布野審議委員記者会見(2018年11月7日)要旨
Full text
§1Question
本日の金融経済懇談会を踏まえて、地域経済、特に高知県経済の印象をどのように捉えているかというのをお聞かせください。
§2Yukitoshi Funo
本日の金融経済懇談会では、高知県の金融経済界を代表する方々から、地域経済の現状や課題、産業振興に向けた取組みなどの状況をお伺い致しました。また、日本銀行の金融政策運営についてもご意見を数多く頂き、大変有意義な話し合いができたと思っております。この場をお借りして、皆様に御礼を申し上げたいと思います。本日の金融経済懇談会では、非常に多岐にわたる話をしましたので、その中から私の観察した点も含めまして、お話ししたいと思います。行政の方からは、当地の強みである産業を活かして、県外・海外への販路拡大が実を結びつつあるとお話をお伺いしました。また、観光面では、豊かな観光資源を活かして観光地づくりを進めておられ、今後の更なる観光客の増加が期待されるとお伺いしました。私は、こういった取組みが、非常に力強く進められていると観察させて頂きましたので、今後の高知県経済は明るいな、との印象を持った次第です。一方で、人口減少や高齢化が進む中で、今日の会合でも「課題先進県」との言葉も出ましたが、そのような課題についても積極的に取り組んでいるというお話をお伺いしました。このような取組みが、今後、実を結んでいけば、非常に喜ばしいことであると思います。私ども日本銀行としましては、高知支店を通じまして、きめ細かく皆様のご意見をお伺いしながら、高知県経済の発展に微力ながら尽くしていきたいと思っております。
§3Yukitoshi Funo
そのような意味で非常によい会合であったと思います。
§4Question
日銀は、今年10月の金融政策決定会合で物価上昇率の見通しを0.9%という形に引き下げ、その一方で、強力な金融緩和策の維持というものを決めましたけれども、金融緩和策によって、人口減少の進む地方銀行など、地域の金融機関の収益悪化というところも一方で懸念されていますが、物価2%の目標達成の見通しや、金融緩和策による副作用と言われるようなところについてのご見解をお聞かせください。
§5Yukitoshi Funo
10月に見通しを引き下げたというお話はその通りですが、7月の展望レポートでも、見通しを下げた経緯がありまして、特に7月においては、見通しの引き下げに伴って、新しい政策を打ち出した次第です。1つは、フォワードガイダンスですが、フォワードガイダンスの意味するところは、当分の間、緩和的な金融環境を進めるということです。 2つ目は、様々な副作用を制御するような施策を出したということです。2016年の9月に「総括的な検証」をして以降、日本銀行の政策は経済、物価に加えて、金融情勢も踏まえながら行うという考え方でおります。全ての施策には作用、副作用がございますので、副作用も含めて、金融情勢をよく見極めてやるということです。そのような意味で、確かに金融緩和の状態が長引けば、金融機関の収益力に負の影響が累積的に掛かるということですので、今後とも注意深く見ながら、その都度、政策を決めていくものと考えています。
§6Question
布野委員は今日の講演で、強力な金融緩和を続ければ、金融仲介機能が停滞するリスクもあるというふうにご指摘されています。先日、黒田総裁は、記者会見で貿易戦争の影響が拡大すれば、金融政策を調整する可能性があるということを示唆されていますが、布野委員は、現行の金融緩和は既にもう強力で、これから何か問題が起きても追加緩和をする必要がないというご認識なのでしょうか。この点についてお伺いできますか。
§7Yukitoshi Funo
副作用については、今の金融政策を継続すれば、傾向的に、累積的に金融機関の収益が毀損して、金融仲介機能が滞る可能性があるという問題はひとつございます。それとは別に、──保護主義が起点となるかどうかはともかくとして──経済に不測の事態、1つの過去の例でいうとリーマンショックのようなショックが起こった場合に、何もしないでよいかということについては、必ずしも事前に決めることはできません。そのような状況が起これば、その時の状況を見定めて、適宜適切な、その時点で考えられる施策について協議し、会合でそれぞれの委員が思うところを投票して決めていくと考えていますので、必ずしも何もしないということではないと思います。
§8Question
黒田総裁は、金融調整の手段として、金利の引き下げ、マネタリーベースの拡大、資産買入れの拡大という3つの選択肢を示しておりますが、布野委員は、それぞれの3つの選択肢について、仮に採用するのであれば、メリットと副作用についてはどのように今ご認識されているか教えてください。
§9Yukitoshi Funo
例えば金融機関の収益力の毀損や金融市場の停滞のような副作用を、個別の施策に直接的にこれは何割、これは何割、といった形で結び付けるのは、やや難しいだろうと思っています。総合的にみて、イールドカーブの勾配がどのように金融機関の収益力に影響するかといったことは、全体としてその程度を判断していかなくてはならないと思っています。
§10Question
午前中のご挨拶の中で、先行きのリスクは多岐にわたるとしましたが、特に通商政策の不透明さをお挙げになられました。この間の展望レポートでは、 19年度と 20年度の成長率は据え置きになりましたけれども、委員のご経験からも、通商政策は今後どういった経路で、どのような具体的な懸念が具体化してくるのか、ご見解をお願い致します。
§11Yukitoshi Funo
通商政策の展開は、日々刻々と動いておりますので、これはこうだということはなかなか申しかねます。そのようななかで、現状どのようになっているかといいますと、米中通商交渉については、米国の景気を下押しする圧力について議論する向きもある一方、中国経済の下押しを指摘する向きもあります。私のみるところ、現状において、アメリカ経済に下押し圧力が通商面から相当掛かっているかというと、それは比較的少ないです。中国の方については、懸念はあります。しかも、この懸念が晴れるかどうかについては、目下のところ、なかなか不確実、不透明な状況にあると思っています。そのような意味では、わが国の経済に対する影響という意味合いで、中国経済に対する下押し圧力が掛かることを起点として、わが国の投資や企業マインドに影響が出てくる可能性を秘めていると思います。秘めている、とあえて申しましたのは、現状では、このようなことはそれぞれの企業家が判断していきますので、心配だと思っておられる企業家もおられるのは承知していますが、全体として、現時点で深刻な下押し圧力が出ているかについては、私はそこまでの状況ではないと思います。ただ、これから年末および来年にかけてどのようになるかについては、片時も目を離せない状況に入っていると思っています。
§12Question
アメリカの中間選挙の大勢が判明しつつありますけれども、現在のところだとまだ確定ではないですが、民主党が優勢となり、上下院でのねじれの現象ができるのではないかという見方になっておりますけれども、こうした場合、米国の政策にどういう影響があって日本にどういう影響を与え得るのか、ご見解の方はありますでしょうか。
§13Yukitoshi Funo
市場はもちろん、そのほか大方の想定している、相当暫くそういう想定があるわけですが、ねじれの現象ということについては、──ある種織り込み済みというと強すぎるかもしれませんが、 ──想定している方は多かったと思います。そのような意味では、まだ結果は出ていませんけれども、今おっしゃったような結果になれば、想定外のことが突然起こったということではありませんので、様々な方面へのショックも想定の枠内に入るのではないのかなと私はみています。これは、日本で報道されているだけではなくて、先般、私も海外に行って、様々なヒアリングをしましたが、民主党が下院で勝つのではないかと大方の方がおっしゃっていました。
§14Question
午前中の講演の方で、高知県経済について自らの強みを活かした製品でシェアを拡大させている企業が存在感を高めていることは、高知県にとって非常にポジティブということですが、これは具体的にはどういった分野を念頭に置いておられるのかということと、トヨタにいらっしゃった経験から、視察とかはこれからかと思いますが、高知県の製造業、ものづくりについての印象だとか強みを感じているものがあれば、教えてもらいたいのですけれども。
§15Yukitoshi Funo
今回の機会を利用して、様々な企業家の方と交流を深めておりますし、また、会社訪問もさせて頂く予定にしています。個社の名前に言及することは差し控えさせて頂きますが、今回お会いする方々が経営されている会社の中でも、日本国内はもちろん、グローバルにも非常に高いシェアを持って、事業を展開されている会社もおありですし、非常に外への展開で強力な企業が、結構数があるなという印象を持ちました。そのような意味では、第2、第3と次々にそのような商品および企業が出てくればいいなと思っています。そのような企業を育成するための取組みを行政はじめ商工会議所の方であるとか、様々な経済組織も含めて、積極的に取り組んでおられるという印象がございました。
§16Question
2点あるのですが、1点目は、金融機関の収益への副作用という点が金融政策の議論で最近なされていますが、イールドカーブを立てれば、金融機関の収益に与える金融政策の副作用が軽減されるのかどうか、という点が1点目です。2点目は、当面極めて強力な金融緩和を継続するということだと思うのですが、効果と副作用のバランス次第では、物価が2%に達する前にも金利水準を引き上げる可能性はあるのでしょうか。
§17Yukitoshi Funo
後の方から申しますと、物価が何%になったから金利をどうするということについては、金融政策そのものでありますので、今の時点で将来についての具体的なコメントは差し控えさせて頂きたいと思います。そのうえで、最初の質問についてですが、金融機関の収益力は、必ずしも金融政策だけで成立しているわけではございませんので、非常に多岐にわたる要因が絡んでいます。例えば、貸付先の事業のパフォーマンスであるとか、個別の金融機関での経営構造改革の努力であるとか、成長戦略の展開であるとか、そのようなことを含めて影響してきますので、金融政策がこうやったから金融機関は経営上の問題なくなるというような種類のものではないと思っております。ただ、急激に金利が上がるということは、当然のことながら、逆に金融機関においてマイナスにも効くでしょうから、金利の上がり方は一つのポイントではありますが、一般論では、イールドカーブが立つ方向にいけば、利ざやの拡大を通じて、金融機関に対してはプラスの影響が出るだろうと私は想定しています。以上