若田部副総裁記者会見(2020年2月5日)要旨
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§1Question
会合ではでどのような意見や要望が出たのでしょうか、お聞かせください。
§2Masazumi Wakatabe
当地の行政・経済界を代表する方々から、地域経済の現状や課題について、実情に根差したお話をお聞きすることができました。また、金融政策運営に関する率直なご意見・ご要望を頂きまして、大変有意義な意見交換ができたと思います。この場を借りまして、改めて御礼申し上げます。大変多様な話題が出ましたので、全てを網羅することはできませんが、懇談会での議論を私なりに整理させて頂きます。まず、当地の景気につきましては、全体としては、回復しているとの見方ではございましたが、その先行きについては米中間の貿易摩擦のほか、足許で発生している新型コロナウイルスによる感染症の拡大が当県におけるインバウンド需要などにもたらす影響など、外的要因の動向を懸念するご意見が聞かれました。また、当地では中小企業が多いということもございまして、企業活動において人手不足が深刻な課題になっているとのお話が多く聞かれました。その背景には、県外への人材流出も影響しているとの見方も示されました。こうした中で、ご出席者の方々から、「課題に取り組むことは、従来のやり方だけでなく、新しいことに取り組む一歩を踏み出すきっかけになる」といった前向きなお話がありました。
§3Masazumi Wakatabe
実際、民間企業では、人材を惹きつけるため、自社の魅力を高める情報発信に様々な方針で取り組まれているほか、これまでは男性が就くことの多かった営業職や開発職、あるいは交通機関の運転手といった職種にも、女性の活躍の場が拡がっているとのお話が聞かれました。また、行政と民間企業が連携し、県外人材の県内への就職や移住を促進するための「あのこの愛媛」、中小企業の生産性向上を企図したRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入支援など、様々な取組みを進められており、大変心強く感じたところです。要望につきましては、日本銀行については、人々が経済成長を実感できる経済が実現するような政策運営の舵取りをお願いしたいというお話があったほか、当地経済においては地域金融機関の役割が重要であり、現在の金融緩和政策の副作用に十分留意してもらいたいといった要望が聞かれました。また、FinTech センターや金融高度化センターによる情報提供について、是非今後も継続してほしいとのお話もありました。今後、当地の企業、行政、金融機関が進められている様々な施策が一段と進められていく中で、当地経済が更に活性化されていくことを期待します。
§4Question
意見交換を通じて、愛媛県経済の現状や課題については、どのようにお感じになられたでしょうか。
§5Masazumi Wakatabe
まず最初に、景気の現状、それから先行きについてお話しします。多少、講演の内容とも被りますが、愛媛県の景気の現状については、企業の生産活動に幾分弱めの動きがみられますが、全体としては回復を続けていると考えています。設備投資は、大型投資がみられた前年度の水準は下回りますが、省力化や能力増強、研究開発投資など、積極的な投資スタンスが維持されています。公共投資は、西日本豪雨災害からの復旧・復興工事や防災・減災工事を中心に増加しています。更に、個人消費は、消費税率引き上げ等の影響により一時的な振れを伴いつつも、着実に持ち直しており、全体としては、前向きな景気循環メカニズムが働いている点は、全国と同様であると認識しています。一方で、やや長い目でみますと、愛媛県では全国を上回るスピードで少子高齢化が進展しています。有効求人倍率もほぼ既往ピークの水準で推移するなど、県内企業の人手不足の状況が続いています。これは、参加者の方からもよく聞かれたことです。こうした課題について、既に紹介しましたが、愛媛県では、その克服に向けた取組みが少なからずみられていると認識しています。例えば、県内企業は、生産の効率化・省力化に向けた取組みを積極化しているほか、県も、県内の求人や移住、就業の促進に向けて、民間と共同しながら人手不足対策に取り組んでいます。
§6Masazumi Wakatabe
先程は紹介しませんでしたが、県が行っているデータベース化による雇用のマッチングということも試みの一つだと考えられます。今後も、こうした取組みが一段と進むことを期待しています。また、愛媛県は一昨年、西日本豪雨災害に見舞われました。県などの自治体を中心に、被災された方々の生活支援や施設の復旧、農林水産業、商工業等の地域産業の再生に尽力されています。県では、引き続き豪雨災害からの創造的復興を最重要課題と位置付け、様々な施策を講じていると聞いています。今後、これらの取組みが奏功し、一日も早い復興の実現につながっていくことを期待します。
§7Question
懇談会でも言及がありましたが、新型肺炎の経済への影響についてお伺いします。中国経済の停滞やサプライ・チェーンや観光業など、様々なチャネルで世界とか日本への影響があると思われますけれども、もう少し詳しく副総裁の見方を教えてください。特に、タイミングとして、消費増税後で弱含んでいる国内経済にとっては、2 期連続のマイナス成長というリスクもあり得ると思うのですがいかがでしょうか。
§8Masazumi Wakatabe
新型コロナウイルスによる感染症の拡大が内外経済に与える影響については、事態が流動的ということもあるので、現時点で完全に評価することは難しいという前置きをした上で述べさせて頂きますと、大きくいって三つくらいのチャネルがあると思います。一つめは、中国国内の経済活動が抑制されるということです。その点に加えて、二つめは、中国との関わりという意味です。製造業のサプライ・チェーンが、非常に緻密に、周密になっていますので、それを通じた影響、あるいは観光などを通じた影響、これによってわが国を含めて中国以外の世界経済へと影響していくという側面があります。三つめは国際金融市場での動きで、そうした懸念を背景にして、投資家のリスクセンチメントが慎重化することで、株価や金利が低下するということが起こり得るというように考えます。中国経済のプレゼンスが、今や非常に大きくなっているというのはご承知の通りで、中国国内においても、かつてはGDPの成長率に占める消費の割合が4 割ぐらいだったものが今や 6 割近くになり、サービス業の割合も同様に大きくなっています。世界経済におけるプレゼンスも、市場為替ベースでみると 2003年が 4%だったのに対して、2018年には 16%となり、市場為替の影響を極力除いた購買力平価(PPP)ベースですと2003年が8.7%から2018年が 18.7%と 2 倍程度になっています。
§9Masazumi Wakatabe
中国の貿易額が世界経済に占める割合は、名目の値ですが、輸出でみると 2003年が 5.8%から 2019年が 12.9%、輸入でみると 5.3%から 10.9%とほぼ 2 倍程度に上がっています。更に、日本へのインバウンド観光客数も、2003年は 45 万人だったのが 2019年では 950 万人に及んでいるということで、様々な影響が考えられるということになろうかと思います。日本銀行としましても、この問題がわが国の経済、物価に与える影響や、今後の金融市場の動向にどういう影響を与えるかということについては、最大限の注意を払ってまいりたいと思います。
§10Question
懇談会でも指摘されていた「日本化」に関連して、1月のMPMの「主な意見」で低成長、低インフレの長期化の懸念のもとで、欧米で金融政策の再検討の機運が高まっており、わが国についても金融政策のレビューを行う必要があるのではという意見がございました。単にインフレ目標の見直しというのではなく、より長期化する政策の持続性を高める側面からも、レビューの必要性が日銀でもありうるとは思いますが、副総裁のご意見はいかがでしょうか。
§11Masazumi Wakatabe
現状では、レビューに近いものを行ったのは、おそらく 2016年の時の「総括的な検証」だと思います。あれから「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という今の枠組みになって、その後、金利変動幅のレンジ化などを含めて、それ相応の修正をしつつ現状の枠組みに来ているということです。現状において、例えば、今の枠組みが 2%の「物価安定の目標」を達成するのに十分なのか、十分でないのかというようなことについては様々な意見があり得るということは承知しています。おそらく、他の政策委員会メンバーで、そのように考えている委員もいるとは思いますが、現状において、再検討すべしということが多数派になっているというわけではない ──これは私の推測を含んでいますが──と考えています。ただ、レビューが提起している問題、つまり、講演でも申し上げた「日本化」の経験を踏まえて、世界経済が低成長、低インフレ、低金利という、ある種あまり望ましくない均衡状態へと引きずられていくのではないかという懸念があり、そのもとで、中央銀行が掲げているインフレ目標、そしてそれに到達するための様々な手段が望ましいのか望ましくないのか、十分なのか十分でないのかということは、バックグラウンドとしてずっとあるわけです。
§12Masazumi Wakatabe
まさに「日本化」という名前が示している通りに、日本銀行としても、そういったことを十分に注意・検討して、私どもとしても考えなければならないと思います。ただ、それをもって、現状ですぐに、ECBが宣言しているようなレビューを行うとか、あるいはFRBが行ってきているレビューのようなことを私どもがやるかというと、それについては現段階ではないということです。
§13Question
今の質問にも絡みますが、物価が弱い状況が続いているということで、今の政策の枠組みを続けているのだと思いますが、1月の展望レポートを拝見しますと、成長率は先行き引き上げたのに、物価の方はむしろ見通しを引き下げています。政府が財政出動などもしながら景気を吹かす方向に動いているわけですけれども、物価が弱いということで、マーケットでは、展望レポートの動きなどもみて、物価のモメンタムが損なわれていないというのは本当かという議論が起こっているところかと思います。その辺りについて、改めて、副総裁のご見解と、物価の弱さなどを踏まえて、政策対応みたいなものが追加的に必要なのかどうか、どうお考えになっているのかを教えて頂ければと思います。
§14Masazumi Wakatabe
まず、展望レポートで示されている見通しというのは、個々の政策委員会メンバーが示した数字を集計したものなので、その個々の委員が成長率と物価の先行きについてどういう判断をしているのかというのは分かりません。全体としてみて、おっしゃったような関係がみられるというときに、何が起きているのかというのは、個々の委員の考え方を聞かないと分からないわけです。一般的にいえるのは、物価のモメンタムが弱くなっているというよりは、経済がある程度温まってくると物価が上がってくるというメカニズムと、経済が温まってくるならば物価が上がっていくだろうという人々の予想が高まるというメカニズムの、二つの要素を通じて物価が上がるわけですが、このメカニズムを前提としても、例えば前者の、経済が温まってくれば物価が上がっていくというつながりが、多少弱くなっているということだと思います。弱くなっているということについては、様々なことが指摘されています。例えば、現時点で色々と出ている世界経済の下方リスクであるとか、経済が温まっているあるいは人手不足にもかかわらずなかなか賃上げが進まないといった判断が、やや弱含んできているとの見方の背景にあるという推測は成り立つと思います。
§15Masazumi Wakatabe
つまり、個々の委員がどう考えていらっしゃるかは分からないですが、全体として、フィリップス曲線が更にフラット化している中で、需給ギャップが大きくなれば、すなわち経済が温まれば、失業率が下がることで賃上げが起き、物価が上がるというメカニズムについて、色々と弱さがあるのではないかと考えているという推測は成り立つということです。ただ、日本銀行は、既に金融政策決定会合でいっているように、やはり下振れのリスクが相応にあるもとで、その下振れのリスクを意識しながら、今は、政策を変更するならば緩和をより強めていく方向となるとのスタンスでいます。そのスタンスを大きく変えるほど、現状で何か状況が変わっているとは考えてはいません。もっとも、目まぐるしく情勢は変わっていますし、下振れリスクについても、リスクそのものの性質とその評価というのはそれぞれ変わり続けているので、モメンタムがまさに失われる惧れが強まるという場合には、躊躇なく追加緩和していくということになるかと思います。
§16Question
いわゆる中央銀行デジタル通貨(CBDC)についてお聞かせください。先日、6 中銀で共同研究グループを立ち上げたということで、これから色々と検証していくということだと思いますが、例えば、テーマの一つに、クロスボーダーの相互運用性ということがあったと思います。これについて、ちょっと詳しく伺いたいのですが、タラレバになってしまうかもしれませんが、将来、デジタル円とかデジタルユーロみたいなものができたときにですね、仕様がばらばらであったりとか、せっかく作ってデジタル化で便利にしようというつもりなのに、そこの相互運用性がいまいちだと却って不便になってしまったりとか、色々と考えられると思うのですが、今後、その研究において、相互運用性というものをどう確保していくのかというところについて、どのような議論がなされようとしているのか、また副総裁はその辺りについてどうすべきだとお考えになっているのか、ということについてお聞かせ頂ければと思います。
§17Masazumi Wakatabe
現状ではまだ、まさにCBDCグループが発足したばかりで、研究のアジェンダ、課題の一つとして相互運用性が挙がっているということなので、それについて何かこういう結論があるということは全くありません。これは研究する中で明らかになってくるのだというように思います。ただ、相互運用性がなぜ大事なのかというのは、いってみれば、なぜこのCBDCの議論が今活発になってきているのか、そのようにみえるのか、とも関わります。本当はCBDCの議論そのものは既にずっとやってきており、日本銀行も様々なかたちで発信をしてきているわけですけれども、このタイミングでそのようにみえてきているということの根底には、やはり決済をするときに、クロスボーダー取引の決済をどう考えるかが大事で、とくにクロスボーダーの決済にかかる費用が高いのではないか、コストがかかっているのではないかという認識があります。そうであるならば、やはりCBDCを考える上でも、せっかく単独ではなく6 中央銀行と国際決済銀行(BIS)で考えるわけですから、国際的なクロスボーダーの取引というのをいかに便利なものにしていくかということがあって当然であると思います。
§18Masazumi Wakatabe
CBDCを作る、作らないという議論以前に、現状のクロスボーダー取引の決済の利便性を高めていくことについてきちんと研究しなければならず、その結論がCBDCなのか、そうでないのかというのはともかくとして、そういうような背景があると思います。
§19Question
地元との懇談の中で、人手不足であるとか、高齢化という課題の認識を持たれたと思いますが、副総裁自身、どのような活性化策をお考えになっていますでしょうか。
§20Masazumi Wakatabe
講演と多少被るところもあるので、かいつまんでお話ししますが、先程申し上げたように、まさに少子高齢化が進んでいることを踏まえた上で、何ができるのか、何をすべきかということですが、私が伝えたかった一番のメッセージは、人口減少は確かに、経済その他の領域で逆風になりかねないわけですけれども、そのもとでも経済成長はできるということです。その限りにおいて、経済成長の源泉は何がもとになるのかということを考えると、それは資本、労働、そして技能や技術といった広い意味での知識であると思います。経済成長を考えるときに、その中で一番重要なのは実は知識であり、目指すべきは地域経済の生産性を高めることであったり、地場産品の付加価値を高めることであると考えられます。そうした動きというのは、色々とご紹介がありました。例えば、数多くの企業が集積している「海事クラスター」ですとか、あるいは主力の紙・パルプ等では研究開発等への取組み強化で生産性向上を目指しているということであり、そういった方向をますます強めていくことが望ましいだろうと思います。また、全国1 位である柑橘農業では、高級柑橘において新たに「紅プリンセス」というものが開発されて、今後、本格生産が期待されています。
§21Masazumi Wakatabe
あるいは、海面養殖業漁業産出額全国 1 位の水産業での「媛スマ」であるとか、水稲農業の「ひめの凛」といった当県オリジナルブランドが高付加価値化に貢献すると思います。更に、労働参加における女性や高齢者の更なる活躍というのも、追加的に労働を増やすという意味でもありうると思います。知事と県内の全市町村が「ひめの国女性活躍応援団」を結成しているということで、内閣府が進める「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」の行動宣言にも賛同しているということです。様々な活性化のストラテジーはあると思いますが、ここで強調したかったのは、技術や技能といった広い意味での知識を活用していく、増やしていくということであります。
§22Question
新型肺炎の先程のお話に関連して質問させて頂きたいのですが、先程の副総裁の発言の中でも、リスクセンチメントが増大することで、株価や金利といった国際金融市場に対しても影響が及ぶというように仰っていたかと思うのですが、ただ足許の金融市場をみていると、若干楽観的というか、大きく金利が下がっていくとか、株価が大暴落していくということは、今のところ起きていないようですが、金融市場の楽観視というか、そうした姿勢について、副総裁はどのようにご覧になっているでしょうか。
§23Masazumi Wakatabe
現状の市場が、楽観視しているのか、悲観視しているのかは、コメントしませんが、基本的には、もちろん、これは新型であるということもあって、様々な不確実性がありますし、経済への影響というのも、中国経済のプレゼンスであるとか、中国における拡がりということを考えたときにも、その影響は慎重にみなければいけませんし、私どもも最大限の注視をもってみています。しかし、それでもって、過度な悲観論に陥る必要もないわけでして、その限りにおいては、各種の政策対応、これは既に中国でも行われているような政策対応であるとか、あるいは政府の新型コロナウイルスに対する様々な対策等が奏功するのではないのかということを期待しているということです。そのことが市場にどう反映されているのかについては、私としてはコメントする立場にありませんが、もちろん、国際金融市場で大きな変動が起きないかということについては、最大限注意してまいります。現状において、ある種正しく怖がる、つまり、色々な影響はあり得るけれども、しかし、それに対して過度にリアクションする必要はないというように考えています。
§24Question
消費者心理等の実質所得減少の影響ということで、講演でも言及されていたのですが、仮に追加的な緩和措置が必要な場合の手段を考えるうえで、一般的にいわれているのが、マイナス金利の深掘りや金利の引き下げというのは、却って家計や企業の心理を冷やすのではないかという指摘があります。そうした中で、金利の引き下げ、マイナス金利の深掘りというのが、金融政策の手段として、どこまで有効なのかということについて、副総裁の意見を聞きたいというのが一点目です。また、気候変動が及ぼす金融へのリスクというのが、ヨーロッパをはじめとして、今、世界的に意識されていますが、日本でのこうした取組みについて現状をどうみられているかという点と、中央銀行として、この問題にどう向き合っていけばいいのかをお願いします。
§25Masazumi Wakatabe
一点目は二つあって、仮に今時点で新型コロナウイルスの影響等の下振れリスクが強まることによって、何か追加緩和の措置をするのかどうかという問題と、追加緩和の措置をするときの金融政策の手段としてのマイナス金利の深掘りをどのように評価しているのかということです。前半については、もちろん、下振れリスクが非常に大きくなって、物価上昇のモメンタムが失われるという惧れが強まる場合には、躊躇なく追加緩和するということで、追加緩和の手段としては、現時点で、何か特定の政策を排除することはないし、特定の政策のみを選択することもないということです。それは、その時々に応じて決めるということです。そう言いながら、現状のマイナス金利政策をなぜ続けているのかというと、それは、政策のベネフィット、利得がコストを上回っているからであり、その限りにおいて、現状で、マイナス金利政策が、消費者の心理に対して、マイナスの影響を及ぼしているというようには、私はみていません。二番目の気候変動リスクというのは、実は非常に大きなテーマで、これも近年は、中央銀行および金融当局の間では、気候変動が実体経済や金融システムにどういう影響を与えるかということについては、関心が高まっていますし、国際会議等のテーマとして取り上げられる機会も増えているというのは認識しています。
§26Masazumi Wakatabe
そこで、各国の中央銀行の中では、気候変動リスクが金融機関や金融システムに与える影響を把握するために、気候変動を入れたストレステストを実施する等、様々な取組みがみられているというのも事実です。日本銀行はまだそのようなことは考えていませんけれども、ただ、 NGFS(Network for Greening the Financial System )という、中央銀行と金融当局者の間の国際ネットワークに参画することが決まりましたので、まずそういったところへの参画を通じて、各国の分析手法や知見を参考にして、気候変動リスクについて理解を深めてりまいりたいと思います。どういうことが必要なのかということについては、おそらく、その検討の結果として、様々に反映されてくるのではないかと考えます。
§27Question
1月の展望レポートの中で、海外経済のリスクについて、依然として大きいものの、一頃よりは幾分低下したとなっていたと思うのですが、今、新型コロナウイルスというのが出てきて、副総裁ご自身の中で、そういったことが当てはまるのかどうか、リスクは幾分低下したと言えるのかが一点です。また、マネタリーベースについて、マーケットの中で、増加率が低下してきていて、日銀もそんなに国債を買っていない状況で、その効果について疑問視する声もあると思うのですが、従来、副総裁は量的な面について重視していたと思うのですが、その点についてお願いします。
§28Masazumi Wakatabe
まず、展望レポートでの評価が、下方にせよ上方にせよ、現時点でどう評価すべきかというのは、新型コロナウイルスの影響がどれくらい続いて、どれくらいの深度、範囲で及ぶのかということにも関わってくるので、現時点では、この評価をまさに進めている最中ということだと思います。この時期だけをみると、新型コロナウイルスが、中国経済に与える影響、それが世界経済、日本経済に与える影響、国際金融市場に与える影響というのを考えると、下振れリスクであることは明らかだと思います。ただ、それが、どの程度の持続性があって、後の経済に影響するのかというのは、新型コロナウイルスを巡る状況だけではなく、それに対する政策対応も関わってきますので、そこのところは何とも言えないということであり、それについては、現在考えているということです。二番目のマネタリーベースですが、ご指摘のように、確かに、今、長期国債の買入れ額というのはめどになっていて、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中で、マネタリーベースの位置、あるいはオーバーシュート型コミットメントの位置というのは、縮小しているようにみえます。しかしながら、私は、やはり、オーバーシュート型コミットメントは、この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のパッケージの中では、大きな位置を占めていると思います。
§29Masazumi Wakatabe
どういうことかと言いますと、例えば、これを外すというときに、どのような予想を市場参加者の間で持つのかということです。日本銀行がやっているいくつかのコミットメントの中の一つですので、そのコミットメントのメカニズムがなくなってしまう、だから日銀はすわ出口であると、金融緩和を辞めてしまうのだというように誤解されることがないかどうかというのは考えないといけないと思います。私としては、現状でパッケージとして行っている中で、このコミットメントはデバイスとして役割を果たしていると考えています。
§30Question
先日、発表された展望レポートの関係でお伺いします。成長率の予想は上振れしたのですけれども、物価の予想がまた引き下げられてしまいました。例えば、黒田総裁、あるいは若田部副総裁の任期中に物価 2%というのは達成可能なのでしょうか。今時点での見通しをお聞かせください。
§31Masazumi Wakatabe
達成可能なように努力しているというのが簡単なお答えです。
§32Question
懇談の中で、新型コロナウイルスによるインバウンドへの影響、その心配の声が聞かれたということですが、副総裁はそれをどのように受け止めたのでしょうか。そして、愛媛県内の観光等への影響をどのようにお考えでしょうか。
§33Masazumi Wakatabe
確かに、そのような発言が出たことは事実です。春節期間で一部先からは中国団体客のキャンセルがみられて、前年割れになったとの声も聞かれていますけれども、その他の宿泊施設からは、台湾を中心に宿泊客が依然高水準にあるとの声も数多く聞かれています。これはご承知のように、松山と台北空港の間の便が 2 便、そしてそれが今後増便されるということで、その効果というのが、依然高水準の台湾からの宿泊客を呼んでいるということで、全体としてみれば、総じて堅調に推移しているということであります。もっとも、経済への影響の大きさというのは、今後の拡がり、感染症の拡がりなどにも依存しますので、県内経済に与える影響については、注視してまいりたいと考えています。以上