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Bank of JapanPress conferenceApr 27, 2017Haruhiko Kuroda, Governor

総裁定例記者会見(2017年4月27日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の決定会合の決定内容とその理由、それから本日公表された展望レポートについてご説明をお願いします。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆる「イールドカーブ・コントロール」のもとで、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行います。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース、すなわち、保有残高の増加額年間約 80 兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営することとします。また、長期国債以外の資産買入れに関しては、これまでの買入れ方針を継続することを賛成多数で決定しました。本日は、展望レポートを決定・公表しましたので、これに沿って、先行きの経済・物価見通しと金融政策運営の基本的な考え方について説明致します。わが国の景気の現状については、「緩やかな拡大に転じつつある」と判断しました。この点、やや詳しく申し上げますと、海外経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、緩やかな成長が続いています。そうしたもとで、輸出は増加基調にあります。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が業種の拡がりを伴いつつ改善する中で、緩やかな増加基調にあります。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移しています。

§3Haruhiko Kuroda

この間、住宅投資と公共投資は、横ばい圏内の動きとなっています。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境については、極めて緩和した状態にあります。このように、輸出・生産を起点とする前向きの循環が強まる中、労働需給は着実に引き締まり、経済活動の水準を表す需給ギャップのプラス基調が定着しつつあります。こうした状況を踏まえ、今回、景気の総括判断を、一歩前進させることとしました。先行きについては、わが国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、極めて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、2018年度までの期間を中心に、景気の拡大が続き、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられます。2019年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれます。2018年度までの成長率の見通しを、従来の見通しと比べますと、概ね不変です。次に、物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、 0%程度となっています。予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いています。先行きについては、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。

§4Haruhiko Kuroda

2018年度までの物価見通しを、従来の見通しと比べますと、概ね不変です。なお、2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤である 2018年度頃になる可能性が高いと考えられます。その後は、 2%程度で安定的に推移していくものと見込まれます。リスクバランスについては、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいとみています。2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠け、引き続き注意深く点検していく必要があります。なお、展望レポートについては、佐藤委員、木内委員から、消費者物価が見通し期間中には 2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、否決されました。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続します。また、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。

§5Question

今回初めてお示しになりました 2019年度の物価見通しは消費税の影響を除くと 1.9%、2017年度については下方修正をしています。一方で 2%の「物価安定の目標」の達成時期については「2018年度頃」と、これまでの見通しを維持されているかと思います。物価目標達成へ向けた道筋について、特にその達成時期の考え方を含めて詳しくご説明下さい。

§6Haruhiko Kuroda

前回の展望レポートの後の消費者物価の動きをみますと、このところ、携帯電話機など一部の耐久消費財やサービス価格が弱めの動きとなっています。もっとも、2%に向けたモメンタムは維持されていると考えています。すなわち、マクロ的な需給ギャップは改善しており、昨年末にプラス転化しています。特に、労働需給の引き締まりが一段と明確になるもとで、多くの企業で 4年連続のベースアップが実現する見通しにあるなど、賃金は緩やかに上昇しています。先行きも、需給ギャップがプラス幅を拡大していくもとで、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環が作用していくとみています。中長期的な予想物価上昇率は、弱含みの局面が続いていますが、先行きは、現実の物価上昇率が高まっていくもとで、いわゆる「適合的な期待形成」の面からも、上昇傾向を辿っていくと予想されます。こうしたもとで、先行き、消費者物価の前年比は、 2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤である2018年度頃になる可能性が高いと考えられます。また、その後は、2%程度で安定的に推移していくものと見込んでいます。

§7Question

展望レポートでは、経済見通しの下振れリスクとして地政学的リスクを挙げています。足許では北朝鮮情勢の緊迫が続いていますが、こちらの世界経済および日本経済、それから物価や金融市場への影響について、どうご覧になっていますでしょうか。

§8Haruhiko Kuroda

ご指摘の通り、展望レポートでは、リスク要因の 1 つとして、地政学的リスクを指摘しています。地政学的リスクが金融市場や世界経済、ひいてはわが国の経済・物価に与える影響については、今後とも十分注視していく所存です。なお、具体的な北朝鮮情勢そのものについては、コメントを差し控えたいと思います。

§9Question

国債の買入れペース、年間 80 兆円をめどという文言が今回も残っています。買入れ額は、足許では減っていたり、振れ幅が大きくなっている状況だと思いますが、それでもこの 80 兆円という文言を残すのか、それとも現状に即した数字にしていくのか、そういうことを視野に入れていらっしゃるでしょうか。もう1 つ、自民党の行政改革推進本部で、日銀は、今のうちから出口戦略についての考えを語り、市場との対話をすべきではないかという意見が出されました。日銀内で出口戦略についてのシミュレーションは行っているということですので、それを早い段階から公表していくというお考えはありますでしょうか。そしてもう 1 点、物価目標 2%を達成するために、今の金融政策を続けていくと、出口の段階で日銀が債務超過に陥るという指摘がありますが、それについて総裁はどう考えていらっしゃるでしょうか。

§10Haruhiko Kuroda

まず、80 兆円のめどについては、昨年の9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを決めた際にも申し上げましたが、実際の国債買入れ額は、金融市場の状況に応じて、ある程度の幅をもって変動することになります。実際、昨年9月以降の毎月の買入れ額をみますと、計算上の年間買入れペースは、80 兆円を上回ったり下回ったりしているわけです。金融市場調節方針の具体的な内容は、もちろん毎回の金融政策決定会合で議論しますが、年間 80 兆円のめどについては、ゼロ%程度という長期金利の操作目標を実現するという点で、問題が生じているとは考えていません。それから、出口戦略につきましては、毎回申し上げている通り、物価は 2%に向けて上昇していくとみていますが、足許では、0%程度に止まっています。今から出口戦略について具体的にお話しすることは、かえってマーケットに混乱を招くおそれがあると思っています。と申しますのは、具体的な出口戦略というのは、そのときの経済・物価・金融情勢如何によって、どのようなものが適当かが決まってくるわけです。「量的・質的金融緩和」を導入して以来 4年になりますが、出口戦略を考えるときには、短期金利の水準をどうするか、拡大したバランスシートをどのように取り扱うか、という2 つの点が議論になると思います。

§11Haruhiko Kuroda

それらについてどのような具体的な戦略で進めていけばよいかは、あくまでもそのときの経済・物価・金融情勢如何によりますので、今から具体的なイメージをもってお話しするのは、やはり時期尚早であろうと思います。3 点目のご質問についても同様です。必要な市場とのコミュニケーションというのは常にありますし、出口戦略について、米国も、出口にさしかかったときに説明しています。我々も、そういう段階になれば、適切なコミュニケーションをとることになると思います。

§12Question

先程の質問の繰り返しになりますが、出口について、今は時期尚早だというお話があり、経済・物価・金融の状況によるということでしたが、具体的な条件としてはどういったものが挙げられるのでしょうか。それから、先程、地政学的リスクについて注視していくというお話がありましたが、こうしたリスクに対しての日銀の対応策について教えて下さい。

§13Haruhiko Kuroda

まず、第 1 の出口云々については、経済・物価・金融情勢によって、最も適切な出口戦略を採っていくことになりますので、具体的なイメージを持って出口戦略のあり方を今から議論するのは、やはり時期尚早であろうと思います。そもそもどういう場合に出口になるかというと、当然のことながら2%の「物価安定の目標」を実現するということが、出口についての議論の始まりであろうと思っています。地政学的リスクにつきましては、先程申し上げたように、展望レポートでもリスク要因の 1 つとして挙げています。地政学的なリスクが金融市場や世界経済、ひいてはわが国の経済・物価に与える影響を注視していかなければならない、ということです。あくまでも、地政学的リスクそのものに対して中央銀行がどうこうするという話ではなくて、そのようなリスクが顕在化して、金融市場や世界経済、ひいてはわが国の経済・物価に影響が及ぶことになれば、それに対して、中央銀行として適切に対応する、ということです。これは、他のリスクによって、金融市場、世界経済、ひいてはわが国の経済・物価に影響が出てきた場合と同様です。

§14Question

本日の展望レポートの成長率をみると、2017年度をピークに 2019年度にかけて徐々に成長率が減速していく格好になっています。一方で、物価上昇率については 2019年度にかけて徐々に上昇率を高める、という格好になっています。経済が減速している中で、物価上昇率が高まると考えられる根拠、特に需給ギャップをはじめとして、どのように推移していくとこのような状況が達成できるのか、具体的にお願いします。

§15Haruhiko Kuroda

この見通しについて、もっと強気だとかもっと弱気の見通しもあり得るとは思いますが、ロジックは非常に分かりやすくなっています。わが国の潜在成長率は、従来 0%台前半かと思われていましたが、最近のGDP統計の改定等により、中期的な潜在成長率は、0%台の後半くらいではないかと思っています。いずれにしても、2017年度、2018年度と潜在成長率をかなり上回るペースで経済が拡大していくと、需給ギャップは改善し、労働需給は更にタイトになっていくということですから、そうしたもとで賃金や物価が上昇していくというのは、極めて自然というか、経済のロジックに合ったものであると考えています。

§16Question

イオンの岡田社長が、「脱デフレは大いなるイリュージョンだ」という発言をされました。いわゆる予想物価上昇率は低い状況にあるかと思います。総裁は当初、予想物価上昇率が物価上昇の起点になると説明されていましたが、昨年9月の「総括的な検証」では、予想物価上昇率は過去の物価上昇率に引きずられやすいと整理をされていると思います。お伺いしたいのは 2 点です。1 点目は、今、この状況でなかなか予想物価上昇率が高まらない中で、金融政策の何が物価上昇の起点になっているとお考えでしょうか。もう1 点は、金融政策の中でも、特に量的緩和、国債の買入れの増加と日銀のバランスシートの拡大が、足許で予想物価上昇率に作用しているとお考えでしょうか。もしそうであれば、量的な増減、国債の買入れの増減は、予想物価上昇率の低下や上昇、ひいては実質金利の上昇や低下を通じて、企業行動や為替にも影響が出てくるかと思いますが、その点をどうお考えかお願いします。

§17Haruhiko Kuroda

まず、予想物価上昇率につきましては、私どもは、世界の中央銀行あるいは世界の経済学者達と違ったことを言っているわけではありません。物価上昇率は、労働市場を含めた需給ギャップに影響されるとともに、中長期的な予想物価上昇率にも影響されるということです。その場合の予想物価上昇率がどのように形成されるかは、それぞれの国や局面で色々な分析がなされていますが、昨年9月の「総括的な検証」で示したように、わが国の場合は、「適合的期待形成」の要素が非常に強い、つまり足許の物価上昇率が上がると予想物価上昇率も上がっていく、他方足許の物価上昇率が下がると予想物価上昇率も下がっていく傾向があります。これとは対照的に、米国の場合は、 2%程度の「物価安定の目標」に予想物価上昇率が強くアンカーされている、という違いがはっきりしています。そうしたもとで、今後の予想物価上昇率や実際の物価上昇率については、潜在成長率を上回る経済の拡大が当面続き、需給ギャップが更に改善していく中で、賃金の上昇を伴いつつ、上昇するプロセスが起こってくるとみられます。他方で、エネルギー価格が非常に大きく下落し、それが実際の物価上昇率、ひいては一昨年の夏以来、予想物価上昇率を適合的に下落させたような状況に今はなく、むしろエネルギー価格が戻ってきたことによって、実際の物価上昇率には引上げの方向で効いてくる可能性が高いわけです。

§18Haruhiko Kuroda

いずれにしても、需給ギャップの縮小が続く、あるいは需給ギャップの改善が続く中で、エネルギー価格の回復もあり、実際の物価上昇率が上がっていく、その中で予想物価上昇率も徐々に上昇していくとみられます。それから、バランスシートの拡大が、直接的に予想物価上昇率であれ、将来の金利であれ、為替レートであれ、そういうものに影響するかについては、経済学者の間でも色々な議論があるところです。私どもが「量的・質的金融緩和」を始めて以来強調している通り、「量的・質的金融緩和」は、一方で予想物価上昇率にプラスの影響はありますが、何よりも長期金利を含めて、名目金利を大幅に引き下げて、その結果として実質金利を引き下げるというのが、実体経済にプラスの影響を与える主要なチャネルです。もちろん、期待に対する影響もあったとは思いますが、基本的な「量的・質的金融緩和」の実体経済に対する影響のチャネルは、先程申し上げたようなものです。現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」では、金融調節の目標を直接的に短期の政策金利と長期の国債金利に定め、いわばより明確な形で金融緩和を進めています。そういった意味では、操作目標は変わっていますが、金融緩和の目標や実体経済に与える影響のチャネルは、全く変わっていないということだと思います。

§19Question

先程からいくつか、日銀の出口について質問があったのですが、いつも通り黒田総裁は時期尚早とお答えになっています。なぜここに関心が増えているかというと、やはり2013年に始まって、2年でケリをつけると始まった異次元緩和が、4年目から 5年目になり、2%に達するのも 2018年度頃とおっしゃっていますが、民間のエコノミストはそれも難しいだろうと言っています。今の異次元緩和を続ければ続けるほど、バランスシートが膨らんでいき、バランスシートが膨らめば膨らむほど、出口が難しくなるということは議論の余地がないと思います。だからこそ、今どのようにお考えなのか、私どもに示してほしいというのが、色々な声だと思うのですが、それを時期尚早だというのは、やはり説明責任を果たしているのかどうか、疑問があります。いくら言っても時期尚早ということだと思いますので、具体的なことについてお聞きしたいのですが、日銀の財務が赤字になるかもしれない、あるいは債務超過になるかもしれないという一部の声に対して、黒田総裁は国会あるいは記者会見でも、日銀にはシニョレッジ、通貨発行益があるので大丈夫だということをおっしゃっているのですが、通貨発行益というのも、裏付けになるのは日銀が無利子で発行できる日銀券があるからこそ、シニョレッジが発生するわけです。

§20Question

シニョレッジというのは、金利が上昇していけば、日銀券というのはどうなるのか分かりません。今100 兆円に水膨れしていますが、金利が上がっていくうちに何兆円に減るか、増え続けるのかもしれませんが、これは未知です。このように大きく増減するかもしれないものを根拠に、シニョレッジがあるから大丈夫だというのは、やはりあまり説明になっていないのではないかと思います。この日銀券、シニョレッジについて、どのようにお考えなのか、詳しいお考えをお聞かせ下さい。

§21Haruhiko Kuroda

従来から申し上げている通り、この場は金融政策および今回は展望レポートも含めてですが、ご質問にお答えする場でありまして、演説をして頂く場ではありませんので、それに対してコメントをするつもりはありません。なお、出口戦略については、何回も申し上げている通りです。米国のFRBも、2008年のリーマンショック以降、量的緩和を3 度にわたって拡大してきて、そうした中で出口戦略をかなり前に語りましたが、それは実際に現在行っている出口戦略とは違ったものでした。ですから、あまり時期尚早に出口戦略を語っても、実際にそうなるわけではない話をするのは、あまり市場にとっても適切でないと思いますので、私どもとしては、まさに適切に説明責任を果たしていく、ということに尽きます。

§22Question

労働需給も逼迫してきて、賃金も4年連続でベアが達成されたということですが、一方で4月に入って小売業界では値下げという話も出てきています。このように、企業がなかなか値上げを出来ない理由は、どのような所にあると思っていらっしゃるのかを教えて下さい。もう1 点、その背景に個人の節約志向というようなことがあるとすれば、2019年10月には、また消費増税があります。2%にようやく行きそうな所で、消費税をまた引き上げることが果たしてよいのかどうか、ご見解をお願い致します。

§23Haruhiko Kuroda

まず、需給ギャップが縮小してプラスになり、更に改善していく、あるいは、労働需給が更にタイトになっていく中で、当然、賃金は上昇していくと思っています。足許でも、4年連続のベアが実現しています。特に、今年は中小企業も賃上げが昨年より高いようでありますし、ご承知のように、パートの賃金は、現在、前年比で 2%台の半ばぐらいの上昇を示しています。そういう意味で、賃金は今後、更に上昇していくと考えています。物価については、財とサービスで色々違いはあるとは思います。財の場合はどうしても、国際競争に晒されていますので、その影響は、ある程度大きくあります。サービスは、多くが国内向けであって、しかも、いわゆる非貿易財の場合が多いため、そういったものの価格は、主として、その国内の需給で決まってくると思いますので、全体としての物価も、徐々に上がっていくとみています。ただ、サービスの中でも、統計上、家賃が下がっている状況がずっと続いています。家賃については、以前から品質調整がされていないので、ずっと下がっているようになっているとか、議論が色々とあるわけです。財の方は中身をみてみると、比較的上昇の要素がみえてくるのですが、サービスの中には、今申し上げたものですとか、公共料金等は別のシステムで決まってきますので、その辺りは、もう少しよくみていかなくてはならないと思います。

§24Haruhiko Kuroda

従って、賃金については労働需給が更にタイト化していく中で、色々な形で上昇していくとみていますが、物価については、今申し上げたような色々な要素がありますし、特に予想物価上昇率の弱めの状況というのが、まだ続いているわけです。ずっと予想物価上昇率が下がってくる状況が昨年以来止まって、一部に上昇しているものもあるのですが、まだ具体的に、明確に予想物価上昇率が上昇するところまで至っておらず、下げ止まってフラットに推移している状況ですので、物価については、先程来申し上げているように、予想物価上昇率の動きをよくみていきたいと思っています。消費税については、これは政府・国会が決められることですので、私から何か申し上げることは差し控えたいと思いますが、今回の展望レポートに示している通り、2019年の 10月に消費税が 2%引き上げられるということを前提に、経済の見通し、物価の見通しを作成しているということだけは申し添えます。

§25Question

春の賃上げについては、4年連続のベアということですが、水準的にみてご所見を頂けますでしょうか。仮に十分ではないと受け止められているのであれば、それをどのように分析されているかを教えて下さい。2 点目は、地政学的リスクが経済・物価に影響するのであれば、中央銀行としての対応を考えるということですが、今の「イールドカーブ・コントロール」のもとでは、対応されるときには、金利もしくは量を動かすということだと思うのですが、地政学的リスクに対応するときも、基本的には金利を動かすということなのか、それとも、影響が甚大な局面では、量も優先するということなのか、教えて頂けますでしょうか。

§26Haruhiko Kuroda

春闘はまだ最終的な数字までは出てきていないと思いますので、もう少しみていく必要があると思いますが、現時点で公表されているデータをみますと、昨年並みで、中小企業については昨年を上回っている状況だと思います。今回の春闘に際しては、労使とも、単に過去 12 か月の物価上昇率だけではなく、今後の物価の動向についても交渉の際には勘案しようではないか、というようなことをおっしゃっていました。そういった面からみますと、過去 12 か月の物価上昇率は若干マイナスでしたので、そうした中で昨年並み、ないし昨年を上回るようなベアになっていることは、評価できるのではないかと思います。引き続き需給ギャップの改善、労働市場のタイト化が進む中で、更に賃金が上昇していくことが望ましいのは、その通りだと思います。地政学的リスクについては、地政学的リスクそのものに対してどうこうということではなくて、その結果起こり得る金融市場、世界経済、ひいてはわが国の経済・物価に与える影響にどう対応するかということです。これは、一般的な今後の対応そのものでありますので、まさに、そのときの経済・物価・金融情勢に合わせて、適切な調整を行うということに尽きます。どのような方法になるかは、あくまでも経済・物価・金融情勢次第ですので、先験的に何か具体的なことを申し上げるのは、適切ではありませんし、難しいと思います。

§27Question

何度も質問が出ていますが、今回、景気判断について「拡大」という言葉を使っています。物価上昇にとってプラスの要因は結構あると思うのですが、その中でも、足許の物価がなかなか上がってこない、弱いという状況です。これはなぜなのか、色々な分析があると思うのですが、総裁がおっしゃったような「適合的な期待形成」の要因もあるのかもしれませんが、もっと構造的な要因といいますか、格差ですとか、節約志向の高まりとか、消費者の考え方と日銀の今の理論との間にギャップがあるのではないかとか、その辺りについてどのようにお考えなのかをお聞かせ下さい。もう1 点は、今、日本経済は深刻な人手不足に直面していますが、この中でサービスの提供を抑えていくとか、その供給の壁になんとか対処するために、ヤマト運輸のような動きも出ています。これが日本経済にとって、将来的にマイナスになる可能性についてどのようにお考えでしょうか。

§28Haruhiko Kuroda

まず第 1 の点につきましては、これは日本についてのみならず、米国や欧州でも色々な議論がありますが、通常の議論では、物価上昇率は、主として需給ギャップと予想物価上昇率で決まってくるものです。ご指摘のような、格差とか節約志向といわれるものが影響することもあり得ると思うのですが、やはり予想物価上昇率の動きや需給ギャップの動きを分析し、予想していくということに尽きると思います。そういった面では、需給ギャップの改善が続いていくということは、ほぼ意見が一致していると思いますが、予想物価上昇率については、なかなか上がってこないというのは事実ですし、現在もまだ弱めの動きだということも事実ですので、この辺りについては今後ともよく注視していく必要があると思っています。2 番目の人手不足による供給制約が成長にマイナスになるというようなことは、私はマクロ的にはないと思います。個別の企業や産業で人手が不足してビジネスの拡張ができないとか、そういうことはあり得ると思いますが、基本的には人手が不足するということは、労働需給が逼迫して、賃金も上がるわけですし、そういう状況に応じて省力化投資や省人投資も活発になってきます。労働需給がタイトになって、人手不足になってきたら、成長率が下がるというよりは、むしろ高まり得るのではないかと思います。

§29Haruhiko Kuroda

ただし、こういった人手不足の状況の中で、各産業や企業がどのように自らのビジネスを拡大していくか、いけるかということについては、その企業、産業毎の人材確保であれ、省力化投資であれ、技術開発、新製品の開発など、色々な戦略はあり得ると思いますが、経済全体で、マクロ的に需給がタイトになって人手不足になってくると経済が成長できなくなるということはないと思います。

§30Question

自民党の行革推進本部の話なのですが、行革推進本部という一見中央銀行と関係ないような組織が日銀を取り上げるというのは、国民の負担になり得る、赤字になったときにそれを埋めなくてはいけないというところを先に説明しておいた方がよいのではないかと、そういう趣旨なようです。具体的に市場を混乱させないためにどういう出口の出方をするとか、詳細な収支予測を出せとか、そういうことは言っていないようでして、少なくとも国民負担が生じ得るというところだけでも早めに言うべきではないかという見方について、どう思われるかお願いします。

§31Haruhiko Kuroda

これは、基本的には出口戦略の問題であり、出口戦略のあり方、あるいはそのときの経済・物価・金融情勢の状況如何で色々なシナリオが描けると思いますが、今の段階でそういったことを具体的に申し上げるとかえって混乱させるので、時期尚早である思っています。なお、ご指摘の行革推進本部の論考につきましては、これが公表されたことは承知しており、その内容もデフレ脱却を確実にするためにも大胆な金融緩和に求められる役割は引き続き大きいとしたうえで、その出口の際には、日本銀行の財務や金融市場への影響などの面でリスクを伴うため、日本銀行に対して市場との対話をより一層円滑に行うよう提言していると認識しています。なお、先日ワシントンでありました国際会議で、G20はバーデンバーデンの会議から 1 か月程度しか経っていなかったのでコミュニケを出しませんでしたが、 IMFCはコミュニケを出しています。金融政策についても記述があり、金融政策の正常化が正当化される場合に、そのもとでの金融政策のあり方について、コミュニケーションをよくとる必要があると書かれています。これは、おそらく現に出口にさしかかって、出口政策を実行しつつある米国に関して言っているセンテンスだと思いますけれども、そういうことが言われています。

§32Question

今日の声明文でも書いてある通り、日銀はかねてマネタリーベースの拡大を止めるための必要条件は 2%の物価上昇率が実績値として安定的に実現することと述べています。一方で、今回初めて 2019年度の物価見通しを出して、その数値が 1.9%ですから、これは 2%を超えていないということですから、常識的に判断すれば、2019年度になってもマネタリーベースの拡大、すなわち日銀のバランスシートの拡大は続くというように解釈するのが常識的かと思いますけれども、そのように考えてよろしいでしょうか。

§33Haruhiko Kuroda

ご指摘の通り、今回の展望レポートの中心的な見通しでは、消費者物価の前年比が 2%程度に達する時期は、見通し期間の中盤である2018年度頃になる可能性が高いとみていますけれども、「オーバーシュート型コミットメント」でいう安定的に 2%程度を超える時期というのは、それよりも先になる可能性が高いと考えています。

§34Question

物価に関して 2 点なのですけれども、足許の物価が想定よりも下がっている、あるいは弱い理由は、今日のお話からすると携帯電話、家賃、それから国民の予想物価上昇率が想定より低いという整理でよいのかどうかというのが1 点です。もう1 つは、昨年9月の時点で日本人の予想物価上昇率というのは適合的だというのは、もう分かっていたことだと思うのですけれども、その 9月以降の見通しに比べても、足許の物価というのは弱まっているのではないか、なかなか伸びてきていないのではないかと見受けられるのですけれども、更に予想物価上昇率が上がってこない理由について、何かお考えがあればあわせて教えて下さい。

§35Haruhiko Kuroda

第 1 点は、基本的には、帰属家賃のマイナスはずっと続いており、最近マイナス幅が特に大きくなったというわけではありません。それから、予想物価上昇率については、原油価格が大幅に下落する中で実際の物価も下落し、一昨年の夏以降、予想物価上昇率も下がっていったわけですけれども、昨年の前半か中頃から、予想物価上昇率自体もどんどん下がるという状況ではなくなって安定していますので、足許の物価上昇率が1月にみていたよりも弱いといっても、予想物価上昇率が更に弱くなったわけではありません。従って、足許の物価上昇率が 1月にみていたよりも弱いのは、主として携帯電話機とか、その通話料等の値下げが相当効いていると思いますので、それ自体としては一時的な水準の引下げである可能性は高いと思います。ただ、足許が下がるとその後にもある程度の影響は出てくる可能性はあると思います。基本的には、前回の展望レポートと比べて下がったのは、携帯などの一時的な要因であると思っています。予想物価上昇率について、適合的な要素が非常に大きいということは、9月の「総括的な検証」で詳しく分析した通りであり、そこが特に変わったとは思っていませんが、色々な事情で足許の物価上昇率が下がると予想物価上昇率にも影響するおそれがあるという点は変わっていないと思います。

§36Haruhiko Kuroda

ただ、実際の物価上昇率は大きく分けて、需給ギャップと予想物価上昇率の動きで説明できるわけですが、需給ギャップ自体は改善が続いていますし、2017年度、2018年度と潜在成長率をかなり上回る成長が続くと見込まれますので、実際の物価上昇率も上昇していき、そうしたもとで適合的に予想物価上昇率も上昇していくとみています。

§37Question

先程来、地政学的リスクという質問が出ていますが、私は抽象的な質問が嫌いですので、具体的にお伺いします。今認識されているのは、朝鮮半島の有事の問題だと思います。それについての具体的なコメントはお伺いしようと思いませんが、仮に有事、つまり戦端が開かれるような場合に、日本の銀行の内外の決済の問題や資金繰りの問題が出てくると思います。リーマンショックの後では、例えばドル資金供給のためのスワップを作ったりして対応してきたと思いますが、そういう在来的な手法で今想定されている地政学的リスクに対処可能だとお考えでしょうか。もう1 点は、韓国との通貨スワップについてです。今、財務省も日本銀行も韓国との間では通貨スワップはない状態だと思います。現状において、韓国との通貨スワップを何らかの形で復活させるという議論は存在するのでしょうか、しないのでしょうか。

§38Haruhiko Kuroda

まず第 1 点については、地政学的リスクという場合には、一般に中東や北東アジアなど色々な所が指摘されているわけですが、その他にもあり得るとは思っています。そうしたうえで、地政学的リスクが顕現化した場合の対応については、その事態がどういうものかによるわけですので、一概に何とも申し上げかねるということに尽きます。ただ、中央銀行というのは常にいかなる事態にも対応し得るように頭の体操をしているということです。リーマンショック後のドルスワップの件については、ご承知のように、現時点で大幅なスワップ取極が結ばれています。これは、リーマンショックの教訓にかんがみてそういうことになっているわけです。韓国とのスワップについては、基本的には、財務省が主導するものです。中央銀行間のスワップであっても、いわゆる金融協力としてのスワップは、あくまでも財務省の政策によって決まってきますので、私から現時点で何か申し上げることはありませんが、スワップ取極自体は、必要があればいつでも結ぶことは可能だと思っています。

§39Question

総裁の先程の発言について、もう少し詳しく教えて下さい。出口の議論は、2%の「物価安定の目標」を達成・実現することが議論の始まり、ということなのですが、日銀は「オーバーシュート型コミットメント」を採用しています。通常の中央銀行であれば、そのゴールが見えてきた時点で出口の議論を始めるのだと思います。この点について、日銀は、やはり 2%の「物価安定の目標」を達成してから出口の議論が始まるという考えなのでしょうか。また、今回「拡大」という言葉が景気判断について使われましたが、景気が拡大し、これだけ雇用、労働需給というのが逼迫している中でも、日銀が物価の先行きについて、下方修正もやむを得ないというところまできています。確かに、携帯電話などで部分的な弱さはあるのですが、大きくみて日本の物価が上昇してくる強さについて、総裁は懸念をお持ちではないのでしょうか。

§40Haruhiko Kuroda

まず、出口については、先程来申し上げている通り、経済・物価・金融情勢等を勘案して、最適な出口戦略を立てるということですので、まさに出口にさしかかった状況で議論するということになりますが、 2%の「物価安定の目標」をどの程度達成したらどうなって、というような機械的なルールはないと思います。経済に関して緩やかな拡大に転じつつあると景気の総括判断を一歩前進させることにしたのは、展望レポートにも詳しく記載している通り、輸出・生産を起点とする前向きの循環が強まる中、労働需給が着実に引き締まり、経済活動の水準を示す需給ギャップのプラス基調が定着しつつあることに基づいて判断したものです。物価については、足許少し弱めの数字が出ていますので、そういったことを踏まえて、足許の見通しについては、小幅に下方修正しました。他方、先行きの物価の見通しについては、景気判断を一歩前進させましたし、従来通りの見通しを政策委員の中央値として維持したということです。以上