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Bank of JapanPress conferenceAug 4, 2016Kikuo Iwata, Deputy Governor

岩田副総裁記者会見(2016年8月4日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

2 点お尋ねします。午前中の金融経済懇談会で、議論された内容、出席者の方から要望を受けた点について教えて頂きたい。もう 1 点目が、懇談会の議論を踏まえまして、神奈川県の経済に関する副総裁のご見解をお伺いしたいと思います。

§2Kikuo Iwata

本日の懇談では、神奈川県の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話やご意見等を多数お聞かせ頂くことができました。極めて有意義な意見交換ができたものと認識しております。まずは、ご出席頂いた方々や、関係者の皆様に深くお礼を申し上げます。本日の懇談会では、ご意見が多岐にわたったため、すべてを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げます。まず、足許の当地企業の景況感については、非製造業は比較的堅調な地合いにあるといったご意見が聞かれた一方で、製造業においては、海外経済の成長鈍化や年初来の為替円高に伴い、収益が下押しされているといったご意見が聞かれました。また、当地では、インバウンドによる地元経済への波及効果は他の大都市に比べて小さく、観光面を中心にインバウンドの増加に繋げる取組みを更に強化しなければならないとのお話もありました。このほか、このところ労働需給は一層引き締まっており、今後の高齢化や人口減尐を勘案すると、外国人労働者の活用も含めて対応を検討していくことが必要だとのご指摘もありました。そうした中で、県経済の一段の活性化に向けて、様々な取組みが行われているとのお話も伺いました。

§3Kikuo Iwata

具体的には、神奈川県や横浜市では、今後の高齢化や人口減尐を見据え、特区を活用しつつ、医療関連や人手不足を補うロボットの分野で新しい産業の育成に取り組んでいるお話を伺いました。また、横浜を象徴する「港」について、物流機能の強化に加えて、観光振興の観点からも埠頭や客船ターミナルの整備も進めていく方針にあるとのお話も聞かれました。金融界の方々からは、地元中小企業向けの貸出は着実に増加しているが、経営者の高齢化が進んでいるため、事業承継のサポートなどを通じて経営者の若返りの促進に力を注いでいるとのお話を伺いました。最後に、日本銀行に対しては、経済の好循環や持続的な成長に繋がっていくように、金融政策の適切な舵取りをお願いしたいとのご意見を承りました。そうしたご意見を伺って、私の印象、あるいは先行きの課題についてお話したいと思いますが、神奈川県の金融経済の現状については、先月、横浜支店が公表している通り、百貨店で衣料品等の販売が冴えないなど、個人消費に弱い動きがみられていることから、今年の春以降、回復の動きが一服しています。もっとも、雇用・所得環境をみると、神奈川県内を勤務地とする有効求人倍率が統計公表以降最も高い水準となる中、所定内給与も 12 か月連続で上昇しているなど、確りとしていますので、所得から支出へという形で個人消費に波及してくることが期待されます。

§4Kikuo Iwata

また、短観調査における県内企業の今年度の設備投資計画をみると、製造業を中心に、既存設備の維持・更新投資に加えて研究・開発投資や能力増強投資も含めて、かなり積極的に行う計画にあります。さらに、住宅投資では、住宅ローン金利の低下を背景に持家や分譲住宅の着工が増加しています。こうした動きのほか、今後政府による経済対策なども加わり、県内経済に前向きな循環をもたらすことが期待されます。神奈川県経済に対する印象については、産業の中心が製造業から非製造業へと移り変わっていますが、高齢化や人口減尐が進展する中でも、将来の成長・発展に向けた有望な分野が尐なくないと感じました。先程も申し上げました通り、神奈川県では、「東京圏国家戦略特区」、「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」、「さがみロボット産業特区」の3 つの特区指定を受け、県内各地で官民一体となって新たな産業の育成に取り組んでおられます。また、首都圏に位置するという地理的な優位性に加え、圏央道などの交通網の整備が進んでいることから、大型物流施設や商業施設の新規立地も増えています。

§5Kikuo Iwata

このほか、歴史や自然、都市型施設などバラエティに富んだ観光資源の存在に加え、ラグビーワールドカップや東京オリンピックのセーリング競技など、世界的なスポーツイベントの誘致にも成功するなど、国際的な観光都市としての明るい話題も多く、非常にポテンシャルの高い地域だと思っています。今後、高齢化や人口減尐が進展していく中で、どのように対応していくかという課題もあるかと思いますが、当地のポテンシャルが最大限引き出され、更なる成長・発展に向けて力強く歩まれていくことを期待したいと思っております。私どもとしては、中央銀行の立場から、物価安定の下での経済の持続的成長の実現や金融システムの安定性を確保するともに、神奈川県内の金融経済情勢について、横浜支店が今後もきめ細かい調査、広報活動を続けることを通じて、当地の皆様の努力がより大きな実りへと繋がっていくようサポートしてまいりたいと考えております。

§6Question

黒田総裁は、2日の麻生大臣との会談後、検証の結果として、緩和縮小の方向にはならないと思うといった趣旨を述べましたが、岩田副総裁も同様のお考えでしょうか。つまり、現状の3 次元での緩和を維持、または強化する方向での検証ということでしょうか。あるいは個人的な見解として、検証の結果、3 次元を軸にした政策を見直すべきかと考え得るのか、やはり 3 次元は軸になるのか、お考えをお聞かせ下さい。

§7Kikuo Iwata

「総括的な検証」に関するご質問だと思います。「量的・質的金融緩和」の導入から3年半くらい経って、色々経験・知見も積みましたので、それでもまだ 2%という「物価安定の目標」を達成できていない状況を踏まえ、できるだけ早期に達成するために何が必要か、逆に言うと、 2%に達成しなかった阻害要因は何かということを、きちんと検証することが目的です。従いまして、この検証の結果、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く達成するわけですから、今までの金融緩和の程度を縮小するといったようなことはあり得ないと思います。これまで、「量」・「質」・「金利」という3 次元を駆使してきましたが、2%の「物価安定の目標」の早期実現のために、どういう組み合わせが一番よいかということを、これから検証していくということです。金融政策の緩和の程度を緩めるというようなことは、元々あり得ないと思っています。

§8Question

土曜日の一部報道で、「総括的な検証」の中で、「物価目標2年を撤回」というような解説報道がありましたが、ご所見をお願いします。仮にそういう提案がボードの中であるとすれば、副総裁はどちらかというと賛成なのか、反対なのか、お願いします。

§9Kikuo Iwata

前々から申し上げている通り、日本は 15年間もデフレが続いていましたので、大体どのくらいの期間を念頭に置いているのかを示さないと、日本銀行のコミットメントは弱い、あるいは決意が伝わらない、ということで2年程度の期間を念頭に置いているということを申し上げたわけです。実際にはもう 3年強経ってしまいましたが、2年程度を念頭に早期に達成するという基本的な初心は変わらないということです。ですから、その文言を色々変えるつもりはありません。

§10Question

2 点あります。総括検証の力点が委員によって違うというお話が講演にありましたが、岩田副総裁の力点がどこにあるのか教えて下さい。それと、2%の「物価安定の目標」の早期達成のために、効果の阻害要因を検証するというのは、いつも会合でも行っていることではないかと見受けられるのですが、通常の会合と今回の総括検証がどう違うのか、尐し説明頂ければと思います。

§11Kikuo Iwata

総括する場合の力点の置き方が委員によって違うというのは、政策委員の自由な考え方を縛ることはできないという意味です。もともと総括の目的は、2%の「物価安定の目標」の達成をできるだけ早くするためのものです。これまで達成できなかった理由 ――これは金融政策以外にもあるかと思いますが――を検証し、最適な金融政策のあり方――今の考えでは「量」・「質」・「金利」という 3 次元ですが――を検証し、実際の金融政策の運営にも反映していくということです。そういうことは、いつも行っているのではないかというご質問ですが――確かにいつも行っているのですが――、今回の場合にはそれを集中的に行うということです。日銀の執行部でも様々な研究が実はあります。2%の「物価安定の目標」の達成が遅れている理由であるとか、予想インフレ率が日本ではどのように形成されているのかとか、予想インフレ率が下がっているのはどうしてかとか、色々な研究があります。そういう研究に加えて、さらにマイナス金利の効果や、マイナス金利と例えば大量の買入れを加えた場合にどういう効果が出てくるのか、そういったようなことも、更にもっと研究を深めなければなりません。これから 6 週間、執行部にそれを研究してもらい、それをどう判断するかを政策委員会で議論するということです。

§12Kikuo Iwata

もちろん、私も個人的には色々なことを研究しているわけですが、執行部には専門家がたくさんいますので、まずは専門家に十分な時間を取って検証してもらいます。次に総括で、考えられる要因はすべて網羅して、徹底的に議論するという意味では、今までの通常の会合とは尐し違った意味があるということです。

§13Question

講演資料についてお伺いします。9 ページの一番下に「政策効果の波及メカニズムやそれを阻害した諸要因など」と書かれていますが、ここで言われている阻害した要因というのは、副総裁の念頭にはどういうものが置かれているのか。また、それは結局政策の副作用も含まれて言われているのか、その辺をお伺いします。

§14Kikuo Iwata

それは、むしろこれから検証することによって明らかになってくると思います。ただ、自分自身の考えでは、いくつか阻害要因があります。いつも言っていますが、2014年に向けて物価や予想インフレ率が上がってきたところに、例えば、消費税増税があって、それが予想インフレ率を下押ししてしまったとか、その後原油価格が急落して4 分の 1 くらいになってしまったとか、そういったことです。こういった逆風に金融政策がどう対処すべきなのかということです。逆風への対応として、「量的・質的金融緩和」の拡大やマイナス金利の導入を行いましたが、それらがどのような効果を持ったのかといったことを、きちんと把握し、それが事後的には適切だったのかどうかということも含めて――今後も色々な逆風が生じてくる可能性がありますので――、きちんと検証し、最適な金融政策を考えていきたいということです。

§15Question

国債市場についてですが、今週前半、結構売りが出てイールドが上がりました。この日銀の総括検証によって、国債の買入れ額を減額するのではないかという話が海外の投資家に広がっているようですが、減額の可能性について、また先般の国債市場の動きについて、副総裁のお考えをぜひ聞かせて下さい。

§16Kikuo Iwata

早期に 2%の「物価安定の目標」を達成するという前提での検証になります。「量」・「質」・「金利」の 3 つの組み合わせがどうなるかは前もっては申し上げられませんが、「量」を減らすとか、「質」を減らすとかいう、金融をむしろ引き締める方向ということは考えられないと思います。

§17Question

今回の追加緩和はETFの増額に止まり、マネタリーベースの増加とか国債の買入れ増額がなかったわけですが、量の拡大の効果について、副総裁は現在どのようにお考えでしょうか。

§18Kikuo Iwata

今回はブレグジットが直前にあり、世界経済に対する不確実性・不透明性が非常に高まったわけです。それによって、リスクテイクに影響が及んだので、そういう不確実性に対する政策としては、リスクプレミアムに働きかけるETFの増額が一番効果的であろうということと、ドル調達コストがかなり上がっているので、ドル資金調達を支援するという意味で、2 つの措置を採ったわけです。量に限界があるから今回国債の買入れを増額しなかったわけではありません。

§19Question

7月の追加緩和に関しては、世界経済の不確実性に対応するということでしたが、3 つの次元というところで、なぜマイナス金利の深掘りを今回選ばなかったのか、その理由について教えて頂けますか。

§20Kikuo Iwata

不確実性の場合には、リスクプレミアムに働きかけるのが一番よいということで、今回はETFを増やすことで十分と判断したわけです。しかし、今後については、必ずしもそれだけで十分かどうかはわかりません。というのも、2%の「物価安定の目標」の達成は遅れていますので、それを達成するためには、「金利」の深掘りがいいのか、そうではなく「量」と「質」で対応したらいいのか、それとも3 つを全部組み合わせた方がよいかとか、そういったことをもっと色々な今までの知見を踏まえて行わないと、日銀が意図した方向に必ずしも市場が動かないこともあります。このため、きちんと検証し、きちんとした研究を踏まえて、政策を練っていくということです。

§21Question

次回の検証で、世上の一部などで、国債の買入れが結構限界にきているということで、国債の量を、長期金利が上昇しない程度の買入れにある程度減らして、かつマイナス金利を深掘りすることで全体としては緩和的な環境を維持するような変更がされるのではないかという観測がありますが、そういった、片方を緩和方向で、片方を若干縮小方向にするような判断をされる可能性はありますか。

§22Kikuo Iwata

先程申しました通り、どういう組み合わせがよいのかをきちんと検証し、もっと確信を得てから今後の政策対応を検討するわけですので、その結果がどのようになるかは、今は申し上げられません。実際に何がよいかについても、多数決で決めなければなりませんので、事前に色々な人が憶測しているかもしれませんが、深掘りはもうしないとか、深掘りをやめてこうする、ああするということは、検証前に言えることではありません。次の政策決定会合で、検証結果についてはっきり申し上げるということです。

§23Question

物価目標の早期達成のために、3 つの次元の組み合わせを考えるということですが、日銀はこれまで、この3 つがあって、早期に「物価安定の目標」が達成できると言ってきたのだと思います。「組み合わせを考える」と聞くと、どれかを増やすとか減らすと聞こえますが、その点は如何でしょうか。要するに、3 つの中の組み合わせをどうしたらよいのか、それは毎回の経済や金融市場の情勢によって決めることであって、今後、 2%を達成する前にこれで行こうと決めるということでしょうか。

§24Kikuo Iwata

9月に検証する結果は、経済情勢の違いによって色々な不確実性があります。9月には検証の結果一番よいとなった政策も、時間が経過すれば、経済情勢が違うかもしれませんので、改めて適当な政策をまたその時の金融政策決定会合で決めていくことになります。しかし、それは「総括的な検証」を経た結果の知見を活かしているということです。ですから、9月に検証した結果をどんな経済情勢になっても維持するということを申し上げているわけではありません。検証を踏まえたうえで、その時々の経済情勢を考えて、どういう下振れリスクがあるかということも考えて、早期に「物価安定の目標」を達成するための手段を、毎回毎回の金融政策決定会合で決めていくことになります。その前提が総括であり、総括なしにはそういうことはしないということです。

§25Question

マイナス金利について、副総裁は今日の講演の中でも、様々な影響を与えていると言っています。ご存知のように、マイナス金利について銀行の方で不満をおっしゃっている方もいます。早期の 2%の「物価安定の目標」の達成にインフレ期待が重要だとすると、そこまで大きなプラスの効果が今出ている感じではないように思うのですが、マイナス金利政策について、更に深掘りするのはやめようという結論に達する可能性についてはどうお考えですか。

§26Kikuo Iwata

それもやはり、検証の結果だと思います。検証によってメカニズムが分かれば、こういう経済情勢の場合はこう対処すべきだとか、こういう経済情勢に変わればこう対処すべきだということが導けると思います。検証、あるいは研究を経なければ、事前になかなか言えないと思います。

§27Question

2 点お伺いします。先程も指摘がありましたように、市場金利が今週に入って尐し上がってきています。かねてより黒田総裁も金利が下がっていることが金融政策の効果だとおっしゃっていましたが、この足許の動きは効果が薄らいでいるという捉え方でよいのでしょうか。2 点目は、やはり当初 2年で2%の「物価安定の目標」を実現するということでの、壮大な金融緩和政策であったと思いますが、ここまで長引いてきたことによって、何か不都合な部分、リスクの部分というのもある程度、政策委員の中に芽生え始めているのでしょうか。

§28Kikuo Iwata

各委員がどう思っているか、真意が何かは私には申し上げられません。それは議事要旨や議事録が公表されるまでは分かりません。

§29Question

壮大な金融緩和が長期間続いてきたことに対するリスクについて、副総裁ご自身のご意見をお聞かせ下さい。

§30Kikuo Iwata

これから総括してはっきりすると思いますが、日銀が適切な金融政策を行わなかったために「物価安定の目標」の実現が遅れたという検証にならないように願っています。3 つの組み合わせに関して、誤った判断をしたということであれば、大きくその考え方を改めなければならない可能性もあるかもしれませんが、そういった可能性はほとんどないと思います。もう尐しデリケートな問題が 3 つの組み合わせに関してはあるかもしれませんが、今までの3 つの方向性は別に間違っていたわけではないと私は思っています。もう尐しデリケートな、その微妙な調整の仕方に関しては、もう尐し検証し、気配りのある金融政策を行っていきたいと思っています。

§31Question

以前、副総裁が 2年で 2%の「物価安定の目標」を実現するということで、ご自分の進退の問題と絡めて、そういう決意をおっしゃっていましたが、実際、3年半程度経って、先程、2年程度というのは幅を持たせて変えてはいないとおっしゃっていましたが、このまま任期まで、この状況で目標の達成に向けて政策を運営していくという認識でよろしいのでしょうか。

§32Kikuo Iwata

それはその都度、達成できなかった説明責任を果たしていくということです。今までは、説明責任を果たしていると思います。今後も、説明責任を果たしていくということに変わりはありません。以上