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Bank of JapanPress conferenceMar 19, 2014Takahide Kiuchi, Board Member

木内審議委員記者会見(2014年3月19日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会で寄せられた意見や印象に残った点など、全体的な感想も含めて教えて下さい。また、滋賀県の景気の現状と先行きについての見解もお聞かせ下さい。

§2Takahide Kiuchi

1 点目ですが、本日の懇談会では、滋賀県の各界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話、それから日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望などを数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたと思っています。この場をお借りして、御礼を申し上げたいと思います。頂いた意見は多岐にわたりますので、整理して何点か申し上げたいと思います。第1 に、全国と同様、当地の景気は緩やかに回復していますが、企業の規模や業種によって、なおばらつきも尐なくないというご指摘が多く聞かれました。業種で言うと、建設・不動産、再生エネルギー分野などは好調である一方、当地でウェイトが比較的高い製造業では、海外への生産移管などの動きも引き続きみられる中で、マクロ環境の改善ほどにはまだ需給の逼迫感が出ていないというご意見もありました。第2 に、濃淡はありますが、全体に共通する話として、多くの方が指摘されたのが、価格競争が引き続き厳しい中、為替円安などによる原材料価格の高騰や労働需給の逼迫による人件費の増加などのコストアップが十分に価格に転嫁できない環境にあり、その結果、特に中小企業では、収益面が圧迫されているということです。また、これは建設業が中心だと思いますが、人手不足がボトルネックになっているといったお話もありました。

§3Takahide Kiuchi

小売業については、足許家電製品などを中心に駆け込み需要がみられるが、4月以降の反動の影響について注視したいとの慎重な意見も聞かれました。第3 に、こうした中で、滋賀県経済の持続的な成長ならびに地域の活性化を図っていくための中期的な取り組みが、官民一体となって進められている印象を持ちました。例えば、当地でも女性の労働力の活用に向けて自治体や企業レベルで色々な取り組みが行われています。また、創業やものづくりの取り組みの積極化を映じて、最近はこれらを促進・支援する補助金の利用が増えているというお話もありました。海外展開という面で言うと、従来の製造業に止まらず、サービス業、小売業でもアジア進出がみられ始めています。当地が強みとする環境ビジネスについても、最近は海外向けの発信を積極化していると伺いました。更に長浜などでは、観光資源を活かした地域興しに注力されているというお話もありました。今後もこうした官民一体となった各種の取り組みが、より広がりを持って成果を上げていき、地域の発展につながっていくことを期待したいと思います。

§4Takahide Kiuchi

私どもとしましても、本日頂きましたご意見を踏まえつつ、京都支店を通じて滋賀県内の金融経済情勢についてきめ細かくモニタリングを続けるとともに、当地経済の持続的成長の実現、金融システムの安定確保など、滋賀県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくよう、しっかりとサポートして参りたいと考えております。2 点目の当地の景気の現状と先行きですが、現状についてみると、京都支店が判断していますように、緩やかに回復していると考えています。全国と同様ですが、特に内需が堅調で、住宅投資、公共投資も前年を上回っています。こうした中で、有効求人倍率が上昇するなど労働需給が着実に改善しており、雇用者所得も下げ止まっています。また、当地の生産も、ばらつきはありますが、主力産業の一般機械や電気機械といった機械関連を中心に、緩やかに増加しています。当地経済の先行きについてですが、滋賀県は、周辺主要都市へのアクセスが非常に良いということもあって、全国でも数尐ない人口増加県となっています。また、グローバルに展開する各種製造業の工場が集積し、県民総生産に占める第 2 次産業の割合は、4 割程度と全国でトップクラスの高さです。更に琵琶湖をはじめとした豊かな自然、歴史的文化遺産など観光資源も豊富で、潜在的な成長力は高いと思われます。

§5Takahide Kiuchi

こうした当地の有する特徴を活かすべく、滋賀県をはじめ各方面が色々な立場で、様々な施策を打ち出していることを、大変心強く感じています。こうした官民一体となった取り組みにより、滋賀県経済の持続的な成長がさらに促されていくことを期待しています。

§6Question

本日の講演で、「将来的には 2%という『物価安定の目標』の水準を再検討する余地もある」と述べられています。日本経済の実力がすぐに上がるとは考え難いように思いますが、現状ではどの程度のインフレ率であれば、日本経済の実力に見合ったものとお考えでしょうか。これに関連して、日本銀行はピンポイントで 2%の達成を目指しているわけではないと思いますので、ある程度のレンジを示した方が分かりやすいのではないかと思いますが、如何でしょうか。また、消費者物価指数の上方バイアスを考えると、1%ポイント程度はのり代として考えなければならないのでしょうか。

§7Takahide Kiuchi

どのぐらいの水準が望ましいかということですが、講演テキストにも書いてあるように、中長期的な物価安定の水準は、潜在成長率や労働生産性上昇率など、主として経済の実力で決定されるものだと思います。金融政策は、基本的には需要サイドに働きかける政策であり、日本経済の実力が十分発揮されるような環境を作り出すことがその役割です。一方で、日本経済の実力を押し上げる、例えば、競争力を高めるとか、潜在成長率を高めるということには、基本的には大きくは貢献できません。そうした点からすると、望ましい物価安定の状況というのは、日本銀行が決めるというよりは、経済で決まるということだと思います。物価というのは、経済の体温だと言われますが、「物価の安定」というのは、いわば基礎体温のようなもので、それぞれの経済の実力によって各国別に水準が決まっていると私自身は思っています。現状で日本がどの水準にあるかということをピタリと言い当てることはできませんが、各種のアンケート調査、あるいは市場に織り込まれている中長期の物価安定、例えば5年、10年のインフレ率の予想値や期待値というものから、目先の消費税の影響等を取り除いてみると、概ね 1%か 1%強程度だと思います。厳密な答えがあるわけではありませんが、現状で言えば、これぐらいが実力に合った物価安定の状況ではないかと思います。

§8Takahide Kiuchi

しかしながら、私が 2%の「物価安定の目標」を中長期の目標とすべきだと提案している理由は、物価安定の水準は変わり得るためです。政府の成長戦略がさらに進み、その効果が現れてくることや、企業や家計がそれぞれ努力していくことで経済の効率が高まっていけば、その水準は上がってくると思います。従って、それを見極めたうえで、将来、必要であれば見直すことができるのではないかと思っています。現状では、 2%という水準は高いと思っています。それから、「物価安定の目標」というのは、インフレ率を 2%に誘導することではなく、持続的に 2%程度を達成するということです。物価安定というのは、本来は抽象的な概念ですが、それを消費者物価上昇率に置き直せば、2%程度ということです。従って、例えば急激な円安とか、景気の過熱、あるいはエネルギー価格の上昇によって、一時的に消費者物価が 2%に達したら「物価安定の目標」の達成かというと、そういうことではありません。経済が比較的安定した状態で 2%に達している、2%が維持されるような経済環境が達成できているというのが、2%の「物価安定の目標」を達成している状況だと思っています。

§9Takahide Kiuchi

消費者物価指数をレンジで示すということは、実際の物価の動きを非常に注視して、それを誘導しようという考え方に基づいていると思いますが、そうした考え方と「物価安定の目標」の達成の考え方とは、やや相容れないような感じがします。私は、「物価安定の目標」はレンジではなく、やはり 2%程度ということだと思います。ただし、2%程度ということは、実際のインフレ率を2%に誘導していくということと必ずしも同じではありません。最後に、消費者物価指数の上方バイアスについてですが、従来から、望ましい物価安定の水準を検討するときには、そうしたバイアスや、もう一度デフレに陥ってしまうことのリスクを踏まえたのり代などを考慮しており、2012年に決定した「中長期的な物価安定の目途」でも、そうした点を考えたうえで 1%とした経緯があります。従って、例えば 1%という水準が妥当だとしても、その中にはご指摘のような統計のバイアスやのり代といった考え方が既に入っており、それを踏まえたうえでもっと高い水準でなければならないということではないと思っています。

§10Question

2 点教えて下さい。1 点目は、日本銀行の経済・物価見通しについて、下振れリスクの方をより警戒しているとのことですが、その一方で、追加緩和に関しては慎重姿勢を示されています。仮に今後、経済・物価見通しが下振れた場合、追加緩和に慎重であるならば、どういう対応をすべきだと考えているのでしょうか。2 点目は、仮に追加緩和を行った場合、プラス面の効果をどのように考えているのでしょうか、例えば、昨年4月の「量的・質的金融緩和」を上回るような効果が期待できるのでしょうか。黒田総裁は追加緩和に限界はないと言われていますが、委員自身の考えをお伺いします。

§11Takahide Kiuchi

1 点目ですが、日本銀行が示す経済・物価見通しのシナリオに対して、上振れ・下振れのリスクが出てきた際に、政策を調整していくというのは、比較的オーソドックスな金融政策のあり方だと思います。しかし、私は、今実施している「量的・質的金融緩和」というのは、そうした伝統的な金融政策のアプローチではない、つまり、戦力の逐次投入はしないとの考えの下、最大限に積極策を実施したということだと思っています。そうした考え方に基づくと、見通しが下振れたので追加緩和をしなくてはならない、ということではないと思います。そもそも、私は「量的・質的金融緩和」に賛成していますが、それと 2%の「物価安定の目標」とを結び付けてはいないため、2年程度で 2%の目標を達成するのが難しくなったら追加緩和します、という考え方を私自身はしていません。2 点目の追加緩和の効果についてですが、どういう政策を採るかにもよりますが、1 回目の政策を上回るような効果を期待するのは、やや難しい感じがします。例えば、長期国債の買取りの効果を言えば、私どもは基本的にはストックビュー、つまりどれだけの国債を買い取っているのか、これによって政策効果が決まってくるという考え方をしています。それに従いますと、国債を買い続けている限りは、追加の緩和効果が出ているという考えになります。

§12Takahide Kiuchi

ただ、最初に国債買い入れ額を決めた時に、金融市場は、この政策が例えば 2年続くということで、それによる効果を価格に織り込んだわけです。私どものストックビューの考え方に従えば、同じように国債を買い続けている限りは追加効果が出てくるわけですが、実際は、政策を実施した最初にかなり大きな効果が出てきたわけです。これに対して、どれくらいの規模で実施するかにもよりますが、追加策でこれを上回る効果を上げるのは非常に難しいと思います。また、一方で、追加措置には副作用が伴うことが考えられます。例えば、長期国債の買増しであれば、色々な副作用があり得ます。金融市場の機能を損なう、それを通じて金融機関の財務体質を脆弱にさせるということが考えられます。また、財政ファイナンスのリスクを高めてしまうとか、将来、金融政策を正常化する時に大きな問題が起こるかもしれないとか、金融市場を安定化させながら円滑な正常化を図ることがより難しくなってくるといった副作用を考えると、追加緩和に見合った副作用を正当化するようなイベントというのは、余程大きなショックということになると思います。私自身は、追加緩和を正当化するような条件というのは、非常にハードルが高いと感じています。

§13Question

将来的に「物価安定の目標」を見直す余地があるかもしれないということですが、日本銀行は「物価安定の目標」を2年程度で達成すると言っていますので、年内にも見直す時期がくるとお考えなのでしょうか。「将来」とは、具体的にどういうイメージを持たれているのかお伺いします。

§14Takahide Kiuchi

「将来」は、「将来」としか申し上げられません。我々が目指している「物価安定の目標」の達成というのは、消費者物価指数が 2%になるということではありませんし、私自身は「物価安定の目標」について中長期の目標にする方が良いと提案していますので、実際の消費者物価指数が 2年程度で 2%を達成するのが難しいので目標を変えましょうという考えではありません。もともと妥当な水準がどうなのか、例えば高すぎる目標であった場合、そこに邁進することで、「量的・質的金融緩和」が非常に長期化するとか、あるいは追加措置が採られることになって、副作用が非常に積み上がってしまうという可能性があるので、目標自体をもう尐し柔軟に捉えましょうというのが、私の考えの背景です。従って、実際の消費者物価指数が直ぐには 2%に近づかないから目標を変えるというのではなくて、「物価安定の目標」の妥当な水準がどのぐらいかということが重要と考えています。その水準は、繰り返しになりますが、経済の実力で決まってきます。政府の政策や企業の努力が経済の実力に影響を与えますので、そこら辺をもう尐し見極めたうえで、例えば中長期のインフレ期待の数値なども参考にしながら、もし将来、望ましい数字が 2%ではないという判断になるのであれば、見直す必要があるということですが、そのタイミングについては申し上げられません。

§15Question

先程の追加緩和に関する質問に対して、委員は、昨年4月の「量的・質的金融緩和」の効果を上回ることは、どのくらいの規模で実施するかにもよるが、非常に難しいと言われました。その規模についてですが、先日、内閣官房参与の浜田宏一エール大学名誉教授は、インタビューで「日銀は保有する長期国債を年間 50 兆円増やすペースで買い入れているが、これを 100 兆円に倍増させることもできないことではなく、タブーにならない」と述べていますが、この点について考えをお聞かせ下さい。

§16Takahide Kiuchi

政策効果がどの程度あるかということだけではなくて、副作用がどの程度になるか、それらをネットでみた場合、日本経済にとってプラスであるかどうか、ということを考えなければならないと思います。仮に長期国債の買い入れを2 倍にすることが技術的には出来て、その結果として追加の効果があるとしても、追加の副作用が非常に大きくなって追加の効果を上回るようであれば、そうした政策は妥当ではないということになると思います。繰り返しになりますが、効果だけをみて政策を決めるのではなくて、効果と副作用のバランスで判断することを考えると、副作用よりも効果が大きい追加策というのは、なかなか難しいのではないかと思います。例えば、一時的には金融市場の良好な反応などを得て、経済・物価にプラスの影響を与えることができるかもしれませんが、私どもが目指している「物価安定の目標」、さらには「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という最終目標は、もう尐し中長期の概念です。そこまでを踏まえたうえで、効果が副作用を上回る追加策というのは、なかなか選択の余地が小さいというか、難しいのではないかと感じています。

§17Question

2 点お伺いします。1 点目は、経済・物価見通しに対して、下振れリスクをより意識しているということですが、その下振れリスクが起きた場合、追加緩和にはネガティブな側面が多いということであれば、日本銀行は何も動かないということなのでしょうか、それとも、何か別の手立てを考えているのでしょうか。2 点目は、消費税率引き上げの影響は小さいということですが、その根拠というか考え方を教えてください。

§18Takahide Kiuchi

1 点目ですが、「量的・質的金融緩和」というのは、景気の大きくない上振れ・下振れに対して、ファイン・チューニングを行う手段としては適していないと思います。デフレが続く中で、そこから脱却するための大きな手段として「量的・質的金融緩和」を実施したと私は考えています。「量的・質的金融緩和」に私自身が賛成しているのは、3 つのきっかけになるとの考えからです。第1 に、需要面をサポートして需給を改善させて、デフレ状態を脱するということです。第2 に、金融政策では経済の実力になかなか影響を与えられませんが、経済の実力に影響を与える企業・家計の取組みとか、政府の取組みを後押しするきっかけになるということです。第3 に、金利政策という伝統的な政策を取り戻すために実施するということです。「量的・質的金融緩和」が大きなきっかけになって需給ギャップが改善し、物価も 2%であるかどうかはともかく基調的にプラスを続けるということになれば、金利をゼロに据え置いていても、金融緩和の効果が出てくるようになります。そういう形で政策の重点を金利政策に移していくことができれば、ご指摘のように、景気が尐し下振れたときに金利を下げ、景気が尐し上振れたときに金利を上げるというファイン・チューニング的な政策手段をとることができると思いますが、現状ではそういう局面には至っていません。

§19Takahide Kiuchi

「量的・質的金融緩和」は、もっと長い視点で日本経済がデフレから脱するための大きなツールとして実施したということであり、ファイン・チューニング的な政策手段には馴染まないのではないかと思います。ただ、そうした中でも、追加策が必要になるような局面というのは有り得ると思います。追加策でマクロ経済を刺激するというのは簡単ではないと思いますが、例えば、金融システムに不安が生じるような局面では、我々は今のマネタリーベースの目標に拘らずに、一時的には大量に短期資金を供給して、金融システムの安定を確保するといった緊急策も採る余地はあると思いますし、そういう局面では当然実施すべきだと考えています。2 点目の消費税率引き上げについては、経済の基調を変えるほどのインパクトはないと私は思っています。ただ、経済に一時的には大きな影響を与え、攪乱する要因であることは間違いないと思います。また、消費税率引き上げ前の駆け込みとその反動から脱して、経済が本来の正常な、税率引き上げの影響を受けない姿を取り戻すまでには、厳密に言うとかなり長く時間がかかると思います。何年も先の消費を前倒しで行っている人もいるという意味では、すごく時間がかかる話であり、5月の経済指標や 7~9月の成長率をみれば消費増税後の経済の基調が分かるかというと、多分早すぎるのではないかと思います。

§20Takahide Kiuchi

何れにしても、消費税率引き上げの影響によって、現状も税率引き上げ後も経済指標は攪乱されるので、景気の基調判断は難しい状況が続くと思います。そういう中で、景気の基調を判断する指標として重要なのは輸出です。輸出以外の経済指標は、ほぼ税率引き上げの影響を受けるので、その影響を脱した後の日本経済の方向性をみるうえでは、輸出の動きが重要ですが、残念ながら、現在輸出は尐し弱さが目立つ状況だと思います。

§21Question

「量的・質的金融緩和」の副作用についてお伺いします。先程、本日の金融経済懇談会の参加者の方から、円安による原材料価格の高騰について指摘があったと紹介されましたが、これも「量的・質的金融緩和」の副作用として認識しているのでしょうか。また、円相場は最近ボックス圏で動いていますが、110 円/ドルまで進むというような意見も根強くあります。円安がさらに進むということについて、どのようにお考えでしょうか。

§22Takahide Kiuchi

金融政策は、為替市場に間接的な影響は与えると思いますが、私どもは為替市場にターゲットを設けているわけではありませんし、為替の先行きについては、予断を持つことなくみておきたいと思います。私は、物価が過去1年、非常に上がってきた理由としては、為替の影響が大きいと思っています。為替円高が修正されたことによって、もちろん日本経済にプラスの影響は相応に与えたと思いますが、その一方で、コストアップとか生活費が上昇するといったマイナス面もあります。円安がさらに進んだ時に副作用の方が大きくなることは可能性としてはあると思いますが、どの水準が分岐点となるのかはよく分かりません。金融政策を考えるうえでは、バランスの良い経済の改善というのが重要であり、それが「物価安定の目標」を達成するための重要な条件だと思います。現状をみると、必ずしもバランスが良いかどうか分からない部分があります。賃金の上昇ペースは、物価の上昇ペースを依然として下回っています。もちろん、春闘で賃金の上昇ペースは高まることになるとは思いますが、なかなか物価の上昇ペースには追いつきません。円高修正が進み、それが物価の押し上げに効いてインフレ率が上昇し、生活コストも増加するのに対して、賃金の上昇が追いつかないという面は、やはり尐しバランス感を欠いている面があるのではないかと思います。

§23Takahide Kiuchi

今後、消費のペースがやや落ちれば、インフレ率の上昇ペースも落ちて、賃金とインフレ率のアンバランスが尐し緩和される可能性もあり得ますが、これ自体は、経済が全体としてのバランス感を取り戻していく過程であり、むしろ経済は安定感を強めていくのではないかと思います。私自身は、消費者物価指数を短期間で 2%に誘導していくことは、「物価安定の目標」を達成することとは違うと思っています。経済がバランス良く改善しながら、尐し時間をかけて、「物価安定の目標」を無理なく達成していくのが望ましいと思っています。この観点からすると、為替の動きに大きく影響を受けたインフレ率の上昇が、やや突出している感じがあります。尐しインフレ率の上昇ペースが落ち着いてきて、賃金と物価の上昇率のギャップが縮まる形で経済が安定を取り戻すことは決して悪い話ではないと私は思いますが、今後そうした状況が起こり得るかもしれないと思っています。以上