鈴木審議委員・片岡審議委員就任記者会見(2017年7月25日)要旨
Full text
§1Question
初めに、審議委員就任にあたっての抱負を、それぞれお聞かせ下さい。(鈴木委員)昨日辞令を頂戴致しました、鈴木です。どうぞよろしくお願い致します。日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念としていますので、大変重い使命ですが、お引き受けした以上、誠心誠意、頑張ってまいりたいと思っています。私はご案内の通り、メガバンクで 40年余り銀行の実務をしておりまして、銀行は日本経済を写す鏡のようなものではないか――バランスシートの右左が対になるのと同じような意味で――と考えておりまして、銀行員としての経験は、審議委員としても役立てていける部分があるのではないかと思っています。それから私は、約 40年の経験のうちの半分くらいがマーケット関連で、日本と米国、欧州などで仕事をしておりました。その関係で、ブラックマンデーや、VARショック、リーマン危機といった金融市場が混乱した際に、何度も苦しい経験をしてきました。こういった経験も、これからの審議委員としての職務の中で活かしていけるのではないかと考えているところです。(片岡委員)昨日、総理から辞令の交付を頂きまして、日本銀行政策委員会審議委員を拝命した片岡です。どうぞよろしくお願い致します。
§2Question
私はこれまで 20年間程、三菱UFJリサーチ&コンサルティングというシンクタンクで、研究員という形で、経済情勢ですとか経済政策についての調査を行ってまいりました。1996年に入社しましたが、この時期はちょうどGDPデフレーターの前年比マイナスが定着しつつある時期でした。それから、例えば完全失業率も、従来は 2%台だったわけですが 3%を超えて、その後 5%台まで深刻化していく、そうした時代の入り口でした。そういう意味では、ロストジェネレーション世代の走りと申しましょうか、そうした時代背景の中で調査の仕事を始めました。その後、ご承知の通りデフレが続く中で、2013年4月以降、黒田総裁のもと大規模な金融緩和が始まりまして、その結果、資産市場や失業率などの実体経済、経済状況は改善してきています。ただ、ご承知の通り、政府と日本銀行が共同声明で締結している 2%の「物価安定の目標」については、現状は達成まで遠い状況です。私自身、抱負ということで申し上げますと、今後は研究員の立場から変わりまして、政策委員会の一員として、日本銀行の様々なリソースを活用しながら議論を重ねて、そして何としてでも、2%の「物価安定の目標」を達成し、物価の安定を図ること、これを目指して色々な皆様方の力を借りながら、議論を進めて実際の政策を実行してまいりたいと思っています。
§3Question
こうしたことが、国民の皆様方の付託を通じ、国会議員の方の議決によって、審議委員という重い、非常に責任のある仕事を任された私の使命ではないかと感じている次第です。
§4Question
一部お話にもありましたが、今の日銀の金融緩和策についての評価、とりわけ景気の改善にもかかわらず物価目標の実現がなかなか見通せないという、この現状についてもあわせて所見をお伺いできればと思います。(鈴木委員) 2013年からの「量的・質的金融緩和」、今は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、非常に長い名前でありますけれども、いずれにしましても、スタート当時は金融市場にプラスのサプライズをもたらして、円安、株高そして長期金利の大幅な低下ということから、企業収益の改善、資産価格の上昇、そして所得・雇用環境の改善という形で非常にうまく成功したと思います。先週の展望レポートにおいても、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、わが国の景気は緩やかに拡大している、といった表現だったと思いますが、個人的にも、街角景気的な感覚とか、あるいはタクシーの運転手さんの景気が良くなってきているといった言葉と同じ様に感じているところです。
§5Question
物価については残念ながら、スタート当初は 1%台半ばまで上がったと思いますが、その後、中国経済の減速であるとか、不安定な為替市場であるとか、あるいは原油価格の急落、資源国における景気の不振、そしてサマーズ氏も言っておられますが、世界的な成長の鈍化の懸念など、ある意味で数多くの逆風があってなかなか伸びていないというところですけれども、それに加えて、従来から言われているような日本のデフレというのが非常に長く続いたために、デフレマインドからの脱却に、想定以上に時間が掛っているということなのだろうと思います。しかしながら、繰り返しですけれども、わが国においては、潜在成長率を大きく上回る経済成長となり、需給ギャップが改善してきていて、片岡委員からもありましたけれども、失業率 2%台後半ということでほぼ完全雇用といえる状況にもかかわらず、なかなか物価が上がらないというのは、一昨日までの一般国民と申しましょうか、日銀の立場ではなかった者からすると、少し不思議にも感じるところですけれども、これは欧米の先進主要国においても似たようなことがあって、フィリップス曲線のフラット化というようなこともいわれているということだと思います。ただ、物価・雇用環境の今の状況からすると、徐々に改善していくのではないかと考えているところです。
§6Question
いずれにしましても、昨日夕方に辞令を頂いたばかりですので、次回の 9月の金融政策決定会合に向けて、日銀の事務方からの説明も受けて、金融経済情勢について、自分なりにしっかりと分析をし、そして金融政策決定会合の場で、積極的に議論に参加していきたいと考えています。(片岡委員)日本銀行は、2013年4月の「量的・質的金融緩和」以降、2014年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大や、2016年の 1月「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、それから昨年の9月の「総括的な検証」を経まして、現在行っている「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と、このような形で2%の「物価安定の目標」の早期実現、これを目指して金融緩和政策を行ってきたと認識しています。こうした一連の金融緩和策は、黒田総裁からもお話があった通り、名目金利の低下と予想物価上昇率の上昇を通じて予想実質金利を引下げる、これが様々な経路を通じて総需要を高めて、実際の物価上昇率、これを2%近傍に安定・維持することを最終的に意図していると思います。ご質問のうち、これまでの金融緩和策の評価については、先程、鈴木委員からもお話がありましたが、日本銀行法第二条では、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ということが謳われています。
§7Question
景気の改善、これは 2013年4月以降、進んでいると思いますが、これは私自身、日本銀行の金融緩和策の1 つの成果であると思います。物価は実体経済を写す鏡ですので、もちろん現状不十分なところはあるかもしれませんが、兎にも角にも、失業率や資産市場等の好転の 1 つの起点になっていることは、私は評価していいのではないかと思っています。他方、物価につきましては、先程も申し上げました通り、足許、予想物価上昇率がなかなか上がってこない状況です。ただ、更に最近ではやや上がってきているような、そんな印象も私個人はもっていますが、ともかく、2013年4月以降、予想インフレ率はジャンプして、それに引きずられる形で、消費税増税の影響を除いた消費者物価上昇率や生鮮食品を除いたコア、こういった指標が 1%台半ばに到達し、さらにエネルギーを除いたコアコアも 1%弱位の伸び率まで復帰したことは、金融政策がうまく効いたということだと思います。ただ、それ以降「総括的な検証」にもありますが、消費税率の引上げに伴う個人消費の低迷や住宅投資等々を含めた実体経済の悪化が起こりました。これは総需要の低下を通じて、物価に対しては下押し圧力が掛かると思います。加えて、原油価格が非常に大きく低下したことや、新興国の金融市場混乱といったことが、物価の上昇率に対しては制約になってきたということだと思います。
§8Question
従って、このような点については、引き続き、金融政策を通じて、2%の「物価安定の目標」の実現と安定化に向けて努力していくことになるかと思います。予想インフレ率については、色々論点があると思いますが、これは 8月、9月の実体経済の動向等も含めて、色々な方の議論を聞きながら判断していきたいと思っています。例えば展望レポートで挙げられているような話題、GDPギャップが縮小し、需要超過の状況になってきているにもかかわらず、なかなか物価上昇率が高まっていく気配が今のところ見えないことや、黒田総裁がおっしゃっていますが、例えば、物価上昇率がどういうタイミングでどういう形で急速に上がっていくのか否か、という点についても、現実のデータをチェックしながら、委員の皆様方と議論を重ねて、適切な間違いのない判断をしていければと思っています。
§9Question
お二人に質問します。黒田総裁の政策は、実際には、紆余曲折あったと思います。当初の 2 発については、純粋な量的緩和的なインパクトがあったと思うのですが、その量の期待インフレ率に与える影響について、今後も活用していくべきとお考えなのか、局面によって効果も変わってくるので、必ずしも、今後は、量によって期待インフレ率を上げていくのは慎重に考えた方がよいということなのか、その辺りの見解をお願いします。特に、現行の日本銀行の政策では、80 兆円という文言が紙には書かれていますが、この点については今後論点になると思いますので、ご見解をお願いします。(鈴木委員)難しい質問ですが、いずれにしても、今の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、当然 80 兆円という年間の増加額というめどを持ちつつ、10年物国債金利をゼロ%程度に推移させることを企図しています。実際に昨年の 9月以降も、年間 80 兆円に対しては、それを上回るペースになったり、下回るペースになったりということですし、仮に買入額が少額であっても、ゼロ%が維持できる場合には、80 兆円ではない期間が長くなることもあり得るということだと思います。従って、量だけではなく金利を使ってということだと思います。
§10Question
それから、数字で表れていると思いますが、日本銀行が国債等の資産を買い入れて、マネタリーベースがどんどん増えて、バランスシートは今500 兆円を超えている状況にありますが、それと並行して、民間金融機関の貸出も増えてはいるのですが、マネタリーベースのピッチと同じように増えているわけではありませんので、スタート段階において、非常に、期待に働きかけることについては大きな効果があったわけですが、そういうものが継続的にそのような効果を発揮していけるかどうかが、今後のポイントになると考えています。(片岡委員)日本銀行は、現状、量・質・金利という 3 つの軸で、特に最近では、先程鈴木委員からもお話がありましたが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という形になっていますので、引き続き、例えば、量のみにこだわるとか、金利にのみにこだわるとか、そのような話ではなくなっていると理解しています。もちろん、今後どうしていくかという点については、私個人としては、足許の経済動向ですとか、委員の皆様方の議論を拝聴しながら、適切な対策を自分なりに考えて、提案なりを考えていくということなのだと思っています。
§11Question
お二人にお伺いしたいのですが、反リフレ派と言われていた佐藤委員、木内委員が抜けることによって、全会一致でこれから政策決定が行われていくことになるのではないか、そういうことを危惧する声があります。議論が深まらない状況になるのではないかということなのですが、そのような懸念がある中で、お二人は審議委員として、どのような姿勢で政策決定に臨んでいこうと考えていらっしゃるのでしょうか。(鈴木委員)今回ご退任されたお二人が、会合で反対されていることも多いということで、メディアにおいて、9月の金融政策決定会合が全員賛成になるのではないかとか、色々な想像に基づく記事等があるのですが、まずもって私自身がリフレ派であるか、反リフレ派であるかについては、リフレ派と反リフレ派ということの定義は何なのかということもありますが、詳しく存じ上げておりません。あくまでも、ある意味ではニュートラルということで、先程来の国民経済の健全な発展に資するものかどうかということを、その時々の経済・金融情勢に応じて、真剣に考えてまいりたいと考えていますので、9月において、何らかの執行部の提案に対して、賛成するか反対するか、現時点では全く不明です。
§12Question
仮に全員が賛成ということがあった場合でも、それぞれがきちんとした議論を行って、全員がそれぞれ 9 分の 5 は賛成と考えるということもあると思っていますので、一概に何対何ということが、良い悪いということではないのではないかと考えています。(片岡委員)私はよくリフレ派と呼ばれることが多いので、基本的に私に対する質問なのかもしれませんが、私がリフレ派なのかどうかについては、神学論争だと思いますので、直接申し上げることは何もありません。私個人は、こうして国会で選んで頂いた以上、自分の職務に忠実に、精一杯努めていければと思っています。それから、先程のご質問に関連して申し上げると、リフレ派なのか反リフレ派なのかといった主義主張に基づいて、現実の経済動向や環境条件の変化といったものを無視して政策判断を下すのは、私は全くの間違いだと思います。よくエコノミストや経済学者の意見がコロコロ変わる、例えば、ケインズも書かれている本の時々において意見が違うという話もあるわけですが、なぜこのようになるのかというと、やはり現実の経済動向や統計などのファクトに基づいて、その時々に最適と考えられる政策判断を行った結果だと思います。
§13Question
そのような意味で申し上げると、鈴木委員も少しおっしゃいましたが、全員が賛成だから不毛だとか、全員が全く違うことをおっしゃっていればそれでいいのかとか、そのような話にもつながると思いますので、そうした話は、正直不毛だと思います。それから、金融政策決定会合で、どのような議論がなされているのかについては、議事要旨ですとか、「金融政策決定会合における主な意見」などの形で公表されると思いますので、まずはこれらをご覧頂いた上でご判断頂ければと、現時点では感じています。
§14Question
別々の質問をしたいのですが、鈴木さんには、国債マーケットにも詳しいということですので、現行の金融政策をあと何年くらい続けられるものなのか、それと長引くことの弊害や副作用についてどういうふうに考えていらっしゃるかを教えて頂ければと思います。片岡さんには、今の質問の答えで少し分かったような気もしたのですが、昨年の時点では量の拡大をすべきだという主張をよくされていて、その中では外債の購入やヘリマネも選択肢としてあり得るというお話もされていました。一方で、金利に対しては批判的な意見を述べられていたと思うのですが、こうした去年までの、あるいは就任前の意見というのはそのまま政策委員としても主張されるのかどうか、お考えを教えてもらえればと思います。(鈴木委員)今の金融政策があと何年くらい続けられるかというのは、まさに昨日辞令を受けて、これから日銀の方々からも色々な金融経済の状況についての認識や分析について伺い、そういったことを踏まえたうえでこれから考えていくことになると思いますので、現時点でコメントできるような立場にはないと思います。
§15Question
それと、市場の副作用云々ということをおっしゃられましたが、元々、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、あるいはマイナス金利を含んでいるものも、これらは全て経済の活性化のためにやっていることですので、その目標が実現できた暁には健全かつ活発な市場が戻ってくるのではないかと考えています。一時的には何がしかのことはあると思いますし、どんな良薬にも副作用はあるものだと思いますので、病の方が治れば全てはよくなるのではないかと思います。(片岡委員)将来、特に9月以降、私自身がどのような提案をさせて頂くのかについては、現段階で直接的なお答えはできませんし、それは議事録をご覧頂くということになる、と思っています。それから、先程も申し上げましたが、金利か量か、など、政策手段の話は、その時々の判断に応じて変わっていくものだと私自身は考えています。ですから、そういう意味においては、現状の経済動向ですとか政策手段などを判断、議論しながら、私個人の中で間違いのないように進めていければと思っています。
§16Question
鈴木委員にマイナス金利についてのお考えをお尋ねします。鈴木委員は銀行界に長くおられて、銀行の実務も熟知されていらっしゃると思うのですが、やはり現状の短期金利がマイナス、ならびに長期金利がゼロ%に置かれている状況というのは、銀行経営にとってはかなり厳しい状況で、一部には金融仲介機能を阻害しているのではないか、という声もあります。この現状について、銀行ご出身の立場からどのようにこの政策をみていらっしゃるのかということと、なるべく早い時期に金利が上がってくるような状況を期待しているのかどうか、お考えをお聞かせ下さい。(鈴木委員) 40年間くらいメガバンクにいましたが、私は業界の代表としてこれから意見を言っていくつもりは全くございません。もちろん銀行業界に長くいた感覚は消えるわけではありませんが、あくまで国民の代表として、その時々で判断をしていきたいと考えています。マイナス金利政策が金融機関にとって収益のマイナスになるというのは、私が申し上げるまでもなく、その影響は相当程度大きいということだと思います。銀行ならびにその他の金融機関の収益の主力は資金収益です。
§17Question
資金収益を仮に 3 つに分解すると、1 つ目に預金金利と貸出ベース金利の差、2 つ目に信用リスクスプレッド、3 つ目に長短金利のスプレッドがありますが、1 つ目と 3 つ目がなくなって、2 つ目は競争の激化とともに低下しているということですし、加えて金融機関は、様々な金融サービスをやって、手数料を取ることも考えていますが、本邦においてはなかなかサービスによって手数料を頂くということは非常に難しい、ということがございまして、その辺は色々と苦労しているということだと思います。また、金融機関の収益以外にも、年金や保険での運用の問題であるとか、国債市場の流動性の問題であるとか、あるいはマイナス金利というのがデフレ的な語感があるというように言われていますし、そういったような影響、あるいは 1,800兆円を超えている個人金融資産についても、保険や年金を含めて金利系の運用が半分以上を占めていますので、そういった影響は無視し得ないということだと思います。ただし、金融機関にとって収益が減っていることについても、先程のように多少副作用的に我慢しなければいけない局面があるかもしれません。
§18Question
それが更に厳しくなって、金融システム、あるいは金融仲介機能に影響を与えるということがあれば、それは非常に問題があることだと思いますが、日銀における金融システムレポートにもありますように、そうした懸念は現状ないということですし、地域金融機関まで含めても財務基盤は十分であるということですので、現状において、苦しいということは事実ですが、それでどうだということは金融システムとしてはないということだと思います。そもそも、マイナス金利政策は、イールドカーブの起点を引き下げて、それに大規模な長期国債の買入れを行うことによって、イールドカーブ全体に対して強い下押し圧力を加えることによって、極めて緩和的な金融環境を作ることを企図していますので、これについては、間違いなく成功していると思います。それから、先程の繰り返しになりますが、このようなマイナス金利政策を含めた今の金融政策が、国民経済の健全な発展に資するようデフレからの脱却を目指しているということですので、その目標が達成された暁には、金融機関にとっての収益環境も改善することになります。従って、それまでの間はなんとか経営努力によって頑張るということも、金融機関の使命の 1 つであるのではないか、といったように考えています。
§19Question
追加緩和の考え方についてお伺いします。今、足許 2%の「物価安定の目標」の達成時期が6 回先延ばしになっている状況の中で、ただ、世の中では日銀に対する追加緩和の期待はあまりないような状況だと思います。この中で、仮に、今の低インフレがこのまま続いた場合に、世の中からの要請が仮になかったとしても、追加緩和を断固として、先程片岡委員がおっしゃったように、なんとしてでも 2%の達成を目指していくのか、お考えをお二人からお願いします。(鈴木委員)昨日辞令を頂いたばかりですので、まずもっては 9月の金融政策決定会合に向けてしっかりと勉強して、その時々の金融政策決定会合で議論してまいりますので、次の政策であるとか、将来の緩和策としてどのようなことがあるかについては、個人的なアイディアはあるとしても、こういった場で申し上げられるものではありませんので、控えさせて頂きたいと思います。(片岡委員)追加緩和云々につきましては、鈴木委員と同じですが、あくまで現状の経済動向、それから、日本銀行が展望レポートという形で物価の見通しを出していますので、こうした見通しをチェックしながら、その時々において最適な金融政策を判断して実行していくということに尽きるのではないかと考えています。
§20Question
今目標としている 2%という数字についてお伺いします。世界的に今、物価上昇が鈍いと言われていますが、現状、 2%を掲げている目標の数値自体についてどう思っていらっしゃるか、高いと思っているのか、このままでよいと思っているのか、お二方にお伺いします。(鈴木委員)そもそもこれは、2013年の政府との共同声明の中で決められた数字だと認識しているところです。元々、消費者物価等の統計が数字的に「くせ」のような形で少し大きめの数字が出ることや、日本において非常にデフレが長く続いたことで簡単に戻らないようにという意味で「のりしろ」が必要であるとか、あるいは、欧米主要中央銀行の物価安定目標が大体 2%ということで、グローバルスタンダードのようになっていることで、 2%を目指しているということだと認識しています。ただ、客観的にみると、FRBでもECBでも、2%を今達成できているわけではありませんし、2%という目標はなかなか高い目標ではあると個人的には思っています。(片岡委員)先程、鈴木委員がおっしゃった通りの面はありますが、2%という物価上昇率は、いわゆる何か起こった時の「のりしろ」としての意味合いがあるということ、それから消費者物価指数には上方バイアスという問題があり、実際の物価動向と比べるとCPI上で判断される物価上昇率はやや高めに出るという特徴があります。
§21Question
それから、先進諸国でインフレターゲットを設けている国々は押しなべて 2%近傍の物価上昇率にコミットしていますので、こうした状況の中で、例えば日本だけが 2%未満という状況にコミットすることになると、必要以上の無益なデフレ圧力を対外的に受ける懸念があり得るのではないかと思います。こうしたことが 2%のインフレ目標を目指している理由なのではないかと思います。
§22Question
これから日銀の中に入って、お二人は色々と検討されていくと思うのですが、これまで外におられた方として、 CPIの2%達成という点について、どういう視点が日銀には欠けていたと考えていたかを教えて下さい。(鈴木委員)日銀にどういう視点が欠けていたか、欠けていなかったかという観点で考えたことはありません。(片岡委員)非常に難しいご質問だと思いますが、1 つは、私自身、過去の著作において日本銀行のことについて、色々と論評してまいりました。ただ、今回、日本銀行の内部に入って銀行のスタッフの方を含めて色々な方とお仕事をさせて頂くという状況になりましたので、こうした経験を踏まえた上で内部の方と目線をあわせて判断しないとご質問にきちんと回答できないのではないか、と思います。そういう意味で、5年程、日本銀行の中で、実際、過去に自分があれこれ申し上げていたことがどのような流れで決まっているのかや、どのように考えたらよいのかという点も踏まえて、これから判断していきたいと思っています。
§23Question
今遠いと言われている、物価目標 2%に行くためには、もちろん金融政策だけではなく、他の要素も必要だと思うのですが、今のアベノミクス自体の評価をお二人にお伺いします。(鈴木委員)アベノミクスという政府の経済政策について、昨日日銀審議委員として任命を受けたばかりの者にとってみますと、所管外のことになりますので、コメントは差し控えたいと思います。2013年の共同声明にあるように、政府も日銀が目指している金融政策に対して、共同歩調をとって頂けると認識しています。(片岡委員)私個人は、アベノミクスについて過去色々な著作を書いてまいりました。そういったことから、今回、日本銀行の内部の人間の立場になり、立場的に変わったということもありますので、そうしたご質問への回答は直接的には控えさせて頂ければと思います。ただ、1 つ申し上げたいのは、日本銀行自体は日本銀行法に定められている枠組みの中で適切な金融政策を行っていくことが使命です。それから、先程鈴木委員もお話しされましたけれども、政府と日本銀行の間には共同声明が結ばれていますので、そのもとでできる限りのことをやるというのが、日本銀行の最大かつ唯一のミッションなのではないかと認識しています。
§24Question
出口戦略について伺います。2%が遠いとはいえ、バランスシートがこれだけ膨らんだ状況ですので、出口戦略を市場と対話して語っていくべきだという議論があるのですが、お二方は、その辺りについてどういう見解をもっていらっしゃいますか。また、実際に前審議委員の木内さんなどは、対外的な講演の場などでその辺りの警鐘を鳴らすような発言をされていたこともあると思いますので、ご自身の考え方も含めて伺えればと思います。(鈴木委員)出口戦略であるとか、それに関する収益のシミュレーションについては、いずれにしてもどこかの時点で、市場とのコミュニケーションはしていく必要があると思います。ただ、2%という目標に対しては、確か昨年の 3月から12月までマイナスで、今年になってプラスで、今、0.4%ぐらいだったと思いますけれども、まだ相当程度距離がありますので、現時点で出口に向けて議論を開始することは、それこそ 20年間市場を経験してきた者の立場からは、やや市場に対しては危険な動きではないかと考えているところです。
§25Question
また、色々なエコノミストの方や学者の方も、既に様々なシミュレーションは出しておられ、私もそうしたものをみたりしていますが、今後、将来どこかの時点でそういうことがある場合に、その時々の経済・金融、金利情勢に対して、日本銀行が持っている様々な方策、これをどのような順序でどのような方策を打ってくるかについては、前提の置き方によって全く異なってくるということだと思います。時々、出ているようなセンセーショナルな大きな赤字になるというような試算については――私自身まだ詳しい勉強もしておりませんが――、感覚的にはそのようなことにはなかなかならないのではないかと考えています。金融市場の安定を維持しつつ、打っていけるだけの懐というか、箪笥の中身は、日本銀行の中に十分あるのではないかと、現状考えています。(片岡委員)私自身は、出口政策については、現状の物価動向や景気から判断しますと、時期尚早ではないかと思います。ただ、出口政策に関して、その手段、ないしは、日本銀行のバランスシート等々への懸念があるということは理解しています。ですから、そうした状況、ご批判は、ある意味、出口政策に突入するタイミング、ないしはそれが見通されるであろうと判断できる時期において、日本銀行の中でも適切に議論がされると思いますので、そうした状況を踏まえて、今後判断していきたいと思います。
§26Question
むしろ、出口政策の議論よりも前に考えなければいけないことは―― 現状でも日本銀行として議論しているところだと思いますが――、2%の「物価安定の目標」をいかに達成するか、達成後は物価上昇率をいかに 2%に安定化させるかということだと思います。ですから、2%の「物価安定の目標」を達成・維持したうえで、政策を、適切な形で、金融システムやその時の経済状況にあわせて変えていくことが出口戦略だと思いますので、順序としては、まずは 2%の達成を目指したうえで考えることだと考えています。
§27Question
既に日銀の方になってしまったので、お答え難いかもしれないですが、黒田総裁の市場とのコミュニケーションについて、例えばマイナス金利導入の前に「全く考えていない」と言った直後に導入するとか、外からみるとちょっと唐突感があったり、市場とのコミュニケーションがうまくいっていないのではないかという見方もあります。それは外からみていてどのように思われたか、また、日銀の今後のコミュニケーションのあり方で改善すべき点がある、ということがありましたら教えて下さい。(鈴木委員)金融政策を通じて市場を動かしていくことが目的にあるということから、時としてサプライズになるような発表というものも必要ではないかと思っています。一方で、私自身も債券市場を含めて市場を長くみていて、日銀との間でのフランクなコミュニケーションをするということ、あるいはそういうことについての信頼感といったものも同時に非常に重要なことです。要すれば、バランスをとっていくということだろうと思いますし、これから色々な局面がありますので、私自身としても日銀の人間として、適切な意見の発信とコミュニケーションに努めていきたいと考えています。(片岡委員)黒田総裁については、私自身が直接何か申し上げることはありません。私個人としましては、市場の関係者といっても色々な属性の方がいらっしゃると思います。
§28Question
マーケットに非常に近い方もいらっしゃいますし、それから私の前職であったエコノミストのような立場の方もいますし、一般の国民の皆様方も当然いらっしゃいます。ですから、そうした様々な属性を持った方々に対して、分かりやすく納得して頂けるように、自分の意図をきちんと説明していくといった努力が必要だと感じています。
§29Question
お二人は、これから5年間任期があるわけですが、その間に物価目標が達成できるかどうかの見通しについては、どのように思っていらっしゃいますか。(鈴木委員)なんとしても達成したいと思います。(片岡委員)先程お話しさせて頂いた通り、日本銀行は、できる限り早期に「物価安定の目標」を達成することを 1 つの使命、目標として掲げています。従って、いつ達成すると申し上げることは現状できませんが、そのための努力をこれからしていきたいと考えています。
§30Question
そもそもの話として、ご自身が審議委員に選ばれた理由についてどのように自己分析していらっしゃるか、お二人それぞれにお願いします。(鈴木委員)どうして選ばれたかというのはよく分かりませんし、政府のご判断ということですが、先程来申し上げているように、金融政策は金融機関を通じて行うものですし、私自身、40年余り銀行の中で実務を行い、かつその半分がマーケットに関係するものでした。国債市場、株式市場あるいは為替市場、様々なマーケットに関係してまいりましたので、そういった経験を政策委員会の議論において活かすことができるのではないかと自分では考えています。(片岡委員)自己分析というのはなかなかしづらい部分ではありますが、私自身は、20年程、色々な形で経済政策や経済情勢の調査をしてまいりましたので、そういった知見を活かしたいと考えています。それから、私自身は 1996年に会社に入りまして、社会人として今に至っているわけですが、こうした時代というのは、日本経済の中では、デフレが進んで長期停滞が深刻化してきたちょうどその時期だったわけです。
§31Question
そうした中で、自らの能力ではなく、例えば外的な景気の悪化や経済停滞、そうした要因で就職がうまくいかないとか、そういった方たちの思いに何としてでも応えたい、そうした状況を繰り返すわけにはいかない、という気持ちでやってまいりましたので、自分自身が適格かどうかは私個人は判断できませんが、選ばれた以上は自分なりになぜ私がこの場に立っているのかという事実を重く受け止めて、そのためにやれることをやっていくだけだと、そのように感じています。以上