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Bank of JapanPress conferenceJul 23, 2014Hiroshi Nakaso, Deputy Governor

中曽副総裁記者会見(2014年7月23日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会における挨拶の中で、静岡県経済は全国に比べて回復に向けた力強さに欠けるとの発言がありましたが、私も同じように感じています。気になるのは、予想物価上昇率が上昇しているものの、4月の消費税率引き上げに伴い、大手企業は別として、例えば街の食品卸会社などでは、値上げをしたら便乗値上げだと言われたとか、納入先から元の値段に戻さないと取引は継続できないと言われたなど、厳しい声が聞かれています。また、15年もの間デフレが続くと、消費者マインドはインフレに変わることができないのではないか、といった声も聞かれます。こうした点について、どのようにお考えかお聞かせください。

§2Hiroshi Nakaso

懇談会では静岡県経済の話を多く聞くことができたので、後ほど、私なりの印象を話したいと思いますが、まずは消費税の質問だったので、その点からお答えします。今日の懇談会で聞かれた声を含め、消費税率引き上げに伴う個人消費の反動減については、もちろん品目やサービスにより程度の差はありますが、全体としてみれば消費税率引き上げ前に想定した範囲内の動きとなっていると思います。先行きについては、消費税率引き上げに伴う実質所得下押しの影響もあるので、この点は引き続き注意深く点検していく必要があると思っています。ただ、一方で当地を含め雇用、所得環境の改善は続いていますので、個人消費は全体としてみれば底堅く推移していくのではないかと思っています。マクロの話をすると、企業部門については、私どもの先般の6月短観の結果をみると、業況感は駆け込み需要の反動減がみられる中で前回より低下していますが、前回時点の先行き見通しは上回っているほか、総じて良好な水準で推移しています。14年度の事業計画をみても、全体としてみれば売上や収益の見通しが上方修正されているほか、設備投資をしっかりと増加させていく計画となっているなど、企業の前向きな姿勢は維持されています。

§3Hiroshi Nakaso

また、全産業全規模ベースでみると、先行きにかけて雇用判断や設備判断のD.I.は不足超に転じているなど、雇用人員の不足感は強まる傾向にあり、生産設備の稼働状況は着実に高まっていると思われます。このため、わが国経済全体をみると、緩やかな回復基調続けており、駆け込み需要の反動減の影響は次第に薄らいでいくとみています。

§4Question

本日の懇談会では、どのようなテーマを議論されたのでしょうか。また、副総裁のご挨拶の中で、静岡県経済の回復に向けた様々な取り組みについて触れられていましたが、本日の懇談会を通じて感じられたことがあればあわせて教えて下さい。

§5Hiroshi Nakaso

まずは地元経済の主要な経営者の方々から直接お話をお伺いすることができ、大変有益でした。その上で、今日の懇談でどのような議論があったか私なりに整理してみますと、静岡県の景気については、全体としては先程も申し上げたマクロの状況と整合的であると思いますが、雇用・所得環境の緩やかな改善を背景に、「個人消費が消費税率引き上げ後の反動が概ね想定内に止まり、秋口に向けて底堅さが明確化するのではないか」とか、「生産効率化に向けた設備投資が動き出した」など、総じて緩やかに回復しつつあるとの声が聞かれました。ただ、リーマン・ショック以降、輸送用機械や電気機械を中心に海外生産シフトが進行したことを背景に、当地経済の回復感が全国に比べて力強さを欠いている中で、「エネルギー価格の上昇を背景に、中小・零細企業の業況感はなお厳しい」とか、「景気回復の遅れも一因となって人口減少が他地域に比べて進行している」といった懸念の声も聞かれたところです。こうした中、「地域金融機関をはじめとする関係者の連携により全国トップクラスの企業再生の実績があがっている」とか、「既存の技術力を活用して医療産業での取り組みや、航空機産業への新規参入に向けた動きがある」といった、経済構造の転換や新たな産業創出の動きに関するお話もありました。

§6Hiroshi Nakaso

また、「県産業成長戦略会議」では、この秋にも産業構造の転換に向けて具体的な対応策を取りまとめられると伺いました。このほか、防災先進県として、静岡県では様々な取り組みが行われているという話を伺いました。これらは、いずれも非常に心強い取り組みと感じたところです。日本銀行の政策運営に関しては、「デフレ脱却を確実なものとするよう、現在の金融緩和政策を適切に遂行して欲しい」とか、「アジアに進出する中小企業を金融面からなお一層支援する仕組みについて検討して欲しい」といった声も頂きました。私どもとしては、静岡県経済の金融経済情勢について、静岡支店を通じて中小・零細企業を含めた今後の動向についてきめ細かく情報収集し、静岡県経済の発展につながるよう、地域経済の視点に立って金融面からしっかりとサポートして参りたいと考えました。それから、もうひとつ申し上げておきたいと思います。静岡県では、リーマン・ショック後の円高進行を機に輸送用機械や電気機械といった主力製造業の相次ぐ海外生産シフトにより、製造業出荷額が4 兆円程度減少したところですが、これは生産・輸出の落ち込みの影響が大きいと思います。ただ、こうしたいわゆる産業の空洞化は、決して静岡県に限ったものではないと思います。程度の差こそあれ、概ね全国共通の課題であると思います。

§7Hiroshi Nakaso

そうした意味では、海外生産シフトの影響を補い、更なる発展のための新たな産業の創出が求められている静岡県は、「課題先進県」ではないかと思いました。従って、「全国に共通する課題」の先進県ということですから、静岡県がこうした課題に取り組み、成果を上げることができれば、これは日本経済にとっても大変示唆に富む、ある意味で一つのモデルにもなり得るのではないかとの印象を持ったところです。

§8Question

6月短観で静岡支店の業況判断D.I.が全国で一番低かったことに表れているように、全国に比べ静岡県の経営者の景況感が低い理由をどうお考えでしょうか。また、それを改善するためにどのようなことに取り組めばよいのか、アドバイスがあれば教えて下さい。

§9Hiroshi Nakaso

静岡県は製造業が集積した県であり、それ故、リーマン・ショック後の円高進行が元来得意分野としていた輸送用機械あるいは電気機械といった主力製造業に大きな影響を与えました。特に、リーマン・ショック後、円高が進んだことにより海外への生産拠点シフトが起きたことが、静岡県の景況感が低いことの背景にあると思います。従って、これをどうしていくかということに関しては、主要製造業の回復も必要ですが、それに加えて、そうした落ち込みをカバーする新たな産業の創出も求められているのではないかと思いました。この点、本日は様々なお話をお伺いする中で、静岡県では既に様々な取り組みを行っていることも認識しました。具体的には、「ファルマバレー」、「フーズサイエンスヒルズ」、「フォトンバレー」といった新産業クラスター構想が展開されているほか、災害リスクが少ない新東名高速道路周辺への企業誘致等を含む「内陸フロンティア」構想の取り組みも始まっているとお聞きしました。また、観光産業についてもお話を伺いました。昨年6月には、富士山が世界文化遺産に登録されたほか、来年は静岡に縁の深い徳川家康公の「顕彰400年記念事業」が予定されているなど、観光地としての静岡県を──産業と一体となってということがポイントだと思いますが──、その歴史や文化も含めて一体となって内外にアピールする好機を迎えているように思います。

§10Hiroshi Nakaso

さらに、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック等は、関係者の合宿地、観戦客の宿泊地といった面も含め、当地経済に様々な可能性をもたらし得る機会と思っています。大事なことは、主役となる地域の産業界、行政、地域金融機関等が一体となって、静岡県の産業構造の転換に向けて、従来にも増して連携を強化し、早期にアクションを起こし、できれば期限を区切って個々の施策を着実に前に進めて行くことではないかと思いました。私どもとしましても、既に取り組んでいる各種施策が実を結び、静岡県経済が更なる発展を遂げられるよう、金融面からしっかりとサポートして参りたいと改めて思った次第です。

§11Question

2 点伺います。まず海外経済についてですが、前回短観の後に発生したウクライナでの旅客機撃墜やイスラエル情勢の緊迫化といった想定されていない大きな事態が起きていると思いますが、世界経済に与える影響をどのようにご覧になっているのか、日本銀行が想定していた以上に世界経済が色々と動くリスクが高まるとご覧になっているのか、お伺いしたいと思います。もう1 点ですが、消費税率引き上げ後の国内景気について、駆け込み需要と反動は想定内であるという話を何度かされていますが、その後の持ち直しについては、投資や消費の指標をみると直ぐにV字回復となっていない指標も出ているように思いますが、夏以降の持ち直しについて想定よりよくないといった声がないのかどうか、これまで副総裁に集まっているデータを含めてどのように見られているかお伺いします。

§12Hiroshi Nakaso

まず、地政学的なリスクについては、金融政策決定会合の議論の中でも論点となっていますし、それを踏まえたステートメント等にも言及されています。ウクライナを始めとして言った方が良いと思いますが、イラク、イスラエルを巡る中東情勢、これらは世界経済という点からみると、緩やかな回復を展望する上で、今申し上げたような地政学問題は、一つのリスク要因であると認識しており、これは従来から認識しているという点で変わりはありません。今後も、地政学関連の情勢については、金融市場の動向とあわせて、注意してみて参りたいと思っています。2 点目について、細かい点を申し上げるのはここでは控えたいと思いますが、経済、物価の先行きについては、7月の中間評価でも議論した 4月の展望レポートで示した見通しと比較すると、実質GDP成長率、消費者物価ともに、概ね見通しに沿って推移すると見込んでいます。従って、見通しは変わっていないということです。すなわち、わが国経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていくと考えています。物価面では、消費者物価の前年比でみると、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでしばらくの間 1%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向を辿って、 2014年度から2016年度の見通しの期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとみています。

§13Hiroshi Nakaso

従って、繰り返しになりますが、設備投資、輸出も含めて、基本的な見通しは、中間評価においては、4月の展望レポートで示した見通しに沿っているということです。

§14Question

本日の懇談会の挨拶では、金融システムについて言及されていました。国によって事情が異なるというお話がありましたが、日本でのマクロプルーデンスや金融規制で進むべき方向性というものがあれば、どういったものかお伺いしたいと思います。加えて、先般、金融庁と日本銀行で連絡会が設置されましたが、この意義について改めて副総裁からお話を伺えればと思います。

§15Hiroshi Nakaso

最初の点は、金融システムや金融規制に関する議論の文脈であったかと思いますが、日本銀行としては、リーマン・ショック後の国際金融市場の危機を踏まえると、システミックリスクを防いで金融システムの安定性を高めるという考え方については、非常に重要であると認識しています。この観点からいくつかの論点、例えばGLACとか銀行勘定の金利リスクといった個別の論点がありますが、いずれにしても今申し上げた基本的な考え方が背景になっている以上、これらについては必要だと思っています。そのうえで、規制を実際に設計する場合は、各国の法制度、例えばGLACであればその定義や必要額、――これは各国の法制度によって大きく異なるものでもありますし――、具体的な規制の設計にあたっては、こうした点を念頭に置くべきであると申し上げたところです。つまり金融機関の活動が過度に阻害されることのないようにする必要があり、そのためには日本でのこれまでの様々な経緯、特に銀行危機等の経緯を踏まえて出来上がってきたような制度、例えば預金保険制度は1 つの事例だと思いますが、そういうことを念頭に置く必要があるのではないかと思います。

§16Hiroshi Nakaso

いずれにしても、金融規制というのは、中央銀行の立場にとっても、金融システムの安定性ということももちろんですが、金融システムは金融政策の主要なトランスミッションチャネルなので、当然金融政策運営という観点からみても、重要な論点であります。こうした論点を踏まえたうえで、例えば規制の在り方を議論するFSBであるとかバーゼル委員会といった国際会議においては、日本銀行の立場をしっかりと議論し積極的に取り組んで参りたいといったことを申し上げたつもりです。次に、連絡会議については、日本銀行と金融庁との間では、従来から、金融市場あるいは金融システムを巡る諸情勢について意見交換を行って連携を図っているところですが、今般、これをより強化する観点から、両組織の幹部からなる連絡会議を設けることにしました。これによって、マクロプルーデンスの分野で金融庁と日本銀行の間の連携が更に充実していくと思っています。強化という意味については、マクロプルーデンスに関する様々な問題があるわけですが、各レベルで重層的に、そして幅広い観点から、幅広い論点について議論できるようにすること、を念頭に置いています。また、これまで金融庁との相互の信頼関係に基づく意見交換を行ってきたところですが、将来双方に人事異動があったとしても、引き続き相互の信頼関係に基づく意見交換ができる仕組みを整えておくということも必要だと考えた次第です。

§17Hiroshi Nakaso

6月25日に第1 回の会合を開催しましたが、金融市場とか金融システム全体のリスク状況に関して、幅広い観点から、議論を行うことができたと思います。今後も、マクロプルーデンスに関する諸情勢、対応について意見交換をして、認識の共有を図ることによって、それぞれの政策、業務の遂行に役立てていきたいと思っています。

§18Question

2 点伺います。1 点目は、先般の講演で、日銀は出口の手段を十分に持っていると指摘されていました。同時に、議論は時期尚早とも発言されていましたが、日銀では年度後半に再び物価が 2%に向かって再浮上するとのシナリオを描いておられると思います。想定通りに、物価が年度後半に再浮上した場合、その時点では出口について議論する局面になるのかお考えをお聞かせ下さい。2 点目は、決済システムについてですが、先ほどの挨拶で成長戦略との関係で言及していましたが、利便性向上や円の国際化の観点から、もっと金融界が主体的、積極的に取り組むべきとの思いもあっての発言なのか、今回、挨拶文で、ある程度の分量を用いて述べられていますが、その狙いについてお聞かせ下さい。

§19Hiroshi Nakaso

まず出口戦略については、現在は、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現できるよう、資産を積み上げている最中にあり、出口戦略を議論するにはなお時期尚早と考えており、その考えは変わっていません。また、「量的・質的金融緩和政策」の出口に向けた対応とか、あるいはその後の政策運営の在り方については、その時々の経済、物価の情勢や市場の状況に応じて、当然これは、変わっていくものでありますし、早い段階から具体的なイメージをもって議論を進めることについては適当でないと考えています。そのうえでということになりますが、日本銀行は2006年3月に当時の量的緩和から出口を経験しているという意味で、おそらく先進国の中では、いわゆる非伝統的金融政策からの出口に関する実経験を持っている唯一の中央銀行であると思っています。むろん、2006年3月当時の同じ戦略が「量的・質的金融緩和政策」からの出口で使えるというわけではありません。なぜならば、今回は、日本銀行のバランスシートの規模が格段に大きいですし、日本銀行が保有する資産の残存期間も長いからです。ただ、市場調節に関しては技術的に色々あります。当座預金の付利とか、日本銀行は、売出手形とか、売り現先――これは米国のリバースレポに相当するものですが――こうした流動性吸収手段を既に有しています。

§20Hiroshi Nakaso

これらの吸収手段は、預金取扱金融機関だけではなくて、証券会社などのノンバンクも日本銀行の場合は既に対象としていますので、実効性がある、つまりオペレーショナルであることは確認されているわけです。もちろん、これらの手段をどういう順番で、どのように組み合わせるか、といった出口に向けた対応については、その時々の経済、物価情勢に依存するものであって、いずれにしても現時点で言及することは市場との対話という面で、かえって混乱を招きかねませんので、これは時期尚早だと思っています。次に決済システムの話です。日本銀行は、決済システムに関して自分達ができることは 2 つあると思っています。第一は、自ら決済手段を提供して決済システムを運営すること、もう1つは、わが国の決済システム全体の安全性と効率性の確保に向けて関係者へ働き掛けること、この2 つであると思います。まず、自ら行う決済システムの運営に関しては、現在、基幹システムである新しい日銀ネットを構築中です。日本銀行としては、2016年2月より、その稼動終了時間を 21 時まで延長することとしています。これによって、稼動時間帯は、アジアの時間や欧州の時間とオーバーラップするので、様々なことができるようになります。

§21Hiroshi Nakaso

例えば、企業のアジア拠点から日本の拠点への円の送金、あるいは欧州市場における日本国債を担保としたクロスカレンシーレポ取引の当日中の処理、あるいは海外の清算機関への日本国債の迅速な担保の差し入れといったことが可能となります。私どもとしては、この新しい日銀ネット、新しいシステムが最大限活用されることを通じて、金融市場の活性化とか、あるいは金融サービスの高度化に寄与していきたいと考えています。もう1つの課題は、私どもとして働き掛けていくべきもの――これは、わが国決済システム全体の安全性と効率性の確保ということになると思うのですが――、具体的には銀行振込の即時入金化とか、振込情報に添付し得る商取引情報の拡張に向けた取り組みです。こうした銀行界とか、産業界の取り組みについて、政府と連携しつつ働き掛けを行って参りたいと考えています。只今、申し上げたような銀行の振込の仕組みは、英国やシンガポールなどで高度化の動きは既に進展していますので、わが国としても遅れを取ることができないとの思いです。いずれにしても、決済サービスの高度化、これは私どもができること、私どもが働き掛けていくことの両方ですが、例えば、日本円、日本国債をいつでも、どこでも受渡し、デリバーできるインフラを整備するということは、講演でも申し上げましたように、積年の課題である円の国際化を決済面からサポートするものであると信じています。

§22Hiroshi Nakaso

従って、日本銀行としてこれを強力に推進していきたいと思っています。

§23Question

先日、BISの年次報告書で中央銀行の金融緩和がリスク・アペタイトを高めているとの指摘がありましたが、現状認識としてグローバルに金融面の不均衡が蓄積されつつあるのかという点について、ご見解をお聞かせください。また、一般論として、金融面の不均衡が高まった場合には、金融政策が解決すべきか、マクロプルーデンス政策が解決すべきか、という議論がありますが、中曽副総裁のご見解をお伺いしたいと思います。

§24Hiroshi Nakaso

まず、金融不均衡の問題ですが――これはBISのアニュアルレポートにも言及されている論点と認識していますが――、一般論として申し上げると、長引く金融緩和が、市場の過大なリスクテイクを通じて、将来の金融不均衡につながる可能性があること自体については、その通りであると思います。もっとも、日本に関して言えば、ご案内の通り、日本銀行は金融政策を判断する際に、経済、物価の中心的な見通しに加えて、長期的な視点を踏まえたリスクについても点検しています。このうち、金融不均衡が蓄積するリスクについては――金融システムレポート、あるいは展望レポートで点検している通りですが――現時点で資産市場や金融機関行動において、期待の過度な強気化を示す動きは観察されていないと思っています。私どもの金融政策運営上の最大の課題は、人々のデフレ期待を払拭して、 2%の物価安定目標を実現することでありますので、日本銀行としては、引き続き 2%の物価安定目標の実現を目指して、これを安定的に持続するのに必要な時点まで、「量的・質的金融緩和政策」を続けていくという方針です。金融不均衡に対するマクロプルーデンス政策と金融政策の役割分担については、色々な議論が行われている最中です。論点として、マクロプルーデンス政策が先なのか、金融政策がその後なのか、といった論点があります。

§25Hiroshi Nakaso

こうした議論というのは、私自身、議論の余地が随分あると思っていますが、金融政策が果たしうる役割はあると思っています。どちらが先か後かという問題は別にして、金融政策が果たしうる役割は、私はあると思っています。以上