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Bank of JapanPress conferenceJul 31, 2014Takahide Kiuchi, Board Member

木内審議委員記者会見(2014年7月31日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

兵庫県内の景気動向等について 2 点伺います。1 点目ですが、全国的に景気が基調的に回復しつつあると言われている中で、兵庫県はその動きが尐し緩やかであるように見受けられます。兵庫県の景気動向について、どのように受け止めておられますか。

§2Takahide Kiuchi

本日の懇談会での意見交換の内容も踏まえ、当地の経済に関する私の認識、印象を申し上げたいと思います。まず、本日の懇談会では、当地の各界を代表する方々から、地域経済の現状と課題や金融政策に対するご要望など貴重なお話を賜り、非常に有意義な意見交換ができたと思っております。ご出席頂いた方々に感謝申し上げます。席上で聞かれたお話を整理しますと、当地の景気は全国と同様に緩やかに回復しているが、企業の規模や業種などに応じてばらつきがかなりみられるというご指摘がありました。ウェイトが比較的高い大企業製造業を中心に改善傾向にある一方、中小企業では原材料価格の高騰などのコストアップが十分価格に転嫁できない状況が続いているため、収益という点では、回復はまだ途半ばであるというご指摘がありました。消費税率引き上げの影響に関しましては、駆け込み需要とその反動減は、概ね想定の範囲内という見方が多かったと思います。課題・問題点につきましては、財・サービスの需給改善が進む一方で、労働面では特に建設業を中心に人手不足が深刻になっており、それが経済活動の制約になっているというご指摘がありました。また、金融面では、預貸ギャップがなかなか改善せずに資金の余剰傾向が続いているというご意見が聞かれました。

§3Takahide Kiuchi

これらの話も踏まえて、私どもの神戸支店で判断しているとおり、当地の景気は、全国に比べ当初やや出遅れ感があったものの、現状では全国同様に緩やかに回復しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられたが基調的には回復しつつある、と考えています。すなわち、住宅投資は、足許増税の影響がみられていますが、設備投資は拡大しているほか、公共投資は増加し、輸出は持ち直し傾向にあります。これらを踏まえて生産は回復しています。また、個人消費は基調として緩やかな持ち直し傾向を示しており、増税前の駆け込みの反動は徐々に減衰してきています。先行きについては、緩やかな回復を続けるとみています。ただ、消費税率引き上げによる実質所得押し下げの影響や、神戸港と結びつきの強い東アジア等の新興国経済の動向、米国経済の回復ペースなどが当地の経済に与える影響については、今後も注視していく必要があると思います。次に、兵庫県経済の印象についてですが、当地は鉄鋼・造船等の重厚長大型産業を中心に発展してきた訳ですが、開港以来培われてきた、時代の変化を先取りする進取の気質が浸透している下で、近年は、「神戸医療産業都市」の整備や、スーパーコンピュータ「京(けい)」の開発・運用拠点となるなど、わが国経済の成長を牽引する先進的産業の集積も進んでいるとの印象を持ちました。

§4Takahide Kiuchi

また、消費・観光面では、大型クルーズ船の寄港に適した神戸港を有していることなども強みだと思います。これらの特徴は、経済面での当地の高いポテンシャルを示していると思います。こうした兵庫発のビジネスモデルが、わが国経済の活性化につながることを期待しておりますし、我々としても、中央銀行の立場から、経済の持続的な成長の実現や金融システムの安定確保を図りながら、当地経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へつながっていくようサポートして参りたいと考えております。

§5Question

2 点目として、国家戦略特区について伺います。兵庫県を含む関西圏が医療拠点として、また、兵庫県養父市が中山間地農業の改革拠点として特区に指定されています。これらの特区について、どのような期待感をお持ちでしょうか。

§6Takahide Kiuchi

政府が国家戦略特区の指定区域を指定し、各区域の改革方針が示されたことは承知しております。その方針に沿って、今後は、各地におけるそれぞれの具体的な事業計画を、国や自治体、民間企業の皆様が一体となって纏めていかれると考えております。国家戦略特区は、産業の国際競争力強化を目指して規制改革が行われるものと理解していますが、当地におきましても、今回の指定をきっかけとして、新産業の創出などにつなげていくことにより、当地経済がさらに発展されることを大いに期待しております。

§7Question

2 点質問があります。1 点目は輸出関連です。ご指摘のように輸出の回復が遅れていることについて、昨日公表された鉱工業生産などにもそれなりに影響が出ていると判断できるのでしょうか。また、ご指摘のように世界的に貿易が伸びない中で、輸出に代わる日本経済の需要面の牽引役は何になるのか、見解をお願いします。2 点目ですが、政策運営のリスクについて、本日の挨拶要旨には、「仮に現在の大規模な金融緩和策が長期化あるいは追加的措置によって強化されれば、逆にこれらの副作用がプラス効果を上回り、長い目でみた経済の安定をむしろ損ねてしまう」と書かれています。長期化の定義ですが、何年以上やるとリスクがあるということなのか、どのようなことを具体的に心配しておられるのか、お話できる範囲でお願いします。

§8Takahide Kiuchi

1 点目ですが、足許の生産統計は回復の傾向を示していますが、回復は比較的緩やかではないかと思っています。4~6月期の生産の落ち込みも、予想よりやや大きめだったと思いますし、7~9月期の回復ペースもやや弱めと見込まれます。これは、一つには消費増税の影響があると思います。消費増税に伴う駆け込みとその反動は、予想外の動きにはなっていませんが、実体経済に相応に大きな影響を与えたことは確かです。一方で、在庫にもやや過剰感が生じています。これは、輸送機械を中心に比較的幅広くみられており、尐し需要を強く見過ぎていた面があったのかも知れません。その背景には、消費増税の影響に加えて、輸出の弱さも部分的には貢献している可能性があります。ただ、足許の輸出については、挨拶要旨にも書きましたが、一時的な要因ではなくて構造的な要因だと思います。リーマン・ショック以降は概ね横ばいと言ってよい状態ですので、足許だけが弱いということではないと思っています。その意味では、輸出の回復を前提としない景気の回復シナリオを展望する必要があると思います。牽引役というお話がありましたが、現状をみると、内需は比較的堅調なので、輸出が回復しないからといって景気回復がすぐ頓挫してしまう状況にはないと思います。もう尐し長い目でみた場合、牽引役として期待したいのは設備投資です。

§9Takahide Kiuchi

従来は、輸出が回復しないと、特に製造業の設備投資が出にくいということはありましたが、例えば政府の成長戦略などが効果を高め、先行きの成長期待が高まり、これに応じて企業が設備を積み増していく動きが出てくれば、輸出に代わる内需の成長の柱になっていくことが考えられます。ただ、現状はそこまで至っていないと思います。2 点目ですが、私自身は現在の「量的・質的金融緩和」が長期化すると、相応に副作用が積み上がっていく一方で、追加的な効果がどんどん高まっていく訳ではないと思っています。効果と副作用のバランスで政策を判断するという点で言うと、長期化してくるとそのバランスが崩れる可能性があると考えています。ただ、これがどの程度の期間かという点については、一概に申し上げられません。私自身は、2年程度を目途に、「量的・質的金融緩和」を見直すということを提言していますが、これは、一つの大きな金融政策の効果を見極めるうえで、2年というのがそれなりの適切な期間であるということを念頭に置いて提言しています。高い政策効果がみえていても、金融政策が正常化に向かい始めると巻き戻しの動きが強まって、効果が途中で巻き戻されてしまうというリスクも考える必要があるため、一つの政策の効果を見極めるためには一定の期間を要するということです。その点から言いますと、2年というのが一つの目途にはなるかと思います。

§10Takahide Kiuchi

ただ、繰り返しになりますが、適切な期間が 2年であると断定している訳ではありません。

§11Question

関連する質問ですが、日銀、政府とも自動車の在庫の積み上がりについて、5月の時点では船待ち――出港の前に積んでいる状態の自動車が在庫として換算される――という説明をしていたかと思います。他方、直近の生産の説明では、製造業が読み間違えて作り過ぎ、6月は減産したが在庫が積み上がったということですが、特に自動車の在庫の積み上がりが異常に高くみえます。これは季節調整が上手くかかっていないといった要因もあるのでしょうか。あるいは日銀、政府内でみていたよりも、需要が国内外で弱かったのでしょうか。生産は 6月まで弱かったので、7~9月も高まらず、もしかすると伸びがゼロになる可能性も否定できないと思いますが、その場合、GDPベースでも4~6月に続いて7~9月も思ったより弱めになるリスクを考えておられるのでしょうか。2 点目は、先程のお答えでも設備投資を重視と言われていますが、おそらく自動車とか家電の工場をもっと作れということを仰っているのではないと思います。タイやメキシコといった他の国でということであれば、地産地消で日本発の可能性はない訳ですが、具体的にどのような産業の設備投資を仰っているのでしょうか。

§12Takahide Kiuchi

1 点目ですが、個別の企業・産業の動向について詳しく承知している訳ではありませんが、自動車産業については、消費増税後の国内での需要・販売について、やや弱かったというような話も聞いています。自動車については、輸出の一部は現地生産化の進展、国内需要については消費増税の影響、という両面から、見込んでいたよりも需要がやや弱いことが、足許の在庫増加につながっているのではないかと思っています。ただ、先ほど申し上げましたとおり、足許では、自動車だけではなく、比較的幅広い業種で在庫が積み上がっています。すなわち、只今申し上げたような、消費増税後の需要が期待よりもやや弱い、輸出が期待よりも弱いということが、幅広い業種で生じています。その結果として、7~9月期の生産が、当初みていたよりもやや弱くなる可能性があるように思います。7~9月期は、例えば生産でみても、GDPでみても、プラスになる可能性が極めて高いという意味で言えば、4~6月期にマイナスになった後に持ち直してくるという判断を変える必要はないと思います。ただ、回復ペース自体は比較的緩やかになるとみられ、その一因として内外需が期待したほど強くないということ、またその結果としての在庫積み上がりということがあるのではないかと思います。月次の統計でみると、消費・設備投資・輸出関連が 6月まで出ていますが、いずれも比較的弱い状況です。

§13Takahide Kiuchi

こうした点から考えますと、7~9月期の成長率については、やや下方――プラスではあるが、それほど強くない――という可能性が尐し出てきたと思っています。2 点目については、どの業種で設備投資が出てくると申し上げる訳ではありませんが、昨年は中小非製造業の設備投資が強く、それが足許では大企業製造業中心の設備投資に重心が移ってきている感じがあります。輸出が回復しない中でこうした動きが出てきたことには、やや意外感があります。ただ、輸出は伸びないけれども大企業製造業の設備投資がどんどん増えていくかというと、将来的には、国内の期待成長率が上がることが押し上げに寄与する可能性がありますが、まだ尐し早い感じがします。足許の大企業製造業の設備投資については、国内経済の需給関係が改善し、需給ギャップが本行の計算で足許プラスに転じた中で、これまで更新投資を控えてきたがやや限界にきて、投資が出てきているという側面が強いように思います。ただ、その場合、必ずしも持続性は高くないと思います。これが持続的な回復につながっていくためには、輸出に期待できないということですと、国内の潜在成長率に対する中長期的な期待が高まってくることが必要であり、それに向けて、政府の成長戦略などにも期待したいと思っています。

§14Question

先程輸出の回復を前提としないシナリオも考えていく必要があると仰っていましたが、その場合、日銀の展望レポートで出している緩やかな回復基調が続いていくというシナリオを変える必要はないのでしょうか。また、足許輸出は横ばい圏内で動いていると判断されていますが、輸出が弱い中でも振れの範囲内であり、横ばい圏内に収まっているとみているのでしょうか。

§15Takahide Kiuchi

先程申し上げたとおり、輸出の先行きの回復を必ずしも前提としないシナリオも有り得ると個人的には思っています。しかし、だからといって、回復が頓挫してしまうかといえば、現状でもそうですが、輸出が伸びない中、内需で景気の回復が続いていますので、これがすぐ途絶えるということではないと思います。ただ、従来考えていたよりも輸出が伸びないのであれば、例えば成長率の見通しなどがやや下方修正を受ける可能性が有り得るのではないかと思っています。輸出については、長い目でみますと、概ね横ばいということだと思います。確かに本行が計算した実質輸出で言いますと、第 1 四半期・第 2 四半期はマイナスになっています。そういう意味で言うと、横ばいではなくて減尐ととらえる考えもあるかも知れませんが、もう尐し均してみる必要があり、均してみると概ね横ばいだと思います。6月までの輸出は弱いという状況ですが、今後については、やはり2 期連続マイナスの後なので、多尐輸出が戻ると思います。ただ、輸出が戻った時に、それを輸出の回復と言うか持ち直しと言うかについては、私はやはり慎重に考えるべきであって、現状の判断としては横ばいでいいのではないかと思っています。

§16Question

2 点あります。1 点目は、最初の質問で出た国家戦略特区についてですが、兵庫県の場合は医療産業都市であるとか、農業特区といったところが指定されています。これは、今までは実質的にあまり上手く進んでいなかったという現状があったと思います。これをより本格的に実効性があるものにするためのポイントは何でしょうか。2 点目は、来年の1月で阪神淡路大震災の発生から丸20年ですが、木内委員は当地の復興の度合いをどのように評価しているのでしょうか。震災が兵庫県経済に与えてきた影響について、ずっと溜まってきたダメージがあるとみておられるのか、今後についてはどのようにみておられるのか、この20年の節目で一言頂ければと思います。

§17Takahide Kiuchi

1 番目のご質問については、できれば支店長の方からお話しして頂ければと思います。2 番目の質問ですが、当地では、大震災により多くの方々が尊い命を失われ、社会経済インフラも大きな打撃を受けました。その後、市民の皆様を始めとしまして、県・市などの行政・産業界のご努力にもよりまして、見事な復興を遂げられていまして、この間の皆様方のご苦労、ご努力に改めて敬意を表したいと思っています。ご案内のとおり、人口も一時期はかなり減尐しましたが、現状では震災前を 2 万人上回る水準まで増加しております。大規模な自然災害が発生した地域で、震災前の人口を取り戻すというのは非常に大きな努力があったと思いますし、毀損した産業資本の再構築も含めた当地経済の復興は、非常に高く評価できるものと思っています。一方、我々の神戸支店が昨年9月に公表したレポートによりますと、兵庫県の過去21年間の労働生産性の改善率が全国最下位という厳しい結果も出ています。しかしながら、2006~2010年度だけを取り出してみると、その順位は全国第 28 位に浮上します。これは当地で活躍されている産業界の皆様方が、高付加価値の製品やサービスを生み出して活力を取り戻していることの表れと考えております。来年1月には震災発生から20年を迎えますが、これを一つの節目としまして、当地経済が更なる発展に向けて成長を続けていくことを願っています。

§18Takahide Kiuchi

(答<鉢村神戸支店長>) 1 点目の質問については、基本は「関係する方々皆様が力を合わせ、情報共有をしながら、きちんと前に進めていく」というモメンタムが必要ではないかと思っています。それには、金融機関のバックアップも必要でしょうし、地域の行政も、特区で与えられた機会をきちんとものにしていき、医療産業都市であったり、養父市で行われる農業の改革であったりといったものを、具体的な動きに変えていくことが必要だと思います。色々な障害があるが故に特区になった訳ですけれども、その議論がいま深化しつつあると考えております。そしてそこにはやはり金融の役割もあると思っています。

§19Question

企業の価格設定行動について、賃金の上昇分を転嫁することが消費者にはなお受け入れ難いという面はないでしょうか。既往のコスト高を転嫁する動きは尐しずつ広がっているように思いますが、それが日本の企業全体の価格設定行動になっているのか、トレンドとしての変化が生じているのか、それが持続的なものなのか、お伺いしたいと思います。

§20Takahide Kiuchi

昨年来、物価上昇率が高まってきた大きなきっかけとしては、円安などによる輸入物価の上昇があったと思います。それと並行して、経済が改善し、需給ギャップが改善してきたということや、賃金がある程度改善してきて、消費者が価格転嫁を受け入れる土壌が出てきたことなど、様々な要因が働いて物価が上がってきたと思います。私は円安の影響は非常に大きいと思っていますが、円安だけではなく、色々な要因がサポートする形で、物価上昇につながってきたと思います。価格転嫁が今の時点で完全に終わったという訳ではないと思いますので、まだ価格転嫁される糊代はあるように思っています。ただし、企業の価格設定行動が、非常に大きく変わったか、尐なくともそれが持続的かどうかということについては、まだ判断できないと思っています。企業の価格設定行動が本当に変わるためには、短期ではなくて中長期の物価上昇率の見通し、ないしは期待が変わるということが必要だと思いますが、まだそこまでは至っていないと思います。恐らく、どんどん値段を上げていっても、消費者がどこまでもそれを受け入れてくれるところまでは、所得環境が改善しておらず、その結果として、企業の中長期の予想物価上昇率が足許非常に上がっているというところまでは至っていないのだと思います。

§21Takahide Kiuchi

これは物価上昇が持続的かということに深く関わる点だと思いますが、中長期の予想物価上昇率が従来よりもかなり高い水準まで上がり、しかもそこで安定しないと、安定的に従来と違った価格設定ができるようにならないと思います。現状では、価格設定行動が根本的に変わったというところまではいっていないと思います。消費などの経済状況の落ち込みや為替の変動などによって、企業が価格の引き上げに慎重になってしまうリスクが依然として残されているのではないかと思っています。賃金と物価との関係で言いますと、賃金上昇分を価格転嫁するのは、消費者側として必ずしも簡単には受け入れ難いという面もありますが、企業側としても、現状賃金が上がっている中で、それを製品価格に転嫁していかないとビジネスとして成り立たないという面があります。ただそれは、例えば安い外食など、設定しているビジネスモデル自体を修正していかないと、高い賃金は受け入れられない、あるいは、その高い賃金を価格に転嫁できない訳で、それには相当時間がかかります。非常に安い価格で食事ができるというビジネスモデルとして消費者に受け入れられているものを、一夜にして、高付加価値のサービスを受けるものというように消費者の側が対応を変えることはなかなか考え難いと思います。

§22Takahide Kiuchi

こうした点からも、本格的に価格設定行動が変わり、それに合わせてビジネスモデルが変わっていくためには、相当の時間がかかるのではないかと思っています。

§23Question

本日の挨拶では、展望レポートの物価見通しについて修正案を出した話をされていますが、日銀として「2年で 2%」という目標をやめた場合の説明責任はどうすればよいとお考えなのでしょうか。また、その場合、どのような政策が考えられるのでしょうか。

§24Takahide Kiuchi

挨拶要旨では、従来私が主張していることを繰り返して書いているだけであり、政策委員会全体として今の枠組みを変えるかどうかについては全く分かりませんので、それを前提にお答えすることは難しいと思っております。ただ、私自身の考えということで言いますと、2%というのは日本経済の実力から考えますと、やはり高いと考えています。中長期であれば、そこまで物価安定の妥当な水準が高まる可能性はあるかもしれませんが、現状はそこまで行っていないと思います。現状では、もう尐し低い位置に望ましい物価安定の水準があると考えています。それはどの位の水準かというと、明確には分かりませんが、1%あるいは 1%前後ぐらいではないかと思っています。一方で、現実の物価水準は、例えばCPIのコアで見ますと 1%台前半、コアコアで1%弱ということですので、比較的近い水準まではきています。金融政策の役割としては、望ましい物価上昇率に対して現実の物価上昇率が乖離しているときに、金融政策を通じて、その乖離を埋めるというのが重要な役割だと思います。これは挨拶要旨の中でも「3 つのギャップ」という形で書いています。物価安定という状況は、多くの人や企業や家計にとって望ましい物価上昇率であり、これを前提に経済活動を行っているという水準だと思います。

§25Takahide Kiuchi

私は、望ましい物価の水準は、国毎に同じではないと思いますし、時代によっても変わり得ると思いますので、2%の目標を中長期的な目標としては受け入れていますが、現状ではやや高いのではないかと思っています。私自身の物価見通しについては、概ね現状程度ということですので、物価は比較的安定した状態が続くという見通しです。先程申しました、中長期の予想物価上昇率と現実の物価が乖離しているときに、そのギャップを埋めていくのが中央銀行の役割だという点でいうと、既にそれなりに達成しているということではないかと思っています。これに対して、これからさらに需給ギャップが改善していき、景気が過熱感を強めていけば、物価上昇率はもっと上がっていく可能性があると思います。しかし、果たしてそれが持続的な物価上昇なのかと考えると、一時的に物価は上がっても、景気が過熱している状況では、経済が不安定になりやすいと思いますし、いずれ景気後退に向かっていけば、物価はまた下がってしまうと思います。物価を経済の実力に見合った水準に誘導していくほうが、経済の安定にとってはプラスですし、それが中央銀行の役割だと思います。物価安定を通じて、国民経済の健全な発展に資するというのが、我々の最大の、最終的な目標だと思います。

§26Takahide Kiuchi

それに照らした場合、物価安定の目標については柔軟に運用したほうが、日本経済、国民にとって良いというのが私自身の考えで、それに沿って中長期の目標とすべきだと考えています。短期間で目標達成を目指すと、経済がむしろ不安定になってしまう、あるいは金融不均衡を生みだしてしまうことを個人的には懸念しており、昨年の 4月以来こうした提案をしてきています。それを今回の挨拶要旨にも書いた訳です。ただ、政策委員会全体としてどういう決定をするかについては、分かりませんし、それについて申し上げるのは適切ではないと思っています。以上