総裁定例記者会見(2015年12月18日)要旨
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§1Question
本日の決定内容について改めて総裁のご見解をお聞かせ下さい。
§2Haruhiko Kuroda
本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。資産買入れに関しては、本日、「量的・質的金融緩和を補完するための措置」を賛成多数で決定しましたので、後ほどご説明致します。わが国の景気についてですが、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けていると考えています。従って、総括判断は「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている」としました。やや詳しく申し上げますと、海外経済については、新興国経済は減速していますが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いています。そうしたもとで、輸出は、一部に鈍さを残しつつも、持ち直しています。先行きについては、先進国を中心とした成長が続き、その好影響が波及することなどを背景として、新興国経済は減速した状態から脱していくと考えられます。それに伴い、輸出は、既往の円安による下支え効果もあって、緩やかに増加していくと考えられます。鉱工業生産は、当面横ばい圏内の動きが続くとみられますが、その後は、輸出の増加や、一部の業種でみられている在庫調整の進捗などを背景として、緩やかに増加していくと考えられます。
§3Haruhiko Kuroda
また、企業収益が明確な改善を続ける中で、設備投資は、緩やかな増加基調にあります。先日公表した 12月短観の結果をみると、収益計画は全体としてさらに上方修正されたほか、企業の業況感も、一部にやや慎重な動きもみられますが、総じて良好な水準を維持しています。そうしたもとで、設備投資については、しっかりと増加させていく計画が維持されています。家計部門では、雇用・所得環境の着実な改善が続く中、個人消費は、底堅く推移しており、住宅投資も持ち直しています。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、 0%程度となっています。予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみられていますが、やや長い目でみれば、全体として上昇していると判断されます。わが国経済の先行きについては、緩やかな回復を続けていくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面 0%程度で推移するとみられますが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である 2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。2%程度に達する時期は、2016年度後半頃になると予想していますが、原油価格の動向によって多少前後する可能性はあります。
§4Haruhiko Kuroda
リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。本日の決定会合では、以上の方針、すなわち、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、必要なら躊躇なく調整を行うという方針に沿って政策運営を行う上で、2 つの観点からこれを補完することが適当であると判断しました。第 1 に、「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れをより円滑に進めることを可能にすること、第 2 に、「量的・質的金融緩和」の効果が、企業部門をはじめとする実体経済により効果的に浸透していくようにすることであります。第 1 の点については、日本銀行が多額の国債買入を進めるもとで、金融機関の適格担保が減少していることを踏まえ、適格担保の範囲を拡大することとしました。
§5Haruhiko Kuroda
また、来年は本行保有国債の償還額が増加し、グロスベースの国債買入額が増大すると見込まれることから、国債市場の流動性を踏まえつつ、買入れをより柔軟かつ円滑に進めるために、国債買入れの平均残存期間を長期化し、かつ幅をもたせるようにしました。さらに、 J-REITについては、市場における発行残高との対比でみた日本銀行の保有残高が増加していることを踏まえ、銘柄別の買入限度額を引き上げることとしました。第2 の点については、「量的・質的金融緩和」のもとで企業や家計のデフレマインドは転換してきており、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いと判断しています。ただ、そうした動きには、業種や個社ごとにバラツキがあり、全体としては、さらに広がっていくことが望ましいことも事実です。そこで、日本銀行として出来る限りのサポートを行うこととしたものです。
§6Question
先日FOMCで利上げが決定し、その後も中東や南米などで追随する動きが出ています。今回の会合ではどのような議論もしくは評価がなされていますか。世界経済、日本経済への影響を含めてお答え下さい。
§7Haruhiko Kuroda
FRBの政策運営について、私の立場から具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。その上で申し上げれば、FRBが利上げを開始した基本的な背景には、極めて良好な雇用・所得環境などを映じて家計支出が堅調に推移するもとで、米国経済が回復していることがあります。そのことは、世界経済にとっても望ましいと考えられます。実際、利上げ決定を受けた各国金融資本市場の反応は概ね落ち着いたものとなっています。FRBは今後も、米国の経済・物価情勢等を見極めながら、適切な金融政策運営を行うと考えています。米国経済の動向あるいはそのもとでの金融政策運営、それらが国際金融資本市場や世界経済に与える影響については、引き続き注意深くみて参りたいと思っています。金融政策決定会合における政策委員方の議論も、今申し上げたようなことでした。
§8Question
新興国経済などが懸念材料として挙がっていますが、先日の日銀短観でも、企業サイドの景況感は、足許横ばいながら先行きは軒並み悪化しています。物価見通しについても鈍りがみられたと思います。物価目標への影響について、改めて総裁のご見解をお聞かせ下さい。
§9Haruhiko Kuroda
先程も少し申し上げた通り 12月短観の結果をみますと、収益計画について、売上高経常利益率が業種・企業規模を問わず上方修正されるなど、収益の改善が続く姿が見込まれています。また企業の業況感は、確かに新興国経済の減速あるいは資源価格下落の影響から、一部にやや慎重な動きもみられますが、総じて良好な水準となっています。そうしたもとで、今後の設備投資計画については、この時期としては2006年度以来の高い伸びが見込まれており、企業の前向きな投資スタンスは維持されていると判断しています。このように、12月短観では、企業部門における所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと維持されているということが確認されたと思っています。もとより、企業の新興国経済の減速に対する懸念が払拭されたわけではありませんので、企業マインドやそれが企業行動に与える影響については、引き続きよくみて参りたいと思っています。なお、資源価格、特に原油価格の下落が物価に与える影響については、先程申し上げた通り、足許、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比は 0%程度で推移していますが、生鮮食品およびエネルギーを除いたところでみると、最近時点ではプラス 1.2%というところにきています。
§10Haruhiko Kuroda
いずれにしても、原油価格の動向については十分注視していきたいと思っておりますが、新興国経済の減速で日本経済自体が大きな影響を受けて、「物価安定の目標」が達成できなくなるというような状況ではないと思っています。
§11Question
今回の決定会合から、議事要旨に先行して「主な意見」を公表することが始まりますが、狙いなどについて、改めてご説明下さい。
§12Haruhiko Kuroda
日本銀行は、既に公表しています通り、今回の金融政策決定会合から、「主な意見」を作成して公表することになっています。初回の公表日は 1月8日です。来年1月以降の決定会合では、原則として、会合の6 営業日後に公表する扱いとしています。「主な意見」の作成に当たっては、まず、各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合において表明した自身の意見を、一定の文字数以内で要約し、議長である私に提出して頂きます。当面は、1 人が 300 字以内とお願いしています。これを、私の責任において項目ごとに編集して公表することにしています。「主な意見」の作成開始により、決定会合に関する情報発信の流れは次のようになります。まず第1 に、決定会合終了直後に、これまでと同様、「公表文」と「記者会見」を通じて決定内容とその背景についてご説明をします。第 2 に、6 営業日後に公表する「主な意見」により、各政策委員等が表明した意見を多数意見・少数意見を含めて公表します。第3 に、次回の決定会合後に公表する「議事要旨」により、経済・物価に関する認識から金融政策に関する決定に至る議論の過程を詳しくお示しすることになります。こうした一連の情報発信によって、日本銀行の経済・物価情勢の認識や金融政策運営の考え方が、よりタイムリーに伝わるものと考えています。
§13Question
今回の補完措置についてですが、これは金融緩和つまり黒田バズーカの第3 弾というような、そんな位置付けでいらっしゃるのかどうかをお聞きしたいと思います。それに関連して、おそらくこの措置によって、金融緩和をより長い期間続けていくことが可能になるかと思いますが、それは金融緩和の長期化というものを見込まれているのか、逆に言うとなかなか 2%達成は時間がかかると考えていらっしゃるのか、その考えをお願いします。
§14Haruhiko Kuroda
日本銀行は「量的・質的金融緩和」に関して、従来から、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うと述べています。今回の措置は、経済・物価見通しの下振れリスクの増大あるいは顕現化に対応するものではありません。輸出については判断を上方修正していますし、その他についても、短観では業種・企業規模にかかわらず、収益が上方修正されており、経済・物価見通しが下振れるリスクが増大するとか、顕現化したという状況ではありませんので、そうした意味での「必要な調整」という追加緩和には当たらないと思っています。むしろ、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にするということで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、物価安定目標の早期実現のために必要と判断した場合には、迅速に調整ができるようにするための措置であるということをご理解頂きたいと思います。物価安定目標については、先程申し上げた通り、来年度の後半頃に2%に達する見込みが高いとみています。いずれにしても、「量的・質的金融緩和」については、2013年4月に始めて以来、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続できるようになるまで継続するということを申し上げて2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットしています。その点はまったく変わりがありません。
§15Question
2 点あります。今週のFRBの利上げに対しては、マーケットは概ねポジティブに反応したと思うのですが、今回の決定会合で決まった補完的な措置については、株式市場が乱高下して日経平均も 360 円安で引け、マーケットにとっては波乱要因になりました。このマーケットのネガティブな反応を総裁はどのように受け止められておられるでしょうか。もう 1 点は、今回設備投資や人材投資に取り組む企業をサポートするということで、かなり踏み込んだ印象がありますが、なぜこういった企業を対象にしたETFを買うということになるのか、むしろこういった企業が積極的に人材投資や設備投資を増やすために、経営環境を良くすることこそが日銀がやるべきことではないかと思うのですが、なぜこれがETFを買うということにつながるのか、お伺いします。
§16Haruhiko Kuroda
市場の反応云々については、私から何か申し上げるのは差し控えたいと思います。今回の措置の趣旨は、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続して、必要なら躊躇なく調整を行うという方針に沿って政策運営を行う上で、2 つの観点からこれを補完することが適当だと判断したものです。繰り返しになりますが、1 つ目は「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れをより円滑に進めることを可能にすること、2 つ目は「量的・質的金融緩和」の効果が企業部門をはじめとする実体経済に、より効果的に浸透していくようにすることです。2 番目のご質問は、この第2 の点について関連していると思いますが、「量的・質的金融緩和」のもとでの金融の緩和は極めて大幅なものであり、最近の短観その他の指標にも表れている通り、企業側からみても金融機関側からみても、金融は極めて緩和された状況にあるということです。そうしたもとで、ポートフォリオ・リバランスを含めて様々なことが行われ、企業収益は今回の短観でもさらに上方修正され非常に良好な企業環境になっています。そうした中、実際に設備投資や人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いと判断していますが、やはり業種あるいは個社ごとに色々なばらつきがあり、全体としてさらに広がっていくことが望ましいということも事実です。
§17Haruhiko Kuroda
企業を巡る環境は極めて良好な状況になっていますが、まだ、今申し上げたようなばらつきがあって、全体としてはさらに広がっていくことが望ましいということを踏まえ、日本銀行としてできる限りのサポートを行うということにしました。ETFについて特別の枠を設けて、設備、人材投資を進める企業の株式を盛り込んだETFが組成されれば、遅滞なく支援しますし、当面はJPX日経400連動型に投資していきますが、これでは上場企業に限られてしまいますので、現在ある成長基盤強化のための貸出支援策を新たに拡充して、設備、人材に積極的に投資する幅広い企業に対する支援も行うことにより、両面からサポートを行うことにしました。おっしゃるようにある意味踏み込んだと言えると思いますが、それは企業を巡る環境がよくないということではなくて、日本銀行として既に十分によい事業環境になっていると思っており、そうしたもとで企業の努力もみえてきていますが、業種ごとのばらつきもあり、さらにこれを広げていくことが望ましいということに鑑みて、中央銀行としてできる限りのサポートを行うということにした、とご理解頂きたいと思います。
§18Question
今回の補完措置の趣旨についてと、もう 1 点お伺いします。念のための確認なのですが、巷で言われている「このままQQEを進めていても、いつかは限界が来るのではないか」という限界をむしろ意識されているからこそ、この限界を取り払うという措置を導入されたのではないかと見受けられるのですが、このまま行っても限界が来るのではないかという点についてご見解をお伺いしたいと思います。もう1 点は、先程も出ましたFRBの判断なのですが、マーケットが、非常に良好にといいますか落ち着いて受け止められたのも、かなり長い時間をかけて染み出してきた、織り込ませてきたという努力があったからだと思われます。そうしたやり方は、今すぐには実現しないにしても、日銀にとっても相当参考になるはずで、そうした手法について改めてどのようにご覧になっているかをお聞かせ下さい。
§19Haruhiko Kuroda
前から、「量的・質的金融緩和」について、当面、何か限界があると思っていないと申し上げており、今でもそう思っています。ただ、先程申し上げたように、「量的・質的金融緩和」で大量の国債を買っていく中で、金融機関によってはもう国債をすっかり売ってしまって、その他の担保が必要な先もちらほらとあるようです。トータルで限界があるとは全く思っていませんが、そういう声もあることを踏まえて、適格担保の範囲を広げることにしました。また、長期国債の買入れについても、今の時点で何か限界があるとは思っていませんが、来年にかけて日銀が保有している国債の償還がかなり増えますので、80 兆円をネットで増やしていくことになりますと、グロスでの買入れ額がかなり増えることにもなります。そうしたもとで、イールドカーブ全体を引き下げていくという「量的・質的金融緩和」の観点から言うと、短いゾーンに集中してイールドカーブを下げるのは適切ではなく、全体を下げていこうということですので、自ずと買入れの平均残存期間がだんだん長くなっていきます。7年~10年というところをすぐに超えるわけではありませんが、もっと幅広くイールドカーブ全体を引き下げられるように、7年~10年ではなく 7年~12年に広げて、より柔軟に、弾力的に国債買入れが進められるようにしたということです。
§20Haruhiko Kuroda
いずれも、限界があって何かできなくなるから云々ではなくて、買入れをより円滑に行い、イールドカーブ全体を下げていくという意味で、「量的・質的金融緩和」の趣旨に合うように緩和を進めていく観点から、こうしたことを予防的に進めていくことが望ましいと考えて実施したわけです。もう 1 つ、FRBの件ですが、先程申し上げたように、他の中央銀行のやり方について色々注文をつけたり、批評したりする立場にありませんが、FRBは米国経済の実態や金融資本市場の動向等を踏まえて、慎重かつ適切に金融政策を行ってこられていると思いますし、今後も米国の経済、金融市場の動向に即して運営していかれるものと思っています。
§21Question
今回の補完的措置についてですが、実際に買入れを増やされるのは2016年4月からと書かれていますが、このタイミングで打ち出されたのは、ちょうど春闘がこれから始まりますが、労働組合の要求も若干慎重な感じになっている中で、その辺のマインドを転換させるというようなお考えはあるのでしょうか。
§22Haruhiko Kuroda
春闘の前にまずは冬のボーナスの話がありますし、来年の春闘に向けての労使の色々な話し合いもあるでしょうから、私どももその行方を大変注視しています。それは事実ですが、それと今回の補完的措置を決定したこととは、直接的な関係は全くありません。この時期に決定する必要があったのは、まず第 1 に、来年にかけて貸出支援基金等の制度がこのままでいくと受付期間の終了を迎えてしまいますので、これをどうするかを決める必要があるということで、今回、それぞれ1年延長することにしました。それから「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れについても、銘柄別の買入れ上限に達するJ-REITが増加しつつあること、さらには先程申し上げたように、本行保有国債の償還が増加してグロスベースの国債買入れ額が増加する見込みがあること、そういった点も踏まえて、この際、より円滑に「量的・質的金融緩和」を実行するために対応したということです。「量的・質的金融緩和」のもとで、企業のデフレマインドは転換してきているとは思いますが、この動きをさらに広げていく必要もあると思っています。そういった意味で、本日の金融政策決定会合において、来年以降も「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れを円滑に遂行するとともに、その効果を実体経済により効果的に浸透させるということで、今回の措置を決めました。
§23Question
原油価格とインフレ期待の関係でお伺いします。先般、短観の中でも公表された企業の物価見通しが、全期間にわたって低下しました。また、ブレイク・イーブン・インフレ率やエコノミストの見通し等をみても、ややインフレ期待は低下傾向にあるのではないかと思います。やはり、原油価格の下落によって、足許の物価の低迷が続いていることで、既にインフレ期待にある程度影響しているのではないかと思うのですが、今回の措置も政策を迅速に対応するためとおっしゃっていましたが、やはりその上で、インフレ期待というのは正念場に差し掛かっているような感じは持たれていないのか、その点についてご説明をお願いします。
§24Haruhiko Kuroda
これも先程申し上げたように、いくつかの指標で将来のインフレ上昇率に対する予想、期待が下振れしているものがあることは事実です。ただ、その状況をみると、例えば短観の場合もそうですし、他のマーケットの指標、アンケート調査の状況をみてもそうですが、比較的短期の将来のインフレ予想がかなり大きく下がっている一方、中長期のものはほとんど、あるいは若干しか下がっていません。こうしたことからみて、このところ足許で原油価格がかなり低下してきたことから、ごく短期のインフレ期待が下がってきているということだと思います。中長期のインフレ期待はそれほど下がっていませんし、また、企業の価格設定行動をみても、今年の4月以降の価格改訂はしっかり続いています。東大あるいは一橋大学の日次・週次物価指数をみても高いところで推移しています。消費者物価指数の中の上昇品目と下落品目の比率の差も非常に高くなっています。ということは、物価の基調というものが、ごく限られた品目ではなく、かなり広い品目でしっかりと上昇基調にあるということだと思います。そういう意味では、原油価格の影響が足許の物価に出てきて、それからごく短期的な物価予想については、いくつかの指標では出てきていることは事実ですが、中長期の予想や企業の価格設定行動、さらに言えば賃金の上昇傾向等々については、特に弱まっているとはみていません。
§25Haruhiko Kuroda
ご指摘の予想物価上昇率が非常に重要な要素であることはその通りであり、私どもも、需給ギャップと並んで予想物価上昇率の動きを、色々な指標や企業、家計の行動を含めてよくみています。そういう意味で重要な要素であり、今後ともしっかり注視していきたいと思っていますが、今の時点で、これが非常に大きく下方に振れているということではないと思っています。
§26Question
個人消費については底堅いということですが、さらなる上昇に必要である賃金動向についての現状のご認識と、併せて個人消費に関連して、総裁ご自身の消費欲というのでしょうか、具体的に欲しいものは何か教えて頂けますでしょうか。
§27Haruhiko Kuroda
物価と賃金の関係から言って、賃金の動向というのは極めて重要な要素ですので、冬のボーナス、あるいは来年の春闘での賃上げの状況というものに強い関心を持っています。当然のことながら、それらが個人消費に大きな影響を与え、それがひいては消費者物価の動向にも影響します。 2%の「物価安定の目標」の達成の過程では、当然のことながら賃金が上昇し、消費も伸びていくことが不可欠の条件だと思っています。私個人について云々は、あまりご参考にならないと思いますが、以前はずっと何十年も車を運転していましたが、アジア開発銀行の総裁であった 8年間、それからこちらに参りましてからの2年半ちょっとの間は車を持っていませんので、運転していません。今はちょっと控えていますが、基本的には自分の車を運転するのが好きです。そのくらいです。
§28Question
総裁のご認識を 1 点お伺いします。今回の決定で、国債の少し長いところまで買う、これは「質」の変更に当たると思います。あるいは、ETFの枠を新たに 3,000 億円設定する、これも「量」を変えるということに当たると思うのですが、ただ、先程ご説明があったようなロジックで、いわゆるバズーカ第3 弾であるとは捉えていらっしゃらない、そこは分かります。そうであれば何か、ということですが、国債の少し長いところを買うことも含めて、これは従来の政策の「補完」であるというご認識でしょうか、あるいは「強化」するということでしょうか。
§29Haruhiko Kuroda
私どもは「補完」であると思っています。というのは、「量的・質的金融緩和」について、例えば、長期国債の買入れの平均残存期間をこれまでは7~10年程度を目途にやってきましたが、それを 7~12年に幅を広げたわけです。そもそも「量的・質的金融緩和」の発足以来、イールドカーブ全体を低下させる目的で、それまでは大量に買っていなかった長期国債も含めて購入することにして、イールドカーブ全体の低下を図ってきています。そうした中で、先程申し上げたように、来年はグロスでの購入額も大きくなりますが、短いところばかり買っていくことになると、イールドカーブ全体についてバランスを取って引き下げて行く面からは適切でなくなるおそれがありますので──具体的な買入れについては、今すぐ長期の方に一挙にシフトすることは考えていませんが──、よりフレキシビリティのあるマンデートに基づいて、執行部で適切に市場状況をみながらイールドカーブ全体を引き下げていくことに役立つと思っています。このように、「量的・質的金融緩和」を補完するものだと思っています。何か、追加緩和的なものだとは考えておりません。
§30Haruhiko Kuroda
それから、J-REITの方は非常に単純でして、購入の規模について、はっきりと年間約900 億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うことにしており、このままいくと比較的近い時期に――来年の半ば頃かと思いますが――、個別銘柄に関する 5%の買入れ限度のもとでは、900 億円の購入が難しくなってくるので、今から5%を超えて 10%までの範囲内で買えるようにするものです。何か「量的・質的金融緩和」の質を大きく変えるものではありません。あくまでも、「量的・質的金融緩和」を補完するという意味で、先程申し上げた、より円滑に進める意味で行うものであります。もちろん、その部分の変化はありますので、政策委員会で決定したわけですが、「量的・質的金融緩和」を追加したとか、大きく強化したとか、そういうものではないと思っています。
§31Question
今の点とも若干重なるのですが、J-REITの買入限度額の引上げについては、不適切なシグナルを送るとの懸念が示されたとのことですが、同時に適格担保の拡充でも住宅ローン債権を一括して受け入れることを決めています。これも不動産市場の刺激につながり得る内容であると理解していますが、他の企業向け債権などを対象にすることも考えられなくはなかったと思うのですが、不動産市場に誤ったメッセージを送るという懸念についてどのようにお考えですか。
§32Haruhiko Kuroda
J-REITの個別銘柄別毎の買入限度額を 5%から 10%に引き上げる点については、公表文の 4 ページの(注 3)にありますように、石田委員が「買入限度額の引き上げが不動産市場に対する不適切なシグナルとなる懸念がある」として反対されたことは事実ですが、他の方は、この点についてはそうした懸念はないということで賛成をされています。それから、日本銀行適格担保の拡充については、全員一致で賛成されています。現在でも円建ての証書貸付債権は適格担保になっていますが、外貨建てのものはなっていなかったので、これを加えてもおかしくはないと考えました。そして、住宅ローン債権は、個別にはさほど大きな金額ではありませんが、これを一括して信託受益権にして取引することは、実は市中では広く行われていますので、日本銀行としても適切なものであれば担保として受け入れましょう、ということです。ちなみに、金融機関の保有残高という意味では、本年9月末の時点で、国内企業向けの米ドル建て証書貸付債権は約 10 兆円、住宅ローン債権は約 130 兆円あるということです。
§33Haruhiko Kuroda
もちろん、このうち実際にどの程度の金額が適格担保として差し入れられるかについては、各金融機関の担保繰りや経営上の判断に依存しますので、予め申し上げることはできませんが、潜在的に適格担保となり得る資産の範囲を拡大しておくことは、国債の買入れを将来も円滑に進めるという意味では適切なものではないかと思います。そして、先程申し上げた通り、適格担保の拡充については全員一致で合意がされたということです。
§34Question
日銀が指標としているドバイの価格ですが、7月の段階では 60~70 ドル程度に想定されていました。10月展望レポートの時には、出発点が 50 ドルに下方修正されました。足許はもう30 ドル前半まで下げています。1月にまた展望レポートを作るわけですが、想定をまた 30~40 ドルに変えれば、当然のようにコアCPIの見通しは下方修正されると思います。今のところ、16年度は 1.4%になっていますが、1%程度には少なくとも下がるのではないかと思われます。日銀あるいは黒田総裁がすごく注視されている春闘の直前に、日銀が来年度は 1%、今年度はゼロ、そういう数字を出すこと自体は、春闘に向けてすごく誤ったメッセージを発することになるのではないかと思いますが、如何でしょうか。連合が去年よりも若干腰が引けた「 2%程度」という要求をしていることに、腰砕けだというような感想も漏れているわけですが、日銀がそういう数字を出さざるを得なくなってくれば、当然のようにやはり、期待インフレがデフレに戻らないように強い対応が必要になってくるのではないかと思います。今日の対策ではあまり十分だとは思いません。やはり、1月にそういう状況になれば、これは強い意志を示す絶好の機会ではないかと思いますが、如何でしょうか。
§35Haruhiko Kuroda
まず、原油価格の動向については、これは誰も予想できないわけでして、展望レポートを作る時には、足許の状況、それから──従来からこれは日銀だけでなくIMFとかその他国際機関もそうしていますが──、先物価格の状況を踏まえて、原油価格がどのように動くかという前提を置いて見通しを作っていますので、その時点になってみないと分からないということです。第2 点の賃金の動向については、先程来申し上げています通り、極めて大きな関心を持って注視していますし、冬のボーナス、来年の春闘は非常に重要だと思っています。その上で、連合の来年の春闘に向けての要求に関する議論をみますと、足許での物価上昇率がゼロ近傍になっていることは除いて、むしろ、様々な指標によって物価の基調をみつつ、さらには大企業のみならず中小企業その他下請け企業等に広く賃上げが波及するように、というようなことを言っておられるようですので、今言われたようなことは当たらないのではないかと思っています。なお、いずれにしても、来年の展望レポートのタイミングで入手し得るあらゆるデータを基に、適切な見通しを作るということに尽きると思います。
§36Question
2 つございます。米国が利上げをしましたが、米国の長期金利がさほど上がっていなくて、これが米国のみならず、世界経済の長期スタグネーションの暗示ではないかという暗い見方もありますが、総裁の見方を教えて下さい。2 つ目ですが、安倍総理に近い経済学者の方で、消費税10%を実現するときの必要条件として、物価安定目標 2%達成を挙げる方が最近少し増えているのですが、その辺について総裁のご所見をお願いします。
§37Haruhiko Kuroda
FRBの利上げについては、先程申し上げたように具体的なコメントは差し控えたいと思いますが、基本的には米国の良好な雇用所得環境などを反映して、家計支出がきわめて堅調に推移していますし、そうしたもとで米国経済が回復しているということがあって、そういう決定をされたのだと思っています。そのことは言うまでもなく、米国経済は世界最大の経済ですから、世界経済にとっても好ましいと思っています。そのもとで、米国あるいはその他の国の長期金利がどのように推移するかについては、それぞれの国の経済状況等を反映して動いていくということであり、今後とも米国を含めて各国の金融市場の状況は十分に注意していきたいと思います。長期停滞論は米国の一部の学者が強調していますが、それが通説になっているわけではありません。むしろ米国における金融危機が米国を原点として欧米に波及したわけですが、そういった金融危機の後というのは、なかなか成長率もすぐには元に戻りにくいのだと思います。現に米国経済は着実に回復していますが、危機前の成長率にすんなり戻っているわけではまだないので、そういったことも色々と影響しているかもしれません。しかし、必ずしもいわゆる長期停滞論が通説になっているわけではないと思っています。米国の利上げの影響、米国内のみならず、世界経済に対する影響は引き続きよくみていきたいと思っています。
§38Haruhiko Kuroda
消費税については、税の問題全般がそうですが、基本的に政府及び国会において決められることでして、私からとやかく申し上げることは差し控えたいと思います。なお、2%の「物価安定の目標」に向けて、日本銀行としては最大限の努力を払っており、現時点では、2016年度後半頃に 2%程度になるという見通しです。いずれにしても 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現すべく、引き続き全力を上げていきたいと思っています。
§39Question
補完的措置についてですが、総裁が就任されて最初に異次元緩和を導入されたときに、それまでの白川総裁の時代にとっておられた様々な措置が、一種温泉の旅館の建物が継ぎ足しでできているような感じでわかりにくかったのに対し、一本化されて極めて分かりやすいメッセージになったと思うのです。今日の措置は残念ながら色々な付けたしをしたことで、また温泉旅館の継ぎ足しのような印象も出てくるのですけれども、それでよろしいのかというのが 1 点目です。もう 1 点は、次の措置をとるときはかなりクリアなメッセージを発出しないことには、なかなかマーケットに届かないという感じがします。その辺のご所見をお伺いしたいと思います。
§40Haruhiko Kuroda
以前の金融政策について色々と申し上げるのは僭越だと思います。2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際に申し上げた通り、戦力の逐次投入はせず、思い切った対応をして強いコミットメントをするということで始めました。昨年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大の時も、特に、やや弱めの消費、それよりももっと大きかったのは原油価格が大幅に下落し、このままいくとデフレマインドからの脱却が遅れるどころか逆流して、インフレ期待が大幅に下がってしまうという懸念があったために、これまた戦力の逐次投入をせずに、大規模な「量的・質的金融緩和」の拡大をしたわけです。今回の措置は、先程も申し上げたように、経済見通しとかリスクの増大に対応したものではありません。実際、先程申し上げたようにいくつかの指標はむしろ改善しています。ですから、そういった意味で 2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入、あるいは昨年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大とはまったく性質が違っています。これは、「量的・質的金融緩和」を円滑に進めていくために行ったものであり、そういう意味で「量的・質的金融緩和」を補完するものであって、いわゆる追加緩和といったものではありません。今回の公表文自体にもはっきりと「量的・質的金融緩和」を補完する措置ということを申し上げています。
§41Question
今回、12月をこの一連の措置を発表するタイミングとして選ばれた理由に、米国のFRBの政策変更を確認した上で動いた方が望ましいというお考えはあったのでしょうか。また、仮にそうである場合なのですが、金融引き締めに転じたFRBとは異なり、日銀はあくまでも緩和の姿勢を全く変えていない、崩していないということをマーケットに改めて強調されたいという狙いはあったのでしょうか。もう 1 点、先程の質問と少し重なってしまうのですが、やはり、QQEを発表された時に、総裁は、第1 に戦力の逐次投入はしない、第 2 に政策を分かりやすく伝えると説明されました。ただ今回、私だけでしたら何ですが、正直、分かりにくいなと思いました。総裁は「追加緩和ではない」とおっしゃっていますが、実際にETF購入額が増やされていたり、国債買入れの残存期間の延長が入っていたりして、市場に逐次投入と受けとられてもおかしくないような形になっており、そういった意味で、今回の措置で日銀の政策姿勢がむしろ分かりにくくなったのではないかと感じたりもするのですが、その点、総裁はどのようにお考えでしょうか。
§42Haruhiko Kuroda
FRBの政策をみて、その後でやったというようなことはありません。先程申し上げたような措置が必要な時期に来ていたわけですので、それに沿って素直に、こうした補完的な措置を決めたということです。2 番目の「分かりにくいのではないか」という点は、QQEの導入、あるいは昨年の拡大といった時は、それぞれ経済見通し、リスク等々を踏まえて、かなり思い切った措置の導入あるいは拡大をやったわけです。今回はあくまでも、現在行っている「量的・質的金融緩和」の円滑な推進、あるいは実体経済に対する効果をより明確にするという観点から実施したものです。措置がいくつかあって、その多くはかなり技術的なものですので、若干分かりにくいというご指摘があるとは思いますが、先程ご説明したように、基本的には、第1 に「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れをより円滑に進めること、第 2 に「量的・質的金融緩和」の効果が企業部門をはじめとする実体経済により効果的に浸透していくようにすることが狙いです。経済・物価見通し、あるいはリスクの増大や顕現化というようなことがあって、追加緩和をしなければならない時には、当然、思い切ったことをやる必要があると思っています。
§43Question
今回の補完措置に関しては、3 項目で 3 人の審議委員が反対していらっしゃいます。このところ審議委員の中には、早期の 2%達成にやや懐疑的ともとれる意見・発言が以前より増えているような気がしなくもありません。以前に比べて委員会運営が少し難しくなっているようなことはないでしょうか。2 点目として、今日、市場に正しく理解されたかどうかは別にして、日経平均株価が乱高下してしまいました。ちなみに、ECBも 12月初旬の追加緩和でマーケットを大きく失望させるというように受け止められています。今年1年を振り返って、中央銀行のマーケットとのコミュニケーションが以前よりだいぶ難しくて過敏なことになってきたといった感想をお持ちではないでしょうか。
§44Haruhiko Kuroda
第 1 点は、政策委員会のメンバーは、執行部である総裁と 2 人の副総裁の3 名、そして6 名の審議委員の方が任命されているということであり、執行部の 3 人も含めて全てそれぞれが独立して自分の考え方を述べ、みんなで議論して多数決で結論を出していくというのがこの合議体による金融政策の決定ということで、今や基本的に先進国は殆ど全てそういう形になっています。そうした中で、様々な意見が出ること自体はなんら不思議でないと思っていますし、昨年の「量的・質的金融緩和」の拡大を 10月末に決めたときも 5 対 4でした。今回の公表文をみて頂きますと、3 つの項目で全員一致で、3 つの項目で6 対 3 ということになっています。色々な意見があるということ自体は極めて自然なことであろうと思っています。もう1 つのご質問は、よく言われることですが、伝統的な金融政策の時にはコミュニケーションが容易で、現在多くの主要国で行われているような非伝統的政策の時に難しいということではないと思います。中央銀行の金融政策というのは、常にその時々の経済状況にあわせて適切なことを行います。市場の期待とか色々なものをみながら──それが金融政策を決めるわけではありませんけれども──適切な金融政策を決定し、あるいは必要に応じてフォワードガイダンスというか、そういったものを織り込んでやっていくということです。
§45Haruhiko Kuroda
特に今年になって難しくなったとか、そういうことはないと思いますが、いずれにしても、色々な意見が全世界を駆け巡るということは避けられないわけです。今後とも適切な市場へのコミュニケーションには努めて参りたいと思います。
§46Question
今日の新しいETFのプログラムについてですが、端的に言うと、これを通じて賃上げや設備投資をしている企業を助けるということだと思うのですが、世界をみてもここまでやっている中央銀行はないと思います。これに関して、ここまでやらなければいけない日本経済ということと、逆に言うと、こういったことをしていない企業は助けないということにもなり得ると思うのですが、これらの点についてご見解をお願いします。また、総裁は賃金上昇について、春闘について重大な関心をお持ちですが、日本銀行で、支店のネットワークを使って、どの程度賃金が上がるかなどの調査はされているのでしょうか。
§47Haruhiko Kuroda
前段については、例えば貸出増加支援は、 BOE も“Funding forLending Scheme” という形で行っていまして、日本銀行も行っています。ただ、日本銀行が行っている成長基盤強化支援やETFの購入などは、他の中央銀行では行っていないと思います。他方で、FRBなどでは、非常に期間の長いABSを大量に購入したということもあります。このように、中央銀行によって色々と違いはあると思いますが、日本銀行としては、 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、できることは何でもやるということで、金融政策を運営しています。今回導入された諸措置は、「量的・質的金融緩和」が実体経済に、より浸透しやすくするための補完的な位置付けであることをご理解頂きたいと思います。春闘については、重大な関心を持って見守っています。私どもも、様々なデータを収集し、それに基づいて経済の動向を十分詳細に分析して、金融政策に役立てていますし、今後も役立てていきたいと思っています。
§48Question
2 点伺います。1 点目は、安倍政権が官民対話で、経済界に設備投資の上積みと賃上げを求めています。今回の日銀の措置は、安倍政権をサポートする狙いがあるのかどうか。もう 1 点は、出口政策について伺います。昨日のFRBの利上げですが、テーパリングから利上げに向けて、2年以上の準備から実施まで随分時間が掛かりました。とすると、日銀の場合はまだ異次元緩和を非常に強化する段階にあるわけですから、なかなかテーパリングまでも距離が遠いと思います。黒田さんの任期はもう折り返しを過ぎましたが、黒田さんの任期中には、ゼロ金利解除は難しいという、そういう理解でよろしいでしょうか。
§49Haruhiko Kuroda
後段から先に申し上げますと、出口については何回も申し上げている通り、まだ 2%の「物価安定の目標」へ向けて途半ばですので、出口の具体的なイメージとして、どういうことをどのようなタイムラインでやっていくかを語るのは、あくまでも経済・物価情勢、さらには金融資本市場の動向等も踏まえて、最適な方法で臨むことになりますので、時期尚早だと思います。前段については、私どもの考え方は先程申し上げた通りで、「量的・質的金融緩和」の補完です。まさに、既に企業や家計のデフレマインドの転換は進んでおり、特に企業を巡る状況は、金融環境も収益の動向も大変好ましい状況になっており、既に設備投資や人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いと思っています。ただ、そうした動きには、先程申し上げたように、業種や個社ごとのばらつきがあり、全体としてはさらに広がっていくことが望ましいことも事実です。そこで、日本銀行としてできる限りのサポートを行うようにしたものであり、あくまでも「量的・質的金融緩和」を進めるうえで、より好ましい方向へのサポートを行うということです。
§50Haruhiko Kuroda
それが、安倍内閣が進めている成長力の強化であるとか、今ご指摘の、官民対話で設備投資や賃上げを促していることと平仄が合っているとは思いますが、政権をサポートするということではなく、あくまでも「量的・質的金融緩和」の下での、効果の発現を促すという意味で、適切なものとして決定したものです。以上