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Bank of JapanPress conferenceFeb 27, 2019Goushi Kataoka, Board Member

片岡審議委員記者会見(2019年2月27日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

今日、高松市で金融経済懇談会が開かれたのは7年ぶりということですが、地元の経済界からどのような意見や要望が出たのか教えて頂けますでしょうか。

§2Goushi Kataoka

本日の懇談会では、香川県の各界を代表する方々から、地方経済の現状や課題、また、日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話や率直なご意見を多数頂きました。大変有益かつ示唆に富むお話しができたと感じています。この場をお借りしまして、改めて感謝を申し上げます。懇談会の話題を全て網羅することは難しいので、印象に残った点を中心にお話をしたいと思います。まず、当地の景気ですが、総じてみますと、回復しているというご意見が多かったように思います。先行きについても、最近の保護主義的な動きの帰趨、中国経済の動向や消費税率の引き上げなど懸念すべき材料はあるものの、このところ明確になってきている景気回復の動きが続くのではないかといった見方が多かったように思います。次に、観光面ですが、瀬戸内国際芸術祭の知名度向上や、アジア各地を結ぶ国際線の増便に伴って、外国人観光客が大きく増加しています。これを受けて、ホテルの新設・開業が急ピッチで進んでいるというお話を伺いました。また、インバウンド需要の持続的な拡大に向けて、インフラ整備だけではなく、観光コンテンツの充実を目指した取組みもあるというお話を伺いました。一方、足許の課題としては、人手不足を指摘する声が多数聞かれました。

§3Goushi Kataoka

これに対しては、ITを活用した省力化・効率化投資などを通じて、より少ない労働力で対応できるビジネスモデルを模索する動きや、交流人口を増やして経済活性化につなげる試みもあると伺いまして、大変心強く感じた次第です。このほか、地元大学が地域を担う人材育成の観点から、学部横断型、地域横断型の新しい取組みを進めているというお話も伺いました。金融界からは、きわめて緩和的な金融環境を背景に、金融機関の経営は厳しい状況にあり、金融政策運営に当たっては金融システム面への影響もしっかり考慮してほしいといったご意見を頂戴しました。他方で、こうした厳しい環境の中でも、多くの金融機関から、課題解決型金融を実践すべく、事業継承や海外需要の開拓といった地元企業のニーズへの支援策を進めているといった話を伺いました。私どもとしましては、中央銀行の立場として、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや、金融システムの安定性を確保することを通じて、当地経済を支える関係者のご努力がより大きな実りへとつながっていくよう支援してまいりたいと考えています。

§4Question

今回、経済界の代表と意見を交わされて、香川県の経済の印象、これから期待される点は、どのような点がございますか。

§5Goushi Kataoka

私自身、香川に伺うのは、子どもの時以来、三十数年ぶりとなります。非常に風光明媚で、綺麗なところだという印象を持っておりましたが、今回改めてそういった印象を強く持ちました。香川県の景気につきましては、日本銀行の高松支店が判断している通り、「回復している」とみています。企業収益が高水準で推移する中で、設備投資が増加しているほか、雇用者所得も緩やかに持ち直しており、こうしたもとで、個人消費は着実に持ち直しています。海外経済を巡る下振れリスクはこのところ強まっているものの、先行きについても、基本的な見通しとしては香川県の景気は回復を続けていくとみています。なお、現時点では、保護主義的な動きの影響は当地においては限定的であると伺っています。もとより、そうした動きが長期化すれば、各国の貿易活動に対する直接的な影響だけではなく、企業マインドや金融市場の不安定化という経路を通じて、県内経済に悪影響を及ぼす可能性もあります。県内経済に与える影響につきましては、今後も予断なくみていく必要があると思います。香川県の経済面の印象ですが、香川県は、概ね全国に近い産業構造をもっておりまして、農業などの第一次産業、製造業などの第二次産業、サービス業などの第三次産業が、バランスのとれた形で発展してきているという印象を持っています。

§6Goushi Kataoka

当地には、独自の優れた技術力や商品を有し、特定の市場においてトップシェアを誇っている企業が少なくありません。また、香川県では、地域資源を生かした戦略的な産業振興が進められており、例えば、オリーブを餌に使用した「オリーブハマチ」や「オリーブ牛」など、県産品のブランド化にも取り組んでいます。先程、人手不足の話を申し上げましたが、こういった経営課題を抱える企業に対して、 IoTやAI等の活用支援を香川県が主導する形で積極的に行っているということも聞いています。さらに、中心市街地の商店街が、民間主導の再開発で賑わいを取り戻すといった注目すべき動きもみられています。観光面については、栗林公園や瀬戸内海の島々など豊富な観光資源を生かす取組みが進められています。こうしたこともあり、香川県を訪れる外国人観光客は、2012年から 2017年にかけての5年間における宿泊者数の伸び率が全国トップとなっています。今年4回目の開催となる瀬戸内国際芸術祭は、国際的にも注目を集めており、県内ではホテルの建設が相次ぐなど、官民挙げた受け入れ態勢が着々と整備されています。少子高齢化が進む中で成長を果たしていくためには、企業など様々な主体が、チャレンジ精神を発揮し、前向きな取組みを続けていくことが不可欠だと考えています。

§7Goushi Kataoka

当地では、様々な主体が需要の開拓や課題解決に向けて果敢に挑戦しており、大変心強く感じている次第です。今後も独自の創意工夫によって当地経済が着実に発展していくことが期待されると感じています。

§8Question

2点お聞きします。1点目は、講演で、金融緩和が「長期化するほど、出口戦略の負荷が高まりますし、金融緩和の副作用も累積的に高まります」とおっしゃっています。出口戦略の負荷が高まるというのは具体的にどういうことか、何が起こり得るのでしょうか。また、金融緩和の副作用が顕現化した、あるいはもっと強まり累積的に大きくなった場合には、何が起こるのかについて、具体的に教えて頂きたいと思います。2点目は、「財政・金融政策のさらなる連携を図る工夫を講じることで、市場や経済主体の期待や予想に働きかけていくことも重要である」とおっしゃっています。金融政策と財政政策の色々な協調は既にされていると思いますが、この「さらなる連携」とは具体的にどういうことをイメージされているのか教えてください。

§9Goushi Kataoka

1点目については、ご案内の通り、物価の現状は、2%の「物価安定の目標」から非常に遠い状況です。そうした状況を考えますと、現状、出口政策までは非常に距離が遠いことが前提としてありますので、出口政策を具体的にどう進めるのかについては、この場でお答えは差し控えさせて頂きます。ただ、直感的に申し上げて、緩和が長引けば長引くほど、そこから平時の状態に戻すには、時間もコストもかかることは明らかであると思いますので、そうした意味を含めて、講演では出口政策へのコストが強まるのではないかと申し上げました。副作用については、現状、私どもとしましては、金融機関等について具体的な副作用があるとは認識していません。ただ、低金利環境が長引くと金融仲介機能が阻害されるのではないかといった点については、金融システムに対する副作用だとして、注視しています。2点目については、色々な手段が考えられると思います。アベノミクスのもとで、2013年以降、金融、財政、成長戦略といった3本の矢を使ってデフレからの脱却に邁進していくという基本的な方針は、私自身、変わっていないと認識しています。そうした中で、足許の内外の経済動向を勘案しながら、「物価安定の目標」を早期に達成するために、何をやっていくかという視点で、財政との連携をより考えていく余地があるのではないか、というのがお話した趣旨です。

§10Goushi Kataoka

具体的に何かということについては、この場では申し上げられないとご理解頂ければと思います。

§11Question

1点目は、委員は、講演で、追加緩和が必要だという従来の主張をされています。日銀は球切れだとよく言われていますが、具体的に、今どのような手段があるのか、考え得る中でのベストなものを可能でしたら具体的にお話し頂けますでしょうか。2点目ですが、黒田総裁の2期目が始まってから、もうすぐ1年が経つと思います。片岡委員は1期目も2期目も経験されていますが、2期目に入って、方向の違いであったり、転換であったり、修正であったり、1期目と2期目の違いで片岡委員が感じられていることが何かあったら教えて頂けますでしょうか。

§12Goushi Kataoka

1点目ですが、私自身は、過去の金融政策決定会合の公表文、ないしは議事要旨などにも記載されている通り、追加緩和の手段としては、10年以上の国債金利をさらに引き下げるように金融緩和を強めるべきだという点と、コミットメントの強化という観点から、中長期の予想インフレ率が下振れするという判断がなされた場合には間断なく金融緩和を行うとのコミットメントを結ぶべきだという点を申し上げています。ですから、現状、追加緩和の手段としては、これら2つが私自身の主張であるとご理解頂ければと思います。一般論としては、黒田総裁もお話しされていると思いますが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新しい枠組みに移った 2016年9月に、物価のモメンタムが失われたと判断される場合には、「量」・「質」・「金利」といった3つの観点から、追加緩和策を検討するという点が公表されています。追加緩和については、この3つの観点から検討していくことになると思います。2 点目のご質問ですが、私自身はあまり変化があるとは認識しておりません。ただ、2013年以降の黒田総裁の1期目当時は、日本経済はデフレの状態にあり、為替相場や株価も現在のような水準ではない状況で、その中で大胆な金融緩和をアベノミクスの方針の中で行っていくという流れであったと理解しています。

§13Goushi Kataoka

2期目は、そうした金融緩和を行った後で、なかなか物価が上がらない現状を踏まえ、どうしていくかという局面であり、色々な形で政策変更をしてきています。そうした状況を踏まえて、外部からみるとスタンスが変わったように受け止められるのかもしれませんが、私自身は、あまり変化はないという認識をもっています。

§14Question

そもそも論になりますが、2013年の異次元緩和の導入以降、かなり大規模な金融緩和をしているのに、なぜ物価が2%になかなか達せず、むしろ弱めの基調になっているのでしょうか。振り返ってみて、何か日銀の政策が足りなかったのか、それとも、日本経済の持つ根本的な問題があるのか、片岡委員ご自身のお考えを教えて頂ければと思います。それにあわせて、先程、追加緩和の措置として、10年以上の幅広い国債金利の一段の引き下げや、コミットメントの強化を挙げられていましたが、既にこれだけ緩和しても2%にいかない中、そういった措置で果たして物価目標の達成ができるのか、達成できるとするならば、その根拠を具体的にお聞かせください。

§15Goushi Kataoka

先に2点目からお答えします。できていないことの根拠を示すのは難しいのですが、できるまでやるといった行動を伴う意思を示していくことが重要なのではないかと私自身は考えています。1 点目のご質問ですが、これまで何が足りなかったかについては、色々なご意見があると思います。基本的には、2016年9月の政策変更の際に、「総括的な検証」という形で日本銀行がまとめていますが、その際には、大胆な金融緩和を行う中で、なかなか目標が達成できない理由として、当時の世界経済の変調、原油価格等エネルギー価格の低下、国内では消費増税の影響が挙げられていると思います。私どもとしては、目標を達成するまでこの金融緩和をやり抜くことが非常に重要だと認識していますので、今後についても、世界経済の動向など様々な逆風があると思いますが、これに負けずに頑張ってやっていければと考えています。

§16Question

物価が伸び悩んでいる理由として、講演の中で、需給ギャップの拡大が物価の上昇に効きにくくなっている可能性があると指摘されています。その一方で、緩和を強化して、需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることが重要だとも述べられており、一見すると矛盾する感じもします。追加緩和する時に、例えばマネタリーベースと金利と物価上昇率の関係や、効果の再検証も必要ではないかと思いますが、それらをどうつなげられるのでしょうか。

§17Goushi Kataoka

需給ギャップの拡大が物価に効きにくくなっている理由については、昨年7月の展望レポートで再度整理した通りだと思います。それを前提として、金融緩和を強めて需給ギャップを拡大させていくことで物価が上がるのかという点については、私自身は、手段としての金融緩和の強化に加えて、コミットメントという形で、中央銀行が物価安定を達成するという約束を信認してもらう取組みをあわせて行うことで、予想インフレ率そのものに働きかけていく工夫が必要ではないかと従来から申し上げています。加えて、最近では、政府と日銀の連携をさらに強化させることを通じて、 2%の物価予想をより強固にしていく必要があると申し上げています。その根拠については、挨拶要旨の脚注にありますが、何よりも日本では、長引くデフレの中で2%の物価のアンカーが確保されていないことが大きな理由であると感じています。例えば、2%のアンカーがある程度担保されている米国をみますと、リーマンショックを受けて物価上昇率が一時マイナス圏となるなど、非常に低い水準まで落ち込んだ局面がありましたが、大規模な金融緩和が行われ、それによって物価上昇率が2%近傍に再び戻った状況にあります。残念ながら日本はそういう状況にはありませんので、2013年以降、財政、金融、成長政策という3本の矢を通じて、物価のアンカーを作ることを目指しているわけです。

§18Goushi Kataoka

ただ、金融緩和だけではなかなか難しい。この難しいというのは、できないということではなく、デフレの状況の中で、2%のインフレ目標の達成までは非常に距離がある状況ですので、3本の矢を使っていく必要があり、そのためには、政府とのコーディネーションが重要だということです。その中で、金融緩和としては、手段とコミットメントが大事だということを申し上げています。

§19Question

今回の講演では、緩和が長期化することの副作用への懸念について触れていますが、去年9月の横浜での講演では、副作用については特段の問題は生じていないと述べられています。この間に、特に認識に変化があったということではないでしょうか。

§20Goushi Kataoka

認識の変化は全くありません。前回の講演では、副作用の話を挨拶要旨には入れなかったのですが、ご質問をたくさん頂きました。今回も一部にそうした懸念があることは承知しており、副作用についても言及しつつ私の意見を申し上げた方が、皆様にとってより分かり易いのではないかという趣旨で含めたものです。何か考え方が変わったということではありません。

§21Question

先程、財政と金融の連携につきまして具体的に申し上げることはできないというお話でしたが、先程、政府とのコーディネーションが必要であるという話もされました。これは、いわゆる「共同声明」などの見直しを視野に入れるべきであるというようにお考えでしょうか。

§22Goushi Kataoka

これについては、色々な考え方があると思います。この場で私自身が、例えば「共同声明」を見直すべきだといった点について申し上げるのは適当ではないので、具体的な話については、お答えできないと思います。ただ、一般論としては、日本は、現状、なかなかインフレ目標が達成できない状況ですので、金融緩和だけを行って財政が緊縮する形では、物価安定目標を達成するのに非常に長い期間がかかることになると思います。そういった状況を打開して、できる限り早期に目標を達成するということであれば、財政と金融が両面から息をあわせていくことが必要であるという話は、一般論としてはあり得ると思います。そのために、具体的にどういうことができるかを検討しなければいけないというのが、私が申し上げたい趣旨です。

§23Question

物価目標の達成まで距離が遠いなかで、長期化するほど金融機関の副作用も累積的に高まっていくという話をされています。一方、香川県の金融機関の代表者からは、金融システム面への影響をしっかり考慮してほしいという意見が出たということでした。片岡委員は、副作用は特に認識しておらず、その認識は変わっていないということでしたが、今の金融政策を続けていくことによって、金融システムに対して与える影響について、香川県の金融機関の代表者とお話しされて、何か気づきがあったのかどうか、今後副作用が出てくるおそれがあるとお感じになったのかを教えてください。

§24Goushi Kataoka

当地の金融機関から色々な観点についてお話を伺いましたが、ご質問の話題については、日頃から地域金融機関やメガバンクも含めご意見を頂戴していますので、特に気づきや変わった点など、私自身は感じませんでした。

§25Question

片岡委員ご自身は、金融機関から副作用への懸念が出ているのは認識されているが、将来的に顕現化するかどうかについて、それほど危機意識を持たれてはいないという理解でよいでしょうか。

§26Goushi Kataoka

低金利を続けていくことになれば、金融機関にとっても苦しい状態が続き、リスクが起こり得る蓋然性が強まることは理解していますし、その点について全く心配していないわけでは当然ありません。ただ、現状を変えるためには、私個人は早期にデフレから脱却し、それによって長期金利を含めて、経済状態が本来の状態に復することが大事です。低金利の状態をずっと続ける、いわゆる粘り強くというスタンスでは、自己実現的に緩和を長期化させ、デフレからの脱却も長期化させることになり、結果的に副作用が累積していくということにつながるため、そうした状況からは早く脱するべきなのではないかと申し上げています。ですから、全く心配がないから、どんどんやれと言っているわけではなく、むしろ、より早いタイミングでデフレから脱却して正常化を進めるために、今、大胆なことをもっとやるべきなのではないかということが、私が申し上げたい趣旨です。以上