← Back
Bank of JapanPress conferenceJul 4, 2018Yutaka Harada, Board Member

原田審議委員記者会見(2018年7月4日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

2 点、お伺いします。午前の懇談会では出席者とどのような意見を交わされたのかという点と、懇談会での意見交換も踏まえまして、石川県経済の現状と今後をどのようにご覧になっていらっしゃるのかという点をお願いします。

§2Yutaka Harada

まず、本日の出席者からのご発言、ご意見についてお答えします。本日の金融経済懇談会では、石川県の行政や財界、それに金融界を代表する方々にご出席を賜り、地域の金融経済情勢や日本銀行の金融政策運営に対する貴重なご意見を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この点について感謝申し上げたいと思います。懇談会の場では、ご意見が多岐にわたったため、全て網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げたいと思います。石川県の景気については、総じてみれば好調であるとのご意見をお伺いしました。2015年の北陸新幹線開業の効果が 3年を経てもなお継続していることや、年間60 万人にも上る海外からの観光客の消費が好調といった明るい話題が聞かれました。一方で、労働市場がタイト化する中、経営上の課題として人手不足を訴える声も聞かれました。また、人手不足が省力化投資を拡大することが、当地の産業にも利益をもたらすとのご意見もありました。こうした中で、出席者の皆様から、技術力や生産性を一層向上することで、現在の好調な県内経済を天井とせず、更なる拡大を期待する前向きな声もお伺いしたのは非常に印象的でした。金融界の皆様からは、今後の金融政策の運営において、マイナス金利政策を長期に継続させた場合には、金融システムを不安定化させるのではないか、というご懸念も伺いました。

§3Yutaka Harada

私どもは、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや、金融システムの安定性を確保することを通じて、当地を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくようサポートしてまいりたいと思っています。次に、当地の経済情勢についての認識ですが、石川県を含む北陸経済は「拡大している」とみています。現在、日本銀行が「拡大している」と評価している地域は、北陸と東海地方だけであり、その意味で、当地は日本の中で最も景気のよい地域とも言えます。北陸経済が「拡大している」最大の理由は、電子部品、工作機械、建設機械など当地に集積している世界的にも競争力の高い産業が、世界経済の着実な成長を取り込む形で経済を牽引しているためです。また、良好な収益環境のもと、当地企業の設備投資は増加基調にあり、雇用・所得環境の着実な改善から、個人消費も着実に持ち直しています。景気拡大の裾野も、製造業から非製造業へ、大企業から中堅・中小企業へと、緩やかながらも着実に広がっています。また、2015年の北陸新幹線開業の効果は、3年経った現在も継続しており、足許では、インバウンド観光客の増加も目立っています。さらに、ホテルの建設計画やオフィス需要の高まりなどの 2 次的効果もみられているほか、北陸新幹線の2022年の敦賀延伸に向けての準備も急ピッチで進んでいます。

§4Yutaka Harada

石川県ならびに北陸経済は、世界経済が着実に成長を続けるもとで、インバウンド観光客の増加なども相俟って、今後も良好な状況を維持していくとみております。

§5Question

日本銀行の政策を受けて、石川県を含めて北陸の金融機関について、経営の現状をどのようにご認識されているかについて教えて下さい。

§6Yutaka Harada

当地の金融機関経営の現状についてですが、北陸地域の地域銀行および取引先信用金庫 21 行庫の 2017年度の決算をみますと、コア業務純益、当期純利益ともに減益となるなど、厳しい収益環境が続いています。低金利環境が継続する中、金融機関間の競争の激化もあり、貸出金利息が減少したことが主な背景です。こうした収益環境を踏まえ、当地の金融機関では、収益力を高めるべく、引き続き店舗体制の見直しや人件費の抑制などの経費削減に努めるとともに、事業性評価に基づくいわゆるミドルリスク先向けの融資やコンサルティング業務の強化、各種手数料の引上げなど非金利収入の増加にも取り組んでいます。経費削減や非金利収入の強化に向けての取組みは、金融機関の基礎的収益基盤の強化につながるものであり、また、事業性評価に基づく融資は、適切なリスク管理のもとで行われれば、地域経済の振興にもつながり得るものです。私どもとしては、こうした取組みの進展をしっかりとモニタリングしていきたいと考えています。

§7Question

2 点、お伺いします。1 点目は、本日の懇談会の挨拶要旨では、2%の物価目標達成に向けて失業率がさらに低下する必要があるというご指摘がありましたが、現状2.2%とかなり低くなっている中で、原田委員としては、具体的にどの程度の水準まで下がっていけば物価に波及していくというようにお考えなのか、教えて下さい。2 点目は、新しい失業率の数字ですとか、5月の消費者物価など、少しずつまた新しいデータなどが出てきている中で、今後2020年度まで見通した時に、物価がどのような軌道を描いていくのか、改めてその見通しをお聞かせ下さい。

§8Yutaka Harada

まず、物価と失業率の関係ですが、それは本日の挨拶要旨の 17 ページにフィリップス・カーブが描いてありますが、これに則っていくと、失業率が2%半ばよりも更に低くなる過程で、物価が順調に上がりだしても不思議ではないということです。まず、ある時期まで、3.5%程度が構造失業率で、それを下回れば物価上昇率が徐々に高まっていくと考えられていたことは誤りです。次に、失業率がどのくらいであればよいかというと、2.5%前後であれば、そろそろ物価が上がるのではないかと、私は思っていたのですが、最近の動きをみますと、更に失業率が下がらないと物価が上がらないのではないかと思っています。その理由としては、構造失業率が更に低くなっている可能性があるということです。本日の挨拶要旨でもその理由について色々なことを述べています。1つだけ申し上げると、現在、労働者に占める中高年の比重が高くなっており、若者の比重が低くなっています。そうしますと、昔は若者の比重が高いので、若者の失業率が高いことから、昔の失業率は高いのです。ところが、現在、若者の比重が低くなっているので、需給に対して同じくらいの圧力をかける失業率がもっと低くなっている可能性があります。これを前提として、1992年の失業率を2017年の年齢構成に合わせて失業率を計算すると1.9%になります。

§9Yutaka Harada

これは、構造失業率がもっと低いかもしれないということを示唆する 1 つの試算になります。そうしますと、失業率は更に下がっていく必要があります。それから、その時の物価上昇率がどのくらいかということも重要です。日本銀行の色々な資料で繰り返し述べられていることですが、物価上昇率は、需給ギャップと期待物価上昇率で決まるということです。その期待物価上昇率は、過去の物価上昇率に引きずられて決まると日本銀行は述べています。そうすると、その時の物価上昇率がどのくらいであるかが大事です。例えば、物価上昇率が1%半ば以上になって、かつ、失業率が構造失業率を多少割るようなところ、具体的に言うと、かなり2%に近い、あるいは2%を割るような失業率までいけば、物価上昇率が 2%になるのではないかと考えています。2 点目の質問は、そういう議論を前提として、今後の物価上昇率をどうみるかということです。それにつきましては、これからの政策決定会合もあって、次回の会合は展望レポートを公表する会合でもありますので、具体的に言うことは現在の段階では避けたいと思います。いずれにしても、今述べましたようなメカニズムで、物価は上昇すると考えています。

§10Question

2 点、お伺いします。1 点目は、4月の展望レポートで物価目標の達成時期が削除されまして、本日の挨拶要旨でも触れられておりましたが、今、「できるだけ早期に」というのは、どれくらいの期間を指す、あるいはそれに期限があるのかどうか、お考えをお聞かせ下さい。もう 1 点は、最近の決定会合では金融緩和の副作用についての議論がなされているかと思いますけれども、本日の懇談会では、むしろ金利を引き上げると民間銀行は打撃を受けるというような発言をされていたかと思いますけれども、物価目標が実現していない状態でも、副作用の高まりを理由にした金利引上げなどの政策調整はあり得るのかどうかということについて、お考えをお聞かせ下さい。

§11Yutaka Harada

物価が 2%程度に達する時期の見通しを削除した理由と、それから「できるだけ早期に」とは一体どういう意味かというご質問かと思います。削除した理由については、この挨拶要旨の中で述べている通りですが、展望レポートでの記述は単に見通しを述べているものであって、物価は色々な要因で決まりますので、この見通しを削除したということが政策とダイレクトに結び付いているわけではないということです。それから「できるだけ早期に」というのは、まさに「できるだけ早期に」なのですが、その時に大事なことは物価上昇のモメンタムが続いているということだと思います。今の経済情勢をみれば、一時、物価上昇率が低下するような局面もあったわけですが、直近の東京都の物価などをみますと、そういうことはないのではないかと考えています。それから失業率は下がっており、需給ギャップも益々逼迫の方に進んでいるので、モメンタムが失われているということはないと考えています。もう 1 つは、金融政策の副作用ですが、これは当たり前のことを言っているだけです。つまり、金融緩和政策の効果と副作用を常に点検するということは、当たり前のことでありまして、あらゆる政策については、そういうものだと思います。

§12Yutaka Harada

実際にどうするかは、具体的に考えてみないといけないわけで、効果の方は本日の挨拶要旨で述べていますように、生産性も上がっていますし、女性の労働参加率も上がっていますし、あらゆる面で日本経済にとってよいことが起きています。財政収支も結果としてよくなっています。よいことはこれだけあります。そう考えますと、副作用は効果に比べて非常に小さい。従って、私としては現在の政策を引き続き続けていくことが大事だと考えていますが、副作用が非常に大きいということを具体的に指摘されれば、また考えなければいけないと思っています。

§13Question

2 点、お伺いします。1 点目は、挨拶要旨の 18 ページの先程もお伺いした件ですが、理屈がよくわからないのですが、「オーバーシュート型コミットメント」がある限り、物価上昇率が 2%を超えて安定するまで緩和を続けられることが基本だと思うのですが、失業率が 2%になるまで金融緩和を続けるべきだと申し上げている訳ではない、ということは、原田委員が想定されている中で、失業率が2%まで下がらなくても、何か他の現象で物価上昇が安定的に2%になるということを考えられているのでしょうか。もう 1 点は、挨拶要旨の 12 ページの銀行経営が苦しいのは資金需要に対して供給が多過ぎるからだということですが、一部には日本銀行の大胆な金融緩和の表れではないでしょうか。あるいは、地銀等の数が多くて競争力がなくて、もっと合併等で数を少なくするべき、効率を上げるべき、ということなのでしょうか。

§14Yutaka Harada

まず、最初の「オーバーシュート型コミットメント」と現在の緩和的金融政策をどこでやめるのかということですが、物価上昇率が 2%にいっていなくても、同じ政策を続けていれば、2%を突き出て、突き出るのは目標ですから突き出るのですが、突き出過ぎてしまうという可能性は当然あります。米国の場合を考えても、突き出ています。突き出る前に、これまでの緩和から、緩和を弱めるないしは引締めの方向に動いているわけです。ですから、日本においても当然そういうことはあり得る。つまり、2%を超えて物価が順調に上がっていくことが確認できれば、実際に2%を超える前から、金融緩和の程度を弱めることは十分あり得るということです。もう 1 つの銀行経営の問題ですが、まず事実として、借りる人に対して供給が多いというのは、これはマクロの関係を述べたものでありまして、資金の需要に対して資金の供給が多過ぎるということです。これ自体は、もう何十年ものトレンドとして続いているものです。こういう状況を日本銀行が作ったというわけではなくて、むしろ金融緩和政策をしているからこそ、資金需要が増えているわけです。つまり、設備投資が増えれば当然資金需要が増えますから、トレンドとして資金需要が減っている中で、日本銀行の金融緩和政策によって、少しは資金需要が増えているということだと思います。

§15Yutaka Harada

従って、日本銀行の政策によって、資金供給が過大になったということはないと考えています。銀行の数とかそういうことではなくて、マクロ的にみた資金の需給のことを申し上げたということです。

§16Question

副作用についてですが、本日の講演でも、日本銀行の財務に悪影響を及ぼすようなことはないという副作用に否定的なご発言もありましたけれども、先程、十分点検していく必要もあるというご発言もありました。一方で、昨年11月の講演ではQQE自体には副作用といわれる根拠はないというようにおっしゃっていたと思いますが、金融緩和が長期化する中で、この副作用懸念というのをどのように考えていらっしゃるか、お考えをお聞かせ下さい。

§17Yutaka Harada

既に申し上げた通りですけれども、一般論として申し上げれば、あらゆる政策には効果と副作用は当然あります。効果と副作用を比べるということは当然のことで、それをきちんとみていくということを申し上げているに過ぎません。前回の金懇の挨拶要旨でも、副作用といわれているものを具体的に考えてみると、それが非常に大きなものになる可能性は極めて小さいのではないかと申し上げたわけです。具体的に、例えば日本銀行の財務についてですけれども、出口の時に金利を上げれば日本銀行の財務が傷むということを多くの方がおっしゃっていますが、最終的に金利が上がると、今度は通貨発行益が増えることになりますので、最終的な利益で一時的な損失は十分埋められます。また、QQEの過程で、日本銀行の収益も増えるということもありますので、 QQEを始めて途中までの利益と、 QQEの出口の損失と、出口後の利益を全部足せば、プラスの方がずっと大きくなると前回述べています。そう考えれば、副作用といわれるものが顕現化する可能性は非常に小さいのではないかということです。

§18Question

挨拶要旨の 20 ページでは、色々な神話、伝説、歌舞伎の話をされていて、この 3 つの話はいずれも、日本銀行が神に挑戦した人間のような存在であるという批判があることを前提に、こういう話を出されているのかどうかを教えて下さい。また、そういう批判があるとすれば、誰がどういう風な批判をしているのか具体例を挙げて頂きたい。と言いますのは、インパール作戦に例えた話などは、具体的にそういう批判をされている方も注で書かれているので、具体的にどういう批判があるのか教えて頂けますでしょうか。そうして頂けなければ、この 3 つの話をよく分かっている方々も、原田委員が何に対してどういった批判をされているのか全く分からないため、ここのところの解説を含め、誰のどのような批判に対しての反論なのかをご説明下さい。

§19Yutaka Harada

まず、QQEというのは、異常な金融政策であって、そういう異常なことをやるべきではない、というようにおっしゃっている方がたくさんいらっしゃるので、それに対して、そういうことはありませんと述べたわけです。ここでは色々と述べているため分かりにくかったかもしれませんが、挨拶要旨の20 ページの下から 3 行目の最後に、「貨幣に関わる金融政策は、神のものではなく人間のものです。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべきではありません」と述べています。つまり、こういう異常なことはもうやめろとかいう議論ではなく、効果と副作用とか、どういう効果があるのかとか、そういうものを具体的に認識して議論したほうがよいのではないかと申し上げているわけです。確かに、最後の結論のところで、この下から 3 行目のところで段落を入れればもっと分かりやすくなったと思います。

§20Question

午前中の懇談会で、以前、宮田支店長が発表された日本銀行金沢支店の移転について、やり取りがあったのかどうか、やり取りがあったとすれば、どなたが発言をされて、どのような話があったのかということをお教え頂きたいです。また、地元では、金沢支店が今ある場所が一等地なので、賑わいのあるものになって欲しいということを考えている人が多いのですが、跡地活用について原田委員のご認識がどのようなものかをお伺いしたいです。

§21Yutaka Harada

まず、本日の午前中の懇談会は、どういう意見が具体的にあったのかを対外的に言わないということを前提として、皆様方から率直な意見を伺っていますので、詳細についてはお答えできませんが、跡地利用に対しての私の認識をお答えしたいと思います。本営業所の跡地の利用について、地元の方々が非常に高いご関心を持たれているということについては、私どもは十分に承知しています。関係者の方々から、日本銀行に対し、ご意見が寄せられれば、私どもの金沢支店において、しっかりと耳を傾けてまいりますし、関係者の方々に対して、必要なご説明も行っていくことにしています。日本銀行としては、公的機関として求められる手続きの公平性と適切性を確保しながら、しっかりと対応してまいりたいと思っています。以上