雨宮副総裁記者会見(2019年8月1日)要旨
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§1Question
本日の懇談会ではどのような意見交換がなされたのか教えてください。また、ご挨拶の中でも触れられていましたけれども、県内経済の現状、そして先行きをどのようにみられているのかを改めてお伺いできればと思います。
§2Masayoshi Amamiya
本日の懇談会では、当地の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状や直面する課題に関するお話をお伺いするとともに、日本銀行の金融政策運営に対する貴重なご意見も承りました。大変有益かつ示唆に富む意見交換ができ、懇談会にご出席頂いた方々にはこの場をお借りして御礼申し上げたいと存じます。席上、色々なご意見を頂きましたけれども、私なりに整理して申し上げますと、当地の景気については、総じて人手不足感が強く、タイトな雇用環境が続いているといったご意見が多く聞かれました。全体として、鹿児島県の景気は「緩やかな回復が続いている」という、私ども鹿児島支店の判断を裏付けるようなお話が多かったように思います。一方で、地域や業種、企業規模間で業況感に差がみられるとの指摘が多く聞かれましたほか、鹿児島県経済は少子高齢化や人口減少、若者の県外流出といった課題に直面しており、将来の県内市場の縮小や当地経済を担っていく人材の不足が懸念されることから、課題の克服に向けた果敢な取組みが必要とのお話も伺いました。このほか、米中貿易摩擦についても、現状では大きな影響は出ていないものの、不透明感が高い状況が続いており、今後の企業マインドや生産活動への影響を懸念する声も聞かれました。
§3Masayoshi Amamiya
金融界の皆様からは、低金利環境の長期化に加えて、企業数の減少等に伴う事業基盤の縮小などを背景に、厳しい経営環境が続いているという声が聞かれました。こうした中で、地元企業の課題解決などに力を入れることで地元経済の活性化に貢献するとともに、店舗の統廃合も含めた業務改革に取り組んでいきたいとの話も伺いました。私どもとしては、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という日本銀行の使命を果たすべく、最大限の努力を続けていく所存であり、これを実現することで、鹿児島県経済の健全な発展も後押しして参りたいという考え方を申し述べました。また、鹿児島県経済の現状と先行きにつきましては、日本銀行鹿児島支店が先月公表した「鹿児島県金融経済概況」では、鹿児島県の景気は、生産面は弱含んでいるものの、総じてみれば、内需に支えられ「緩やかな回復を続けている」との判断をお示ししています。すなわち、雇用・所得環境の改善を背景として、個人消費が底堅く推移しているほか、観光も、国内個人客や訪日外国人客の増加に支えられて、時期により多少の振れはありますが、大河ドラマ終了後も相対的に堅調な動きが続いています。公共投資も、国土強靭化3 か年計画に基づくインフラ投資等が見込まれる中で持ち直しています。
§4Masayoshi Amamiya
こうしたもとで、企業の業況感は良好な状態が維持されており、設備投資も中長期的な観点から行われる戦略投資や省力化投資などに支えられるかたちで着実に増加しています。先行きについても、当面、海外経済の減速の影響は受けるものの、内需がしっかりと下支えしている間に、海外経済が成長経路に復していくことによって、「基調としては緩やかな回復を続ける」と考えています。
§5Question
講演で、リスクの顕在化を未然に防ぐために政策対応を行うとの選択肢があるとおっしゃっていました。現在でも米中貿易摩擦など様々なリスクがあると思うのですが、予防的な措置が必要になるような状況とは一体どのような状況なのか教えてください。
§6Masayoshi Amamiya
リスクには、当然色々な種類のリスクがあるわけですけれども、基本的には、私どもの金融政策の目標である「物価安定の目標」の達成に関してリスクを判断していくということが基本ですので、あくまで「物価安定の目標」の達成の道筋あるいはメカニズムに対して、どのようなリスクがどのような格好であらわれるかを中心に判断していくということです。
§7Question
講演の中でも、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じると述べておられますが、タイミングに関してはもちろん難しいかと思うのですが、金融政策の変更を発動するに当たり、FRBとか、ECBのように事前にある程度市場との対話というところから織り込ませることに関して、必要性をどのようにみていらっしゃるかお伺いします。
§8Masayoshi Amamiya
基本線は、FRBもECBも同じだと思いますが、今ご指摘のあった「織り込ませる」ということではなく、私どもの経済や物価に関する情勢判断とリスク評価、それに伴う政策運営スタンスをきちんと市場にお伝えし、理解して頂くということだろうと思いますので、今ご指摘のあったような「織り込む」、「織り込ませる」ということではないように私は思います。
§9Question
黒田総裁の 2日前の会見でも、マイナス金利の深掘りは当然選択肢の一つであるとおっしゃっていました。雨宮副総裁の本日の講演の中でも、短期政策金利の引き下げというのも選択肢にあると繰り返されていました。マイナス金利の深掘りについて、ベネフィットとコストをそれぞれご説明頂けますでしょうか。また、2016年1月にマイナス金利を導入したわけですけれども、発動の後、銀行株を中心に株価が下がって、円高が進むという結果になって、長期金利も非常に低下してフラット化し過ぎてしまいました。その結果として、総括検証ということに結びついたと思うのですが、2016年1月のマイナス金利の決定について、次にマイナス金利を発動する際の教訓になるようなものがあったのかどうか、そこから学べるものがあったのかどうか、お聞かせ頂けますでしょうか。
§10Masayoshi Amamiya
具体的な政策手段のメリット・デメリットについてお答えすることは控えますが、全般的に金融緩和を色々な手段でこの後深めていく場合ということで申し上げますと、やはり当然金融緩和を強めていくメリットとしては、それが実体経済活動の刺激、総需要の増加につながるということですとか、市場の安定につながるといったようなこともあると思います。それに対して、これ以上の金融緩和が金融仲介機能にどのような影響を与えるか、あるいはより長い目でみた金融機能に関する消費者・家計等の信頼感や安心感にどのような影響を与えるかといった問題点を併せて考慮する必要があるかと思います。そのうえで、2016年の経験ですけれども、今申し上げた効果と検討すべき材料を踏まえたうえで、イールドカーブ・コントロールという手段を導入したわけであります。私どもとしては、引き続きそうした追加金融緩和の効果と副作用、あるいはメリットとデメリットといったものをよく比較衡量しながら、その時々の状況に応じて適切な対応を考えていきたいということになるかと思います。その時々の状況に応じてと申し上げたのは、金融緩和のメリットやデメリットも事前に全部固まっているわけではなく、その時々の経済や物価の動向や、市場の動向によっても変わってくるということですので、その時の情勢に合わせて最適な政策手段、あるいはその組み合わせを検討していくことになるかと思います。
§11Question
講演の中で、海外中銀の政策は世界経済や金融市場に少なからぬ影響を与え、これが自国の経済情勢にも影響し得るものだから動向を注視していく必要がある、といったお話があったと思います。まさに本日のFRBの利下げ決定の後、アメリカと日本の金融市場の動きはみえてきているかと思います。市場や経済界の懸念というのは、むしろちょっと円高の方にあって想定とはちょっと違うところもあるかもしれませんが、現在のところこうした動きと日本への影響、あるいはモメンタムへの影響をどう考えておられるでしょうか。
§12Masayoshi Amamiya
まずFRBの政策決定は日付でいうと昨日であり、数時間前のことですので、その影響は出尽くしてないと思います。このため、マーケットの動向の評価も含めて、今の段階で申し上げることは少し時期尚早かと思いますけれども、いずれにせよ、いつも申し上げています通り、海外の主要国の金融政策運営あるいはその変化は、当然色々なルートを通じて日本経済に影響を及ぼすわけであります。どうしても世の中の関心は、例えばアメリカの利下げと今ご指摘のあった為替を通じるルートに集まりがちですが、実際に影響は、もちろん為替も含む金融市場や資本市場の動向にもありますし、何といっても実体経済の動向にもあります。米国経済を通じて世界経済あるいは日本の輸出に影響を与えるという、非常に色々なルートがあるわけですので、そうした影響を推し量る場合にも、今申し上げたような様々なルートを総合的かつある程度の変動を均して評価していくということが重要だろうと思います。そのうえで、今回の政策に限らずということですが、一般論として申し上げれば、主要国の経済がその国の適切な金融も含めた政策運営によって経済の足取りがしっかりすると、特にアメリカのようないわば世界をリードする経済の足腰がしっかりするということは、基本的には世界経済、ひいては日本経済にとっても、プラスの影響を及ぼすということだろうと思います。
§13Question
先程も質問が出ていましたが、将来のリスクの顕現化を未然に防ぐために政策対応することも選択肢にあるというところは、日銀も海外の主要中央銀行も変わらないとおっしゃっていました。ただ、日銀の金利の誘導目標からみると、パウエル議長がおっしゃるような保険的な政策対応が可能なほど手段があるようにはちょっと思えないようなところもあって、そういう意味でいうと、予防的・保険的な緩和が選択肢の中にはあるという点は一致しているけれども、手段とかあるいは回数というのは違っているという理解でよろしいのでしょうか。
§14Masayoshi Amamiya
手段や回数を一つ一つ数え上げるということはなかなかできませんが、私どもの政策手段としては、先程ご質問のあったような短期金利の引き下げもありますが、それ以外に長期金利の誘導目標の引き下げもありますし、資産の買入れの増加もあります。あるいはマネタリーベースの拡大テンポの再加速といった手段もあります。これらを単独で利用することもあれば、組み合わせることもあれば、応用することもありますので、その意味で金融政策の追加的な手段が尽きているとか、非常に乏しくなっているということではないと思っています。基本的には、海外中銀と同様に、もともと今回のFRBの対応で保険的とか予防的ということがだいぶ論評されていますし、パウエル議長も使っておられますけれども、私どもはもともと 2006年に金融政策運営の今の二つの柱のアプローチというのを導入した時に、1 つ目は経済の標準的な見通しがどうなるかということと、2 つ目はリスクがどうかと、金融政策運営上重視すべきリスクを点検して、この二つの柱に基づいて政策を考えていくという考え方をとっているわけであります。この2 つ目のリスクに対応するという考え方は、いってみればそういう予防的あるいは保険的ということとも共通するわけですので、そうした共通の考え方で対応していくということになろうかと思います。
§15Question
本日のFRBの利下げの前後に、かなりトランプ大統領がFRBに利下げをしろと言い、直後も不満を露骨に示しているということで中央銀行の政策判断に極めて政治的な思惑が入り込んでおり、政治的な圧力がかかっています。こうした中で実際に利下げ判断にどこまで影響したかというのは計り知れないですが、市場からみても歪められているのではないか、中銀の判断に対する信任というのが失われるリスクが非常に大きいと思うのですが、この状況に対して副総裁はどのようにご覧になっているのかという点について、まずお願いします。
§16Masayoshi Amamiya
トランプ大統領のコメントについて、私からコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、これはパウエル議長も記者会見でおっしゃっていたと思いますが、そうした大統領の発言とは独立に政策を決めたと、それから、そういう発言があるがゆえに逆の方向を取るということもないと。あくまで今回は世界経済の減速と貿易を巡る不確実性を踏まえた下振れリスクに対する保険的な対応として議論を尽くして決定したということですので、あくまでそういう決定であると理解しています。
§17Question
講演でもおっしゃっていたように、今回の米国の利下げが予防的であるならば、米国経済の足腰を強めるということはひいては世界経済、日本経済にもプラスになるだろうと。ということは、今回のFRBの政策判断に、直接は左右されるわけではないとおっしゃっていますが、数日前に行われた金融政策決定会合では、海外の下振れ、下方リスクをかなり注視した議論だったと思いますけれども、アメリカの利下げに伴ってアメリカ経済がしっかりすれば下方リスクというのはだいぶ縮まる、そうすると日銀の判断にも影響してくると思うのですが、このリンケージというか、今回の利下げと日銀の判断への結びつきについて教えて頂けますでしょうか。
§18Masayoshi Amamiya
ご指摘の通り、私どもの前回の金融政策決定会合における決定というのは、言ってみれば世界経済の不確実性あるいは下振れリスクに端を発して一種警戒モードを一段階上げたということであります。そうした一段上げたアラートレベルのもとで適切な対応を行っていくということですから、そうした警戒モードのもとで、今申し上げたようなリスク要因がどうなっていくかということは非常に重要な材料になるわけです。この不確実性あるいは下振れリスクの要因としては、まずやはり主要国経済の減速、あるいは米中貿易摩擦問題の影響ということがあるわけですので、そうした関係国の経済が安定していくかどうかということは非常に大きな着目点であります。今回のFRBの決定がそちらの方向に寄与あるいは貢献してくれることを当然願っていますが、全体として世界経済の動きがどうなるかというのは、FRBの金融政策だけではなく、米中貿易摩擦の帰趨ですとか、あるいは他に不確実性要因としてはブレグジットの動向もありますし、最近では地政学的な要因もありますし、あるいは中国の景気刺激策の効果がどのタイミングでどの程度出てくるかといった色々な要因がありますので、そうした要因をあくまで総合的に判断していくということになると思います。
§19Question
リスクの顕在化を防ぐという雨宮副総裁の言い方は、結局パウエル議長の保険を掛けるというものとほぼ同義語だという話ですが、ただ、今、両者の金融緩和の度合いは全く違っていて、日銀はある意味多額の保険を既に掛けてある状態と言えると思います。そういう状態だと、自ずと追加的な緩和措置をとる際のステージとか判断には違いが出てくのかなとは思うのですが、その違いをどう認識していらっしゃって、日銀が追加緩和に踏み切る際のポイントというのは、それに伴ってどう考えればよいのでしょうか。
§20Masayoshi Amamiya
既に保険をたくさん掛けている状態なのかどうかというのは、色々な評価があり得るかもしれませんが、日本がここまで金融緩和政策をやってきた結果、色々な金融政策手段がもたらす効果や副作用の比較衡量については、おそらく他国よりも、より慎重に注意深く検討すべき状況になっているということは事実だと思います。しかし、そのうえで、金融政策というのは、やはりその時々の状況や情勢判断やリスク評価に基づいて適切な対応を探っていくということが基本でありますので、既に深い金融緩和を行ってきているということだけで、次の手段がより限定的になるとか、あるいは小さくて済むという性格のものではないだろうと思います。ただし、何度も申し上げますけれども、やはりその効果と副作用の比較衡量というのは、十分注意深く点検すべきことであると思います。
§21Question
抽象的なのですが、世界的に緩和方向に向かうことになって、確かに景気の拡大時期というのは延長されることになると思うのですけれども、例えばマーケットの金融政策頼みの状態は続くだろうし、金融の不均衡がたまっていくというリスクはより高まっていくということになると思うのですが、この点についての懸念と、世界は何を今後留意すべきなのかという点についてどうお考えでしょうか。
§22Masayoshi Amamiya
金融政策運営を行うときには、そうした個々の金融政策手段にかかるメリットとデメリット以前の大きな情勢判断の問題として、常に金融緩和の効果とそれに伴う副作用やリスクをどう考えるか、という基本的な情勢判断の問題があるわけです。今回のFRBの決定についても、パウエル議長は、記者会見でそうしたリスクも検討したうえでの判断であるというふうにおっしゃっておられたと理解しています。私どもとしても、金融緩和がもたらす実体経済なり物価に対するプラスの効果と、ご指摘のような金融面での潜在的なリスクの増大といったことのバランスを考えながら、最終的には「物価安定の目標」の達成を念頭に置いて、そのリスクを基準に判断していくということになろうかと思います。
§23Question
鹿児島の経済の課題、また、県内経済が更に発展するために必要な点というのをどのように考えていらっしゃるかという点と、また、地方はどこもそうだと思うのですが、金融機関が高齢化とか人口減少に加えてマイナス金利政策もあって非常に経営が厳しくなっていると思われます。鹿児島県内の金融機関の今後の在り方、役割についてどういうところに期待されるのかということをお聞きできればと思います。
§24Masayoshi Amamiya
今ご指摘の点は、本日の懇談会でもやはり最も議論された、あるいは意見が多く出たところだと思います。鹿児島県の経済について、少子高齢化、人口減少あるいは若者の県外流出などで将来の県内市場の縮小とか、当地経済を担う人材の不足ということに対する真剣な懸念を示されるご意見を多く頂きました。ただ同時に、産学官で連携しながら課題の克服に向けて対応を講じているという話も伺いました。例えば、需要面でいうと、当地が得意とする農畜産物の輸出ですとか、あるいはそうしたものの首都圏向けへの出荷を増加させる努力といった、県外需要の獲得に力を入れているといったお話がございましたし、内外を含めて観光客の需要の取り込みにも努力されていると聞きました。また、何といっても「鹿児島黒牛」といった、ブランド価値を高める取組みも進めておられると伺いました。その席上で私が申し上げたのは、昨日鹿児島の空港に降りて空港の降り口の前で、日本茶の品評会第 1 位、黒牛の品評会第 1位と、1 位、1 位という広告をみましたが、必ずしもそのことが全国的に認知はされていないという多少耳触りなお話も申し上げましたが、そういった点もご存じのうえでブランド戦略の強化といったことも挙げられていました。
§25Masayoshi Amamiya
一方で、人手不足による供給面の問題については、女性・シニア層に加えて、外国人の活用とか、UIJターンの推進、あるいは、先を見据えた省人化投資を行っていくというような話も伺いましたので、こうした取組みが上手くいくことで、鹿児島県経済の発展に貢献することを期待しています。それから、金融機関経営の問題についてもご指摘を頂きました。全体として今県内の金融機関は、十分な資本と流動性を備えており、財務の健全性に大きな問題はないと考えています。ただ、やはり低金利環境の長期化、人口減少に伴う成長期待や借入需要の低下といった構造要因を背景に、基礎的収益力の低下が続いているわけでありまして、こうした経営環境を踏まえて、県内の各金融機関は、地域経済とともに成長するビジネスモデルの構築に向けて色々な取組みを進めておられると認識しています。具体的には、目利き力を活かして、地元企業に対する担保とか保証に過度に依存しない融資を推進するとか、あるいは企業に対するソリューション提供をするといった取組みも聞きました。実際に、固有名詞は申し上げませんが、当地の金融機関はABLの分野では日本の中でも非常に早い段階から先進的な取組みをされているわけであります。
§26Masayoshi Amamiya
それから、事業再生と事業承継のための出資規制の緩和といった制度変更の活用を視野に入れるといった動きもありますので、全体として、こうした金融機関の取組みを通じて、最終的には県内の企業や個人の経済活動が活性化されて、金融と実体経済活動が相互に支え合うというかたちが実現できれば良いと思っていますし、そういう方向に向けた動きが始まっているというふうに感じました。
§27Question
物価のモメンタムについてお伺いします。よくモメンタムとは、需給ギャップとインフレ期待という説明があるわけですけれども、物価のモメンタムが損なわれる惧れということは、例えば、需給ギャップがマイナスになりそうだとか、横ばい圏内にあるインフレ期待が下振れしそうだとか、もしくは物価が先行き下がっていく見通しになりそうだとか、そういったケースが考えられると思うのですが、副総裁はこの物価のモメンタムが損なわれる惧れというものについて、具体的にどのような経済・物価情勢を念頭に置いているのか、ご説明頂けませんでしょうか。
§28Masayoshi Amamiya
ご質問の趣旨は、いつも私どもが申し上げている物価上昇のモメンタムが損なわれているような状況の具体的な基準はどの辺かというご趣旨かとは思いますが、物価上昇のモメンタムとして、いつも申し上げているのは、今ご指摘のありました経済全体としての需給バランス ── 別に例の GDPギャップの数字だけを見ているわけではなく、 GDPギャップにあらわれているような経済全体の需給バランス ──がどうか、また、そのもとで企業の賃金・価格設定スタンスがどうか、更に、そのもとで家計のインフレ期待と言ってもいいのですが、一種の家計の物価上昇許容度がどうなっていくかといったことを、判断材料としているわけです。では、それぞれがどこまでいったらというご質問ですけれども、なかなか難しいのは、1つは、ある時点でどのレベルまできたかということと同時に、先行きのコースをどう読むかということも重要なわけでありますので、ある程度先行きの展望まで含めて考えるということです。もう1つは、今私が申し上げた三つ、二つでも三つでもいいのですが、それぞれが独立ではなくて相互に関係しています。そうした時間的要素とか、相互関係も踏まえたうえで、総合判断していくということに尽きると思います。
§29Masayoshi Amamiya
このため、具体的に何パーセントになったら損なわれるといった基準は、考えることは難しいというよりは、そういうふうに考えることはおそらく適当ではないのだろうと思います。
§30Question
10年物金利が現状-0.15%ぐらいだと思うのですが、これが仮に先行きグローバルにセンチメントが悪化していって、どんどん下がっていって、日銀のターゲットのレンジの中にもなかなか収まらないというふうになったときに、日銀がそのレンジを拡げることについて、雨宮副総裁はどのようにお考えになっているのでしょうか。
§31Masayoshi Amamiya
まず、ターゲットのレベルといっても、概ねこの範囲内ということですし、これも以前イールドカーブ・コントロールを始めたときに申し上げたと思いますが、金利の動向を判断するには、その時々のレベルだけではなく、その後の動向がどうなるかという傾向や動き、あとボラティリティがどうなるかということや、その背景にある動きは何かといったことを、判断することになります。つまり、何か事前に固まったレベルがあるということではなく、弾力的であるということが一つです。ただし、そのうえで、もちろん大きく動くようであれば、それを拡げるということは当然あり得ると思いますが、これはあくまでも政策運営、先程申し上げた四つの手段──短期金利の変更、長期金利の誘導の変更、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大といった大きな政策──の組み合わせ、応用、そうしたパターンのうちの一つと、私は考えています。以上