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Bank of JapanPress conferenceSep 24, 2019Haruhiko Kuroda, Governor

総裁記者会見(2019年9月24日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の懇談会で寄せられた意見、要望に対する所感を含めて、関西経済の現状と先行きについて所見をお願いします。

§2Haruhiko Kuroda

本日の懇談会では、関西経済界を代表する方々から、わが国および関西地区の経済・金融の現状と課題についてお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望も伺いました。大変有意義な意見交換ができたと思っています。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で伺ったお話、ご意見、ご要望について、私なりに3 つの点にまとめて、感想を申し上げたいと思います。まず第 1 は、海外経済を巡る不確実性が、関西経済に与える影響についてです。当地経済は、輸出やインバウンドの消費などの面で、中国をはじめアジア諸国との結びつきが強い経済構造になっています。そうしたもとで、米中貿易摩擦を巡る不確実性などが、関西経済からの輸出、あるいはインバウンド消費を下押しするリスクについて指摘がありました。また、生産拠点の移管など、海外経済を巡る不確実性の高まりに対する、当地企業の取組みについても言及がありました。関西経済は、旺盛なインバウンド消費、高度なモノ造り力を背景にした輸出競争力、研究開発も含めた積極的な設備投資などを原動力として、緩やかな拡大を続けています。そうした情勢に変化がないか、当地経済を含め、わが国の経済情勢について、本日伺ったご意見も踏まえつつ、しっかりと点検していきたいと思います。第2 は、関西経済の成長期待の高さです。

§3Haruhiko Kuroda

本年6月に当地で開催されたG20は、大阪の名前を広く世界にアピールする契機になったとの話もありましたし、また、大阪・関西万博開催などの大規模な国際イベントの開催が、インバウンド需要の持続的な成長につながるという声も聞かれました。また、万博開催を好機と捉え、当地が強みを持つライフサイエンスやIT分野をはじめ、産学連携を通じたイノベーション創出に取り組み、当地の成長につなげていきたいとの声が多く聞かれました。こうした動きが着実に実を結ぶことを期待しています。最後に、日本銀行の金融政策運営につきましては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、適切な金融政策の運営に引き続き期待しているとの声を伺いました。生産性向上に取り組む企業や、スタートアップ企業などを含め、必要な資金が幅広く行き渡るように後押ししてほしいとのご要望も頂きました。こうしたご意見も踏まえつつ、適切な政策運営を行っていく方針を申し上げた次第です。次に、関西経済の現状と先行きについてですが、先程申し上げた通り、海外経済を巡る不確実性が高まるもとでも、関西経済は緩やかな拡大を続けています。先行きについても、引き続き、旺盛なインバウンド消費と、イノベーション創出も見据えた企業の前向きな設備投資を軸に、当地経済が成長機会をしっかりと享受していくことが期待されます。まず、インバウンドについてです。

§4Haruhiko Kuroda

当地には、数多くの歴史・文化遺産、豊かな自然、食文化といった複層的な魅力があり、先般のG20開催、あるいは万博開催決定などにより、こうした当地の魅力に世界の注目が集まったとの声も聞かれているところです。そうしたもとで、当地のインバウンド消費は、全体として堅調であると認識しており、今後とも、インバウンド消費を持続的なものにしていく取組みが期待されます。次に、イノベーション創出に向けた動きですが、当地企業の研究開発を含めた設備投資スタンスは積極的であり、人手不足に対応する省力化投資のほか、インバウンド需要を見込んだ投資、車の電装化や5G対応、再生医療関係といった、中長期的な需要拡大を見据えた投資など、多様なタイムホライズンを念頭に置いた投資が幅広くみられています。大阪・関西万博の主要テーマであるライフサイエンス分野などにおいても、将来のビジネスチャンスを確保すべく、研究開発が活発に行われていると伺っています。このように、インバウンド消費とイノベーション創出に向けた動きが、当地経済を今後ともしっかりと支えていくとみていますが、海外経済を巡る不確実性が高い状況が続いていますので、関西経済の緩やかな拡大基調に変化がみられないか、日本銀行としては、大阪・京都・神戸の各支店を通じて、関西経済の動向を引き続き丹念に調査して参りたいと思います。

§5Question

金融システムについて伺います。地域金融機関では低金利環境が続く中で収益力が低下するなど厳しい環境にあり、マイナス金利の深掘りを懸念する声も聞かれます。地域金融機関の現状と課題、展望について所見をお願いします。

§6Haruhiko Kuroda

現状、関西地区も含めて、地域金融機関は十分な資本と流動性を備えておりまして、貸出などの金融仲介活動に引き続き積極的に取り組んでいます。もっとも、基礎的収益力は、低金利環境の長期化に加え、人口や企業数の減少といった構造要因から、趨勢的に低下しています。今後も、こうした構造要因は収益に下押し圧力をかけ続けると見込まれます。そうしたもとで、地域金融機関においては、地域経済を金融面からサポートしていくため、地元企業の課題解決等を通じた金融サービス提供力の強化、あるいは経費構造の見直し等を通じて経営効率を高めるなど、収益力向上に向けた取組みを進めていくことが重要な経営課題だと考えています。この点、本日の懇談会でも、金融界を代表する方から、インバウンドや万博開催の後押しがあるもとで、より一層顧客目線に立った商品・サービスの充実、あるいはIT新時代のニーズを踏まえたサービス向上を進めるとともに、大規模な店舗改革などにも意欲的に取り組まれているというお話を伺いました。先程申し上げたように、苦しい収益環境のもとではありますけれども、様々な努力をされておられるということもよく理解できました。日本銀行としても、今後とも、考査あるいはモニタリングを通じて足許の状況をよく丁寧に把握するとともに、様々な機会を捉えて地域金融機関のこうした前向きな取組みをしっかりと加速していきたいと考えています。

§7Question

物価についてお願いします。先程の講演で、物価の中心的な見通しは下方リスクの方が大きいと考えていると指摘されていますが、先週末の全国CPIは 0.5%上昇ということで、春先に比べてやや下落して、2年1 か月ぶりの低水準になりましたけれども、総裁が繰り返し指摘されている海外経済のリスクが物価に既に及んできているのか、物価の見通しについて改めてお願いします。

§8Haruhiko Kuroda

ご指摘の通り、生鮮食品を除く、あるいは生鮮食品およびエネルギーを除いたところでみてみますと、いずれも 0%台の半ばという状況です。一方で、このところプラスが続いていることは事実ですけれども、他方で若干垂れていることも事実です。その中には、原油価格が若干下落してきたとか、春先まで若干円高になっていたとか、そういったことも効いているのかもしれません。足許では、原油価格はサウジアラビアの問題などを反映して、若干上がっています。また、為替も、比較的安定的に推移していますので、今申し上げた状況は、比較的短期的な現象ではないかと思っています。基本的な根っこにある要素というのは、前から申し上げている通り、一方でプラスのGDPギャップが続いているということ、他方で、中長期的な物価上昇期待というのも、一時下がって、また上がってきて、このところずっとフラットで推移しているということです。そういうこともあるので、先程の懇談会の席でも申し上げましたが、プラスの需給ギャップが続くもとで、次第に物価上昇を抑えているファクターが薄れ、実際の物価上昇率が上がっていけば、予想物価上昇率も上がるということで、相乗効果で徐々にではありますが、2%に向けて物価上昇率が上昇していく、加速していくという見方でいいとは思います。

§9Haruhiko Kuroda

一方で、海外経済の下振れリスクが大きいといったことが、今のところ内需は堅調ですけれども、内需に影響してこないかということを含めて、やはり慎重にみていく必要があるということはその通りだと思います。

§10Question

先程のご挨拶の中で、10月の展望レポートの検証の結果に予断を持っていらっしゃらないとおっしゃいました。先週の会合では、追加緩和に向けて前向きな姿勢を示されていますし、市場とのコミュニケーションを重視しているのかなと受け止めているのですけれども、市場の期待が間違って高まるリスクもあり得るかと思います。仮に市場の催促相場に追加緩和が急かされてしまうという状況が起きたとして、日銀として経済指標次第であるべきという正しい判断ができるのか、その辺りのリスクをどう認識しているのか教えてください。

§11Haruhiko Kuroda

この間の金融政策決定会合後の記者会見でも申し上げた通り、その前の金融政策決定会合の時よりも海外経済を中心とするリスクがやや高まっているという認識を踏まえたうえで、次回の金融政策決定会合では、特に展望レポートをまとめる機会でもありますし、経済・物価の動向を十分点検して、必要があれば政策対応をとるということを申し上げたわけです。その意味では、前の金融政策決定会合の時よりもリスクが高まっているだけに、金融緩和についてより前向きになっているということはその通りです。ただ一方で、あくまでも次回の金融政策決定会合において、それまでの経済データ等を十分吟味し、かつ支店長会議もありますので支店長からのミクロの情報も聞いたうえで、展望レポートをまとめ、金融政策について政策委員会で議論して決定するということです。予断を持ってということはないと思いますが、全体としてリスクが高まっているだけに、従来より緩和に向けて前向きになっているという姿勢は今のところ変わっていないと思います。

§12Question

先般の会見では、今おっしゃったように緩和に前向きですという話と、イールドカーブについてもう少し立ったほうが好ましいのではないかというお話をされていて、それはいずれもそうだと思うのですが、これを両立させるのは、緩和をすれば金利に下押し圧力がかかりますし、なかなか難しいようにも思えるのですが、総裁の中で両立のイメージをどのように持っていらっしゃるのか教えてください。

§13Haruhiko Kuroda

2016年に「総括的な検証」を行った際にも明らかにしましたように、マイナス金利を導入した後、平行的にイールドカーブが下がるよりも、超長期の金利がものすごく下がったわけですが、やはり金融緩和効果という意味では、短中期の金利が非常に重要であり、他方で、超長期の金利が下がり過ぎると、金融緩和効果よりもむしろ、年金とか生保の運用の低下を通じて、消費者マインドが冷えてしまうと、却ってマイナスになってしまうということを指摘しています。その「総括的な検証」の考え方は今でも変わっていないわけで、追加緩和策を仮にやるということになれば、当然、短中期の金利は更に下げる必要があるのですが、超長期の金利は下げる必要がないどころか、むしろ上がってもおかしくないのかもしれないと、ただそのようにどうやってするのかという話ですが、そこは従来から申し上げている通り、国債の買入れプログラムを適切に修正していくことによって、超長期の金利が下がり過ぎることは回避できると思います。

§14Haruhiko Kuroda

そこはまさにイールドカーブ・コントロールで、適切なイールドカーブを形成するということであり、別に今の時点で 10年物国債金利の操作目標をゼロ%程度と言っていて、そのゼロ%程度の範囲内で弾力的に考えていくことは当然ですので、ある程度 10年物国債金利が下がったときでも、それが海外の金利の低下を反映して、国債市場の円滑化機能を反映したものであれば、機械的に±0.1%の 2 倍程度を超えているから、引き上げなくてはならないということでは必ずしもありません。ただやはりゼロ%程度という操作目標があるのにどんどん下がっていくというのはいくらなんでもおかしいので、そういう状況になれば、当然国債買入れの中身について、必要な調整を図っていくということだと思います。ですから、適切なイールドカーブを形成する観点から、現在の政策金利を決め、そして 10年物国債金利の操作目標を決めて、適切なイールドカーブとなるように、国債の買入れを進めていますので、まさにそういった観点から、仮に短中期の金利を下げるということになれば、超長期の金利が行き過ぎた低下をすることがないように、必要に応じて買入れプログラムを調整するということになると思います。

§15Question

本日の講演の中で、最後に改めて金融政策運営において大事なこととして、ベネフィットとコストをしっかりと比較衡量していくとおっしゃったと思います。前回の9月の決定会合では、次回の会合に向けては、しっかりと経済情勢を判断、点検したうえで、場合によっては躊躇なく緩和を行っていくということだったと思うのですが、今後も必要な検討課題として、コストの部分をしっかりと考えていくということは、次回の会合に向けても、この部分をしっかり考えていく必要があるということなのでしょうか。

§16Haruhiko Kuroda

それはその通りです。常に金融政策を決定する場合には、その効果と副作用、ベネフィットとコストを総合的に勘案していくことは必要ですし、特に、ここまで低金利が続いている中で、金融機関の信用仲介機能とか、国債市場の機能に対する影響、副作用・コストがあり得るとすれば、それを十分勘案していくことは必要だと思います。これは従来からベネフィットとコストを十分勘案していくと申し上げていることを再度申し上げたにすぎません。

§17Question

先日の決定会合の日に全銀協の会長が記者会見でおっしゃったのですが、マイナス金利の深掘りについて、効果があるのか疑問であるという話がありました。マイナス金利の深掘りについては、効果と副作用が色々あると思うのですけれども、例えば次の会合で議論する際に、効果の方が副作用を上回るということはあり得るのでしょうか。お考えをお聞かせください。

§18Haruhiko Kuroda

金融緩和のオプションとしては 4 つ、従来から指摘している通りでありまして、政策金利を更に引き下げる、あるいは、長期金利の操作目標を引き下げる、資産買入れプログラムを拡大する、あるいは、マネタリーベースの増加テンポを更に加速する、これらの組み合わせとか、色々なことがあり得ることを申し上げております。その点には変わりないわけでして、現時点で、何か特定の、例えばマイナス金利の深掘りといったものを排除する必要はないと思います。いずれにせよ、4 つのオプションの中で、更に組み合わせを含めて様々な対応策があり得るわけで、それはその時の経済・物価・金融情勢を踏まえて、政策委員会で十分議論して、適切な判断をすることになると思います。

§19Question

先程のご発言で確認みたいになるのですが、政策効果を踏まえれば、短中期金利を下げることも必要というご趣旨の発言をされたように思うのですけれども、今し方、4 つのオプションのうち、どれが有力というわけではないというご発言もあったわけですが、やはり政策効果を踏まえれば、中短期の金利を下げて、超長期をあまり下がらないようにする、むしろスティープ化するようなことを、追加緩和を行う場合に、考えておられるということなのでしょうか。

§20Haruhiko Kuroda

そういうことは十分あり得ると思います。具体的に、どういう緩和策をとるかというのは、先程申し上げたように、4 つのオプション、あるいはそれぞれの組み合わせ、改善策等を総合的に勘案して、その時の経済・物価・金融情勢のもとで、最適のものを選択することになると思います。

§21Question

マイナス金利の効果・副作用、もしマイナス金利を深掘りするときは十分考慮していくということだと思うのですが、2016年にマイナス金利を導入したときに、一般的に言われている結論というか見方というのは、銀行株が下がり円高を招き、あまり好ましい結果は残せなかったという見方が多数だと思うのです。そういったことが、次やるときは起こり得ない、起こらないと総裁としては確信をもって言えるのでしょうか。

§22Haruhiko Kuroda

2016年の時の色々な環境と、今の環境とが、全く同じということではないと思いますので、一概に今のご指摘のように決めることはできないと思いますが、いずれにせよ、必要に応じて、追加金融緩和を決めるというときには、経済・物価・金融情勢を踏まえて、最も適切なものとなるようにするということに、変わりはないと思います。

§23Question

超長期金利が過度に低下すると副作用が大きいということで、オペレーションの買い方の工夫で対応するということだと思うのですが、これだけ日銀がたくさん購入している中で、オペでどれだけ低下を防止できるか、ちょっと疑問を持つ市場参加者もいるのですが、もしオペレーションの工夫で対応できないとなれば、金融政策でどういった対応策があるのでしょうか、教えてください。

§24Haruhiko Kuroda

ご趣旨はおそらく、フローとしての買入れ額が大きいというよりも、ストックとしてたくさん持っているのではないかというお話かもしれませんが、一方で、超長期債も新たに発行されており、そのもとで、日本銀行は現在でも、一定額の超長期債を購入しています。それを、仮に超長期債が下がり過ぎることを回避するために減額するということになれば、それはそれなりに下がり過ぎるのを防止する効果は十分あり得ると思います。以上