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Bank of JapanPress conferenceSep 25, 2018Haruhiko Kuroda, Governor

総裁記者会見(2018年9月25日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

2 つお伺いします。本日の懇談会で寄せられた意見、要望についてどのようにお感じになっていますでしょうか。また、2 点目として、関西経済の景気の現状と先行きをどのようにご覧になっているか、特に関西国際空港の機能低下の影響についてどのようにみているかを教えてください。

§2Haruhiko Kuroda

本日の懇談会では、関西経済界の代表の方々から、わが国および当地の経済・金融の現状と課題についてのお話、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望を数多く頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場を借りて、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で伺ったお話、あるいはご意見、ご要望について、私なりに 3 点に整理しながら、印象・感想を申し上げたいと思います。第 1 に、台風21号が関西経済に与える影響を懸念する声が聞かれました。特に、これまで関西経済の牽引役であったインバウンド消費の落ち込みを懸念しているとのご認識を伺いました。また、米国と中国の貿易摩擦が激化することで、中国との結びつきの強い関西経済にマイナスの影響を及ぼすことをリスクと捉えているとのご意見、あるいは人手不足が事業活動の制約になっているとのお話も多く伺いました。本日伺ったご意見も踏まえつつ、経済・物価・金融情勢をしっかりと点検していきたいと思います。第 2 に、人手不足が進む中にあっても、関西経済が持続的に成長していくうえでは、やはり企業の生産性向上、あるいは先端技術を活用した経済の効率化・活性化、更には女性や高齢者など多様な働き手の確保が重要であるというご意見が多く聞かれたと思います。この点、当地では、企業の前向きな投資や取組みへの支援を積極的に進めているとのお話も伺いました。

§3Haruhiko Kuroda

また、当地では、中之島 4 丁目地区における再生医療を中心とした医療拠点などの開発、あるいはみどりとイノベーションの融合拠点を目指す「うめきた2期」など大型の開発プロジェクトが予定されていますが、こうした関西経済の成長力強化に向けた前向きの動きが着実に実を結ぶことを期待しています。最後に、日本銀行の政策運営については、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、適切な金融政策の推進に引き続き期待しているとの声を伺いました。また、新しいビジネスの創出に向けた取組みに必要な資金が、中小企業も含めて十分に行き渡るように後押ししてほしいとのご要望も頂きました。日本銀行としては、こうした意見も踏まえつつ、適切な政策運営を行っていく方針を申し上げた次第です。2 番目の関西地域の景気については、足許、若干、台風21号による経済活動面への影響がみられるものの、緩やかに拡大しているということに変わりはないと思います。色々な指標をみても関西は全国平均よりも良い方向で、緩やかに拡大しています。台風21号によって、交通インフラが被害を受けるもとで、ヒトやモノの流れに影響が生じています。交通インフラ等への影響が長期化する場合には、これまで関西経済を牽引していたインバウンド消費や輸出・生産面への影響が懸念されますが、交通インフラについては、関西国際空港などをみても急速に復旧しています。

§4Haruhiko Kuroda

また、歴史や伝統文化、アトラクションなど豊かな観光資源や、今後とも需要増加が期待されるエレクトロニクス分野の産業集積など、関西のポテンシャルは大きく、先程申し上げたように交通インフラの復旧が早急に進んでいますので、こうした強みを活かして、関西経済がこれまでの勢いを早急に取り戻していくことを願っています。また、来年のG20サミット、各種のスポーツの国際大会など色々なイベントが目白押しになっており、国内外から多くの人が集まってきます。2025年の万博誘致に向けても、官民をあげて注力されているというように認識しております。いずれにせよ、これらのイベントは、関西を訪れる人に当地の魅力を発信するよい機会ですので、こうしたイベントを活用して、観光客の更なる取り込み、あるいは事業の拡大といったことに繋げていくことが、当地の経済を一段と拡大していくことになるのではないかと思っています。日本銀行と致しましては、大阪、京都、神戸の 3 つの支店を通じて、関西の金融経済状況について、かなり詳しく調査・分析を進めていますし、また、先般の台風の影響も含めて丹念に調査して、中央銀行の立場から経済の持続的な成長の実現、あるいは金融システムの安定性の確保を図りながら、関西経済を支える方々のご努力がより大きな成果に繋がっていくように、中央銀行としてサポートしていきたいと思っています。

§5Question

本日の講演の中でも総裁は、やや複雑な経済・物価の展開のもとでは、金融政策もまた、様々な情勢を総合的に勘案して運営することが適当と述べられています。この発言は、物価上昇率が2%になお遠い中で、2%を手前にしてでも、ある程度の政策修正を検討していかなければならないというお考えを示したものと理解してよいのでしょうか。

§6Haruhiko Kuroda

7月の金融政策決定会合でも、それから 9月の金融政策決定会合でも 7月末の政策を維持したわけですが、そこでも明らかにされていますように、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するよう大幅な金融緩和を粘り強く続けていくということが中心であり、その点に全く変わりはありません。ですから、2%の「物価安定の目標」が実現されていない、まだ道半ばであるというところで金融政策を変えるということはないわけでして、あくまでも基本は現在の強力な金融緩和政策を持続するということです。ただ、そうしたことを持続していくためには、一方でそれなりの工夫も必要です。例えば、10年物国債金利の操作目標「ゼロ%程度」というものは全く変えていませんが、その変動幅は最近非常に狭いところになっています。その結果として、国債の取引も減っています。国債市場の機能が低下していることは適切でないため、そこは弾力化して、もう少し変動幅を広くしても構わないわけです。経済や物価の状況を反映して、10年物国債金利がゼロ%の周りでもう少し大きく変動し、国債市場で活発な取引が行われるようになるなど、市場機能が改善していくことが望ましいと思います。それがまさに、強力な金融緩和を粘り強く続けるために必要なことだと思っています。

§7Haruhiko Kuroda

あくまでも一番重要なことは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、強力な金融緩和を粘り強く続けるということです。ETFの買入れについての弾力化にせよ、その他の弾力化にせよ、あくまでも、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けて 2%の「物価安定の目標」を実現するという大前提のもとで、それを可能にするように、いわゆる副作用について適切な対応をしたということです。

§8Question

今の質問に関連して、一番重要なことは 2%を実現するために粘り強く、というお話がありました。ついこの間の自民党総裁選で安倍首相が再選されて、新たな任期を 3年迎えるわけですけれども、その観点でデフレの完全脱却を成し遂げたいという発言がありました。2%はなお遠い中で、先んじて政府の方がデフレ脱却ということを宣言することも十分考えられると思うのですが、その場合に金融緩和というのをどのように続けていくのでしょうか。2013年のアコードもありますけれども、その辺のお考えをお聞かせください。

§9Haruhiko Kuroda

「量的・質的金融緩和」を導入した 2013年4月の段階では、消費者物価は前年比-0.5%ぐらいのデフレであったわけですが、大胆かつ大幅な金融緩和をやることによって、2014年の夏頃には、消費税の影響を除いても前年比+1.5%ぐらいの上昇となっていました。もっとも、その後、原油価格が1バレル 110~120ドルから、 1年半程かけて30 ドルを割るぐらいまで下落しました。これによって、消費者物価の上昇率が殆どゼロないし若干マイナスとなりました。実は欧米でも殆ど同じことが起こりましたが、わが国の場合は、中長期的な物価上昇予想が、例えば米国のように 2%にアンカーされていません。欧米、特に米国の場合は、原油価格が戻る過程で、物価上昇率はほぼ 2%を達成する状況となったわけですが、日本はまだ、生鮮食品を除いたところで前年比+0.9%、エネルギー品目を除くと前年比+0%台前半ということで、まだ2%には道半ばというところです。政府は、単にデフレでなくなっただけではなく、デフレにまた後戻りする可能性もないことをデフレ脱却と定義され、それをいくつかの指標でみるとおっしゃっています。日本銀行は 2013年1月以来、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目標として掲げて進んできておりますので、日本銀行の政策スタンスは何ら変わっていません。

§10Haruhiko Kuroda

引き続き、2013年1月の金融政策決定会合の決定と、それを反映させた政府との「共同声明」に沿って、2%の「物価安定の目標」を達成すべく、粘り強く、大胆な金融緩和を続けていくスタンスです。

§11Question

総裁は懇談会の中で、早期に物価2%を達成して、正常化プロセスに入っていきたいというようなお話をされて、改めて物価目標達成の意気込みを示されたと思います。一方で、例えば安倍総理が先日、物価目標について、一つの指標として目指していくとか、麻生大臣も、一応目標として掲げていこうという発言をされており、政府側には、物価安定達成に向けた熱意が総裁ほどないように見受けられます。改めてお尋ねしますが、物価の 2%目標というのは、何が何でも達成しなければならないのでしょうか。

§12Haruhiko Kuroda

従来から申し上げているように、なぜ 2%なのか、という点について、3つほど申し上げます。1つ目は、消費者物価指数は、どうしても過大に表示されてしまう傾向にあるということです。物価上昇率がゼロのときは実はデフレだったり、 1%といっても実際はゼロに近かったりするという消費者物価指数の「くせ」がありますので、なにがしかのプラスの消費者物価上昇率を目指すというのが、世界の中央銀行の基本的なルールになっているわけです。2 つ目は、長期的にみて、ある程度、金融政策の余地を確保する必要があるということです。金融緩和をするべきときに、その余地がなくなってしまうということもあって、世界各国の中央銀行、特に先進国の中央銀行は殆ど全て、2%の物価安定目標を掲げています。途上国はもう少し高めの目標を掲げていますが、先進国はまず殆ど全て 2%の目標を掲げています。3 つ目として、先進国が 2%の物価安定を目指す中で、日本も 2%を掲げて金融政策を運営しているもとでは、先進国間の為替レートが安定する傾向があります。そういう面からも、グローバル・スタンダードである 2%というものを実現する必要があると私どもは考えています。そうしたことを踏まえて、2%の「物価安定の目標」を 2013年1月の金融政策決定会合で決め、政府との「共同声明」にも入れています。

§13Haruhiko Kuroda

そういう意味では、これを他の中央銀行と同様に実現すべく、金融政策を進めていく必要があると考えています。政府と大きく違う意見を持っているとは思いませんが、政府の場合は、より幅広い目標を掲げています。「共同声明」でも、デフレを脱却して、持続的な経済成長を実現するということを言っています。そのために、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現し、政府は、短期的には景気対策という形で財政政策を運営しつつ、中長期的には財政の持続可能性を高めるような財政の健全化を図ることと、いわゆる成長戦略、つまり民間主導で、より高い経済成長が持続するように、規制緩和や技術革新の促進など、様々な構造改革、成長戦略を駆使することになっています。日本銀行の場合は、日本銀行法にあるように、物価の安定と金融システムの安定の 2 つが目的ですが、政府の目的はもっと幅広く色々あります。そこは違うと思いますが、物価の安定について何か非常に違った考えを持っているとは認識していません。

§14Question

本日夜に米国のFOMCが始まりますが、米国の利上げが来年にも打ち止めになるのではないかという観測が出始めているかと思います。日米の金利差の拡大がなくなってしまった場合に、アベノミクスの円安のエンジンというのが止まってしまうのではないかという懸念がありまして、日本経済の物価の上昇にも悪影響が出るかと思うのですが、こういった来年にかけての見通しについてお願いします。

§15Haruhiko Kuroda

他国の金融政策の予想を私が申し上げるのは適当ではないと思いますが、私は、FRBはこれまでも、おそらく今後も、米国の経済・物価・金融情勢をみて、最も適切と思われる金融政策を行っていくとみています。米国の経済・物価・金融情勢に合わないような政策を行うとは思っていません。そうしたもとで、米国経済は今、極めて順調に、足許 4%成長──長期的な潜在成長率をかなり上回っていますので、いつまでも 4%でいくとは思っていませんが──で順調に成長していますし、物価安定の目標である2%も、ほぼ達成されつつあるということですので、正常化を進めていくことは米国経済にとって当然だと思います。金利差については、日本では、先程申し上げたように、長期金利ゼロ%程度、短期政策金利-0.1%を「当分の間」続けると言っています。金利差は縮小するとは到底思えないので、むしろ拡大していく方向にあると思います。他の状況が一定であればドル高・円安になるのでしょうけれども、為替レートは色々な要因で変動しますので、為替レートの見通しを申し上げるのは適切ではないと思いますが、ご指摘のような状況になるとは思っていません。少なくとも、金利差は拡大の方向にあるということだと思います。

§16Question

講演の中で、効果と副作用の両方をバランスよく考慮していく必要がある状況になってきているとおっしゃいましたけれども、おっしゃっているように2%を目指し、粘り強く現在の金融緩和を続ける中で、必要に応じて効果を弱めないように更なる緩和策の柔軟性を高めるということが果たして可能なのか、どういう見通しを持っていらっしゃいますでしょうか。

§17Haruhiko Kuroda

2年前に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した際、ステートメントや記者会見で申し上げたように、更なる金融緩和が必要になった場合には、短期政策金利の更なる引下げや、長期金利の操作目標の引下げのほか、国債買入れ額を増額する、マネタリーベースの増加テンポを更に加速するなど、色々なやり方があり得るわけです。緩和の効果を必要に応じて強めなくてはならないときに、何か障害がでる、緩和ができないということはないと思います。他方で、展望レポートでも示しているように、副作用はある意味で累積的に効いてくる可能性があります。国債市場の機能についても、「イールドカーブ・コントロール」のもとで、80 兆円をめどに弾力的に国債を買い入れて、長期金利ゼロ%程度を今は実現しています。足許では、実際の国債買入れのテンポは40 兆円程度になっていますが、ストック効果もあって、10年物国債金利がゼロ%程度で維持されています。ただ、先程申し上げたように、累積的な影響が及び得るので、国債市場の機能や金融機関の金融仲介機能の状況を十分注視して、必要な対応は今回取りましたし、取っていきます。それは、必要な金融緩和をやめるとか、それを否定するようなものをやるわけではなくて、あくまでも必要な手当てをしつつ、2%の「物価安定の目標」の実現のために、粘り強く大幅な金融緩和を続けるということに変わりはないということです。

§18Question

フォワードガイダンスについて、講演の中で、導入当初の早い段階では定性的な条件でやりました、という話をされたと思いますが、今後時間の経過とともに特定の時期や具体的な物価指標に結び付けるように変化していくということはあり得るのでしょうか。

§19Haruhiko Kuroda

可能性としてはあり得ると思います。 FRBもECBも、「for an extendedperiod」というのを、だいぶ前に使っていましたが、最近では、もっと具体的な言い方になっています。それはまさに、アメリカの場合は 2%が達成されつつありますし、ECBの場合は、まだコアでは 2%の手前ですが、 1%ぐらいにはなっている中で、既に大規模な資産買入れは今年中で終了して ──残高は減らさない、再投資はしていいと言っていますが── 、金利も来年の夏までは今のままでやっていきますと、かなり具体的に言っています。来年の秋以降も、金利を必ず上げるとは言っていませんが、少なくともそこまでは今の低い金利を続けると言っています。そういうフォワードガイダンスです。そのように変わっていく可能性はあると思いますが、具体的にそうなるかどうかは、その時の状況次第です。今の時点では、少なくともF RBやECBがかつてやっていたような、まだ目標から離れている時のフォワードガイダンスである「当分の間」と同様の言い方をしているということです。

§20Question

2%について伺います。もともと 2013年に政府との「共同声明」を導入した際は、持続可能な物価安定の実現というものを目指して、それと整合的な数字が2%ということだったかと思います。引き続き目指していくというスタンスは十分理解していますけれども、これまで5年半緩和を続けてきて、更に2020年度までみても届かないとなった場合に、本当に持続可能な物価上昇率なのかというところについて、総裁として微塵たりとも疑いみたいなものが芽生えてきていないのか、お考えをお聞かせください。また、これに関連し、先々、引き続き物価2%が遠いという状況が続いた場合には、講演でおっしゃたように、バランスよくという観点で、副作用も踏まえて緩和を弱めるような政策判断ということも将来起こりうるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

§21Haruhiko Kuroda

2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという日本銀行の政策スタンスに、全く変化はないということです。結果的に5年数か月たっても、まだ2%にいっていない、まだ 0.9%という状況にあることは事実ですが、それは先程申し上げたように、原油価格の大幅な下落やその他の事情があります。FRBも、2%になるまでリーマン・ショックから 10年かかっています。リーマン・ショックは、アメリカ経済にとって大きな金融ショックでしたが、そのような中で様々な工夫を重ねてやってきて、ようやく 10年かかって 2%になったということです。私どもとしても、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際は、何も 5年がかりでというつもりではなかったわけです。結果的に様々な事情から2%の達成が遅れていますが、そのことで2%の目標をやめるとか、ずっと先のことにして、できるだけ早期にではなく、ゆっくりやります、と変えるような考えは全く持っていません。2 点目については、2年前に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した際、それを必要に応じて調整するときに考慮すべき点として、従来申し上げてきた経済・物価情勢に、金融情勢を加えて、この 2年、そうしたところをよくみてきています。

§22Haruhiko Kuroda

今回、国債市場の機能の改善や、ETFのより弾力的な買入れなどを決めるにあたり、当然そうした金融市場の動向にも十分配慮していることは事実ですが、そうしたことに配慮して、2%が実現できなくても金融緩和をやめるということはありません。あくまでも金融政策の目標は、2%の「物価安定の目標」を堅持して、それをできるだけ早期に実現すべく、金融緩和を粘り強く続けることです。そのためにも、市場機能や金融仲介機能といった、いわゆる副作用を十分注視して、必要があれば必要な対応はしますが、それは大幅な金融緩和を粘り強く続けるためにやるわけで、それを否定するためにやるわけではないということです。以上