布野審議委員記者会見(2017年11月8日)要旨
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§1Question
本日の懇談会の内容と、懇談会を踏まえたうえでの宮崎県内の経済情勢や課題についてお聞かせ下さい。
§2Yukitoshi Funo
本日は、宮崎県の各界を代表する方々から、当地経済の現状や課題、それから日本銀行の金融政策運営に関して、貴重なお話やご意見を承りました。非常に有意義な会合になりましたので、この場をお借りしまして、ご出席頂いた皆様に御礼を申し上げます。懇談会では話題が多岐にわたりましたので、私なりにまとめてお話ししたいと思います。まず、宮崎県経済については、台風などの影響が一部にみられてはいますが、全体としては「緩やかに回復している」という意見が多かったように思います。個人消費は底堅く推移しており、企業の生産活動も緩やかに持ち直しているというお話がありました。一方で、中小零細企業を中心に、景気回復の実感はまだないといったご意見もありました。更に、人口減少や高齢化が進むもとで、人手不足の深刻さであるとか、後継者不足で事業継承が難しいといったご指摘もありました。また、当地では若年層の県外就職も多く、県内企業の就職者数をどのようにして増やしていくかということも話題に上りました。こうした中で、特に食や観光の分野で、域外需要の取り込みに向けた積極的な動きをなされているというお話を伺いました。食の分野では、5年に 1 度開催される全国和牛能力共進会において、3 回連続で内閣総理大臣賞を受賞された宮崎牛のお話であるとか、出荷量が 3年連続で日本一となっている本格焼酎のお話がありました。
§3Yukitoshi Funo
また、県全体でフードビジネスを推進しているというお話を伺いました。更に、「スポーツランドみやざき」を掲げて、様々な競技団体の事前キャンプ地の誘致等に取り組まれて、成果が上がっているというお話がありました。この他、海外に向けての販路拡大や企業誘致、起業支援を積極的に行っているというお話も伺いました。このように、宮崎県経済の活性化について皆様の積極的な姿勢を伺うことができ、よい循環が始まりつつある宮崎県経済が今後とも発展していくのではないかと、非常に心強く感じました。私ども日本銀行としては、鹿児島支店や宮崎事務所を通じて、何らかの形のご支援ができればと願っている次第です。
§4Question
株価について伺います。昨日、日経平均株価が約 26年振りの高値をつけました。一部では過熱感を指摘する声もありますけれども、最近の株価上昇についてどのようにご覧になっているのか、委員のご見解をお聞かせ下さい。併せて、ETFの購入について伺います。こちらは 2%の「物価安定の目標」の達成のための手立てという位置づけになっていると思いますけれども、2%を達成するまで、金額の変更も含めて見直しはないということなのか、それとも 2%を達成する前であっても、何らかの事情で見直すこともあり得るのか、もし見直すとすればどういった要素が判断材料になってくるのか、その辺りをお聞かせ下さい。
§5Yukitoshi Funo
株価についてですが、私としては、こういった高いレベルにまで株価が至ったということについては、非常に好ましいことだと思っています。色々な指標がありますから過熱しているというご意見もあるとは思いますが、私の観察するところでは、PERが低いレベルにとどまっていることなどに表されているように、過熱状態にはないと思っています。ETF買入れについては、物価上昇率が 2%に到達するまで何も見直さないのかという趣旨のご質問であれば、現段階で私は変更の必要性を感じていません。様々な施策――長期金利、短期金利、量、質――について、物価上昇率が2%に達するまで全て変更しないといったようなことではありませんので、金融政策決定会合で変更の必要性が高まったという意見が大勢を占めるようになれば何らかの変更はあり得るのですけれども、今の段階ではそういう状況にはないと思っています。
§6Question
宮崎県内の今後の景気見通しについて、色々とヒアリングをされた結果、どのようにみていらっしゃるのかをお聞きします。大都市において景気が拡大傾向にある中で、なかなか宮崎県まで恩恵が届かないことが、長年の課題になっています。布野委員が自動車産業ご出身ということもあり、そういったところをどのようにすべきか、建設的な提言もあれば、お願いします。
§7Yukitoshi Funo
今の景気拡大は、都市部だけといいますか、一部の地域だけに起こっているわけではなく、全国的に景気が回復し、地域によっては拡大と言ってよい状況になっています。そうした全体の動きの中で、宮崎県が取り残されているのかがご質問のひとつのポイントであるとすれば、決してそうではなく、宮崎県経済も全国的な大きな潮流の中で確実に回復の方向に歩んでいると私は思っています。ただ、先頭を走っているというわけではありませんので、全国的な動きの継続が非常に重要であると思っています。そういった経済の全体の流れを後押しするという観点からも、日本銀行の金融政策もまた、粘り強く続けていくことが重要であると考えています。
§8Question
そうしますと、全国の低ランクにいるところからステップアップしていくためには、どのような分野で更に飛躍していくことが、そういった支えに必要と、今日お話を聞かれる中でご意見をお持ちになりましたでしょうか。
§9Yukitoshi Funo
都道府県経済の比較というのは、あくまでも地域ごとの平均値でみた場合のものであって、大切なのは個々の経済主体の動きです。宮崎県において個々の企業をみますと、先程も触れたように、宮崎牛や本格焼酎といった言わば全国でも先頭を走っている産業・企業があります。行政の様々な取組みについても、ふるさと納税では全国的にトップを走っている地方自治体もあるようです。そのような努力を様々な形で続けていくことが、宮崎県経済の将来を確かなものにする手立てであると思っています。
§10Question
午前中の講演の中で、緩和的な金融環境を息長く継続していくことが重要だと述べられていたと思います。一方で、一部の審議委員からは追加緩和の主張が出ています。この追加緩和の必要性について、現状どうお考えでしょうか。またその追加緩和に伴う副作用についてどうお考えでしょうか。
§11Yukitoshi Funo
私は、ご存じのように、先の会合において現状の政策を継続する案に賛成しました。金融政策に限らず、行政や企業の施策でも作用と副作用の両面があると私は認識しています。副作用のない薬はないと思っています。そのような意味で、現在の金融政策についても、副作用の動きについて常に注視して進めていかなくてはならないと思っています。作用と副作用をみながらバランスをきっちり取っていくことが必要だと思っています。そのようなバランスを取るという観点から、現時点において追加緩和が必要かというと、私は必要ではないと思っています。物価については、多少遅れがあるという話も聞かれますけれども、上昇基調にあると私は思っています。この基調がよい方向に展開して予想物価上昇率も上がっていけば、現在の枠組みの中での金融政策の作用が強くなっていくわけですから、その辺りもみながら、経済・物価・金融情勢を踏まえて判断していくことになると考えています。
§12Question
午前の講演内容とも関連しますが、企業について、内部留保が高水準であるにもかかわらず設備投資や賃上げに消極的であるとか、またアニマルスピリットが足りないのではないかといった指摘がよく聞かれるわけですけれども、産業界出身の委員として、その背景と理由をどのようにお考えになりますか。対外直接投資は増加しており、これは企業の問題というよりも国内の事業環境の問題の方が大きいのか、この辺りについてどうお考えなのかご所見をお願いします。
§13Yukitoshi Funo
全般的な話でアニマルスピリットがないということですが、個別にみると旺盛なアニマルスピリットを持って事業展開しておられる企業もあるわけです。そういう意味で、ステレオタイプに日本の事業家にアニマルスピリットがないと考える必要は必ずしもないと私は思っています。そのうえで、現状はどうかと言いますと、確かに慎重に判断しようとしている事業家が多いのは事実ですが、わが国における経営や事業立地上の強さと弱さをきっちりとみて、しっかりとした事業計画を立てられるようなものについては、積極的に展開されている事業家は多いのではないかと思っています。今回の当地の訪問においても、そうした積極的な事業家の方と会う機会を持ちました。
§14Question
賃上げに関連して伺います。今年度上期決算では企業の好業績が続いていたのですけれども、この好業績を賃金にどのように反映させるべきだとお考えでしょうか。また、それが物価上昇の点からどのような意義を持つのか、改めて伺えますでしょうか。
§15Yukitoshi Funo
賃上げは、労働者と使用者との協議を通じて、ある種、わが国経済の様々な制度に従って決定されていくと私は思っています。そのうえで、足許の企業の経営状態をみると、これもまた平均の話と個社の話で異なりますが、平均でみれば企業業績は上がっています。苦しんでおられる会社があるのも事実でしょうが、よい業績を上げられている会社も数多くあると認識しています。そうした会社では、労使間の建設的な協議を経て期待どおりないしは期待以上の合意が出てきて、そのような会社が多くなっていくことを期待しています。また物価への影響について、需給ギャップや人手不足といった今の経済環境を踏まえると、今後、平均値でみれば、賃上げ率は上昇していくだろうと私は思っています。その結果、消費者の購買力も上がっていき、値上げを受け入れるような消費者側の動きが強まり、また賃金上昇を販売価格に転嫁していく企業行動が強まっていくだろうと私はみています。
§16Question
先程のお話では、物価目標の 2%に達する前に政策の調整を行うこともあり得るということだったと思います。今の物価上昇率はコアで 0.7%ですが、少なくともこれが 1%台に定着する状況でなければ、ETF買入れに関する調整にしても、長期金利の調整にしても行うことは難しいとお考えかどうかをお聞かせ下さい。
§17Yukitoshi Funo
将来どのような議論が金融政策決定会合でなされるかによりますので、今のご質問のように物価上昇率が 1%に至ったら政策変更するとか、機械的な話にはならないと私は思っています。繰り返しになりますが、物価を中核にしながらも、経済や金融情勢も踏まえたうえで、話し合いがなされていくとみています。私自身が政策を考える際には、そのようにしています。そのうえで申し上げますと、2%の「物価安定の目標」を達成するまで、政策は固定的だという見方が多いとすれば、私は必ずしもそうではないと思っています。「オーバーシュート型コミットメント」におけるマネタリーベース残高の拡大方針では 2%がポイントになっていますが、他の政策ツールについては、あくまでも経済・物価・金融情勢を踏まえたうえで、それぞれの委員が考え、意見を持ち寄って議論し、その結果が政策となると私は考えています。
§18Question
最近の株高について、日本銀行のETF買入れが一因だとみているのか、それともETF買入れとは全く無関係なのか、なかなか定量的な判断は難しいと思うのですが、その辺りのご認識をお願いします。
§19Yukitoshi Funo
ETF買入れはあくまでもリスクプレミアムに働き掛ける観点から行っています。最近株価が上昇していく中で、色々と巷間で指摘されているとおり日本銀行は殆どETFを買っていないわけですので、日本銀行が株を買って株価を上げたというのは事実としてないと思っています。私は今のような株価の動きというのは、世界全体の経済状況や資金の流れに加え、特にわが国企業の業績が強く反映されたものではないのかと思っています。以上