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Bank of JapanPress conferenceDec 6, 2017Takako Masai, Board Member

政井審議委員記者会見(2017年12月6日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

2 点ご質問します。まず 1 点目には、午前中の懇談会ではどのような内容のお話がされたのかということ、2 点目には、その懇談会での内容を踏まえて、政井審議委員の兵庫県経済の印象について、それぞれお聞かせ下さい。

§2Takako Masai

懇談会では、当地の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話、率直なご意見などを数多く頂きました。極めて有意義な意見交換ができたと思っています。本日ご出席頂いた皆様に、この場を借りてまず感謝申し上げたいと思います。懇談会での話題を網羅することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話を整理して申し上げたいと思います。まず、当地の景気については、全体として、輸出・生産面が増加基調にあり、緩やかな拡大に転じつつあるとのお話がありました。もっとも、中小・零細企業では景気回復の実感が乏しいなど、企業規模や業種のほか、地域でのばらつきがあるとの声が聞かれました。先行きにつきましても、緩やかな拡大を続けるとの見方が多かった印象をもっています。中小企業においても先行き不安が和らいでいるとの声が聞かれた中、多くの方々から深刻な人手不足を懸念しているとの声が聞かれました。具体的には、兵庫県の有効求人倍率はバブル期を上回っており、医療・福祉、飲食・サービス、建設業、製造業など幅広い業種で人手不足感が強まっているという感想をもちました。こうした課題への対応として、若年層の県外流出の抑制、現在の産業集積を活かした次世代産業の育成に官民で取り組んでいるとのお話も伺いました。

§3Takako Masai

また、人材不足は高齢化が進む企業の事業承継の課題でもあり、黒字企業でも後継者難を理由に廃業に至るケースがあるとのお話も伺いました。金融面に関しては、兵庫県内の金融機関貸出残高は、前年を上回って推移していますが、競争激化が貸出金利の低下圧力となり、収益環境が厳しい中、各金融機関ともコンサルティング機能を発揮しながら、地元企業の前向きな資金需要を掘り起こすとともに、経営改善支援や創業支援、事業承継などにも積極的に取り組んでいるというお話を伺いました。私どもとしては、兵庫県の金融経済情勢について、神戸支店を通じて今後も注意深くモニタリングを続け、地域経済をサポートしてまいりたいと思います。次に、兵庫県経済の印象について申し上げますと、当地は鉄鋼・造船等のいわゆる重厚長大産業を中心に発展してきましたが、近年は、世界に先駆けて iPS 細胞を使う臨床研究の舞台となった「神戸医療産業都市構想」で 300社以上が集積するなど、新産業育成に向けた取組みの成果も目立っていると感じました。また、重厚長大産業以外にも、当地には全国的に有名な食料品・飲料メーカーやアパレル企業などがあり、産業の裾野が広いとの感想をもちました。

§4Takako Masai

また、地域経済活性化の観点からは、養父市が中山間地農業の改革拠点として国家戦略特区に指定されたことにより、特区制度を活用した法人による営農が展開されるなど、農業の競争力強化に向けた取組みが進んでいると伺っています。また、官民が協力して、水素エネルギーの活用や航空機産業の育成に向けた取組みが進められているなど、わが国産業の高度化を牽引する拠点として、益々その存在感を高めていかれることに期待したいと思います。観光面では、大型クルーズ船の寄港が可能な神戸港や、世界遺産の姫路城を有しているほか、城崎温泉は外国人宿泊客が大幅に増加していると伺っていまして、これらの強みを上手く活用されることで、当地のインバウンド観光の伸びしろはまだまだ大きいだろうと思っています。兵庫県ではこれらの観光地をつなぐ周遊ルートを「ひょうごゴールデンルート」と名付けており、これを重点に置いたプロモーションを展開していると伺っていますが、こうした点在する魅力的な観光資源を線で結ぶことができれば、インバウンドの経済効果も一層広がりを持ってくると思っています。

§5Takako Masai

こうした取組みが、兵庫県経済の更なる活性化につながることを期待するとともに、私どもとしても、中央銀行の立場から経済の持続的成長の実現や金融システムの安定確保を図りながら、兵庫県経済を支える関係者の皆様のご努力がより大きな成果へとつながっていくようサポートさせて頂きたいと思っています。

§6Question

午前中の懇談の中で、異次元緩和の導入後 5年近く経つので、効果と副作用についてみていく必要があるとしていますが、今現在、副作用についてはどういうふうなご認識なのかを教えて下さい。また、その前の段階で、物価の下振れリスクについて触れられておられるのですけれども、仮にその副作用というものを注意しなければならなくなった時に、一方で物価の下振れリスクがあるというのは、金融政策としてどういう調整が必要なのかということについて、現時点の考えをお聞かせ下さい。

§7Takako Masai

金融緩和が長期化する場合の副作用として、一般的には、市場機能の低下であるとか、資産価格の過度の上昇であるとか、金融仲介機能の悪化といったものが挙げられると思います。このうち、市場機能に及ぼす影響については、最近の国債市場の動向をみると、例えば国債の売買高などに大きな変化は生じておらず、現時点で国債市場の流動性や機能度が一段と低下したようにはみていません。このほか、展望レポートでも指摘していますように、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において、行き過ぎた期待の強気化を示す動きは観察されていません。また、金融仲介機能については、リーマンショック以降、メガバンクを始め、わが国の金融機関の世界におけるプレゼンスは大きく高まっていると認識しています。わが国経済を取り巻く環境をみると、世界経済が緩やかな成長基調に復してきたとはいえ、地政学リスクを始め、不確実性も相応に残っていますが、こうした環境のもとで、わが国の金融機関の体力が確りとしていることは、日本の金融仲介機能に対する影響のみならず、グローバルな金融システム安定の観点からも、大変重要になっていると思っています。もっとも、1990年代以降、趨勢的に貸出利ざやは低下傾向であるうえ、量的・質的金融緩和が一段の下押し圧力としては働いていると思います。

§8Takako Masai

足許、利ざやの縮小傾向は落ち着きつつあるものの、引き続き、収益の下押し要因となっていることには変わりはないだろうとみています。ただ、現状については、短観などの各種調査をみますと、金融機関の貸出態度は引き続き積極姿勢となっているなど、金融仲介機能の悪化は窺われていないとみています。この背景には、金融機関が充実した資本基盤を有していることもあり、金融仲介が停滞方向へ向かうリスクや、金融システムが不安定化するリスクは、現状大きくはないと判断しています。少し鳥瞰的にみますと、日本経済を確りとした成長軌道に乗せ、2%の「物価安定の目標」を実現することは、金融機関自身の長期的な経営の観点からも重要だと思っています。本日の金融経済懇談会の挨拶でも申し上げました通り、自然利子率は趨勢的に低下してきており、日本銀行スタッフの推計ではゼロ近傍で推移しているということも、また事実であると思います。そうした中で、緩和的な金融環境を実現していく必要があると思います。本行が、政府とともに、民間が成長力を高めていく後押しをしていくことが重要だと認識しています。この点で、本行と金融機関との協力関係の維持・強化も欠かせないと考えています。

§9Takako Masai

金融機関は、例えば、本日もお話を伺う機会がありましたが、地域金融機関を中心に、創業支援やビジネスマッチング、事業承継といった地元密着型の活動に取り組まれていますが、これらを一層強化していくことは、現在、官民が行っている様々な取組みとあわせて、日本の潜在成長率を高めるための地道な取組みとして不可欠だと思います。次に、副作用とともに、物価の下振れリスクをどうみるか、下振れた時をどう考えるかというご質問ですが、物価の下振れと言いましても、それがどういう経済背景か――マーケットであったり、世界経済であったり――によって、あり方も様々だというふうに考えられますことから、その時に、経済・物価情勢、海外情勢、金融市場の情勢等、様々勘案した上で、対応していくということに尽きるかと思います。

§10Question

今の質問と少しかぶりますが、講演の中で物価上昇 2%くらい毎年上がってくるものだという社会規範(ノルム)が定着することが必要だと仰っていますが、それは日銀がこれまでどおり粘り強い緩和を続けていくという以外の方策はないということでしょうか。あわせて、政府とのコミュニケーションが取れていることが求められるとありますが、これの意味するところを教えて頂ければと思います。また、企業の賃上げが広がるのかどうかということについても確信はないといったようなことを仰っていたように思いますけれども、その辺りもあわせて教えて頂ければと思います。

§11Takako Masai

物価に関するノルムが変わっていくためには、まず中央銀行の一貫したコミットメントが重要であると思っています。講演の中では、日本銀行が物価安定の目標の実現に向けた決意を示し、金融政策を運営していくことが何よりも大切であり、そのうえで、政府と日本銀行のコミュニケーションがしっかり取れていることも――同じ方向を向いていくということも――大変重要であることを申し上げました。また、企業にしてみれば、自社製品やサービスの値上げが数十年振りであるという例も多いわけですし、そういった意味では値上げの経験が乏しい状況である、慣れていない状況であるということ、消費者側にとってみても、一定程度の賃金や物価が上昇していく環境が当たり前なのだというふうにはまだまだなっていないのではないかということを申し上げました。従って、国全体の慣行や意識が変わっていくことが必要なことだと思っていますが、中央銀行としてまず一貫したコミットメントを示すことが重要であると考えています。次に、政府とのコミュニケーションについては、日本銀行と政府との間では 2013年に共同声明というかたちで、できるだけ早期の 2%の物価上昇に向けて日本銀行は政策を行っていくという発表をしていますが、こういったコミュニケーションをとることが重要であるということで申し上げました。

§12Takako Masai

企業の物価観に関してですが、確かに景気の見通しの下振れリスクが小さい割には、物価の上昇の下振れリスクがやや大きいという表現をしましたが、物価観が変わる芽が全くないのかといえば、タイミングを含めてそれほど悲観することはないのではないかと思っています。例えば、足許のところでみれば、確実に雇用の引き締まりは続いているわけですし、本日の懇談会の席上でもそういった声が非常に多く聞かれました。今後も、引き締まりが続くだろうと考えられます。海外の方に目を向けましても、IMFが 10月に成長見通しを上方修正しており、世界経済も非常にバランスよく拡大をしていく流れになっていますし、私自身としては、原油価格、資源価格が、この何年かに比べますと安定してきているということも、来年を見通す上で、非常にプラスの材料になってきていると思っています。こうした状況を考えますと、先々の生産の増加が期待できるだろうと考えます。そうなりますと、基本的には、マクロ的な需給ギャップというのが、先々にわたっても改善を続けていくことが期待できると思っています。また、展望レポートでもご紹介しております通り、企業のコスト面からみた価格上昇圧力というものも徐々に高まっているとみられます。また、雇用や所得環境が今後改善を続けていけば、消費者の値上げに対する許容度というのも、少しずつ増していくだろうと思っています。

§13Takako Masai

こうした状況のもと、企業の価格設定スタンスも徐々に積極化していく素地は整っているというようにみています。

§14Question

本日午前中の講演で、「物価観を変えるために金融教育が必要」と仰っているのですけれども、投資教育することによって、なぜ物価観が変わるのか教えて下さい。また、投資というと、株式投資が入ってくると思いますが、日銀のETF購入の効果と副作用について、今のところの委員の評価を教えて下さい。

§15Takako Masai

まず、本日の講演で、金融教育について多少お話しした背景ですが、金融経済懇談会は、年に何度か私ども政策委員会の者が、地方に伺い、各地の経済、金融、行政の皆様と様々な意見交換をさせて頂くとともに、私どもの金融政策および私どもの経済の見通しをご説明させて頂くものですが、今回はこの機会を捉えて金融教育をトピックとしてご紹介した次第です。金融教育については、OECDが 2012年に策定し、G20 ロスカボス・サミットで承認された「金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則」において定義されているとおり、単なる金融知識の普及ではなくて、「金融の消費者ないし投資家が、金融に関する自らの厚生を高めるために、金融商品、概念およびリスクに関する理解を深め、情報、教育ないし客観的な助言を通じて、リスクと取引・収益機会を認識し、情報に基づく意思決定を行い、どこに支援を求めるべきかを知り、他の効果的な行動をとるための技術と自信を身に付けるプロセス」という観点でご説明しました。次に、ETFについてのご質問ですが、こうしたリスク資産の買入れは、日本銀行による「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みの要素として、株式市場におけるリスクプレミアムに働きかける観点から行っているものです。

§16Takako Masai

そういった意味では、経済・物価・金融情勢を踏まえれば、リスクプレミアムへの働きかけが現在の 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するための必要な政策であると考えています。また、副作用についてのご質問もあったかと思いますが、そういった懸念に対しては、昨年に買入れ手法を工夫するなど目配りをしながら政策を続けています。

§17Question

なぜ投資をする教育をすることによって物価が上がる、物価観が高まるのか、その流れをもう少し詳しく教えて下さい。むしろ投資した方がいいと仰っているのですか。

§18Takako Masai

金融リテラシーの向上が直接的に物価観に訴えかけるというお話をしたのではなくて、講演で触れましたとおり、各種調査では、海外と比較してもわが国の設問に対する正答率が高くないということ、また、金融教育の必要性がなかなか認知されていないことが窺われるというお話をいたしました。物価観が変わっていくことと、金融教育の必要性の認識が広まっていくことは、表裏一体の関係と言えるのではないかということを申し上げた訳であり、金融教育をやることによって物価観が変わるとか、物価が上がるといったことを申し上げたわけではありません。

§19Question

量的緩和の件で、先程副作用についてお答え頂いたのですけれども、地方経済でのメリット、デメリットというのは、どのように評価されますでしょうか。先程お答え頂いたような全国的な傾向と同じことかもしれませんが、よろしくお願いします。

§20Takako Masai

こうして年に何度か地方に伺って、地方の金融機関や、それから経済界を代表する皆様のお話を伺っていますと、当然、各県によって個性があるのですけれども、結局、最終的に抱えている問題は、私どもが普段みているマクロでみた全国の問題と共通しているのではないかといった印象をもっています。もちろん、地方によって、政策効果が届くまでの時間的な差異はみられるかもしれませんが、例えば、緩和的な金融環境が企業の設備投資意欲に及ぼす影響は共通するでしょうし、わが国経済自体がグローバル化している中、政策の効果や副作用についても、地方と全国とで共通するところが多いのではないかと考えています。従って、こういった金融経済懇談会の機会を得て、直接皆様からお話を伺うことは、私にとっても非常に重要な機会となっています。

§21Question

昨日、安倍総理と黒田総裁が面会するというお話が報道でもあったかと思うのですが、そこでのお話、どのようなお話があったかというところへのご認識と、春に総裁が任期を迎えるわけですけれども、審議委員のご認識として、物価の下振れリスクへの言及もございましたが、どのような人物、お方がふわさしいとお考えか、その辺りのご所感をお伺いできればと思います。

§22Takako Masai

私、昨日、神戸入りをしておりまして、総裁が官邸に行かれたかどうかは、記者の皆様のほうがお詳しかったのではないかと思います。総裁任期が近づいてきているというのは事実ですけれども、私としましては、やはり 2%の「物価安定の目標」に向かってすべきことをする、判断すべきことを判断していくということが最も重要なことであって、それに集中してまいりたいと考えています。以上