鈴木審議委員記者会見(2018年8月29日)要旨
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§1Question
2 点伺います。1 点目として、本日の懇談会ではどういったやりとりがあり、沖縄の参加者の方々からはどういった意見が出されたかという点をお聞かせください。また、2 点目として、当地沖縄の経済や金融の状況に対する委員の見解をお伺いできればと思います。
§2Hitoshi Suzuki
本日の懇談会では、沖縄県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話や、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見・ご要望を多く頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場を借りまして、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で伺ったお話やご意見・ご要望について、印象・感想を申し上げたいと思います。第 1 に、当地の景気については、拡大の動きが続いているといったご意見が聞かれました。主力産業である観光業は、アジア等からの観光客の増加で活況を呈しているというお話や、県民の人口増加を受けて、個人消費の伸びも期待されるといったお話が聞かれました。一方で、人手不足の深刻化やこれを受けた供給制約など、中小企業を巡る経営環境の厳しさや、観光客の受入れにおいて「量」だけではなく「質」の高い対応が必要である、といった点についてもお話を伺いました。本日伺ったご意見も踏まえつつ、経済・物価・金融情勢をしっかりと点検していきたいと考えています。第 2 に、「那覇空港第2 滑走路建設」など、交通インフラの拡充に向けた取組みの進展について多くのお話を伺いました。これらは、沖縄県経済の更なる活性化に繋がる動きでもあり、今後の進展に期待をしているところです。日本銀行としては、こうしたご意見も踏まえつつ、適切な政策運営を行っていく方針であることを申し上げた次第です。
§3Hitoshi Suzuki
次に、沖縄県の景気の現状と先行きについてですが、当地の景気は、「全体として拡大している」と判断しています。その牽引役である観光業では、足許では台風等の影響がみられていますが、国内外からの観光客が基調として増え続けており、年間の観光客数が過去最高を更新するなど、活況を呈しています。観光客に加え、県内の人口や事業所数も増加しており、個人消費が伸びているほか、ホテルや商業施設等の建設も続いており、7月初に発表された路線価は前年比+5%と、47 都道府県で最高の伸びを記録しています。先行きも、沖縄県経済は引き続き拡大する可能性が高いとみています。こうした中、主力の観光業は、夏場のピーク時を迎え、人手不足や宿泊施設の不足、空港や道路の混雑など供給面での制約が顕現化しているとの声も聞かれます。既に様々な施策――例えば、宿泊施設の建設・拡充、那覇空港第 2 滑走路の建設、モノレールの延伸など――が実施・検討されていますが、引き続き官・民が連携して、取組みを進めていくことが重要と考えています。日本銀行としましては、沖縄県の金融経済情勢について、那覇支店を通じ、今後も肌理細かくモニタリングを続けていくとともに、中央銀行の立場から経済の持続的な成長の実現や金融システムの安定性の確保を図りながら、関係者の皆様のご努力がより大きな成果につながっていくようサポートを続けさせて頂きたいと考えています。
§4Question
委員は、本日の挨拶の中で、累積していく副作用が顕現化した際に手遅れになるリスクがあるということに言及されましたが、これは、副作用が顕現化する前に何かしら予防的な行動を起こすべき、そういったふうに理解するべきなのでしょうか。また、もしそうであれば、具体的に起こすべき行動について何か想定されるものがあるか、教えてください。
§5Hitoshi Suzuki
金融政策がもたらす影響については、それが累積していくとその先に副作用が顕現化する可能性がある、ということが考えられますが、顕現化するのがいつ頃かという点については、様々な要因やその時点での市場環境にも影響されるものですので、一概に申し上げることは非常に難しいと思います。ただ、本日の挨拶でも言及しました通り、累積していく政策の副作用については、どこかの時点で顕現化してしまいますと、その時点では上手く対処することが難しくなること、あるいは手遅れになるリスクがあるということに、十分注意を払う必要があると考えています。この点、少なくとも現時点において、わが国の金融機関は、全体として資本、流動性の両面で強いストレス耐性を備えており、金融システムの安定性も維持されているものと考えています。ただ、金融政策の効果がもたらされる時間軸だけではなく、副作用が累積していく時間軸についても複眼的な視点で捉えつつ、政策運営に努めていく必要があるであろうと思います。金融緩和という意味では、長い期間にわたり行っており、その累積する影響への対応という点では、例えば他の条件を考慮しなければ金利を上げるということも考えられるかもしれませんが、それによる改善効果も累積的なものと考えられます。
§6Hitoshi Suzuki
従って、極めて近い将来において何らかの影響が起きるという場合には、その時点で何か動いても手遅れになる可能性があるのではないか、といった趣旨で申し上げています。
§7Question
長期金利についてお伺いしたいのですが、7月の金融政策決定会合を受けてその変動幅を倍にするということになったわけですけれども、これでその手遅れとなるリスクというものが一定程度回避されたというふうに考えるのが正しいのでしょうか。また、ご講演の中のお言葉を借りると、「金利は市場で決まる」というようなお話もされていましたけれども、そうお話しされている以上、例えば鈴木委員としてはもう少し幅があってもよいのではないか、そういうお考えなのか、その点を確認させてください。もう 1 点は、携帯電話料金の値下げについてですけれども、実施されると物価を押し下げるという試算がある一方で、家計負担の軽減を通じて、他の品目の値上げに繋がるのではないかなど、色々な見方がある中で、現段階で鈴木委員は携帯電話料金の値下げが物価に与える影響について、どうご覧になっているかをお聞かせください。
§8Hitoshi Suzuki
今回、長期金利の水準について、「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」ことをお示ししていますが、これは、今までも長期金利は変動しうるということではあったわけですが、かなり硬直的な動きであったことに対して、物価見通しの面で 2%の「物価安定の目標」の実現にはこれまでの想定よりも時間がかかることが見込まれることに伴って、政策の持続性の強化と、市場機能を改善させていきたいといった趣旨から、従来、結果的にプラスマイナス 0.1%程度であったものを、その倍程度まで変動を許容するということです。これは、「ゼロ%程度」という操作目標を変えるものではありませんので、金利水準の引上げを意図しているわけではありません。従って、いわゆる金融機関の収益であるとか、金融仲介機能に対して直接的にプラス効果があるという内容ではないと考えています。
§9Hitoshi Suzuki
また、携帯電話料金の値下げについては、今そういった報道がある中で、人によって支払っている金額は違うのでしょうが、個人の支出の中でもかなりのウエイトを占めているとみられますので、これが減るということになりますと、その分、他の消費が増えることで、プラスの効果も考えられるわけですが、携帯電話料金を仮に現状から 4 割下げるということ自体に関しては、エコノミスト等の試算ではコアの CPI への影響も相応にあるとのことですので、仮にそういった影響がある場合に、それを打ち消すプラス要因が顕れてくるのかどうかを注視していく必要があると考えています。
§10Question
今の質問に関連して、国債市場の機能の問題なんですけれども、7月末の前後には商いも活発化したと思いますが、その後は、薄商いが続いていると見受けられます。ではこの修正が果たして十分だったのかという点を、今の市場の動きと合わせてどうみていらっしゃいますでしょうか。
§11Hitoshi Suzuki
7月の末の政策決定でございまして、それからまだひと月も経っていないという状況です。実際、7月の末には、メディアの皆様方の報道もあり、比較的ボラタイルに動いていたものが、その後は少し落ち着いているということかとみています。これが十分なのか、十分でないのかというのは、もう少し評価には時間がかかるのではないかと考えています。
§12Question
フォワードガイダンスの話なんですけれども、「当分の間」は今の低金利の水準を続けると謳っていますけれども、景気変動の一例として消費増税というのを挙げていて、普通に考えると、消費増税が実施されて、その影響を見極めるまでの期間を「当分の間」は示すのではないかと思うのですけれども、市場の中でも色々な見方があります。この「当分の間」というのは、委員としてはどうみていらっしゃるのでしょうか。
§13Hitoshi Suzuki
そういった質問は以前にもあり、カレンダーベースの話ではないとのコメントもあったと思いますが、「当分の間」という文言については、特定の期間を念頭に置いているものではありません。直近の展望レポートで示されているように、経済・物価の先行きについては様々な不確実性が存在するわけで、日本銀行として 2%の実現に向けた政策運営スタンスの信認を確保するというフォワードガイダンスの趣旨に照らして、先々の金利水準の変更は、その不確実性を踏まえて慎重に判断していくということです。そうした不確実性の中の、当然考えられる大きなものというのが、2019年10月に予定されている消費税率引上げの影響ということですので、「当分の間」というのが、具体的にどれぐらいかということについて、厳密に特定の期間を念頭に置いてはおりません。
§14Question
先程のお話の中で、銀行の自己資本に関しては現状では大丈夫とか、流動性の面においても大丈夫ということですけども、足許、銀行だけではなくて他のところも結構リスクテイクをして、マネジメントが中途半端になって、損失吸収力が下がっているという見方もあるんですけれども、そうなってくると資本を崩したり準備金を引き当てたりして、結果として銀行の自己資本が毀損されると思われます。そうなると、日銀が目指している物価の安定、金融システムの安定に関して相当大きな影響があるかと思うのですけども、その点に関して現状どういうふうに思っていらっしゃるのか聞きたいです。
§15Hitoshi Suzuki
直近の金融システムレポートにおいても、地域金融機関等が過度のリスクを取っていないかなどを定期的に点検している状況です。確かに、一部の金融機関に関して、そういったことを原因として多少問題があるといったことが報道でも出ていますが、この点、いわゆる金融システム全体、金融機関全体においては、足許において資本・流動性面で問題があるという内容ではございません。ただ、将来そういったリスクがあるということについては、時間の経過とともにそういうものが高まっていくと認識していますので、より一層注意深くみていく必要があるということだろうと考えています。
§16Question
ETFについてですけれども、7月末に資産価格のリスク・プレミアムへの働きかけを適切に行うという文言が加わっておりますが、──やや抽象的だという受け止め方もありますけども、──ここの意図しているところといいますか、ETFについての副作用等について鈴木委員はどういうふうに考えを整理していらっしゃるのか。それから、8月に入ってから、若干買入れのペースが落ちているというふうな観測もありますけれども、「上下に変動しうる」というのは、年6 兆円というのを長い目でみれば逸脱することはないということなのか、状況によっては、長い目でみても 6 兆円を下回るようなことが続いてしまっても構わないというようなものなのか、その辺りの考えの整理についてお聞かせください。
§17Hitoshi Suzuki
ETFの買入れは、おっしゃられるように、株式市場におけるリスク・プレミアムに働きかけることを通じて、経済・物価にプラスの影響を及ぼしていく観点から行っているものです。私も、具体的にリスク・プレミアムが今幾らになっているかなどをしっかりとみていきたいと考えていますが、ご案内のように、リスク・プレミアムは、例えば数字上での計測というのも、単一の基準に基づいて判断するというのは難しく、かつその計測の仕方によって数値が相当異なる、という特性があります。目に見える金利水準といったものとはかなり違っており、多くの市場参加者と同様に日本銀行においても、株価の変動、企業収益、配当の動向、様々な指標を踏まえながら総合的に判断していくということです。副作用という観点についても、メディア等で色々と言われていますように、色々なプラスやマイナスがあるわけです。また、買入れ額については、持続性の観点も持ちつつ、市場の状況に応じて買入れの金額が上方にも下方にも動くとしています。もちろん株式市場が色々と混乱する場合には、従来申し上げているよりも大きな金額になる可能性がありますし、少ない金額になることもあります。持続性という言葉自体は、どちらの方向かというのが大体想像して分かるのではないかと思います。以上