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Bank of JapanPress conferenceMay 25, 2017Makoto Sakurai, Board Member

櫻井審議委員記者会見(2017年5月25日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の懇談会では地元の政財界とどのようなやり取りが行われたのか、お聞かせ下さい。

§2Makoto Sakurai

本日、金融経済懇談会を開催し、当地の行政、経済界を代表する方々から地域経済や金融政策に関する率直かつ貴重なご意見をたくさん頂きました。大変有意義な意見交換ができたと思っています。全てを詳細に紹介するのは時間的にも難しいのですが、私なりに整理しますと、まず佐賀県経済に関して、経済界の皆様が非常によく考えられて、今後の方向なりを検討されているとの印象を受けました。さらに業種を問わず殆どの方がその方向性を共有されていると感じられた点は非常に印象的でした。景気については、着実に回復してきているとの見方で揃っていたように思います。数日前に、九州全体の景気動向について、日本銀行の判断が「拡大」に上方修正されましたが、当地も九州全体の動きに合わせて――ある程度タイムラグはあるかもしれませんが――着実に改善していく方向にあると思います。それから、皆様から一様に、ここにきて労働力不足、人手不足が非常に深刻になっているとのお話がありました。業種を問わず皆様が強く指摘されていた点が非常に印象的でした。それに対してどのような対応があるのかも含めて、色々なことを皆様がお考えになり、検討していきたいということでした。また、それに関連して、人材育成の話を何人かの方がお話されまして、かなり具体的に様々なことをお考えになっているとの印象を受けました。

§3Makoto Sakurai

さらに、佐賀県の伝統的な産業──例えば陶磁器や、農業に関しては大変な優位性を持っていると思います ──を今後いかに上手く展開していくのかといったお話を伺いました。そして、これは私が当地に来て初めて勉強させて頂き、なるほどと思ったことですが、佐賀県の地理的な強みを上手く活用して、新たな経済の展開を図っていきたいとのご意見を伺いました。こうした点からも前向きな検討がなされているとの印象を受けました。

§4Question

佐賀県を訪れた印象と、県内経済・景気の動向についてもう少し詳しくお聞かせ頂けますか。

§5Makoto Sakurai

佐賀県には、2年程前に日帰りで来訪した程度でしたので、実質的には今回が初めてということになります。その意味で、今回、当地に滞在して、色々なところをみて意見交換をしたいと思っていました。大都市については、東京にいても、経済指標等により概況をある程度掴みやすいのに対して、当地ではここに来て初めて分かることが随分多くありました。また、県内で、東西南北の各地域それぞれに特徴があるとの印象を持ちました。経済・景気に関して言いますと、一番印象的であったのは、成長率の勢いがまだそれほど強くはない中で、企業収益が随分伸びているとの話が一様に聞かれたことです。景気が底堅くなっていることを当地でも感じました。雇用については、先程申し上げた通り、全国共通の課題を当地でも抱えていると感じました。

§6Question

昨日、日銀本店にバーナンキ前 FRB議長が来られて、日銀が物価目標を達成できない場合の選択肢として、財政政策との協調を挙げられていたと思います。今日の櫻井審議委員のご挨拶の中で、無理に短期的な需要を喚起することで 2%の「物価安定の目標」を実現しても、それは持続可能なものではないといった趣旨のことをおっしゃっていたと思うのですが、今、市場で広がっている財政拡大で景気を刺激することへの期待というか、そういった話について、櫻井審議委員あるいは日銀はどのように捉えているのか教えて頂ければと思います。

§7Makoto Sakurai

バーナンキ氏が講演をしたことは承知していますが、私はその講演を聞いておりませんので、その内容については新聞報道だけで理解している状況です。同氏は色々と将来のことを考えて、かなり長期のお話なのかあるいはある前提の下でのお話をされたのだと思いますが、足もとでは、わが国の景気は回復しており、また昨年来の財政拡大による大型の景気対策が今まさに執行中です。その点から言えば、財政、金融ともに現在の政策を見守ることでよいのではないかと考えています。

§8Question

2 点お伺いします。1 点目は、今回の金融経済懇談会の中で、マイナス金利政策に関してのご質問、ご意見が出なかったかということです。2 点目は、九州では金融再編の動きが進んでおり、公正取引委員会やふくおかフィナンシャルグループの動向が注目されていますが、それに関するご質問、ご意見はなかったのかということです。以上の 2 点について、櫻井審議委員のご意見、ご見解も含めて教えて頂ければと思います。

§9Makoto Sakurai

まず 2 点目の金融再編に関しての質問は一切ありませんでした。一般論として言えば、金融再編は、今後の金融の問題として、厳しい経済環境あるいは金融環境の中で、様々な選択肢があると思いますが、その中の 1 つとしてそういったことも考えられるのかもしれませんし、今後も色々な動きが出てくるのではないかと思います。これはあくまでも一般論です。それから、マイナス金利に関しましては、金融機関の方からご指摘がありました。特にマイナス金利が今後どのくらい続くのかといったご質問がありました。現在は景気がやっとよくなってきて、「拡大」という状況になったばかりですから、まずは現在の金融緩和政策、特に「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」の 2 つの手段を使った現在の枠組みを堅持することで、実体経済に対する効果がどのように出てくるかを見守るということだろうと思っています。

§10Question

財政健全化などは景気が拡大しているうちにやるべきだとの趣旨のことが挨拶要旨に書いてありますが、それは今だとお考えなのかというのが 1 点目の質問です。それから、物価が上がらない理由として、将来不安などを指摘されていますが、2%の「物価安定の目標」はいつぐらいに達成すると思われるかということ、もしくは目標自体を違うものに変えたりとかそういうことを検討されているかということが 2 点目です。さらに、挨拶要旨の 8 ページ目に効率的な資源配分の阻害ということが括弧書きで書いてありますが、この意味について教えて下さい。以上 3 点をお聞きします。

§11Makoto Sakurai

まず、1 点目の財政の健全化は長期的に重要な目標であることに変わりないと思います。景気が回復していく中で、財政の健全化をきちんと図っていくこと、できれば両立することが望ましいですし、長期的には両立していかなければならないものだと思っています。現在は、財政と金融が協力体制にあるわけですが、そのもとで政府あるいは国会が財政の健全化について考えていくこと、私どもは景気をきちんと支えていくことが、その役割分担なり協力ということになると考えています。それから、2%の「物価安定の目標」の達成時期、あるいはそれを今後再検討する必要があるのかとのご質問について、2%の達成時期に関しては、今、景気が回復してきており、全国的にも大変な人手不足だという話が出てきています。需給ギャップがかなりタイトになってくるということですので、その動向をもう少し見守る必要があるのではないかと思います。2%の達成時期に関しては、私は今のスケジュール、4月の展望レポートで示された時期については、今の段階で変える必要はないとみています。目標について再検討の余地があるかということについては、もちろん経済情勢が大きく変化することになればそういった可能性が全くないとは言えないと思いますが、現時点では、現在の2%の「物価安定の目標」の下で、景気回復の動きをしっかりと見守っていくことがまず大事だと思います。

§12Makoto Sakurai

最後の資源配分についてですが、これは現在行っている需要を支える政策以上に、何かをやる必要はないだろうということです。それを無理にやれば、それこそ無駄な投資をするといったことになりかねないので、今はしっかりとした景気回復を維持していくことがまず大事だということです。

§13Question

国債の買入れ額について伺いたいのですが、先日黒田総裁が国会でもおっしゃっていましたが、足もとで 60 兆円増加というペースになっており、決定会合で決められている80 兆円のめどからはかけ離れた状況になってきていると思います。櫻井審議委員が午前中の挨拶でも指摘された通り、あくまで金融政策が金利の操作に主眼を置いているのであれば、80 兆円という数字は、現状に合わせて修正したり削ったりする必要が今後出てくるのではないかと思いますが、この辺りをどのように認識されているのでしょうか。

§14Makoto Sakurai

長期国債の買入れ額は、現時点では、80 兆円のめどからみれば、少し少ない数字になるかと思います。ご質問で出ていた通り、現在の金融政策の枠組みは、金利を安定的にコントロールすることに主眼があるわけです。金利と量は一体の関係にありますから、金利を一定にしておくということは、量は従属変数になってしまうわけで、そこは変動せざるを得ない。80 兆円のめどに対して、現時点では実際の買入れ額が少し減っているというご指摘はその通りですが、2月にはそれがちょっと増えることもありました。金利をフィックスすることで量が動くことは当然ですので、私はめどはまだ変えなくても構わないのではないかと思っています。もちろん、将来は金額が大きく振れることになるかもしれません。そこはその段階で考えればよいと思っており、今の段階で 80兆円というめどを置いておくことは問題ないだろうと考えています。

§15Question

佐賀県内の経済について 1 点お伺いしたいと思います。本日の懇談会だけをもってお話されるのは難しいかと思いますが、本日色々なお話をお聞きになって、佐賀県経済の今後の見通しや課題についてどうお感じになったか、一言頂けませんでしょうか。

§16Makoto Sakurai

佐賀県の経済については、先程も少し申し上げましたが、東京からでは分かりにくいこと、こちらに来てなるほどと思ったことがたくさんありました。その中でも皆様が非常に前向きに今後の方向性を考えておられることが一番のポイントだと思っています。経済はそう簡単に飛躍できませんので、こうした前向きの検討なり、一つ一つの動きを重ねていくことは非常に重要です。新しいインフラの開発に関しても、どのように進めていけばよいのか様々なご検討をされているようです。そうした動きが着実に重なって、中長期で実現していくことになれば、確実に経済の先行きも明るくなっていくのではないかと考えています。もう 1 点は、今回、佐賀県の経済のお話を聞いていて、暗さが感じられませんでした。県内の景気は底堅く回復していて、それがベースになって、皆様が前向きな検討を進められているように感じました。

§17Question

櫻井審議委員はどちらかと言えばリフレ派で、2%の「物価安定の目標」の達成を掲げて、何が何でもこれを早く実現することが必要だと感じておられるのだと思っていましたが、本日の挨拶要旨を読む限り、無理して 2%に持っていく必要はないし、無理することの弊害で景気が振れることもあるとされています。そうなると、先程言われていた 2018年度という物価上昇率 2%を達成する時期がたとえ少し後ろにずれても、すぐに需要を喚起するような追加的な金融緩和の必要性はないとお考えなのでしょうか。

§18Makoto Sakurai

私がリフレ派と括られるかどうか分かりませんが、少なくとも2%の「物価安定の目標」の達成時期については、4月の展望レポートが一つの基準だと思っています。ですから、例えば年末までに達成したいとか、来年の前半に達成したいということで、大きな政策を実施するようなことは、今の状況では必要ないのではないでしょうか。今の政策を続けることでじっくりその効果をみていくことでよいのではないかと思います。ただ、その時期が遅れることになれば、経済の状況次第ではありますが、その時点で何か考えていく可能性が出てくるかもしれません。現時点では、展望レポートのスケジュールが一つの基準になっているということでよいのではないかと考えています。

§19Question

先程来出ている質問の繰り返しになりますが、需給ギャップが改善している中では政策効果を見守るべきと発言しておられますが、逆に言えば需給ギャップが改善基調にある限りは、追加的な政策対応は必要ないとお考えでしょうか。先程の質問にもありましたが、物価の2%達成が多少後ずれしたとしても、需給ギャップが改善しているのであれば、そこは政策対応が必要ないということでよいのか、教えて下さい。

§20Makoto Sakurai

まさに状況次第ではありますが、私自身は需給ギャップが改善しているということは、マクロの成長率が上向くということと割とダイレクトに繋がると思っていますので、その意味では、需給ギャップの改善に持続性があるならば、物価の上昇は多少のラグをもって出てくる可能性もありますので、そうした動きをまずは見守ることでよいのではないかと考えています。その意味では、需給ギャップが当面は重要な指標になると考えています。

§21Question

最近の国会で、黒田総裁が出口の局面について分かり易く説明していくことが重要であり、検討していくとおっしゃっていましたが、出口の公表とか市場などへの説明について、櫻井審議委員はどのようにお考えかお聞かせ下さい。

§22Makoto Sakurai

出口の問題は、当然バランスシートの問題にも絡みますので、非常に重要であることは間違いありません。また、世界の主要な中央銀行も同じような問題を抱えているので、関心が強まるのはある意味当然だと思います。日本の場合はバランスシートの規模が一番大きいので、影響は色々な意味で大きいと思います。現時点では、まず景気回復により物価を上げていくことが一番大事ですが、バランスシートが大きくなってきた中で、今後の出口に関しては、皆様の懸念があまりないような形でコミュニケーションをちゃんと図っていくことは当然必要だと思います。具体的な話をすることは、現時点では難しいと思います。マーケットへの影響もありますから、そういったことを慎重に考えたうえで、あまり懸念がないような形でコミュニケーションを図っていくことが本当に必要なことだと思っています。以上