櫻井審議委員記者会見(2017年10月18日)要旨
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§1Question
2 点質問させて頂きます。1 点目は、本日の金融経済懇談会で参加者からどのようなご意見やご要望があったのかお聞かせください。2 点目は、函館市内を視察されたと伺っていますが、道南の現在の景気や経済の現状をどのように捉えていらっしゃるでしょうか。
§2Makoto Sakurai
金融経済懇談会では、当地の経済界、金融界、産業界の皆様にお越し頂き、道南経済が直面する課題や、日本銀行の金融政策の運営に関する貴重なご意見を伺いました。この場を借りて、改めてご参加頂いた皆様に御礼を申し上げたいと思います。話題は非常に多岐にわたりましたが、全てご紹介することはできませんので、私なりに整理してお話し申し上げたいと思います。まず、函館を中心とする地域では、観光業は比較的好調を維持しているとのことでした。昨年は、北海道新幹線開通の効果が大きかったようです。今年はその効果が横ばいかやや低下している一方、航空路線が増えてインバウンドが増加したとのお話がありました。対して、水産業は、不漁により厳しい環境にあるとのことでした。建設業では、公共事業がそれなりに伸びていることから少し良い先がある一方、かなり苦戦している先もあり、両方が入り混じっているようです。また、地域別にみると、函館を中心とした比較的好調な地域と、道南の他の地域で、やはり格差のようなものがかなりあると伺いました。金融界の皆様からは、日本銀行のマイナス金利政策により、かなり利鞘が減って、その点では金融機関の収益にマイナスの効果があるということで、こうした状況が長引かないようにしてほしいとの要望がございました。
§3Makoto Sakurai
それから、北陸等でも新幹線が開通しましたが、函館の場合は、東京からの移動時間が4 時間以上かかるということで、4 時間の壁があるとかそういったかなり具体的なお話も伺うことができて、大変参考になりました。2 点目について、実は私が函館に来たのは高校生の時以来53年ぶりです。当時、五稜郭などに行きましたが、その頃に比べると、ずいぶん郊外に住宅やショッピングセンターが増えたように思います。当時は、まだ青函連絡船が運航している頃で、かなり中心部がにぎわっていましたが、今回は少し異なる印象を受けました。道南経済については、本日お伺いしたお話も踏まえて、道内全体の中でもやや弱めだと感じています。背景として、一つには昨年の新幹線の効果が一服していることがあるように思います。それから何といっても、イカ、ホタテなどの不漁が続いたことで、水産業がかなり厳しい状況にあるとの印象を受けました。金融経済懇談会でも申し上げましたが、当地は、観光、水産という 2 つの大きな産業があり、その中でも少し良いところと悪いところが分かれているようです。また、水産業などは、かなり業況の変動が激しい産業との印象を受けましたので、どのようにして長期的に安定した産業として育成していくか、それを道南全体の経済活性化にどうつなげていくかが非常に重要だと改めて認識できました。
§4Question
午前の挨拶の中で、足許の供給力の改善が短期的には物価を下押しするが、中長期的には、労働供給やビジネスプロセスの見直しの限界、成長力の高まりなどにより物価に上昇圧力がかかるというご趣旨の説明をされていたと思います。そうした物価の上昇は、いつ頃明確化するとお考えなのかお聞かせください。また、関連して、一部の政策委員は、供給の余力が残っている中では、更なる追加緩和により需要を刺激し、物価上昇圧力を強めるべきとの見解を示されています。こうした主張に対する櫻井委員のご見解をお伺いします。
§5Makoto Sakurai
まず最初のご質問について、需給ギャップは 3 四半期連続プラスということで、やや需要が強いですが、経済全体としてみれば比較的良くバランスが取れていると思います。需要が伸びてきた中で、供給力がかなりついてきているとの印象を受けています。金融経済懇談会でも申し上げましたが、労働力率の上昇や、様々な生産性向上に関する取り組みが供給力の増加につながっています。供給力の増加なので、現在は、物価に対してむしろ上昇を抑制する要因として効いているのではないかとみています。いつ頃物価や賃金を押し上げる方向に作用し始めるか、時期をはっきりと予測することは非常に難しいと思います。ただ、その時期がだんだんとある程度近くなってきているのではないかと感じています。例えば、労働力率について、高齢化が進む下でどこかで上限に達すると考えております。時期的にも、そんなに長くかかるものではないのではないかとみています。この前提条件として、ある程度、今の 6 四半期連続のプラス成長のようなものに支えられていないと、その時期も早まらないだろうと思います。そのような時期が早く来ることを願っています。追加緩和が必要かについて、物価上昇は遅れていますが、私は、需給ギャップがプラスに転じて、そのプラス幅がリーマンショック以降では一番高い水準にあることも踏まえると、現在の状況を維持することが非常に重要だと思います。
§6Makoto Sakurai
現在の量的緩和政策が始まってほぼ 4年半になりますが、これまで最長のプラス成長は 2 四半期連続でした。2 四半期連続でプラスになってはまたマイナスになっての連続だったのです。これが初めて今回 6 四半期連続というところまできました。物価目標を早く達成したいということで何か新しい政策をとるということになると、場合によってはかなり無理をしなければならないということにもなりかねませんので、むしろ、現在の金融緩和を続けて、政策の効果をじっくりと待つことでよいのかなと考えています。
§7Question
今の質問にも少し関係するのですが、午前中のご挨拶の中で、足許の状況を否定的に捉えるべきではない、むしろとても良い状態にあり、物価が上昇する兆候もみられ始めているとお話しされています。一方で、金融経済懇談会でも出たマイナス金利の影響や、出口の副作用ということもバランスして考えると、いつ頃まで耐えうるかということも大事になってくると思います。もしくは、2%が高すぎるのではないか、場合によっては今の状況が良ければ 2%には特にこだわらなくてもよいのではないか、という意見もあると思います。今の目標の下で、金融政策を維持することのメリットをご説明頂ければと思います。
§8Makoto Sakurai
金融経済懇談会の中でも申し上げた通り、現在の金融緩和政策の枠組みを続けることで、金融政策の効果がどんどん強まっていくという状況に今入りつつあります。物価がゆっくりでも上がってくれば、期待の変化を通じて実質金利は下がることになりますから、緩和効果は強くなります。ある程度景気がよい状態が続いて、物価が早く上昇すればそれに越したことはないのですが、それを早めるために過剰なことをやる必要はないだろうというのが今の私の考え方です。先ほど申し上げた通り、生産性の向上などを通じた供給力の増加も経済に非常によい効果をもたらすと思います。従って、このような状況が続いている限りは、じっくりと待った方がよいということだと思います。それから、2%の目標については、これも金融経済懇談会の中で申し上げた通りで、今デフレではないというところまで来ましたが、消費者物価指数にはバイアスもありますので、やはり 2%という目標は置いておいた方がよいと思います。また、国際的にも、先進国で 2%という目標は大体共通していますので、中長期の目標としても必要だろうというふうにも思います。従って、2%を変える必要はないと思います。
§9Question
先ほど道南の経済、景気について伺いました。北海道全体の経済、景気、また見通しについてお教えください。
§10Makoto Sakurai
北海道全体としてみると、道南の景気の回復は遅れていると感じています。これは、先日の支店長会議の報告を聞いた際にも感じたことです。一つには、昨年の新幹線効果の裏が出ているように思います。2年前と比べれば良いのですが、昨年と比べると、新幹線の効果が短期で終わった先では落ち込みが大きいように思います。また、昨年は大きな台風がありましたので、復興のための公共投資が、他の地域では割と強く出ていることも、短期的には影響していると思います。その辺りで少し景気の回復に格差が出ていると感じています。北海道全体の景気改善も、どれくらい大きなラグがあるかはちょっと分かりませんが、日本の他の地域と比較すると少し遅れ気味かなと感じています。例えば、インバウンドは北海道全体で非常に活発ですが、宿泊客に占める外国人の比率は他の地域に比べるとまだ少し低いようですので、その辺りは改善の余地があるのではないかと考えています。
§11Question
いずれ企業のコスト吸収努力に限界が来るとのことですが、現状景気が 58 か月、59 か月と連続して回復している中で、今後、景気循環的に若干減速することも考えうると思います。その可能性と、そうなってくると、2%の達成時期はさらに遠のくような感じもするのですが、その辺を現状ではどうみているのかお伺いします。
§12Makoto Sakurai
ご指摘の通り、いつまでこの景気が続くのか、というのは大きな関心事です。幸いなことに、6 四半期連続でプラス成長が続いていますが、これには昨年の大型経済対策の効果が遅れて出ている面もあります。従って、今後その効果がどこで剥落していくか、また、今後の政策がどのようなものになるかにもよりますので、そこは少し分からない点です。一方、世界経済はかなりしっかりと回復してきています。ご承知の通り、数日前に出たIMFの予測でも、世界経済の見通しが若干上方修正されています。また、日本の貿易の伸びもかなり高くなっています。貿易面からみると、案外、景気の拡大が予想よりも長く続くのかもしれないとも思われます。その辺りもよく見極める必要があると思います。ご指摘の通り、もし景気の回復がここで止まったり、あるいは外部環境などが変わってくると、物価にマイナスに働きうるということはもちろんその通りだと思います。ただ、今のところ、目立ってそれがはっきりと出てくる予兆はないのではないかと思っています。
§13Question
2 つお伺いします。1 つ目ですが、現在の「イールドカーブ・コントロール」の金融緩和効果は、不十分であるという意見が政策委員の中から出ていますが、仮にそうした観点から提案があった場合に、櫻井委員はどのような対応を採られるお考えなのかお伺いします。2 点目は、現在の枠組みの中にETFの買入れがありますが、現在株価は約21年ぶりの高水準になっています。この政策の意義であるとか、今後どうあるべきかということについて、所見をお願いします。
§14Makoto Sakurai
まず、1 点目につきましては、私は今のところ現在の政策で十分だろうと考えています。ご承知の通り「イールドカーブ・コントロール」の下では金利に重点が置かれていますので、量は従属変数になっていると思います。現実に買入れ額も減ってきていますが、重要なことは、金利をきちんとコントロールできているかであり、その効果が十分かどうかです。特に、物価が上がるに連れて、実質金利は下がることになりますから、効果がどんどん強くなってくるわけです。そうした点も踏まえると、私は現在の枠組みで十分だろうと考えています。それからETFにつきましては、確かにこのところ株価が上がっていますが、現在、日本銀行がETFを通じて取得しているのは、株式市場の時価総額の大体 3%ちょっとです。全体としてみれば、それほどまでに大きいとは考えていません。個別の銘柄では、大きなものもあるということは事実ですが、全体としてみるとまだその程度ですので、今のところ、特にETFについて何か変更する必要があるか考えるのはまだ早いのではないでしょうか。
§15Question
櫻井審議委員の挨拶の中で、リスク要因として、FRBの金融政策の正常化に伴う国際資金フローへの影響を挙げられています。例えば新興国からの資金流出懸念が強まると、一般的にはマーケットでリスク回避のような動きが出てきて、株安円高につながると言われていると思うのですが、そういった場合に追加緩和を考えるとか、どういったことを考えているのかお伺いします。
§16Makoto Sakurai
金融経済懇談会の中で申し上げたことは、FRBがバランスシートの縮小に向かい、金利も将来上がっていくかもしれない状況にある下で、主に新興国への資本フローが減ってくるかということです。我が国に直接どのような影響が生じるかはちょっと分からないと思います。為替の変動や資本の移動、特に短期の資金移動などは非常に急激に起こりますので、そこはやはり慎重にみていく必要があると思います。その場合、仮に非常に大きな変動が起きるということになれば、当然、国際的な協力であるとか、そのようなことも必要になるかもしれません。グローバル化しているがゆえに、特に短期の資本移動などは大変大きな量で、かなり短い期間で起こりえますので、その辺りはやはり懸念材料かと思います。きちんとウォッチしていく必要があるだろうという趣旨でございます。
§17Question
日銀で今、ETFを年間 6 兆円買入れていると思いますが、これは、どれだけ株高になっても、特に方針を変える必要はないということでよろしいでしょうか。
§18Makoto Sakurai
ETFの買入れは、基本的にリスクプレミアムに働きかけるということで始まった政策なのですが、少しずつ景気の状況はよくなってきましたし、株価も上昇しています。かといって、今すぐにETFの買入れを止めた時にどのような影響が出るかなど、様々なことを考えなければならないことも確かです。景気が回復し始めて、6 四半期連続のプラス成長となりましたが、もう少し今の状況を続けてもよいのではないかと思います。もちろん、将来もずっと景気の回復が続くということになれば、そのときはそのときで考えるということになろうかと思いますが、現時点ではまだそこまで考える必要もないのではないかということです。以上