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Bank of JapanPress conferenceJul 30, 2015Koji Ishida, Board Member

石田審議委員記者会見(2015年7月30日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会でどのようなお話があったか、ポイントを教えてください。

§2Koji Ishida

本日の懇談会では、京都府の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話やご意見等を数多く聞かせ頂くことができました。大変有意義な意見交換ができたものと認識しております。まずは、ご出席頂いた方々や、関係者の皆様に深くお礼を申し上げたいと思います。本日の懇談会では、ご意見が多岐に亘ったため、全てを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げますと、まず、観光関連では、飲食・宿泊、運輸、小売など多くの業種において、インバウンド効果の恩恵を受けているとのお話がありました。中心市街地をはじめ京都府北部においても、広くその波及効果が及んでいるとのことでした。次に、人口減少に対する需要の先細りに対する懸念、人手不足による生産活動への影響等のお話がありました。空家が増加するなかで、新築の戸建てやマンションが増加することに対するアンバランスさを指摘する声も聞かれたところであります。さらに、大企業、中小企業という企業規模における様々な面での格差の話が聞かれました。とくに、中小企業では原材料などの輸入コスト上昇、あるいは電力料金の値上げ、人件費の高まりを受けまして、引き続き厳しい経営環境にあるといった報告が聞かれたところであります。

§3Koji Ishida

また、一般的に金融機関借入依存度の高い中小企業向けに対して、適切な金融支援を望む声も聞かれました。そのほかには、為替の変動に対しては、急激な変動は経営に大きな影響を及ぼすことから、為替の安定を望む声が多く聞かれたところであります。私どもとしては、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや金融システムの安定性を確保することを通じまして、当地関係者の努力がより大きな実りへと繋がっていくようサポートして参りたいと考えています。

§4Question

講演の中で、海外経済の下振れや輸出・生産のもたつきが、設備投資、企業の心理に与える影響について発言されていますが、心理面への影響が看過できなくなった場合は、追加緩和の必要がでてくるのでしょうか。一方で、講演の中で、量的・質的金融緩和が金融システム面に与える影響ということも触れられていますので、その辺について付言して頂ければと思います。

§5Koji Ishida

ただいまのところ、4~6月の経済状況が若干足踏み、あるいは少し下振れするのではないかということを見込む向きが多く、それには国内の天候要因もかなり影響しているのではないかと思います。講演で触れましたように、海外の様々な問題、海外経済の若干の低調さによる影響が関係しているのであろうと思います。こうした問題に伴う心理的な影響は、7~9月期の数字でいろいろなものが戻っていけば、払拭される気がします。もうすぐ8月に入る時期で、7~9月期も1か月が経過していますが、天候でいえば、4月と6月は大変悪かったのですが、 7月に入りましてかなり暑い日が続いています。また、昨日、7月の財務局長会議が開催されましたが、11 地域中7地域において改善しているということであり、足もとは心強いサインが出始めているのではないかと思います。私自身は、基本的に楽観していますが、海外要因はしっかりとみていかなければならないと思っています。もう1つの点につきましては、午前中にも話しましたとおり、現在のところ、インバランスが出ているというようなことは考えていません。長い目でみて、よく注意していきたいと考えています。

§6Question

物価についてお伺いします。午前中の講演では、エネルギー価格を除いたものが、基調判断の上で重要だという趣旨の話をされたと思いますが、一方で生活している人々からみると、エネルギー価格も非常に影響があり、食料品は入れるけれども、エネルギーは除くという、上がっているものだけをカウントするような、良い所取りをしているようにも感じられますが、その点についてお伺いします。

§7Koji Ishida

誤解があると大変困るので申し上げますが、基本的に物価目標というのは、総合であって、何かを差し引くということではありません。ただ、今は原油価格が大変大きく変動しており、物価全体をある意味で言うと大きな変動にさらしています。例えば、本行の展望レポートで物価の先行きをみた場合の中心的見通しは、今は原油価格の関係で低いが、年の終わり頃からその影響が薄れるにつれて、かなりのスピードで上がっていくと申し上げています。問題は、今、霧がかかっており、よく分からないけれども、霧が晴れたら山は高いですよという話ですから、その霧のかかっている中で山がどのくらい高くなっていくのかをみていくための手段として、「総合(除くエネルギー)」いう指数を使うのであって、これが高いからもう良いということでは全くありません。

§8Question

家賃や公共料金などの景気連動性が低いものの特性を勘案する必要があると石田委員は発言されていますが、西村前副総裁は、家賃には、構造的に税制その他で下押し圧力がかかっていて、 CPIの2%を目指すのは非常に難しく、短期間にそれを目指そうとすると、他の品目が2%よりずっと高くならなければならず、スパイラル的な物価上昇とか、バブル的な現象が起こる可能性があると仰っています。石田委員自身、本日の講演の中で、CPIの図表において、除くエネルギーが1.2%、エネルギーと持ち家の帰属家賃を除くと1.5%と、衝撃的なデータを示されています。こういう数字になっていれば良いということではない、と仰っていますけれど、非常に下押しのバイアスがあるものも含めて、2%に無理やりもっていこうとした時に、金融面での不均衡なり、何かのリスクが大きくなる可能性があると思いますが、そこはどのようにお考えになっているのか、西村前副総裁の仰っていることにかなり共感をお持ちではないかと思いますが、いかがでしょうか。

§9Koji Ishida

物価目標は、もともと「物価安定の目標」を導入した時からフレキシブルなものだから導入した、ということを明言していまして、その後も、物価の基本的な考え方がリバイスされたという話は聞いていません。私が前から申し上げているのは、物価というのは、いろいろと柔軟にみていくべきであって、諸々の見方をもとに、最終的には、日本銀行が責任を持って判断するものだと思っています。そういう意味から、現実に物価の中に帰属家賃が入っていた場合に、簡単にいえば、今のままで2%を目指すためには、除く帰属家賃で2.4%上げなければならないわけですが、一般的な物価が 2%に達した時に、帰属家賃を含めれば2%に満たず、例えば、1.65%とか、1.7%を若干切り、まだ目標に届かない場合に、どんどん一般物価を上げないといけないというふうに金融政策を推し進めていくべきだということに、私は疑問を持っています。適切に、その時々において、物価の状況がどうなっているのかをみていけば良いと思います。また、帰属家賃が上がらないとは限りません。帰属家賃が上がらなかった場合に、他のものが上がってきて、両者のバランスをみたときに、金融政策としてどうするかは、私としては政策委員会の判断にかかわる事項だと思っています。

§10Question

講演の中で、「物価動向を総合的に評価していくことが政策運営上必要である」ということを言われており、その前段でインフレ実感のお話があります。現状、家計でみると、確かに食料品が結構上がっていて、物価が上がっていると感じている人が多いと思います。一部では、4月分から給料とかボーナスを含めて家計の所得が上がっているにもかかわらず、消費がパッとしないということが言われていますが、その辺りを絡めて、実際の物価ではなく、家計が受けるインフレ感をもう少し重視すべきというようなことを含めた発言であるのか、その辺をお聞かせください。

§11Koji Ishida

とりたてて家計の物価感をよくみて金融政策に直接反映するということではありませんが、例えば、食料品の価格というのは、所得の低い層あるいは年金生活者にとっては、エンゲル係数が全体の平均値より高いはずでありますから、こうした方々には、大変大きな要素だと思っています。一部では「コアコアをみるべきだ」というような議論がありますが、コアコアをみた場合には、そういうものが無視されていく訳でありますから、そういう意味でコアコアをみるべきではない、という意見を私は持っています。そういったことには、ある意味では、家計の物価の実感をみているという面があると、私は考えています。賃金につきましては、確かにベースアップ等は4月からでありますが、普通は6、7月にベースアップの遡及支給があり、それからボーナスも支給されます。今春の賃金引き上げの評価については、6、7月の数字をよく精査したうえで確実なことを申し上げたいと思っています。ただ、それは一人当たりの賃金でありますので、全体の景気に与える労働所得をみると、労働者数が増えていますので、所得全体は確実に増えてきているとみています。

§12Question

今日の講演において、エネルギーを除いた指数、さらに帰属家賃を除いた指数を示されたのは、やはり生活実感として国民が感じるものを指数が反映しているとお考えなのか、そうであればコア CPIは0%ですが、生活実感としてはやはり物価面から消費に対する下押し圧力というようなものがかかりやすい状況にすでになっているとお考えなのか、この点を教えてください。

§13Koji Ishida

それは、そうではありません。物価の基調をどうみていくかの問題であって、物価が低いこと自体は消費にはプラスであると思います。物価が低いこの時期に、消費に勢いがついていって欲しいと思っています。先ほど申し上げたように、将来、原油の問題が薄れてきたときに物価が本当に上がるのか、上がらないのかというところをみるためにその指数をみていきたいということであります。いろいろな見方がありますが、例えばコアからエネルギーを引けば0.7%という数字が出ますが、明日の数字をみると 0.9%になったとか、或いはその次に1.0%になったということになれば、確実に物価の基調は上がっていると考えられ、原油価格の変動の影響が除かれていったときに、現実に表面の物価が上がってくるということです。政策の将来の方向付けに対して正しく経済のベースの部分が動いているかをみるための基調判断の道具として捉えています。

§14Question

確認ですが、挨拶要旨の4ページに先行きの見通しで、日本銀行としては、2%程度に達する時期は 2016年度前半頃になると予想していると書かれていますが、石田委員もそうお考えであるのか。また、今、政府で消費者物価指数の見直しを進めていると思いますが、この議論がどう影響するか、しないのかについての考えもお聞かせください。

§15Koji Ishida

指数の見直しの話がいろいろと進んでいますが、私としては基本的に前回ほど大きな、断続的な数字になりそうもないので、あまり緊張感はありません。帰属家賃の問題もいろいろ言われているようですが、調整するかしないかは別にして、私は金融政策として判断の材料にすれば良いと思っています。2016年度前半に2%程度に達するということについては、私は 2015年度中にといっていた時にも申し上げていますが、時期について細かく議論するのはあまり生産的ではないという気がします。2016年度の上期あるいは 2016年度の中頃あるいは 2016年度中と、いろんな意見があると思いますが、いずれにしろ、2%の物価目標が達成されるのであれば、例えば今から1年後ということになります。金融の世界では非常に近い将来の話でありますから、金利の調整とかいろいろなことが起こり始めるかもしれません。そういう意味からすると、その時期が若干ズレようが、問題はそこに必ずいくという確信が出てくるかどうかです。私自身としては、達成するタイミングについてある程度の腹積もりがあり、正直に申し上げれば、帰属家賃がそれほど上がらないとすると、その他のものが上がったとしても、表面の物価は若干下がらざるを得ない点があるため、若干低かったとしても、――例えば 0.2%とかの差が――2%物価目標の達成との関係で、どれほど厳密な議論する意味があるのか。

§16Koji Ishida

2%程度で安定するという確信が得られれば、それで良いというのが、そもそものフレキシブル・インフレーション・ターゲティングの運営ではないかと思っています。

§17Question

今のお話は、2%をきっちり、厳密にやることにあまり意味がないのではないか、2%程度ということで、かなりの上下というか幅があって然るべきであるという理解で宜しいでしょうか。

§18Koji Ishida

それは、もともとそういうものだというのが私の理解です。私が審議委員に就任する前に、日本銀行が「目標」と呼ぶのを避けていたのは、2%とか1%というと、厳密に1%で、0.1%でも欠ければいかないとか、0.1%上げればオーバーだとか、そういうふうにみられやすいということがあったのではないかと思います。2%目標導入時にも、「柔軟な」という言葉が使われていると思いますので、2%にいくいかない、あるいはそれを超えても、その時の経済・金融情勢をみながら運営していくということだと思います。ただ数字だけみるものではない、それがフレキシブル・インフレーション・ターゲティングの根本ではないかと思います。それは前から変わりません。

§19Question

講演の中でマクロ経済スライドが年金受給者に与える影響を指摘されていますが、この考え方を金融政策との関係でもう少し教えてください。また、量的・質的金融緩和が続くと実体経済の活性化が行き過ぎ、金融システムにリスクが蓄積していくのではないかというご指摘もありますが、これについても考え方を教えてください。

§20Koji Ishida

後者の質問は、続けていくとリスクが蓄積するということではなく、続けていくとそうなるのかならないのかをよくみていこう、ということでありますので、続けると必ずリスクが蓄積してしまう、ということではありません。なぜこういうことを考えなければならないかと申しますと、もともと日本銀行法には、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」ということと、「資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」という2つの目的があります。量的・質的金融緩和については、金融政策で物価安定のために行っている訳ですけれど、その性格上、資産価格への働き掛けや、或いは金融機関の金融行動に働き掛けるという政策でありますので、一層、金融安定の観点からみていく必要があると思っています。もう一つの質問は、年金というのは、年金の支給が法律で決まっており、歳を取れば年金受給者になる訳ですから、日本銀行の政策として何かしていくのは難しいところがあります。みていく要素としては非常に大きくなるのではないかと思います。年金受給者が増え、かつ年金のマクロ経済スライドもあるため、将来に向けては、実質年金の減少という問題が起きてくるため、年金以外の所得をどう作っていくのかといった、金融政策からは離れた問題になっていくのではないかと思います。

§21Koji Ishida

それでなくても、人口減少のもとで人手不足が叫ばれている訳ですから、高齢者の働き方の工夫とか、あるいは税制上の工夫とかあれば、いろいろな形で年金受給者層の所得自体を増やしていく方策があるのかもしれません。そういうものも含めて、構造改革の中に取り込まれていくのではないかと期待しております。以上