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Bank of JapanPress conferenceJul 3, 2019Yukitoshi Funo, Board Member

布野審議委員記者会見(2019年7月3日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

まず、金融経済懇談会ではどのような話題が中心となったのでしょうか。また、広島県の経済の現状について、既に挨拶要旨でも拝見しましたが、改めてどのように感じていらっしゃるのかお伺いできればと思います。

§2Yukitoshi Funo

本日の金融経済懇談会では、広島県の金融経済界を代表する皆さまから、地域経済の現状や課題、産業振興に向けた取組みなど、大変有益かつ示唆に富むお話をお伺いしました。また、日本銀行の金融政策運営についてのご意見も頂き、大変有意義な話合いができたと思っています。この場をお借りして、ご出席頂いた皆さまには御礼申し上げたいと思います。本日の金融経済懇談会では、非常に多岐にわたる話をしましたので、その中で特に印象的なものを中心にお話したいと思います。広島県経済は、昨年7月の西日本豪雨による経済面での影響は概ね克服され、現在は復旧・復興工事関連の公共投資が増加しているほか、主力の自動車産業では、新型車投入を背景に高い操業度を維持しているとの話を伺いました。また、広島県では、外国人観光客数が大きく増加しており、観光産業の活性化を通じた経済の発展に期待する声が聞かれました。一方で、最近では、製造業を中心に米中貿易摩擦や中国の景気減速の影響に拡がりがみられており、先行きを懸念する声も聞かれました。また、広島県は全国の中でも労働需給がタイト化している地域ですので、人手不足が企業活動に与える影響を懸念しているとの話もお伺いしました。

§3Yukitoshi Funo

金融政策運営につきましては、緩和的な金融環境が設備投資や住宅投資を下支えしているとのご意見を頂いた一方、金融機関の方々からは、低金利環境の長期化による収益面への影響を懸念しているとのご意見も頂きました。この点、当地の金融機関につきましては、資本基盤は安定しているとともに、収益力の強化に向けて様々な取組みを行っていらっしゃると認識していますが、日本銀行としては、引き続き金融機関の収益等の状況について、注視していく考えでございます。次に、ご質問の広島県経済についてですが、当地の主力産業である自動車や造船業では、より厳しい環境規制への対応や安全性能の更なる向上に向けた新技術に挑戦しているほか、人手不足が深刻化するなかで様々な自動化システムの開発や導入に取り組むなど、イノベーションが動き始めていると理解しています。こうした前向きな取組みを通じて、新たな市場の創造や生産性の向上、人材の育成に繋がっていくような好循環が加速していくことが、広島県経済の発展には欠かせないと考えています。また、広島県は 2 つの世界文化遺産や瀬戸内の多島美など観光地として非常に高い魅力やポテンシャルを有しており、観光振興を通じた広島県経済の発展が期待できると思います。当地では、訪日外国人の滞在期間の長期化に向けて観光コンテンツの充実や受入体制の整備、地域間連携の強化といった取組みが拡がり始めています。

§4Yukitoshi Funo

更なる観光振興に向けて、各地域や産官学金が連携して、当地特有の歴史や文化、地勢を背景とした観光資源の魅力を情報発信するとともに、インバウンド需要の取込みに対応できるグローバル人材を育成し、訪日外国人の消費額増加やリピーターの拡大に繋げていくことが重要になると認識しています。日本銀行といたしましては、広島支店を通じて、引き続き情報収集と分析を丹念に行うとともに、金融政策や情報発信を通して広島県経済の発展に尽くしていきたいと思っています。

§5Question

間もなく西日本豪雨の発生から 1年というタイミングを踏まえて改めてご質問させて頂きたいと思いますが、県内経済について、先程のお話の中に諸々あったかと思いますが、改めて足許どのような状況、基調にあるのか、というところと、先行きについてどういったことが考えられるのかというところをもう少し具体的にお伺いできればと思います。

§6Yukitoshi Funo

広島県内では 130 人を超える尊い人命が失われたほか、現在もなお行方不明となっていらっしゃる方もおられると理解していますので、まずは行方不明者の方々の早期発見を心から願いたいと思います。経済面に関していいますと、西日本豪雨時には、直接的な被害だけではなく、交通インフラの途絶等により生産活動が停滞した企業もみられたほか、主要観光地では、観光客数の大幅な減少に見舞われました。もっとも、その後の関係者の皆様のご尽力やグループ補助金をはじめとする行政の各種サポート施策もあって、復旧・復興が着々と進み、足許では復旧・復興関連の公共投資が景気を下支えするなど、経済全体では豪雨のマイナス面の影響はほぼ克服したとみています。ただし、子細にみますと引き続き豪雨被害の影響に苦しんでいる企業や個人の方々もいるため、一日も早い復興を願うとともに、日本銀行としても金融面から可能な限りサポートしていきたいと思います。

§7Question

県内経済ということで、特に製造業のところですが、先行きについて、製造業を始め県内経済の先行きの懸念点などをお伺いできればと思います。

§8Yukitoshi Funo

製造業につきましては、特にその性格からして、外需に頼るところも多い状況がありますので、目下のところ、米中の通商交渉が停滞したり中国経済がやや減速したりしているといった影響を受けて、少し軟化しているのは事実です。もっとも、先のG20での米中首脳会談の結果もあり、通商交渉が引き続き進展していくことも期待できます。また、中国におきましては、政府が財政、金融面で様々な施策を打ってきています。こうした施策の効果も、年後半に向けて期待できる情勢にあると思いますので、日本銀行が先般来お話している年後半の回復に期待するというメインシナリオは崩れていないと思っています。そういう意味で、広島県も、自動車産業を始めとする製造業の密度の高い地域ですが、メインシナリオが維持され、年後半の回復に繋がっていくということを期待しています。

§9Question

先程ご指摘されたように米中貿易摩擦など、世界経済の先行き不透明感が強まっていることを背景に、米欧の中央銀行が緩和姿勢を強めています。それを受けて市場の一部では、日銀による追加緩和観測というものが囁かれているわけですが、あえて率直にお尋ねしますが、現在の経済・物価・金融情勢を踏まえた場合、現状で何か追加的な措置が必要な情勢にあるといえるのかどうかについて、ご見解をお伺いします。

§10Yukitoshi Funo

米中の通商交渉が過去数か月停滞していたこともあり、現在、業況感がやや悪化した段階にあると思いますが、先程申しましたように、年後半に向けて回復が期待できるのではないかとみています。そのもとで、現時点において追加緩和は必要ない状態にあると私は考えています。ただし、先程のメインシナリオと関連しますが、将来、内外の経済に変調が起こって、物価のモメンタムや好ましい雇用水準の維持が危ぶまれる状況が顕現化する状態に直面する場合には、躊躇なく対策が必要であると思っています。

§11Question

追加緩和観測の背景として、市場では円高進行の回避とかそういうことがよくいわれるのですが、一方で構造変化によって日本の企業は為替変動の耐性を強めているという指摘もあります。産業界出身の委員として、ここからの円高進行が日本企業の収益力に与える影響につきまして、どのようにお考えかご見解をお願いします。

§12Yukitoshi Funo

為替につきましては、政府マターですので、その水準についてのコメント等は差し控えさせて頂きたいと思います。そのうえでわが国の産業構造と為替との関係について私見を述べさせて頂きますと、近年、日本企業の為替に対する耐性は高まっているという一般的な理解が共有されていると思います。私はそれは間違いではなく、そういう状況が過去数年にわたって進展してきたと思っています。こうした背景には、地産地消といいますか、海外への直接投資が増え、日本という経営上の拠点からの輸出の比重がやや下がってきているということがあると思います。そのうえで、企業によってその耐性のレベルに差異がありますので、どの水準が妥当かについてはコメントを差し控えさせて頂きたいと思います。

§13Question

講演の中で 2%の物価目標達成に向けて需給ギャップのプラス状態を長期間続けることが重要だといわれていましたが、既に需給ギャップは 2年以上プラスですが、それにもかかわらず物価の感応度が鈍い、更に先程公表された今年の1-3月期の需給ギャップをみると10-12月期よりも下がっていますが、先行きプラス幅が縮小することが 2%達成のモメンタムにどう影響するのか、お伺いします。

§14Yukitoshi Funo

需給ギャップが物価のモメンタムを支えていると私は確信を持っていますが、長期間にわたってプラスが継続しているにもかかわらず、物価上昇が2%の「物価安定の目標」に向けてはっきりと見えてこないのも事実です。この要因には、やはり期待インフレ率に関して適合的な期待形成の力が働いていることが、一番大きな比重を占めていると思います。そういう意味では、今後とも需給ギャップのプラスを維持していくというのが必須であると考えています。先行き、景気、貿易等々は、中国経済の影響など世界経済の変調リスクを抱えていますが、年後半に向けては、先程申し上げましたメインシナリオが維持されるかどうかに注視していかなくてはならないと考えています。

§15Question

国内経済の先行きですが、委員が先程からご指摘の年後半回復のメインシナリオにあたって、消費税のリスクをどのようにとらえておられるのかご所見をお願いします。また、先程の質問と絡むのですが、物価見通しですが、率直に 4月の展望レポートで示された2019年度1.1%という4月の見通しと現時点で大きく下振れていないのか、上振れているのか、ご所見をお願いします。

§16Yukitoshi Funo

消費税率の影響につきましては、年後半のシナリオとして、1 つ目には海外経済の変調がありますし、2 つ目には消費税率引き上げの影響があって、この2つが複合的にどういう作用をしてくるかが注視すべきポイントであると思います。そのうえで、消費税率の影響につきましては、前回 5%から 8%に消費税率が引き上げられた時の状況と比較してみますと、現時点で、駆け込み需要の発生度合いはより緩やかといいますか、少ないということが明らかであると思います。そういう意味では、消費税率を引き上げた後の反動も緩やかであると期待して良いのではないか、と考えています。次に、物価の下振れリスク、4月の政策委員見通しの中央値等との比較でどうかということですが、政策委員 9 人のそれぞれの意見は様々だと思いますので、それについてのコメントは差し控えたいと思います。私としては、3 か月経って、大きくそこに変化が起こった状態にはなく、ほぼ想定通りではないかと、思います。

§17Question

米国の中央銀行が 7月にも利下げを行うのではないかという観測が強まっているというか、引き続きありますが、今回日銀の金融政策決定会合がFOMCの 1日前ということで、大きな決定がなされるかどうか分からない状況で金融政策決定会合を迎えるということになりますが、日銀の政策を受けてということもあるかもしれませんが、FOMCの政策決定を受けて市場がどのような反応をするのか分かりませんが、まず 7月の会合に向けてこのような状況でどのような姿勢で臨まれるかということが 1 つと、FOMC後に金融市場で大きな変動が起こった場合、どのような対応があり得るのか、この 2 点について伺います。

§18Yukitoshi Funo

FRBの動きにつきましては、市場関係者を始めとして様々な情報が出てきていますので、意見や見方の幅もないとはいえませんが、私自身の見方としては、さほど大きなサプライズはないのではないかと思っています。そのうえで、私の 7月の金融政策決定会合に臨む姿勢は、米国金利については、今申し上げたような想定を置いたうえで臨みたいと思っています。FRBの政策決定を受けて市場がどう変化するか、またそれを踏まえてどうするかということについては、現時点においては具体的に申し上げられない局面であると思います。その点については、その後の金融政策そのものに関わることですのでコメントは差し控えたいと思います。

§19Question

短観についてお聞きしたいのですが、先日の短観で製造業の厳しさ、非製造業の底堅さ、一方で先行きへの不透明感といったところも出ているかと思いますが、改めて今回の短観の結果の受け止め方、それが金融政策に与える影響について、どのように考えているかお聞かせください。

§20Yukitoshi Funo

短観では確かに悪化が続いているという結果が出ましたのでこれを悲観的にみる向きもないとはいえませんが、私は、これは驚くような結果ではなく、プラス幅は維持されていますし、想定の範囲内の結果だと思います。そういう意味で、米中の話し合いが 2、3 か月滞ったという影響が少し出てはいると思いますが、今後G20の首脳会談の結果や、その後の動きがどう展開してくるかに注視していく局面にあると思います。

§21Question

金融政策への影響についてはいかがでしょうか。

§22Yukitoshi Funo

物価のモメンタムは想定内で今動いていると思いますので、今のご質問が追加緩和のありなしといった主旨の質問であるとすれば、私は現時点では先程申し上げたように追加緩和は必要ないと考えています。

§23Question

短観でもう 1 点、為替の質問も出ましたが、今回為替レートの想定が109 円 35 銭と前回よりやや円安であるかと思いますが、今まで短観では、企業はやや保守的な見方をすることも多かったかと思いますが、現在円安方向に設定された企業心理について、どういう企業心理から出たのかというところを、トヨタ時代のご経験も踏まえてお聞かせ頂けますでしょうか。

§24Yukitoshi Funo

企業心理としては、例えば、もっと早く米中の通商交渉が進展するだろうと半年前には想定していたと思いますので、少し業況感等に影響しているのは事実だと思います。これが今の段階で投資に影響してくるとか、具体的な実体経済への悪いインパクトが出てくる状況には現時点ではないと思っています。ただ、引き続き特に中国経済、加えて米国経済の今後の動向は企業心理に大きな影響があるだろうと思っていますので、注視を続けたいと思っています。

§25Question

本日欧州連合がラガルドIMF専務理事をECBの総裁にするという指名をしたと思いますが、これについて、委員の受止め、またはハト派として市場に受け止められていますが、日銀への何か政策の影響があるのかどうかといったところのお考えをお聞かせください。

§26Yukitoshi Funo

ラガルド氏の指名が現実のものになったという仮定を置いた場合、これが日本銀行の金融政策に影響するかどうかについては、今の段階では影響しないというように私は思っています。ヨーロッパ経済がどういう動きになるかは、海外経済の動きという意味で日本の金融政策にも影響するのは当然ですが、ラガルド氏がなられた、なられないということで、特段、日本銀行の金融政策が変わってくるということは想定していません。

§27Question

本日の講演の中で、フォワードガイダンスが 4月に明確化されたことを紹介されて、その意味するところを説明されたと思うのですが、このガイダンスを更に明確化する必要性について、布野審議委員はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

§28Yukitoshi Funo

私は、4月のフォワードガイダンスの明確化にも、本日私が講演で述べたような内容は入っていると理解していまして、それを丁寧かつ具体的に説明させて頂いたと考えています。そういう意味では、「当分の間」というのは、2020年春頃を超えた期間も包含しているというのが、4月のガイダンスの内容でございまして、市場その他にも広く明確化した内容を理解頂くことがまず必要だと思います。そのうえで、更にこれをどうするかについては、追加緩和など追加の動きになりますので、私は現時点では必要ないと思いますが、これについては、次の政策決定会合である 7月の後半までに、どういう変化が出てくるかを注視しつつ、次の政策決定会合に臨みたいと思います。

§29Question

先程のフォワードガイダンスの件で、7月後半の金融政策決定会合までの情勢次第では、フォワードガイダンスを変更する可能性があるのかということが1点目です。2 点目は、イールドカーブ・コントロールのもとで長短金利の目標を設定していますが、これを更に引き下げることに対してはプラス面がある反面、マイナス面もあるという指摘が多いですが、更なる金利の引き下げというのは、プラス面がマイナス面を上回る状態を維持することができるのか、それともこれ以上金利を引き下げることは、布野委員ご自身のお考えではマイナス面が大きいということなのか、お伺いします。

§30Yukitoshi Funo

最初のご質問については、金融政策決定会合は先行き次の会合までの期間をカバーしていますので、当然のことながら次の会合までに起こった諸事情、諸情勢は次の会合で反映していきますので、その状況次第では、毎回の金融政策決定会合で変更の可能性は常にございます。一般論的なお答えですが、そのような仕組みになっているということで、ご理解頂きたいと思います。そのうえで、追加緩和は先程申し上げたように、私は現時点では必要ないと思っていますが、次の決定会合ないしは、その後についての様々な施策展開ということですと、短期政策金利の引き下げや、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速という、日本銀行からよくご説明している 4 つの方法論とその組み合わせについて、手を縛られているとは、私は思っていません。ただし、いつも述べさせて頂いている通り、金融政策の前提として経済・物価・金融情勢を踏まえて展開するわけですから、3 番目の金融情勢については、つぶさに観察して、適切に踏まえたうえで、私は会合に臨みたいと思っています。以上