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Bank of JapanPress conferenceMay 21, 2014Haruhiko Kuroda, Governor

総裁定例記者会見(2014年5月21日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の決定会合の決定内容について、ご説明をお願いします。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。わが国の景気ですが、4月入り後、耐久財などの個人消費を中心に駆け込み需要の反動減が現れているものの、設備投資を含め国内需要は、基調としては堅調に推移しています。そのもとで、景気の前向きな循環メカニズムは、雇用・所得環境の明確な改善を伴いながら、しっかりと作用し続けています。従って、景気の総括判断としては、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている」としました。海外経済は、新興国の一部になお緩慢さを残していますが、米欧などの先進国を中心に回復しつつあります。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっています。設備投資は、1~3月期のGDPの設備投資が伸びを高めつつ4 四半期連続の増加を示すなど、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しています。公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっています。個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動がみられていますが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで底堅く推移しています。

§3Haruhiko Kuroda

以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加基調を辿っています。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。企業の資金調達コストは低水準で推移し、企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾向が続いています。そうしたもとで、銀行貸出残高は、中小企業向けも含め緩やかに増加しています。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年12月から 4か月連続で+1.3%となるなど、1%台前半で推移しています。予想物価上昇率は、全体として上昇していると判断されます。わが国経済の先行きについては、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。その後は、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2014年度から 16年度までの見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である 2%程度に達する可能性が高いとみています。リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。

§4Haruhiko Kuroda

金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。

§5Question

本日発表されたステートメントの最後のところで、「『量的・質的金融緩和』は所期の効果を発揮しており」という文言を加えたと同時に、日銀の金融政策運営について、「15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」という文言が外されたわけですが、日銀として、現在の物価情勢というか、日本経済は、デフレではないと考えている、あるいはデフレからもう既に脱却していると考えているとみてよいのか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。

§6Haruhiko Kuroda

「量的・質的金融緩和」の効果については、先般公表した展望レポートでかなり詳しく説明したところですが、所期の効果を発揮していると認識しています。今回の対外公表文は、こうした認識を踏まえたもので、特別なことを申し上げているわけではありません。なお、デフレという言葉は、一般的には「物価が持続的に下落する状態」を示すと理解していますが、その判断にあたっては、背後にある経済の様々な動きと併せて、色々な指標を総合的に点検していく必要があると思っています。いずれにしても、日本銀行としては、「物価安定の目標」は、消費者物価の前年比上昇率で 2%であり、その実現のため強い決意をもって、今後とも「量的・質的金融緩和」を推進していく所存です。

§7Question

先般発表された 1~3月のGDP成長率は、年率+5.9%とかなり高めに出ています。駆け込みがかなり多かったという内容になっていると思いますが、逆に反動の大きさを懸念する声も出ています。日銀としては、これまで示されているように、反動の影響が夏場には減衰するという判断には変わりないのか、それとも反動は多少大きいというようなデータが出てきているのか、その辺のご見解をお願いします。

§8Haruhiko Kuroda

ご指摘のように、1~3月期の実質GDP成長率は、個人消費の駆け込み需要の影響もあって大きく増加し、それに加えて、設備投資も伸びを高めたということがあって、前期比年率+5.9%となったわけです。4~6月期の成長率は、確かに駆け込み需要の反動の影響から、個人消費が落ち込み、全体としてもマイナスになると予想しています。もっとも、雇用・所得環境が明確に改善するもとで、先程申し上げたように個人消費の基調的な底堅さは維持されるとみており、駆け込み需要の反動の影響も、夏場以降は減衰していくという展望レポートの見方に変わりはありません。実際、4月入り後の消費動向については、自動車など駆け込み需要が大きかった耐久財を中心に、反動減がはっきり現れているようですが、企業からは、反動減の大きさは概ね想定の範囲内であり、消費の基調的な底堅さは維持されているという声が多いようです。また、百貨店やスーパーなどの小売業界からは、反動減の程度は徐々に縮小してきているという声も聞かれています。外食や旅行などのサービスは、その性質上、消費税率引き上げの影響は限定的であり、底堅い動きが続いているという声が多いようです。今申し上げたような見方は、4月の景気ウォッチャー調査においても、2~3 か月先の先行き判断DIが、はっきりと改善していることにも現れているように思います。

§9Haruhiko Kuroda

いずれにしても、消費税率引き上げの影響については、今後とも、各種の経済統計だけでなく、支店等を通じたヒアリング情報も含めた様々な利用可能な情報をできる限り集め、活用して、予断をもつことなく丹念に点検していきたいと思っています。

§10Question

金融市場の動向についてお尋ねします。連休明けの株価がアベノミクス始まって以来初めて、前年同日を下回る状況になって、それが足許も続いています。為替も、今日、チャート上の節目を若干上回って円高が進む場面がありました。そういう中で円安・株高というトレンドについて、トレンドとして何か変化が起き始めているのではないかという指摘があると思うのですが、その指摘をどうお考えになりますか。また、そのことが金融政策の運営上リスクとなってくる可能性があるのかどうか、その点をお聞かせ下さい。

§11Haruhiko Kuroda

株式市場の動向については、様々な要因によって毎日、毎週、毎月と、影響を受けるわけであり、何か具体的なことを申し上げるのは避けたいと思います。前々から申し上げている通り、基本的に株価は、企業収益の動向、先行きによって決まってくるところが大きいと思います。日本企業の収益は、2013年度は非常に大きく増加しましたが、 2014年度もそこそこの増加になるとみられており、そういった意味からは、トレンドとしては株高の方向が全く変わったとか、そう言うことは感じていません。為替は、もっと色々な要素によって影響され、特に外国の情勢に影響されますので、なかなか具体的なことは申し上げにくいですが、日本経済は緩やかな回復軌道に乗っておるわけですが、まだ 2%の「物価安定の目標」に向けた道筋は半ばといったところであり、引き続き「量的・質的金融緩和」を継続していくということです。他方で、米国経済を中心に、順調な回復がみられるところでは、金融政策もテーパーオフと言うか、テーパリングオフと言うか、緩和の程度をだんだん縮めていっているわけであり、そういった内外の景気、あるいは金融資本市場の動向を考えると、為替が円高になっていかなければならないという理由はあまりないと思います。金融政策との関係では、どこの国でもそうですが、金融政策は、株価や為替にリンクして考えられているものではありません。

§12Haruhiko Kuroda

基本的に、ほとんどの中央銀行は物価安定目標を定めて、その達成・維持に努力しており、その際には、各種の経済指標を見ていくわけです。その場合に、為替や株のことも経済に対する影響という観点から見ていくことは当然ですが、中央銀行としては、基本的に物価安定を目標にして、様々の経済指標を見ながら運営していくということだと思います。

§13Question

2 点お伺いします。1 点目は、先程も少しお話がありましたが、公表文について、「『量的・質的金融緩和』は、所期の効果を発揮しており」と明記する一方で、「15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」という表現が抜けたことについてです。消費者物価が 1%台前半でずっとプラスで推移している状況も踏まえて、「デフレからの脱却に導くもの」という表現が合わなくなってきているということを捉えての変化なのか、マーケットの一部には、日銀による静かなるデフレ脱却宣言みたいな声もあるようなのですが、今回表現を変えた意味合いをもう少し詳しく教えて下さい。2 点目は、先程、米欧については回復が続いているというお話でした。しかし、一方では米国の長期金利の低迷がずっと続いていると思います。中には米国経済の回復の勢いが弱いのではないかという見方もあるようですが、米国の金利低迷の背景や米国経済の足許、今後についてどのようにご覧になっているかご所見をお伺いします。

§14Haruhiko Kuroda

まず第 1 点については、先程申し上げた通り、展望レポートで相当詳しく議論しましたし、現在の「量的・質的金融緩和」を昨年4月4日に導入して以来 1年強とあって、ご指摘のような事態の流れというものも頭の中にあったことは事実ですが、何かサブスタンスを変えたということでは全くありません。あくまでも 1年1 か月、ないし 2 か月の状況をみて、展望レポートでも 2%の「物価安定の目標」へ向けての道筋を順調に辿るという意味で、所期の効果を発揮していると申し上げたわけで、それと同様な言い方をして、引き続き「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する」という従来通りの言い方を繰り返しました。それから、第 2 点は、ご承知のように米国自体でも色々な議論があるようです。1月から 3月にかけての寒波で経済が影響を受けて、第 1 四半期の米国のGDP成長率はほぼ横ばいくらいになりましたが、その後 3月の後半から、さらに 4月の動向をみると、リバウンドしているというか、強い成長、回復の状況を示していますので、私自身は、米国経済について何か特に心配しなければならないということはないと思っています。

§15Haruhiko Kuroda

もちろん、常にリスクとして考えておく必要はあると思いますが、これまでのところ、強い回復基調が続いており、今後、米国の成長率はさらに加速していくのではないかと思っています。一方で、米国の長期金利が一時 3%台に乗りましたが、今は 2%台半ばくらいに落ち着いている背景については、色々なことがあると思います。FRBの金融政策の進め方について市場が十分消化して、金利が急速に上がっていくことがないということがよく理解されたこともあるのかな、と思います。その他色々内外の金融状況等も影響しているかもしれませんが、私自身は、米国経済はしっかりしていると思っています。

§16Question

雇用・所得環境についてお聞きします。今回の決定会合で、白井委員が雇用・所得環境の改善ペースについて、リスクとして言及する必要があるとの反対を取り下げました。雇用・所得環境について明確に改善していると言われましたが、この辺の認識に変化があったのでしょうか。また、深刻な人手不足が、一部、流通や建設であるようですが、供給力の面から、今後の経済成長率になにがしかの影響が出てくるのでしょうか。ご見解を宜しくお願い致します。

§17Haruhiko Kuroda

白井委員のご意見について、特に私から申し上げることは避けたいと思います。雇用・所得環境の状況はご案内の通りで、まず、春闘が相当進み、大企業のみならず中小企業まで含めて、ベアを含む賃上げが広がってきています。また、有効求人倍率が 1.07 倍とリーマンショック前のピーク並みになってきているなど、雇用・所得環境が改善してきています。その改善が続いていることは、経団連や連合などが広く、色々な形でデータを出しており、よりはっきりしてきたと言えると思います。人手不足の問題は、確かに労働市場の需給が非常にタイトになってきて賃金が上がりやすくなっていることも事実ですし、特に人手不足から一部のセクター、例えば建設業等で一部建設が遅れる状況もあると伺っていますので、今後、非常に重要な課題になると思っています。そもそも、人口が減り高齢化が進んでいく中で、人手不足あるいは潜在成長率の低下が問題になる可能性があったのですが、需要が弱い時は、人手不足や供給制約という形で問題が表面化していませんでした。それがこの 1年程の間に、金融緩和、財政支出、民間活動の活性化により需要が高まってきた結果、水面下に隠れていた供給力の問題、あるいは人手不足の問題が顕在化してきました。

§18Haruhiko Kuroda

このように、人手不足も含めた供給面の問題が明らかになったわけですから、成長力を高め、持続的な成長を実現するための議論を幅広くやっていくことが非常に重要になってきたと思います。その意味で、政府が「日本再興戦略」の実行を加速化あるいは深化させる方針を打ち出していることは大変好ましいことですし、着実な取り組みを期待したいと思います。日本銀行としては、「量的・質的金融緩和」を引き続き強力に進めて、実質金利の低下などを通じて緩和的な金融環境を提供する、あるいは人々に定着してしまっていたデフレ・マインドからの脱却を図るということをしており、こうしたことは企業が積極的な投資、あるいは生産性向上に取り組みやすい環境を作っているのではないかと思っています。従って、ご指摘の点は非常に重要な点で、今後とも広く様々な努力をすることによって、供給制約を打破して、望ましい経済成長を遂げる必要があると思っています。

§19Question

今説明された潜在成長率についてお伺いします。まず、少し細かい点で恐縮ですが、先般公表された展望レポートのデータによると、潜在成長率は足許で0.2%を少し割っているのではないかと思います。展望レポートでは0%台半ばとご説明されていますが、ほぼ 0%まで低下しているのではないでしょうか。数字のご認識を伺います。また、そうした供給制約がある中で、大規模な金融緩和を継続していくことによって、今後、物価上昇と鈍い成長という形で、やや物価と成長のバランスが崩れてしまうのではないかということはご懸念としてあるのか、お伺いします。

§20Haruhiko Kuroda

潜在成長率の計算というのは、色々なところが行っていまして、その結果、数字も色々違っているわけです。確かIMFは 0.8%と言っていたと思いますが、私どものエコノミストは 0%台半ばという感触を持っていたわけです。ただ、この潜在成長率は、何か固定したものというよりも、様々な要因によって変動していきます。その上、政策的な努力によって引き上げることもできますので、あまり固定的に考える必要はないのではないかと思っています。ご指摘の点について、確かに 2%の「物価安定の目標」の実現という場合には、わが国の経済が生産・所得・支出の好循環のもとでバランス良く成長して、その中で賃金や物価が次第に上がっていくことが望ましいわけです。そのために、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を推進し、緩和的な金融環境を提供して、さらにはデフレ・マインドからの転換を図っているわけです。その結果もあって、このところ労働需給がかなり引き締まり傾向にあり、賃金の上昇圧力が着実に高まっており、企業収益も改善しているということで、好循環は作用していると思います。ただ、中長期的な成長力を高めていくという観点からは、どうしても3 つのことが重要だと思います。

§21Haruhiko Kuroda

まず、第1 が、企業における前向きな投資を促すということであり、第 2 には、女性や高齢者などの労働参加を高めることや高度な外国人材を活用することを通じて、労働の供給力を高めていくということです。そして第 3 には、規制あるいは制度改革を通じて、生産性自体を向上させていくということで、これらの 3 つの取り組みが非常に重要であろうと思っています。日本銀行としては、先程申し上げたように、「量的・質的金融緩和」を推進して、企業における前向きな投資を促す努力もしていますし、また、様々な形でリスクテイクをしてイノベーションをしていくということも、側面から応援をしているということです。

§22Question

私も潜在成長率についての質問です。私が質問する前から、この問題ばかり総裁は語っておられて、聞いている方は、おやっと、びっくりしているのではないかと思います。15日の講演でも、潜在成長率について随分おっしゃっておられて、中長期的な成長力、潜在成長率を引き上げる必要があると主張されています。日銀の金融政策としては、潜在的成長率が高かろうが低かろうが、2%の物価目標を目指してやるということに尽きるのだと思いますが、仮にこの潜在成長率が高くならず、今のような 1%を切る、0%に近いような状況の中で物価 2%が実現した場合、これは日本経済そして国民の生活にはどのような影響を及ぼすのか、あるいは「量的・質的金融緩和」にどのような影響を及ぼすのか、これについてお聞きしたいと思います。おそらく、仮定の話にはお答えできないとおっしゃるのではないかとも思うのですが、もともと 15日の講演でも、成長力引き上げについて、デフレ脱却と日本経済の復活を繋ぐ最後の、そして最も重要なピースになると力説されていらっしゃいます。物価が 2%だけど成長は 0%と、そういった状況になることはもちろん好ましくないと思うのですが、ただこれはこうなっては困るという意味も含めて、分かりやすく丁寧にご説明頂ければと思います。

§23Haruhiko Kuroda

中央銀行として、物価安定目標を立て、それを実現していくということは、最大の使命です。最初に言われた通り、実質成長率がどのくらいかということと直接的にリンクして金融政策を緩和したり引き締めたりということは、基本的にはないわけで、あくまでも与えられた経済のもとで 2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続させるということが、中央銀行としての使命だと思っています。ただ、日銀法にも書かれている通り、日本銀行としては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するということを使命としているわけですので、2%の「物価安定の目標」が達成されれば、後はどうでもよいというわけではもちろんありません。先程申し上げたように、生産・所得・支出の好循環のもとで、日本経済がバランスよく成長して、雇用・賃金などの増加を伴いながら、物価が 2%程度の上昇率に達する、あるいはそれを安定的に持続するということが一番望ましいわけです。

§24Haruhiko Kuroda

そういった面では、先程から申し上げているような努力をしているわけですが、一方で、やはり、中長期的な成長率を高めていくという観点からは、中央銀行の域を超えた、政府とか、あるいは民間企業の努力、先程申し上げた3 つの点――設備投資の前向きの投資を通じて、資本ストックを増やしていく、女性などの労働参加等を高めて労働の供給を高めていく、そして、規制あるいは制度改革を通じて、生産性を上昇させていくということ――が、どうしても必要であろうということを申し上げているわけです。

§25Question

先程、米国の長期金利の話がちょっと出ていたのですが、日本の国債というか、日本の債券市場についてお伺いできればと思います。足許 10年債の流通利回りは 0.6%を切るような状況になっておりまして──日銀が大量に国債を買っているという、これも一つの所期の効果が現れているということかとは思うのですが──、一方で、債券市場では、国債取引の流動性が下がって、金利が急騰するのではないかというリスクを指摘される方もいらっしゃいます。先月の総裁記者会見では、あまりそういう問題はないのではないか、というご認識だったかと思うのですが、改めて、どういうリスクがあり得るのか、大きなリスクはないのか、という点と、もし若干なりともリスクがあるのであれば、日銀がこれだけ大量にかつ毎月たくさん国債を買い続けているという状況の中で、そういう急騰のリスクを避けるために、どういうことが日銀としてでき得るのかについてお伺いできればと思います。

§26Haruhiko Kuroda

前にも申し上げた通り、国債市場の流動性が非常に低下して、国債の取引がスムーズに行われていないとか、価格付けが適切に行われていないといったことは無いと思っています。ただ、大量の国債の買い入れを行っていますので、常に市場の関係者と意見の交換をし、一番適切な形で、金融緩和が経済全体に波及していくように努めています。金利が低いこと自体は、色々な要因があると思いますけれども、1 つの大きな要因は、もちろん日本銀行が大量の国債を毎月購入し、保有残高を着々と増やしていることにあると思います。これは「量的・質的金融緩和」の目的自体がイールドカーブ全体を、短期金利だけでなくて、長期金利まで含めて、低位に安定させることによって、経済の回復、ひいては「物価安定の目標」の達成に繋げようということであり、これ自体は別におかしいことではないと思います。将来に亘って金利がどういう経路を辿るかは、日本銀行の国債買い入れのみならず、市場関係者のインフレ期待、物価上昇期待がどのように変わっていくか、あるいは海外の長期金利の動向にも影響されるかもしれません。様々な要因によって影響されますので、今の時点で具体的に将来の姿を申し上げるわけにもいきませんし、あまり具体的に申し上げますと、金利についてフォワードガイダンスを出している様にも見られかねませんので、具体的には申し上げません。

§27Haruhiko Kuroda

しかし、今の時点で何か国債市場が問題を孕んでいるとか、金利が低いことが如何か、といったようなことは全く考えておりません。

§28Question

日銀が実施している「量的・質的金融緩和」では、名目金利の上昇を抑えつつインフレ期待を上げることで、実質金利を下げるということですが、現状は上手くいっているかと思います。しかし、本来、長期金利は、先行きの経済や物価を反映して、市場参加者の金利観を中心に形成されることによって、市場の鏡となるはずです。中央銀行の方々が判断されるかと思いますが、「量的・質的金融緩和」によって、本来、名目金利が上がるべき時期を先送りしているような形と同じではないかと思います。今、債券市場で物価が 2%に達すると信じている方は少なく、今年の夏が勝負だと思いますが、日銀が想定しているように 1%台前半で推移し、その後上がっていくと、エコノミストの見方も変わり、市場参加者、債券市場の方々も 2%に達するのではないかと思うと考えられます。そうすると、今まで本来、名目金利が上がるべきだったのにエネルギーが蓄積していて、何かのきっかけで長期金利が跳ね上がってしまうリスクもあると思います。そのリスクと、上がってきた時に、日銀としてはさらなる国債の買入れをするのかしないのかを含めて、ご見解をお伺いします。

§29Haruhiko Kuroda

金融政策は、金融資本市場、特に金利――短期金利、長期金利を含めた――に影響を与えるものです。金融政策を何も実施しないで市場で決まるだけのものが金利であれば、金融政策はいらないわけです。しかし、金融政策を必要に応じて引き締めたり緩和したりすることは、そもそも金融政策のレゾンデートルであり、あるべき金利上昇を先送りしている、あるいは前倒しするというような言い方は、金融政策の観点からは、当たっていないと思います。金融政策は、金融資本市場、特に長短期金利に影響を与えることによって経済に影響を与え、ひいては「物価安定の目標」を達成しようとするものですので、日銀あるいは欧米の中央銀行が異常なことをしているのではなく、経済に合わせて必要な金融政策をしていると思います。常にそういうスタンスで臨むので、金利が経済あるいは金融政策が目的としていないところに動くことがあれば、当然、金融政策当局としては放置できないと思いますが、いずれにしても問題は、金利の動きが経済の実態、および望ましい経済の方向にあっているかどうかだと思います。従って何度も申し上げている通り、2%の「物価安定の目標」を実現しそれを安定的に持続できるようになるまで、現在の「量的・質的金融緩和」を続けますし、その間にあっても、上下双方向のリスクを点検して、必要があれば躊躇なく調整することは全く変わっていません。

§30Question

3 点お伺いします。1 点目は、先程、株や為替は政策目標にはならないというご指摘がありましたが、一方で、通貨価値の安定と物価の安定は非常に密接に結びつくため、その観点からお伺いします。先日、渡辺博史JBIC総裁が、日銀は追加緩和をするのか否かという話題について、日本と米国の金融政策の向きが違っていいのだろうか、というような発言をされていました。これは、米国ではテーパリングで緩和を縮小する方向である一方、仮に日本がさらに緩和を拡大する方向だということになると、円売りドル買いのポジションが作り易くなり、さすがにそんなことはしないだろう、というご観点のご発言だったかと思います。金融政策の判断には、様々なことをご考慮されると思うが、他の中央銀行がどうするのか、今何をやっているのか、ということも金融政策を判断されるうちの材料の1つに含まれるのか否か、一般論でも結構ですので是非お伺いします。2 点目は、昨年5月30日に日銀は「当面の長期国債買入れの運営について」というペーパーで、1 回あたりの長期国債買入れのオファー金額の目安を公表されています。その資料では、残存期間 5年超 10年以下の長期国債は 1回あたり 4,500~6,000 億円程度、10年超については 1 回あたり 2,000~3,000億円程度とありますが、ここ 2、3 か月はずっと記載の数字を下回って買入れがされています。

§31Question

この数字について、改めて変更されたり、ペーパーを出されたりすることはしないのでしょうか。理由とか背景とかお伺いできるようであればお願いします。3点目は、何をいまさらということにもなるのかもしれませんが、過去 1年の記者会見の記録を拝見して類似の質問がなかったのでお伺いします。マネタリーベースに政策目標が変わって、無担保コール翌日物のレートの話がステートメントからなくなりました。無担保コール翌日物のレートについては、日銀はメンションしなくなったというわけなのでしょうか、念のため確認ということでお伺いします。また、その目安になるレートが実はあります、ということであれば、それは何なのかよろしければお伺いします。

§32Haruhiko Kuroda

1 点目ですが、先程申し上げたように、為替レートを目標にして金融政策を運営することはありません。他の中央銀行が何をするかは、為替レートだけではなく、現在のようにグローバル化した金融資本市場のもとでは、様々な金融資産の価格に影響を与えるので、当然関心を持って見守っていますが、他の中銀がやることに合わせて、こちらがどうこうするということはありません。2 点目については、買入れの方針は金融政策決定会合で決めており、ご指摘のペーパーはあくまでも、それを受けた事務方の運営の指針ということです。常に市場の関係者とは、意見交換をしながら金融政策が一番適切な形で効果を発揮できるように運営していますが、先程申し上げたように金融政策決定会合で決める買入れ方針は全く変化していません。マネタリーベース云々については、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入する際に、従来の無担保コール翌日物の金利というのをターゲットにするのではなくて、マネタリーベースをターゲットにするという形に変えたわけですから、特別に無担保コール翌日物の金利をターゲットにしていることはありません。以上