片岡審議委員記者会見(2018年3月1日)要旨
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§1Question
2 点お伺いします。まず午前中の懇談会では、出席者からどのような声がありましたか。金融緩和に伴う低金利が長引く中で、銀行経営に影響が及んでいる、といった声はありましたでしょうか。2 点目は、岡山県経済の現状と見通しについて、どのように受け止めておられるか教えて下さい。
§2Goushi Kataoka
本日の懇談会では、当地の各界を代表する方々から地域経済の現状や課題、また、日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話、率直なご意見を数多く頂き、極めて有意義な意見交換ができたと考えています。本日、ご出席を頂きました皆様に改めて感謝を申し上げたいと思います。懇談会での話題の全てを網羅することはできませんが、私なりに席上で伺った話を整理して申し上げます。当地の景気につきましては、堅調な世界経済を背景に、輸出や外国人観光客数が堅調に増加していることに加えて、岡山駅前を中心に再開発が進んでいることもあり、製造業と建設業が牽引する形で全体として緩やかに拡大しているという声が聞かれました。一方、足許の課題としては、人手不足を挙げる声が幅広く聞かれました。人手不足感が強まれば、事業の制約に繋がるといった声のほか、製造業の働き手不足から外国人の雇用が増えているといった声もございました。また、生産年齢人口の減少が市場の縮小に繋がっていることを危惧する声も聞かれました。これに対しては、当地の大学の活性化のほか、大都市に進学した大学生が、就職に際して岡山に戻ってくるような取り組み――具体的には、大都市圏での就職説明会のほか、産学が連携してビジネス交流会に学生を招き就職支援の場を設けるような取り組み――がなされていると伺いました。
§3Goushi Kataoka
岡山の地理的、歴史的な高い魅力と相俟って、若い力が岡山で増えていくことが期待されます。金融界からは、きわめて緩和的な金融環境を背景に、金融機関の経営は厳しい状況にあり、金融政策運営に当たっては金融システム面への影響もしっかり考慮してほしいとのお話を伺いました。もっとも、こうした厳しい環境の中でも、地場の信用金庫では、コンサルティング機能を発揮しながらビジネスマッチングやクラウドファンディングといった前向きな取り組みを、地域間で連携して実践されているといったお話も伺い、大変心強く感じています。私どもとしましては、中央銀行の立場として、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことを通じて、当地関係者のご努力がより大きな実りへと繋がっていくよう支援してまいりたいと考えています。岡山県経済の印象と現状・先行きの見通しにつきましては、岡山県は中国・四国を結ぶ交通の結節点であるだけでなく、自然災害が少ないという恵まれた地理的環境にあり、古くからこうした立地を活かした産業が県内経済を支えてきたという印象を持っています。例えば、水島臨海工業地帯を中心として、県内には古くから鉄鋼や自動車、化学などの工場が集積しており、県内総生産の約 3 割を製造業が占めています。
§4Goushi Kataoka
非製造業では、桃やぶどうなどの全国的にも有名な農産物や豊かな森林を育んでいるだけでなく、近年は中四国地域全域を視野に入れた大型ショッピングセンターや物流施設の新設なども目立っていまして、地の利を生かした経済発展が一段と進んでいるように思います。この間、関係団体が連携し、「おかやまマラソン」や「そうじゃ吉備路マラソン」といった大型イベントの開催を通じた経済の活性化にも積極的に取り組まれています。観光面では、後楽園や倉敷美観地区、閑谷学校のほか、「天空の城」として有名な備中松山城など、豊富な観光資源を有していることが強みだと感じています。こうした中で、最近は岡山空港発着の国際便が増便されていることもあって、外国人観光客が大幅に増加していると聞いています。さらに今年は、瀬戸大橋開通 30 周年の節目の年でもあり、県内では年間を通じて様々なイベントが開催されると伺っているため、観光客のさらなる増加が期待できると思います。当地の景気は、こうした地理的、構造的な強みを有するもとで、足許の外国人観光客の増加や堅調な海外経済を背景に、輸出・生産が増加基調にあり、企業業績も 2017年度は増収増益が見込まれています。設備投資は、2016年度に大きく伸びた後、今年度もしっかりとした増加計画となっています。個人消費も、雇用・所得環境の改善を背景に持ち直しています。
§5Goushi Kataoka
全体として、岡山県の景気は緩やかに拡大しつつあると判断しています。こうしたもとで、海外の政治・経済情勢や、人手不足の影響については注意する必要がありますが、先行きも岡山県の景気は緩やかに拡大していくとみられます。私どもとしましては、岡山支店を通じて岡山県の金融経済情勢を注意深くモニタリングしつつ、中央銀行の立場から地域経済をサポートしてまいりたいと考えています。
§6Question
講演では、予想インフレ率が上昇していないということを言われ、4つの波及経路を示されていました。一方で追加緩和の話をされて、更に金利を下げることによって設備投資や住宅投資を促すということですが、現状では企業は潤沢な資金を持っています。このため金利は問題ではなく、需要があれば積極的な設備投資をするでしょう。住宅投資に関しても、金利が下がればメリットはあると思います。しかし、我々消費者からみると、将来の雇用不安というか、所得等が恒常的に上がらない限りは、金利が下がっても追加的な効果があるのか分かりません。この点をお伺いしたいと思います。
§7Goushi Kataoka
私自身は、決定会合のステートメントや主な意見にも記載されている通り、かつ本日の懇談会でもお話しをさせて頂いた通り、10年以上の幅広い国債金利の一段の引き下げと、コミットメント強化の必要性を申し上げています。ご質問の点については、追加緩和策として、金利を下げることに加えて、日本銀行が 2%の「物価安定の目標」に向けて明確な意思表示をしていくことも相俟って、緩和効果が発揮されると考えています。懇談会でも申し上げましたが、 10年以上の国債金利の幅広い引き下げは、設備投資や住宅投資を刺激すると考えています。また、政府は、賃上げ等に前向きな企業を税制面から支援することを決めていますので、こうした財政政策との相乗効果も期待されます。これらは、需給ギャップの改善を通じて、物価上昇率を押し上げることになります。それが懇談会でも申し上げた 4 つの波及経路に繋がっていきます。コミットメントの強化については、2%の「物価安定の目標」への信認を強めることを通じて、予想インフレ率の上昇につながると考えています。
§8Goushi Kataoka
もう少し具体的に申し上げると、予想インフレ率が上昇すると、実質金利――これは名目金利から予想インフレ率を差し引いたものですが――が低下しますので、金融緩和の効果が一段と強まり、それが現実の物価上昇率を押し上げて、適合的な期待形成を通じて予想インフレ率が更に押し上げられるという形で相乗的に物価上昇圧力が強まると考えています。2%の「物価安定の目標」の達成は途半ばですが、その過程で生じている好循環の勢いを更に強め、「物価安定の目標」の早期達成を通じて、失われた 20年から完全に決別することが求められています。そのために、私も含む政策委員の皆で全力を尽くしていきたいと考えています。
§9Question
先程、追加緩和のお話がありましたが、確かに今回の講演にもありますし、これまでの会合でもおっしゃっているとおり、現行の政策には反対されています。一方、決定会合では、対案という形では、こういった考えはお示しになっていませんが、これはどういう意図があるのでしょうか。具体的なアクションを示すことは、反対する時に必要かと思います。今後そういう対案をご提示するお考えがあるのかどうかを、可能性も含めてお伺いします。
§10Goushi Kataoka
私自身は、審議委員として足許の経済動向を虚心坦懐にみながら、今必要な金融政策はどうあるべきかについて、政策提言も含めて議論していくのが最大のミッションだと思っています。こうした中で、現状は、対案を出さずに現行の政策について反対という形で意思表明をしているということです。今後については、具体的な話をこの場で申し上げるのは差し控えたいと思います。いずれにしても、毎回の決定会合までの経済・物価・金融情勢を十分に見極めたうえで、今後の決定会合に臨んでまいりたいと考えています。
§11Question
今後の政策提案についてですが、9 票のうちどうやって 5 票取るかについてのストラテジーを教えて下さい。具体的には、副総裁に今度、若田部教授が来られますが、これをどうチャンスと捉えられているのか、お話し頂ける範囲でお願いします。2 点目は、追加緩和の手段についてですが、今日の懇談会でも、今のところは10年よりも長いところを潰すのが最適というご判断だと思いますが、例えば若田部教授は「量」にフォーカスされていますし、より経済の状況が厳しい時には、色々な手段が考えられるのではないかと思います。浜田教授も最近、外債に触れていらっしゃいますし、どういう選択肢があるのかお伺いします。
§12Goushi Kataoka
1 点目のご質問は、先程のお話とも関連しますが、私自身は、色々な専門分野やバックボーンを備えた政策委員が、足許の情勢を踏まえて最適な金融政策を考えて、金融政策決定会合で議論するというのが金融政策のあり方だと思っています。そういう意味では、それ以上のことをするよりは、むしろ自らの政策判断を磨くことの方が重要だと理解しています。2 点目の人事につきましては、日本銀行法でも定められていますが、政府・国会で判断されることだと思いますので、私から申し上げることはございません。それから政策の選択肢については、今後の経済・物価・金融情勢を踏まえながら、その時々の最適な金融政策を提案ないしは議論していくことを、これまでと変わらず続けていくことが重要だと思っています。
§13Question
最初の質問とも関連しますが、10年以上の国債金利を下げるべきだというのは、具体的にどれくらい下げることを想定しているのでしょうか。また、それによる効果として、19年度頃までに 2%にいくと想定しているのでしょうか。
§14Goushi Kataoka
どれくらい下げればいいと考えているかについて、ここで申し上げるのは適当ではないと判断しています。19年度までに 2%という点については、展望レポートの中で、私を含む政策委員の大勢見通しですので、これが後ずれするような状況はできれば避けたい、というのが、私自身が考えていることです。そうした前提のもとでお考え頂ければ、今、私が主張していることがどのような意味合いを持つか、ご理解頂けると思います。
§15Question
先程の質問と関連しますが、若田部教授についてお伺いします。若田部教授も財政・金融の緩和に積極的な方だと思いますが、お考えとしては片岡委員に近いという気がします。今回、副総裁に指名され、実際就任された場合には、どんなところに期待されているでしょうか。また、黒田総裁も再任される見通しですけれども、この 5年間を振り返って、2%の目標を達成できなかったことについて、どのようにお考えかお聞かせ下さい。
§16Goushi Kataoka
最初のご質問ですが、仮定のお話にはお答えできませんので、ご理解頂きたいと思います。2013年以降の 5年間の日本銀行の政策については、懇談会でも申し上げたように、日本の物価状況は、15年近くデフレが続いた後、デフレではない状況を作り出すことが今のところできているという意味で、成果はあったと思います。ただ、懇談会でも繰り返し申し上げている通り、まだ物価が 2%に到達し、安定化する段階ではないという意味においては、途半ばの状況にあります。このため、今後も、私自身、日本銀行が 2%の「物価安定の目標」を達成・維持できるように全力を尽くして、色々な議論を進めていくための一翼を担えればと考えています。
§17Question
講演では、16年9月までの量的・質的金融緩和のもとでは、需給ギャップと物価上昇率の関係を示したフィリップスカーブが、それなりに急角度で右肩上がりになっていたが、長短金利操作導入以降は、寝てしまって、フラットに近い状況になっていると示して、期待インフレ率に働きかける力があまりないのではないかというお話をされています。そのご指摘自体には、あまり違和感はありませんが、図表7のチャートにおいて、量的・質的金融緩和導入後から長短金利操作導入までの赤い線が随分立っていることについては、トレンドを見るのであれば、コアCPIではなく、エネルギーを除いたコアコアCPIで見る方が適当ではないでしょうか。コアコアCPIでこの図を描けば、全く違った絵になるのではないか、円安その他の影響が、一時的な影響も含めてここに反映され過ぎているのではないか、というのが 1 点目の質問です。2 点目の質問は、長短金利操作導入後のフィリップスカーブがすごく寝ているのは、講演中にも指摘されているように、サンプル数が少ないことが決定的に大きな要因だと思います。四半期に 1 度しか発表されないGDPギャップを使って 5 つのサンプルだけでこういうチャートを描くのは、いくらでも操作が可能と言うか、色々な絵が描けてしまい、それによって本当に正しい結論が得られるのか、という疑問も生じます。
§18Question
この 2 点について、ご意見をお聞かせ下さい。
§19Goushi Kataoka
1 点目のご質問ですが、図表7左図の(注)をご覧頂きますと、生鮮食品とエネルギーを除いていますので、コア指数ではなく、コアコア指数になっています。これを前提に、為替市場を通じたパス・スルーの効果を考慮に入れても、私自身は、この左側の図で示している結論は、大きく変わらないのではないかと認識しています。2 点目の、イールドカーブ・コントロール導入後のサンプルが 5 つしかないためミスリードではないか、というご指摘ですが、懇談会でもサンプル数が少ないので結果は幅をもって見る必要がある旨を申し上げています。また、そういうご指摘を念頭に置いて右側の参考の図をお示ししました。これは、テクニカルな話で恐縮ですが、左側が散布図で、ある期間の関係をトレンド線で示しているのに対し、右側では、期間毎に区切ってしまうとトレンド線や傾きの評価が恣意的になるのではないかというご指摘があり得ることを念頭に置いて、全期間で推計しつつも、切片や傾きを可変とする計量的な方法を使って推計したものです。これをご覧頂いても、イールドカーブ・コントロール導入後、切片がやや低下してきていることが分かりますし、傾きについては、緩やかに上がってきていますが、全体としては、期待するほどの効果は出てきていないと私自身は理解しています。
§20Question
10年以上の幅広い国債金利の引き下げについてですが、これを仮に行った場合、仮に円安が進まなくても物価には効果があるというご認識でしょうか。
§21Goushi Kataoka
先ほども少し申し上げたとおり、長期の金利を引き下げると、設備投資や住宅投資も含めて、実体経済に寄与すると考えています。
§22Question
2 点お伺いします。1 点目は、最近少し円高が進んでいますが、企業の想定為替レートを短観ベースでみると、その水準より少し円高気味になっています。企業マインドや企業収益を通じて日本経済にどういう悪影響を及ぼすのかについて、どの程度懸念されていますでしょうか。2 点目は、講演の中で、物価安定の目標達成に向けた政府との政策連携をお互いの行動を伴う形で担保されることが不可欠としていますが、これはすなわち財政についてもっと拡張的な政策をすべきという趣旨でしょうか。
§23Goushi Kataoka
最初に、2 点目のご質問ですが、2012年末からアベノミクスが始まって以降、大胆な金融緩和政策と機動的な財政政策、そして設備投資を押し上げる成長戦略という三本の矢の政策を行っています。その中で、日本銀行が定めた 2%の「物価安定の目標」をともに達成していこうということで、日銀と政府は共同声明を結んでおり、その流れの中で今の政策を行っていますので、今も政策協調をやっていると私自身は認識しています。政府は、ご自身の判断で適切な政策運営をされると思っています。1 点目のご質問ですが、為替相場の動向については、私が申し上げることではないと思いますので、コメントは差し控えさせて頂きます。
§24Question
イールドカーブ・コントロールの導入前後で需給ギャップの改善が物価上昇率を押し上げる効果について検証されていますが、今提案されている 10年以上の金利の引き下げで、この 2 から 4 のルート、特に期待形成について、どのように修復できるのかをお伺いします。それから、80 兆円のめどがまだ残されていますが、今日の講演からすると、量の効果を評価されているようにもお見受けしますが、このめどはまだ必要だと考えているのか、そしてその理由も教えて下さい。
§25Goushi Kataoka
1 点目の長めの金利を下げることによる効果についてですが、私自身が申し上げているのは、それに加えてコミットメントを強化するという話です。まず、長めの金利を引き下げる効果についてお話しますと、設備投資や住宅投資など、金利を下げることで直接的に影響を受ける投資が増えると、それによって総需要が高まります。総需要が高まると、それによってGDPギャップが改善するので、GDPギャップの改善を通じた物価へのプラスの影響――これは懇談会で申し上げた 1 つ目の波及経路です――があると考えています。物価が上がると、適合的な期待形成を通じて、物価そのものが上がったことによって先行きの物価が上がるパスが出てきます。これは予想インフレ率にも好影響をもたらすと思います。それに加えて、2%の「物価安定の目標」が達成できない場合には追加緩和を行うことにコミットすることによって、予想インフレ率そのものに働きかける経路もあり、それらを一体的に運営していくことが重要というのが、私が考えている趣旨です。2 点目のご質問ですが、現状では、80 兆円をめどにしていますが、イールドカーブ・コントロールを導入してからは、金利をターゲットにして政策運営をしていますので、量的な部分はあくまでも参考ということだと思います。
§26Goushi Kataoka
80 兆円というめどをなぜ撤廃しないのかについては、色々なパターンが想定されるところもありますし、あえて撤廃する必要性も現状では見当たらないので、そのままであるということだと思っています。以上