスを得た見方と考えています。
§11Yoshihisa Morimoto
また、ユーロ圏についても、2014年は一定の回復が見込まれる数字になっています。新興国の中でも、中国は、依然安定した成長を示すだろうと考えています。これまで新興国が世界経済を牽引してきた流れが、先進国にうまくバトンタッチされるかというご質問に対しては、牽引役の中国が力を失っていないという状況の下で、構造的な脆弱性を抱えた一部の新興国も、リスク要因が指摘されているものの、先進国の立ち直りとともに徐々に回復していくとみているため、うまくバトンタッチできていくと考えています。
§12Question
先日の決定会合で拡充・延長が決定された貸出支援制度について 2 点お伺いします。1 点目は、拡充・延長したところで、貸出は実際に増えるのかということです。地銀などからは、融資の元手となる資金は既に十分にあって、貸出先をどこにするかを悩んでいるとの声も聞かれています。2 点目は、もともと 3月末が期限でしたので、今回の拡充・延長を決定するタイミングは、3月決定会合でもよかったと思いますが、なぜ 2月の決定会合で決定したのか、その背景について教えて下さい。
§13Yoshihisa Morimoto
1 点目ですが、前回の決定会合で、これからの金融機関の前向きな貸出行動や成長力強化の取組みを支援したいということから、貸出増加支援資金供給等の思い切った拡充・延長を行いました。貸出が十分に伸びるのかという点については、ご承知の通り、貸出支援基金には、貸出増加支援と成長基盤強化支援がある訳ですが、まず成長基盤強化については、本則、ABL特則、小口特則、ドル特則がある中で、一番大きなウエイトを占める本則は、これまで3 兆 5,000 億円の枠に対して 3 兆 2,000 億円強の利用があり、個別行では既に頭打ちになっているという状況があります。そこで、個別行の上限については、その制約を思い切って取り除くため、現行の 1,500 億円という上限を 1 兆円まで拡大して、実質的に制約のない下で積極的な貸出行動を取って頂こうと思った訳です。今まで大手行の利用は多かった一方で、地銀の方では比較的利用が少なかった訳ですが、今回の措置で大手行においてはそういった制約が取れる訳であり、地銀においても、総枠が拡大されたことにより、前向きに取り組んでいけるのではないかと期待しています。
§14Yoshihisa Morimoto
また、貸出増加支援についても、大手行の利用は多い一方、地銀の利用は、地方における資金需要が今一つということもあって、今一つ伸びない状況で、現在の残高も 5 兆円ですが、今回の拡充により、今の制度の利用率と同程度ということを前提にすると、来年6月の期限到来時には 30 兆円程度の残高になる見通しです。いずれの制度も、貸出枠の増加と共に、4年間固定で 0.1%という 2つの条件があり、金利リスクを取りやすくなることから、金融機関の貸出増加や、成長力強化の取組みに向けた大きなインセンティブになると思われます。そうした中で、十分な資金需要があるのかということですが、金融機関の貸出は、2年以上にわたって連続で伸びているほか、足許も+2%台の伸びになっています。マネーストックのM2も+4%台の伸びになっており、徐々に貸出需要は増えてきています。今回、制度を拡充・延長したという日本銀行の強い思いを込めたメッセージ効果とともに、先ほど申し上げたインセンティブが、金融機関にとって積極的な行動をとる後押しになるのではないかと考えており、私どもとしては金融緩和の効果・波及ルートが強化されることを期待しています。
§15Yoshihisa Morimoto
次に、3月末に新規貸出の受付期限が来る中での、今回のタイミングでの拡充・延長ということですが、2月の決定会合では、まず大きな制度変更の方針を決定し、来月に具体的手順を基本要領で定めるという手順を採りました。これは、現行制度の受付期限である 3月末を前に、確りとした手順を踏んだという意味があります。もう一つは、こうした思い切った措置をできるだけ早く実施して、金融緩和の効果波及メカニズムを、より強化していきたいという思いがあります。また、貸出増加支援については、現行制度は 3月実行分で止めて、6月実行分は新しい制度に踏み込んでいきたいという思いがあります。そういった面で、手続的には、2月の決定会合のこのタイミングで決定しておくのが適切であると判断しました。
§16Question
講演の中で、今後の金融政策を判断していく上では、消費税率の引き上げの駆け込みとその反動を均した上で、前年比+2%の物価安定の実現に向けた道筋を辿っていくかがポイントになる、と指摘しておられましたが、影響を均してみる必要があるということは、今後の金融政策を判断する上で、4~6月が中心となるであろう反動減を見極めた上で、今後の政策判断を行うということになるのでしょうか。逆に言うと、増税を見据えた予防的な対応は必要ないという意味合いでよろしいのでしょうか。
§17Yoshihisa Morimoto
講演の中でそうしたことを発言させて頂きました。申し上げるまでもなく、1997年の増税時には駆込みと反動減があのような形で発生した訳であり、今回も、足許では、既に自動車や一部家電等の耐久消費財への駆込みがみられており、1~3月は更に耐久消費財以外の衣料等を含めて駆込みが想定されます。1997年の例でみても、1~3月、4~6月の駆込みと反動について考えていかなければならない訳ですが、我々の展望レポートと中間評価の想定にあたっても、この辺の状況や見通しを頭に入れて、判断や見通しを作成しています。そういう意味で、基調判断をする上で、均してみるということですが、実績を見てから判断するのかという点については、私どもとしてはそのように考えている訳ではありません。「量的・質的金融緩和」を着実に進めるに当たって、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して、必要な調整を行うと申し上げているのは、何らかのリスク要因の顕現化によって、見通しに変化が生じて必要ならば調整を行う、ということです。この「見通しに変化が生じて」という点は、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかというところを確りと見極めてから、私どもの対応方針を決めていこうということです。
§18Yoshihisa Morimoto
これは実績を確り見てからということに限っている訳ではなく、毎月の決定会合、展望レポート、中間評価の段階で経済・物価情勢を確りと点検して議論して、足許と先行きの状況を見通して、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかという点を毎回見極めていきながら、方針を決定していくという考え方です。
§19Question
今のお話の中でも、上下双方向のリスクについてみていかなければならないということで、市場では日銀の追加緩和に対する期待というのがまだ根強い訳ですが、委員自身はどういったときに追加緩和が必要だと思うかということを教えて下さい。
§20Yoshihisa Morimoto
追加緩和が必要な時期について、今一概に申し上げることは非常に難しいと思います。今申し上げたように、上下双方向のリスク要因をしっかりチェックして必要な調整を行うということですが、それは、毎回の決定会合等で、その時々の色々な経済・物価情勢をしっかり点検し、議論するということです。先程も申し上げたように、今のところ経済・物価情勢は、私どもが考えているような順調なパスを辿っていますので、今どういう条件でどういう時にと申し上げるようなタイミングではないということでして、その時々の経済・物価情勢をしっかりチェックして、議論をして、その中で決めていくということが一番大事なことではないかと思っています。
§21Question
ベア、賃上げに関してですが、トヨタ自動車がベアの実施方針を固めたという報道がありましたが、こうした賃上げの動きについて、改めてどのようにみていらっしゃいますでしょうか。
§22Yoshihisa Morimoto
トヨタ自動車の個別のケースについては、承知していませんし、春闘の交渉はこれからということになるのではないかと思います。その上で、ベアも含めた賃金の見通しについて、私自身がどう考えているのかということですが、これについては、雇用・所得環境ということで、今日も金融経済懇談会の中で、一つの大きな論点になると申し上げました。まず雇用面については、我が国の経済が基調的に潜在成長率を上回る成長を続けていく中で、労働需給のタイト化が進み、失業率や求人倍率も改善傾向を辿っていくと見込んでいます。そうした下で、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくのではないかと思っています。所定外給与や特別給与も、経済の改善に伴って当然改善が起こってくる訳で、パートの時給も足許上がってきていますが、これもはっきり上昇していくと思います。そういった状況に加えて、業績の改善やインフレ予想の高まりを反映して、ベースアップを含めた所定内給与も緩やかに上昇していくのではないかと考えています。ご承知の通り、経済の好循環実現に向けた政労使の取組みも色々あった訳であり、そうした動きも賃金上昇に向けた動きを後押ししていくのではないかと考えています。これから本格化する春闘の状況をしっかり注視していきたいと考えています。以上