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Bank of JapanPress conferenceMar 20, 2018

副総裁就任記者会見(2018年3月20日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日、副総裁にご就任ということで、抱負をそれぞれお聞かせ頂けますでしょうか。(雨宮副総裁)雨宮でございます。どうぞよろしくお願いします。抱負ですが、今後取り組むべき課題として、3 つのことを肝に銘じていますので、そのことについて申し上げたいと思います。第1 に、金融政策運営です。私は、日本銀行におけるキャリアの約半分、20年近くにわたってデフレとの戦いの最前線に身を置いてきました。日本経済は、デフレではないという状況にはなりましたが、 2%の「物価安定の目標」は実現できていません。これからの5年間、積年の課題である物価安定という使命達成の総仕上げのために、全力を尽くす覚悟です。もちろん、歴史的にも世界的にも類例をみない大規模な政策ですので、その効果と副作用の評価や、将来の出口戦略のあり方など、検討課題は多岐にわたります。これまで築き上げた中央銀行員としての実務知識もフルに活かしつつ、適切な政策運営に努めていきたいと考えています。第2 に、金融システム面の課題です。金融機関経営を取り巻く環境は、人口や企業数の減少、あるいは長引く低金利など、厳しさを増しています。こうした環境変化に対する金融機関の対応を的確に把握し、サポートしていきたいと考えています。

§2Question

また、金融取引の市場化やグローバル化が進展する中で、日本銀行が持っている最後の貸し手機能についても、市場への流動性供給や、外貨の流動性供給といった新しい機能の重要性が増しています。このほか、FinTech の発展に対応していくことも、中央銀行、民間金融機関ともに重要な課題です。このように、金融を取り巻く環境が大きく変革していく中においても、日本銀行の機能や能力を十分に発揮して、金融システムの安定を図り、金融仲介機能の向上に貢献していきたいと考えています。第3 に、約40年にわたり日本銀行で現場経験を積んできた者として、円滑な業務組織運営に努めることが、私に課せられた最も大事な役割と考えています。日本銀行の使命達成の基盤は、銀行券の発行と流通、決済システムの運営など、日々の業務遂行です。日本銀行の本支店、事務所、約5 千人の職員は、高い士気を持ってそうした業務を日々遂行するとともに、災害時などの緊急時にも、わが国の金融インフラをしっかり守るという強い決意を持って臨んでいます。こうした職員一人一人の持てる力を引き出し、日本銀行の組織力をフルに発揮させていきたいと考えています。これまで日本銀行で得られた経験と知見を活かして、職員の力を束ねつつ、若田部副総裁と力をあわせ、黒田総裁をお支えし、使命の達成に全力をあげて取り組んでいきたいと考えています。(若田部副総裁)若田部でございます。

§3Question

日本銀行に入るのは、本日が第1日目です。これからは、雨宮副総裁とともに、黒田総裁をお支えして、日本銀行の金融政策と業務の運営に貢献していきたいと考えています。現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を達成すべく、大規模な金融緩和政策を実施しています。その成果は、企業の収益・雇用状況、総雇用者所得、自殺率や貧困率といった各種の経済社会データを素直にみれば、明らかだと思います。2%の「物価安定の目標」には達していませんが、物価が継続的に下落するという意味でのデフレとはいえない状況にまで漕ぎつけました。この成果は、私は素直に評価したいと考えています。今後の抱負ですが、1 点目は金融政策についてです。金融政策については、デフレからの完全脱却、すなわち 2%の「物価安定の目標」の安定的達成を目指して、淡々粛々と金融政策の策定に関わっていきたいと考えています。金融政策の効果は、既に各種のデータによって明らかですが、まだその果実が国民全体に及んでいるとまではいえません。政策の基礎となる理論・モデルを吟味し、データと予想を精査し、金融政策決定会合の議論に積極的に参加してまいりたい、というのが私の第 1 の抱負です。第2 に、金融の世界には大きな変化が押し寄せてきています。いわゆる仮想通貨と暗号技術、あるいは人工知能の可能性が、昨今取沙汰されています。

§4Question

それらの中には、やや可能性を過大評価している感もなきにしもあらずですが、技術の変化そのものはリアルでして、これが既存の金融の姿を大きく変革しつつあります。殊に、FinTech がその可能性を発揮する過程では、既存の金融機関の変革が不可欠となるでしょう。また、日本銀行の業務に直接関わるところでは、サイバー危機・サイバー攻撃の危険性があります。これは米国などでは、例えばサイバー攻撃がきっかけとなって次の金融危機が起きるのではないかといった懸念も取沙汰されています。そうした技術の変化、それが金融市場、組織にいかなる変化をもたらすかについては、目を凝らし、研究をしていきたいと考えています。3 番目は、これは日本銀行に入ってからの課題ですが、あらゆる組織同様、日本銀行も、そこで働いている人間の集まりです。日本銀行の役職員の方々は、高いプロフェッショナル意識を持って活動されていると思いますが、私にとっての課題は、そうした一人一人の日本銀行の方々と、できる限り直接お会いして、日本銀行を人の側面からよりよく理解することです。以上、3 つの点について、抱負を述べさせて頂きました。よろしくお願いします。

§5Question

金融政策上、最大の課題は 2%の「物価安定の目標」の実現だと思いますが、数ある要因の中で、2%の実現のために最も重要なファクターをどういうふうにみておられるか、お伺いします。(雨宮副総裁)物価の変動には、色々な要因が影響を与えます。為替レートや海外商品市況の変動など、様々な要因が影響を与えますが、物価の基調を決めるものは、3 つくらい考えられます。1 つ目が経済全体の需給バランスすなわち需給ギャップの動き、2 つ目が人々の物価観というか、予想物価上昇率がどうなっているかという物価に関する見方、3 つ目が賃金の動きです。こうしたものが基調を形成するのだろうと思います。一昨年の「総括的な検証」で示した通り、日本の物価観というか予想物価上昇率は、足許の物価上昇率に非常に影響されるということですので、需給ギャップの改善により物価が上がっていけば、それが予想物価上昇率にも影響を与えますし、また、需給ギャップが改善していけば、経済全体の需給逼迫が労働需給の逼迫を通じて賃金にも影響を及ぼします。今申し上げた 3 つの要因に共通する重要なファクターは、需給ギャップの改善を粘り強く続けていくことだろうと思いますので、需給ギャップの改善基調を維持するためには、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが、最も重要であると考えています。

§6Question

(若田部副総裁)国会での所信表明の際にも申し上げましたが、 2%の「物価安定の目標」を実現するために、デフレからの完全脱却を目指し、デフレへと逆戻りしないという決意のもとで始まったのが、過去5年間の金融政策のスタンスだったと思います。この金融政策のスタンスあるいはレジームを堅持すること、そしてそれを可能であれば強化することが、最も大事なことだと考えています。そのためにも、世界経済の先行きをはじめ、見通しは非常に不確実なところがありますが、時期尚早に政策を変更することは、先程申し上げたレジームの堅持、強化とは逆行する動きですので、回避すべきと考えます。また、これは何度も申し上げますが、追加緩和については予断を持っているわけではありませんが、必要ならば躊躇なく追加緩和を行うべきであると考えます。そのことによって、デフレからの脱却というこれまでの悲願が達成できるのではないかと考えています。もちろん、経済については、賃金の引上げなど様々な要因があるのは事実でして、それにつきましては、経済のよい循環が保たれるような形で、金融政策はその後押し・下支えをしていくことが必要であると考えています。

§7Question

副総裁の役割について伺います。副総裁は、政策委員会の 1 メンバーとして金融政策の議論あるいは採決に加わっていくことになるかと思いますが、一方で、日本銀行法には総裁を補佐するとも規定されていて、先日、黒田総裁が会見で同じ方向を向いている方が望ましいとおっしゃっていました。その意味では、総裁と副総裁で政策のスタンスが異なる場合、難しい判断を求められることになるかと思いますが、政策委員会の1 メンバーとしての位置付けと、総裁を補佐するという位置付け、どちらの方に重きを置いて副総裁の任務を全うしていかれるとお考えでしょうか。(雨宮副総裁)ご指摘がありました通り、副総裁の役割は日本銀行法で2 つ、明確に規定されていまして、1 つは業務執行上、総裁を補佐するという仕事と、もう1 つは政策委員会においては独立して委員の職務を執行することになっています。この2 つは、矛盾することではありません。やはり、まずは政策委員会においてしっかりとした議論を進めることが重要ですし、そうした議論を通じて出された結論、政策の決定については、きっちり総裁とともに執行の責任を負っていくことになると思っていますので、この法律に定められた2 つの要請をきちんと両立するように務めていくことに尽きると思います。

§8Question

もちろん、業務執行において正副総裁の考え方が同じ方向を向いていることが必要だと思いますが、正副総裁の間で議論を戦わせることもあり得るわけです。そうした議論の中から、適切な政策が生まれていくと思っています。(若田部副総裁)おっしゃられた通り、政策委員会の委員としては独立してその職務を行うということが 16 条第 2 項の規定で、そして、業務の執行にあたっては、総裁を補佐することが定められているのが22 条第 2 項という、2 つの建付けになっていますので、そのもとで副総裁としては、総裁を業務面においてお支えし、金融政策決定会合においては独立してその職務を全うすることになろうかと思います。同じ方向を向いていることが望ましいことは私もその通りだと思いますが、一般論としていえば、議論というものは、むしろ同じ土俵なり同じ目的が共有されている場合に、大変有益なもの、生産的なものになると私は考えています。従って、これから先、色々と議論する場面はあると思いますが、「物価安定の目標」の 2%を達成するという目標が共有されているような時には、議論は生産的なものになるだろうと私は期待しています。

§9Question

政府との関係について伺います。最近、財務省の文書改ざん問題を受けて、安倍政権の支持率が急落しており、政界や市場では、安倍総理の自民党総裁再選を危ぶむ声も出てきています。これまで、政府と一体となって金融緩和を進めてきたということかと思いますが、仮に、政府の経済政策のスタンスが変わったり、「共同声明」の見直しが求められた場合であっても、これまでの政策スタンスを粘り強く続けていくのか、必要によっては見直すこともあり得るのか、その辺りの考えをお聞かせ下さい。(雨宮副総裁)まず、私どもが実現しようとしている「物価の安定」という目的は、日本銀行法で定められた目的です。「物価の安定」を実現し、それにより国民経済の健全な発展に資するという、日本銀行法に定められた責務を遂行することについては、時の政府如何ということとは別に、中央銀行としての重要な責務であると考えています。そのうえで、今のご質問に直接お答えすることは控えますが、例えば、私どもが持っている、政府と日本銀行の 2013年の「共同声明」の基本的な精神は、中央銀行が「物価の安定」のために適切な金融政策を行い、政府が財政面で弾力的な対応を行い、成長促進的な構造政策を行うという、3 つの政策の組合わせです。これは、実はとてもオーソドックスな組合わせですので、こうした考え方は、どのような状況でも、十分有効であろうと思っています。

§10Question

(若田部副総裁)私も、「物価の安定」という目的は、日本銀行法にきちんと書かれていて、それを淡々粛々と実現していくことが、日本銀行にとって必要なことだと思います。副総裁としては、そのようなことに貢献していきたいと考えています。一般論として、政府と中央銀行との関係は色々と議論がありますが、しかし、日本銀行においては、日本銀行法に書かれているように、「物価の安定」そして信用秩序の維持を、淡々粛々と実現していくというスタンスで臨むべきであると考えています。

§11Question

若田部副総裁にお伺いします。国会の所信聴取の中で、必要ならば追加緩和を行う、その際に、新たな手段も検討すると言及されていたと思うのですが、どのようなことを頭の中においてお話しされていたのか、もしお話しできることがあればお聞かせ下さい。(若田部副総裁)現段階でどのような手段を考えているのかということについては、基本的には、金融政策決定会合で議論し決定するものですので、コメントを差し控えさせて頂きたいと思います。

§12Question

お二人にお伺いします。国会の所信聴取では、議員の方々から 2%の「物価安定の目標」がそもそも妥当なのかという質問が多かったと思います。2%の「物価安定の目標」および 2013年の政府と日本銀行の「共同声明」について、見直しをする必要があるのかないのか、お考えをお聞かせ下さい。(雨宮副総裁)まず 2%の「物価安定の目標」の妥当性について、時々誤解があるように思うのですが、2%の「物価安定の目標」というのは、人為的にインフレを起こして、インフレによって経済問題を解決しようということではないと、私は理解しています。中央銀行の目的は、あくまでも「物価の安定」ですが、この「物価の安定」を具体的な数値で実践的に定義してみると、ちょっとプラスがよいというのが共通の理解になっているわけです。これは色々なところでご説明していますが、CPIという物価統計には強めに出るという上方バイアスがあるとか、デフレにならないようなのりしろを持っていた方がいいというようなことがあります。こうした統計上のバイアスやのりしろを踏まえて、「物価の安定」ということを実践的に定義しようと思うと、ぴったりゼロではなくて、ちょっとプラスがよいというのが、先進国の共通の理解です。

§13Question

ではそのちょっとプラスが 1%か 2%か 3%かというのは、先験的に自動的に答えが出る問題ではないのですが、今は、先進国で共通して 2%を目標としています。これは何も、単に他にあわせておこうということではなくて、関係国が物価安定目標を共有することによって同じような物価情勢が成立すれば、長い目でみた為替市場の安定、為替市場のトレンドの安定につながり、それが金融資本市場や企業活動の安定につながるという非常に重要な意味を持っています。従って、やはり 2%の物価安定目標、これはご案内の通りECBは物価安定の定義と呼んでいますが、非常に重要だと思っていますし、現在の政府と日本銀行の「共同声明」を現時点で見直す必要もないと考えています。(若田部副総裁)雨宮副総裁がおっしゃったことに加えてという形になりますが、現状で色々と研究があることは事実です。例えば、働きたい人がほぼ全員働けるという意味での完全雇用、あるいは経済学的にはインフレを加速させない失業率はどのくらいかという研究では、例えば 2%の半ばから前半であるという研究があります。この数字そのものは色々とばらつきがあると思いますが、その失業率を達成するのにふさわしい目標インフレ率はどのくらいかという形で逆算していく、つまり雇用の側から望ましい物価上昇率を逆算していくと、大体それが 2%ではないかという研究が諸々あります。

§14Question

従って、グローバルスタンダード的なもの、あるいは統計上の振れ、あるいは金融政策のある種の余地を残すというような、そういった理由だけではなくて、やはり 2%そのものに根拠があるのではないかという感触を私自身は持っています。その意味では、次の見直しの議論につながるのですが、私は 2%の「物価安定の目標」は、日本銀行と政府の「共同声明」で定められたことですので、日本銀行副総裁としては、まずはこの 2%を達成するということに全力を傾けたいと考えています。そのうえで、一般論として申し上げますと、もちろん 2%を 1%にするとか、そういった議論というのは考えられないし、望ましくないと考えていますが、世界の中央銀行、例えばBOEやFRBなどでは、危機に対応する経験なども踏まえたうえで、物価安定目標は何%にすべきなのか、あるいは物価だけではなくて、他に色々なものをみるべきではないかというような研究が進んでいるのは事実です。学会や中央銀行において、そのような研究は進んでいますので、日本銀行としても、そのような議論や研究をすることは、現状でも可能なのではないかと思います。ただし、今申し上げた通り、日本銀行としてなすべきことは、まずは 2%を達成するということであり、公式に見直しを考えているということではないということだけは申し添えさせて頂きます。

§15Question

若田部副総裁に伺います。これまでは、教授というお立場で積極的な金融緩和の推進を訴えてこられたと思います。リフレ派と呼ばれることがありますが、立場が変わってこれから金融政策の担い手となった今、スタンスをこれまでと変えずにいくのか、それとももっと客観性を持っていくことになるのか、ご自身として今どうありたいと考えていらっしゃるのか教えて下さい。(若田部副総裁)私は、よくリフレ派と呼ばれるのですが、これは自著でも書きましたが、リフレ派と呼ばれることには躊躇、内心ちょっと居心地が悪いものを感じます。どうしてかというと、私は経済政策というのは、全てある種の応病与薬であると考えています。つまり、病気があればその病気にあわせて薬を投与するということです。デフレに対する処方箋はマネーを増やすことであって、リフレ政策ですし、非常に高いインフレであるならば、それに対して処方すべきはマネーの量を減らすことです。全てはこれに尽きるわけなので、何か特定の集団がいて、それが何か特定の政策を独自の理論で推進しているかの如き印象を与えるリフレ派という言い方は、あまり好きではありません。標準的な経済理論からすればデフレの時にやるべきなのはリフレ政策であって、その意味でのリフレ政策の推進者として私はリフレ派と呼ばれても構いませんが、何かレッテルがあるということには違和感があるということです。

§16Question

そのうえで申し上げますと、確かに経済学者としてこれまで積極的な金融緩和を唱えてきたというのは事実です。ただ、これからは副総裁として日本銀行の内部に入っていきますので、そこで得られる新しいデータや情報、あるいは他の委員の方々との議論等がありますので、そういったことを踏まえたうえで、今自分が考えていることをアップデートする、モディファイするということは当然あろうかと思います。副総裁になったということのみをもって意見を変えるということはありませんが、副総裁ということにおいて、先程申し上げたような色々なこと、あるいは金融の実務知識を得ることによって、私の知識がアップデートされる、判断がアップデートされていくということは期待されているし、私自身も期待しているところです。

§17Question

金融政策の副作用について伺います。この先も現状の金融緩和が続いた場合、その効果と副作用のバランスというのがどうなっていくのか気になるところです。副作用の方が大きくなる可能性というのをどう考えていらっしゃるでしょうか。また、副作用として具体的にどのようなことを考えていらっしゃるでしょうか。(雨宮副総裁)副作用としてどういうことがあるかということで申し上げますと、しばしば金融緩和の副作用として議論される項目として、例えば資産価格の行き過ぎた高騰、金融機関経営に対するマイナスの影響、市場機能の低下、あるいは家計等利子所得者に対するマイナスの影響といったようなことが議論されているように思います。私は常に申し上げていますが、あらゆる政策は常に効果と副作用の比較衡量をして適切な判断をしていくべきだと考えています。先程、若田部副総裁から投薬という比喩がありましたが、その意味では医者の投薬と同じです。常に効果と副作用の点検をしながら、適切な投薬を考えていくことが基本ですので、現段階でも私どもは、例えば今申し上げたような項目それぞれについて常に研究を行い、金融政策決定会合でも議論を行っています。私どもの金融システムレポートでも、ヒートマップという形で行き過ぎがあるかどうかの点検を行って公表しています。

§18Question

全ての点について申し述べるのは控えますが、例えば金融機関経営に対するマイナスの影響等をとっても、確かにこの低金利が金融機関経営の負担になっていることは認識していますが、今のところ日本の金融機関は非常に厚い健全な資本を有し、かつ信用コストも低下しているという状況の中で、積極的な貸出態度を維持していますので、金融緩和の結果、金融仲介機能が損なわれ始めているという段階には至っていないことから、全体として考えれば金融緩和の効果が副作用を上回っている状況であると判断しています。(若田部副総裁)私は国会の所信表明では、金融緩和の副作用についてこれまで顕現化していないと述べました。その時の文脈というのは、よく金融緩和の副作用として、長期金利が急騰するとか、あるいは日本銀行がインフレ目標を導入するとハイパーインフレになるとか、あるいは金利生活者の収入が大変になる、と色々なことがいわれたわけです。金利生活者の金利収入が下がっているのは事実ですが、世上色々と金融緩和の副作用等がいわれる時に 1 番最初に挙がるようなことは起きなかったということです。

§19Question

これから先、金融機関や市場に当然影響は及び得るわけで、そうした副作用が、金融政策がこれまでもたらしてきた企業収益を増やす、雇用状況をよくする、そして各種社会経済データをよくする、雇用者総報酬も増えている、といった効果を覆すに至るようなものであるならば、やはり点検すべきであろうと考えます。ただ、金利収入の話でも、一般論として付け加えさせて頂きますが、経済がよくなると、今度は金利収入以外の収入が増えるということが起きますので、1 つのところだけをとるのではなくて、経済が全体としてどうなっているのかをみることが、金融政策を運営するうえでの最大のポイントだと思います。ですから、1 つのところだけをとり上げて、それが副作用だというのは、やはり金融政策を与る中央銀行の人間としては警戒すべきであって、むしろマクロ政策としては経済全体がどうなっているのかをみて、そのもとで政策の是非を判断すべきだと考えています。

§20Question

お二人にお伺いします。次の 5年間も、これまでの 5年間がそうだったように、2%の「物価安定の目標」を達成できずに、5年間ずっと緩和を続ける可能性があるのか、そもそもそれが可能なのかどうかを教えて下さい。若田部副総裁に、2 つ追加で伺いたいのですが、現状やっている緩和策で 2%の達成は可能だと考えるかどうか、国会では答えを濁したように見受けましたので教えて下さい。また、必要に応じて緩和の強化を検討するということですが、強化した場合の副作用、あるいは緩和の弊害というもの、どのような影響が及び得るとお考えか、教えて下さい。(雨宮副総裁)まず、今後 5年間にというご質問ですが、今、私どもが目指しているのは、明確な期限は設定していませんが、できるだけ早く 2%の「物価安定の目標」を達成するという考え方ですので、こうした考え方に基づいて、適切な政策を運営していくことに尽きます。そのうえで、今の政策の持続可能性というご質問がありましたが、一昨年の「総括的な検証」を踏まえて、現在の「イールドカーブ・コントロール」を導入しました。「イールドカーブ・コントロール」の枠組みのもとでは、例えば、国債の買入れ量は金利操作の状況に応じて増えたり減ったりし、そのものが目標ではなくなっているわけで、その意味で、持続可能な枠組みであると考えています。

§21Question

そのうえで、緩和が長期化することに伴う様々な問題点や副作用については、慎重に考えていく必要があるだろうと思っていますが、まず優先すべきことは、できるだけ早く 2%の「物価安定の目標」を実現することです。(若田部副総裁)私もその点については全く同感でして、やはりできるだけ早期にこの 2%の「物価安定の目標」を実現することが大事だと思います。できるだけ早期に実現する中で、世上いわれている色々な、出口戦略であるとか、日本銀行の財務の毀損の問題等、あるいは金融機関の収益の問題も、できるだけ早期にむしろ解決の方向に向かっていく、よい方向に向かっていくと考えています。政策の持続可能性は、やはり、政策手段によって色々とあり得るとは思いますが、私自身は、基本的には手段を最初から制限することはないので、その限りにおいて、後は持続性のあるもの、ないものを適宜取捨選択することはあり得るかもしれませんが、最初から打つ手はないということにはならないと考えています。私に寄せられた 2 つの質問ですが、現状でどうかについては、金融政策決定会合で、きちんと他の委員の方々と議論したいと考えていますので、現状での評価は差し控えさせて頂きます。2 番目に、強化の手段として何があるのか、そしてそれが弊害等をもたらすのではないかということについてです。

§22Question

1 番目の質問に少し関わりますが、どのような手段を採るかによって変わってくるというのが 1 番簡単なお答えかと思います。私は、緩和の手段はあると思いますが、そうした手段の効果と副作用のバランスをとった判断、評価が求められてくるだろうと思います。

§23Question

「イールドカーブ・コントロール」について両副総裁にお尋ねします。黒田総裁は「イールドカーブ・コントロール」は柔軟な枠組みであり、物価2%の実現まで一切変わらないわけではない、という発言をしていますが、お二人は 2%達成前でも長短金利目標の引上げはあり得るとお考えでしょうか。そのうえで、あり得るとお考えの場合には、それは金融政策の正常化や出口戦略の一環と考えてよいのか、そうでない場合はどのような狙い、位置付けで引き上げるということになるのか、ご説明をお願いします。(雨宮副総裁)まず「イールドカーブ・コントロール」という枠組みのもとで、適切なイールドカーブの形状を判断するのは毎回の金融政策決定会合で議論して判断するということでありますし、この政策は 1940年代に米国が行ったような金利ペッグではありませんので、概念的に、あるいは理論的には、イールドカーブの調整という可能性は排除していません。ただし、それがどういう状況で適切な政策となるかについては、全体として 2%の「物価安定の目標」を実現するという政策目標の実現可能性との関係で議論していくべきことであり、今の段階で、2%の「物価安定の目標」の実現の前に、そのようなことを行う可能性があるかどうか、ということを議論するのは本当に時期尚早だと思います。少なくとも、現段階においては、そのようなことを検討する状況ではないと私は考えています。

§24Question

(若田部副総裁)非常に重要なことは、日本銀行として、2%の「物価安定の目標」を達成するという目的を共有したうえで、いかなる政策手段が最も適切なのかということの考察、そして絶えざる評価ということになると思います。そのもとで、「イールドカーブ・コントロール」をどうするかということは、これは政策のかなり技術的な問題になりますので、現段階ではコメントを差し控えさせて頂きます。ただ、とにかく 2%を達成するんだということで、日本銀行は金融政策を行うべきだと思いますし、行っているということですので、そのもとで色々な政策について、その時々で判断されるだろうということは付け加えさせて頂きます。

§25Question

先程、雨宮副総裁は、2%の実現に対して具体的な年限を区切ってはいないというようにおっしゃっていましたが、黒田総裁は今回の国会の所信聴取において、2019年度には確実に出口の検討に着手しているだろうというようなことをおっしゃられていました。実質的には、来年度ということだと思うのですが、この時間軸の実現可能性に関して、両副総裁はどのようにお考えでしょうか。(雨宮副総裁)時間軸といいますか、今の見通しということで申し上げますと、直近の1月の金融政策決定会合において議論して決定された、私どもの展望レポートにおいては、2%程度を実現する時期について 2019年度頃とし、ただし下方リスクがある、という判断をお示ししました。その後のデータ、あるいは経済情勢の展開で、この判断が変わるのか変わらないのかについては、次回の4月の金融政策決定会合は展望レポートを検討する回ですから、そこで入手可能な内外の様々な情勢やデータを十分点検して、他の委員方と議論して判断していきたいと思っています。(若田部副総裁)「イールドカーブ・コントロール」は確かに持続性のある政策であり、その意味ではある種の時間軸政策に近いとも評価できるとは思うのですが、ただ実際に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によって2019年度頃に目標を達成できるのかということについては、まさに金融政策決定会合で議論したいと思います。

§26Question

先程申し上げたことですが、私は経済学者として色々な主張をしてきましたが、日本銀行に入ったところで、今度は様々なデータをみて、また謙虚に自分の知識、判断をアップデートしたいと考えています。

§27Question

日本銀行法の改正 20年ということで、独立性の話です。黒田総裁になられてから政府との関係が良好とよくいわれるところと思いますが、一方で、国債の保有比率が 4 割を超え、異例の政策といわれるETFの買入れも増える一方であるともいわれています。こういう状態をもって、政府との一体化といいますか、従属化的な方向に進んでいるではないかという批判もあろうかと思います。そういう懸念について、お二人はどう思われているのかお伺いします。(雨宮副総裁) 2013年の「共同声明」では、日本銀行と政府のそれぞれの責務が明らかにされており、ご指摘のような、どちらがどちらに従属ということではありません。日本銀行は日本銀行として、物価安定の実現を目指します。政府は政府として、適切な財政運営や構造政策、成長力の強化に努めますという合意になっています。その合意のもとで、この間の政策は、国債の大量購入であれ、ETFの購入であれ、「物価の安定」の実現という中央銀行の目的を実現するために、独立した中央銀行として決定してきています。従って、私は今のようなご懸念はあたらないと思いますし、今後とも中央銀行として、日本銀行法で定められた中央銀行の責務を果たすために努力をしてまいりたいと考えています。

§28Question

(若田部副総裁)私は、日本銀行の政策は、20年近く続いてしまったデフレという極めて異例な状況を如何に打破するか、そこから如何に正常な経済の姿――つまり他の先進国であるならば、マイルドなインフレ、大体 2%くらいが続いているので、そうした本当の意味での正常な経済の姿――へと如何に戻っていくのかという、長い歴史の中の 1 コマであると考えています。そして、そこで採られている一見異例と思われる政策は、20年近く続いてしまったデフレが異例な事態だったので、それを正常化するために必要な手段だと評価しています。日本銀行の場合、現在、政府が発行している長期国債の 4 割を保有していることをもってこれを異例であるという方もおられます。しかし、私は、例えば政府と一体化ということではなく、日本銀行として金融政策を行うのに最もふさわしいのは何かと考えた時の選択肢が、長期国債の大量購入であるということだと思います。その意味で、政府との一体化、あるいは俗にいわれる財政ファイナンスは起きていないと思います。日本銀行は日本銀行として、2%の「物価安定の目標」を達成するために必要な政策をやっているということだと思います。その必要な政策とは、20年近く続いたこの異常なデフレ経済を正常な経済の姿に戻すために必要な政策であると考えています。

§29Question

若田部副総裁に伺います。同じリフレ派という言葉でくくられるのは本意ではないというお話がありましたが、岩田前副総裁、リフレ派の象徴ともいわれた方の評価なのですが、日本銀行のマインドを変えたというようにおっしゃる方もいれば、最終的に考え方が進化したというお話をされて変節したというような指摘もあるのですけれども、どのように評価されていますでしょうか。(若田部副総裁)岩田先生は私の尊敬する大先生でして、その先生を評価するとはまたおこがましい話とは思いますが、ただ実績をみれば、それは一目瞭然です。日本銀行内部での議論は私にも詳らかではありませんが、岩田前副総裁も加わった日本銀行の執行部である、黒田総裁、中曽前副総裁、岩田前副総裁のもとで、日本銀行がここまでの業績を上げていることは事実だと思います。物価に関しては、日本銀行が参照している基調的なインフレ率でも、CPIを色々な形でみても、デフレの基調があった時代はもはや終わり、デフレではないというところまできた、その過程において、これまで色々と問題のあった雇用の面でも非常にいい成果を出している、といった実績を上げたことは第 1 に特筆すべきだと思います。

§30Question

雨宮副総裁に伺います。先程、過去 20年にわたってほぼ一貫して、デフレとの戦いに従事されてきたというご発言がありましたが、その 20年とは、いわば非伝統的といわれるような金融政策を新しく模索していく歴史であったと同時に、緩和政策を一旦解除するような局面もあったと思います。そうした 20年にわたるデフレとの戦いを振り返って、非伝統的な政策を推進したり解除したりという中で、新たに発見され確認されたこと、あるいは非常に誤算だったことといった辺りについて、非伝統的な政策をこの時点で総括してご所見をお聞かせ下さい。(雨宮副総裁)ご指摘の通り、私はゼロ金利時代から色々な形で、この間のデフレ克服の戦いに関連した仕事をしてきました。その時その時の局面で、ゼロ金利といい、当初の量的緩和といい、あるいはその間の包括緩和といい、世界で最先端の政策を議論して導入してきたと、その意味では精一杯戦ってきたという気持ちはあります。一方で、この20年間といいますか、5年前のその前までを振り返ってみますと、デフレを克服するために必要なことは、需給ギャップの改善や賃金の上昇と同時に、非常に難しい大事な課題は、人々に定着してしまったデフレマインドをどうやって転換するかであり、実は一番大きな課題だったように思います。

§31Question

それまでの金融政策運営で、もし不十分であったところがあるとすれば、そうした人々の期待形成への働きかけかもしれないと思い、黒田総裁の就任時に「量的・質的金融緩和」の策定作業に参画した際には、そうした問題意識を持って、政策の企画立案に参画したつもりです。その意味で、デフレ脱却のために最も必要なことは、需給ギャップと人々の物価観と賃金であると先程申し上げましたが、そうした考え方を強固にしたのが、この20年間の結果だったと思います。

§32Question

デフレについて伺います。先程からお話を聞いていると、雨宮副総裁はデフレが 20年続いたとおっしゃり、若田部副総裁は20年近くとおっしゃいました。黒田総裁は15年とおっしゃることもあるのですが、一体デフレとは、いつからいつまでを指しているのかお伺いします。また、先程、若田部副総裁が「持続的に下落が続くという意味では、デフレではなくなった」とおっしゃいましたが、それは最近の話ではなくて、かなり前からCPIなどは 0%台で安定していて、持続して下落している状態ではない。この状態をもってなぜデフレ脱却といえないのか、2%が絶対目標になっていないのか、その点についてお二方にお伺いします。(雨宮副総裁)デフレの期間ですが、私は、20年と申し上げたのはぴったり何年から何年まで 20年というよりは、おおよそ20年というつもりで申し上げました。デフレの期間の定義については、多分、経済学者の実証分析では、大体 1997年、1998年頃から始まったという分析や考え方が多いのではないかと思いますので、そこから厳格に計算すると、2014年とか 2015年までですと、16年とか 17年ということになるかもしれませんが、それを全体としてざっととらえるのに two decades というつもりで申し上げました。

§33Question

それから、この間、ほぼ基調的に物価がプラスになったのはこの4年間ですが、その前の、例えば15年か 16年を平均すれば、CPIはマイナスですし、CPIのマイナス幅は平均して小幅かもしれませんが、GDPデフレーターはもっと大きなマイナスですので、やはり、物価の継続的な下落という意味でデフレの状況だったと思います。また、デフレではなくなったけれども、デフレ脱却かどうかについては、2006年に政府が考え方を述べられており、そのいくつかの条件に基づいて判断していくことになろうと思いますが、私どもが目標としている 2%とは「物価安定の目標」ですので、デフレの脱却とイコールではないわけです。先程申し上げましたが、物価安定の考え方をいくつか整理すると、2%ぐらいが適当であるというのが、今、先進国共通の考え方ですので、それを目指しているということです。(若田部副総裁)デフレの定義をどうみるかは、いくつか議論があるのですが、先程、雨宮副総裁がおっしゃっているように、政府の条件の中の 1 つにGDPデフレーターがあります。GDPデフレーターでみると、1994年第 3 四半期と第 4 四半期ぐらいから、マイナスに転じています。CPIでみると、1997年、1998年、あの時に消費増税をしているのでその影響もあって、多少、デフレへのとば口がみえにくくなっているという議論もあります。

§34Question

ですので、GDPデフレーターでみると、1994年ぐらいから考えて 2013年頃までとすると、大体 20年というような感じです。また、CPIでみると、20年近くという形になります。それが私の 20年という数字の根拠です。2 点目ですが、平均するとマイナスですが、その間にどのようなことが起きたかというと、リーマン・ショックが起きたり、デフレがひどくなった時期があったことも事実でして、そうしますと、やはり物価が安定しているとはとてもいえないだろうと思います。平均すると確かに安定してみえる局面もあったかもしれません。しかし、例えば、実感なき景気回復といわれたような時代、あの頃は確かにマイナスではあるけれども安定するということが起きていますが、全体としてみると、1998年に落ち込んだところ、そしてリーマン・ショックで落ち込んだところ等々と、ボラティリティというか変動があったのは事実ですので、やはり「物価の安定」を達成してきたとはいえないのではないかと思います。2%は、政府と日本銀行の「共同声明」で掲げられた目標ですので、日本銀行としては粛々と実現するしかないと考えています。ただ、私自身は、もともとは日本銀行法にも書かれているように「物価の安定」が目的ですので、物価が安定しているというのはどれぐらいの期間なのかという、デフレの定義に近いような問題が起きると思っています。

§35Question

これはまだ、詳細には議論されていないと思います。やはり「安定」という時に、デフレに陥る危険性がないという辺りは政府が判断すると思いますが、日本銀行として、デフレから脱却して 2%に到達して、それから後の話をどうするか、例えば、多少オーバーシュートすることを認める、物価が上振れすることを認める等々ありますが、安定的にどう達成するのかについてはまだ議論がないと、私には外からはみえますので、その辺りはきっちりと皆さんと議論していきたいと考えています。

§36Question

両副総裁にお伺いします。2014年の消費増税の影響について、岩田前副総裁は色々なところでご指摘されていまして、最後の会見では非常に力説されていました。具体的には、消費増税なかりせば、 2%を達成できたというわけです。この岩田前副総裁のお考えについて、黒田総裁は全く違う考えだと思うのですが、両副総裁はどのように受け止めていらっしゃいますか。(雨宮副総裁)今ご指摘された、黒田総裁の考え方は全く違うということではないのではないでしょうか。一昨年の「総括的な検証」でもまとめたように、なぜ 2%がこの間に達成できなかったかということについては、消費税増税後の消費の低迷や原油価格の低下といったマイナスのショックのもとで、人々の物価上昇期待が低下したということが大きな要因であるということを申し上げていますので、同じ理解だと思います。ただ、その点で1 つ申し上げておきますと、時々このような説明をするとよく怒られるのは、日本銀行は2%の「物価安定の目標」を達成できなかった理由を消費税や原油価格など人のせいというか、エクスキューズをいっているじゃないかといわれるのですが、これはそういうことではなくて、私どもがやろうとしているのは、先程も少し申し上げましたが、人々に根付いてしまったデフレマインドを転換して、人々の物価観を世界標準である 2%程度にアンカーする、錨をつけるということです。

§37Question

例えば、原油価格が下がったり、消費税増税のショックがあれば物価の見通しが下がるのは当たり前ではないか、とみなさん思われるかもしれませんが、意外とこれは当たり前ではありません。例えば、米国や欧州では、原油価格が下がっても ――原油価格は大きくみれば上がったり下がったりするものですから――、人々の中長期的な予想物価上昇率は必ずしも下がらない、それがよく物価予想がアンカーされているという状況です。私どもがつくろうとしているのは、そうした形で人々の物価の見方がアンカーされている状況であり、これまでそれができなかったということを申し上げているわけです。何か責任を他に転嫁しているということではないと、私は理解しています。(若田部副総裁)補足になりますが、デフレマインドが蔓延しているということの裏返しで、実は物価の足許の数字に対して人々の予想物価が異常に敏感に動くということがあります。これは 2016年9月の日本銀行による「総括的な検証」の結論の1 つです。つまり、原油価格の下落であるとか、新興国経済の低迷、あるいは消費税増税によるその後の消費需要の低下といったことが、なぜ「物価の安定」にとってダメージがあるのかというと、1 つにはやはり日本経済においては、家計が非常に足許の数字に対して敏感に動くということが挙げられます。

§38Question

従って、これが何とか 2%のところにアンカーされていかないと、私は出口戦略を大っぴらに議論するのは難しいのではないかと考えています。これが、FRBが出口戦略を早めに出しているのに、なぜ日本銀行は出さないのかということに対する答えでもありまして、まさにFRBの場合は 2%で予想物価上昇率がアンカーしているもとで、QE1、QE2、QE3と行っていく中でも、2%のアンカーはずっと維持されてきたわけです。それに対し、日本の場合は、2%にアンカーするというところでまだ十分ではありません。そういった違いがあるので、日本銀行としては 2%の目標を目がけて今後とも金融緩和を続けていくことになると考えています。以上